2017/05/18(木) - 15:23
「花の都」として知られるフィレンツェをスタートし、アペニン山脈を駆け巡ったジロ第11ステージ。多くの選手が警戒した獲得標高差3,700mの危険なステージで波乱は起こらず。ジロはアルプス&ドロミテに向けて北上を続ける。
フィレンツェのドゥオーモを横目にスタート地点に向かう photo:Kei Tsuji / TDWsport
ミケランジェロ広場に選手たちが集まってくる
近くに住むマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がステージに登場 photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が登場 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ディスクブレーキホイールも用意するヴィットリアのニュートラルサポートカー photo:Kei Tsuji / TDWsport
膝の故障から完全に復調していない状態でジロに挑み、サルデーニャの集団スプリントで3位と4位という成績を残していたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)は、第11ステージをスタートしなかった。リタイアの原因は膝の悪化ではなくアレルギー性の喘息とされる。直接ニッツォーロのリタイアには関係ないかもしれないが、ウンブリア州からトスカーナ州、レッジョエミリア州を走るこの数日間はポプラの樹が白い綿毛のような種子を大放出中。選手だけでなく、くしゃみや鼻水などの症状に悩まされている大会関係者は多い(自分を含む)。
「花の都」を意味するフィレンツェを訪れたことがある人なら、もしくはイタリアを訪れたことがある人なら、高確率で足を運んでいるであろうミケランジェロ広場が第11ステージのスタート地点。ドゥオーモやレンガ色の町並みを見下ろす小高い丘に選手たちが集まってきた。中央にダヴィデ像が立つその広場は、ジロ目当ての観客と観光客でごった返した。
そのミケランジェロ広場から25kmの場所にセカンドハウスを持ち、シーズン中は多くの時間をトスカーナ州で過ごしているマーク・カヴェンディッシュがモトGPドライバーで友人のカル・クラッチローと一緒に自走で会場にやってきた。慣れた手つきで出走サインをしようとするけど自分の番号が見当たらないというネタを挟んで、カヴェンディッシュがMCの紹介を受ける。
カヴェンディッシュはEBウィルスによる伝染性単核球症を患っており、3月のミラノ〜サンレモ以降レースから遠ざかっている。まだ復帰時期は未定で、ツール・ド・フランスに間に合うかもわからない。「病気にかかっているという自覚はなくて、ただ単にコンディションが上がっていないだけの状態。少なくとも自転車には乗れている」と楽観的だ。
フィレンツェ郊外のジーノバルタリ博物館前でレースは正式にスタート photo:Kei Tsuji / TDWsport
ワイン畑が広がる2級山岳コンスーマ峠 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ワイン畑が広がる2級山岳コンスーマ峠 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ピンクにデコレーションされた町を通過 photo:Kei Tsuji / TDWsport
そんなカヴェンディッシュの訪問に刺激を受けたのか、ディメンションデータがジロでステージ初優勝をつかんだ。モトに乗って撮影していたフォトグラファーが「スタートからアタックして、中盤にはランダと一緒に逃げ、終盤にロランに追いついた時もかなり苦しそうにしていたのに」と驚くオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)が8名でのスプリントに勝利した。この日の走りを見る限り、レース以外の場所で常に笑顔を振りまくバスク出身ライダーはマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)候補の筆頭に躍り出たと言える。
ヴェロンの公開データによると、体重70kgのフライレは最初の2級山岳コンスーマ峠で465Wを6分34秒間出して逃げに乗り、最後のスプリントでは27秒間933W(5秒間1170W)を出し、最高速65.6km/hを出して勝利している。得意の勝ちパターンに持ち込みながらも2位に終わった体重68kgのルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)は25秒間741W(5秒間867W)で、最高速64.5km/hだった。
キャノンデール・ドラパックのジョナサン・ヴォータースGMのツイートによると、ステージ3位のピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)は4時間21分間のレースで4,775kcalを消費し、レース中のNP(ノーマライズドパワー)は357W。体重は68kg。TSS(トレーニング・ストレス・スコア)は321.8だった。
「アジアは一輪車の中心地〜!」と叫びながら結構な速さで走り去る photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ピンクの傘を吊るす今年流行りのデコレーション photo:Kei Tsuji / TDWsport
フィニッシュ後に頭を抱えるオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
最後の2級山岳モンテ・フマイオーロはキャンセルされた「ベストダウンヒラー賞」の対象峠。全長10kmの下り区間を最速で走ったのは逃げグループの最後尾ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)で、平均スピードは65.813km/hだった。0.31秒差でマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)、1秒差でベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)、そしてダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)が11秒差で続いている。相変わらずこれらの記録は大々的に公表されておらず、コミュニケの端に小さく書かれているだけ。
下り区間では波乱も起きず、どの選手も安全に下りきった。危険なステージを終えたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)は「すべてがコントロール下にあった。ストレスはなかった」と語り、マリアローザのプレッシャーを感じさせない落ち着き払った表情を見せる。山岳アシストとして期待されていたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)のブロックハウスでのリタイアが悔やまれるが、サンウェブはリードを守る準備ができている。
マリアローザを守ったトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
レース後のテレビインタビューに応じるトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
text&photo:Kei Tsuji in Bagno di Romagna, Italy
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「花の都」を意味するフィレンツェを訪れたことがある人なら、もしくはイタリアを訪れたことがある人なら、高確率で足を運んでいるであろうミケランジェロ広場が第11ステージのスタート地点。ドゥオーモやレンガ色の町並みを見下ろす小高い丘に選手たちが集まってきた。中央にダヴィデ像が立つその広場は、ジロ目当ての観客と観光客でごった返した。
そのミケランジェロ広場から25kmの場所にセカンドハウスを持ち、シーズン中は多くの時間をトスカーナ州で過ごしているマーク・カヴェンディッシュがモトGPドライバーで友人のカル・クラッチローと一緒に自走で会場にやってきた。慣れた手つきで出走サインをしようとするけど自分の番号が見当たらないというネタを挟んで、カヴェンディッシュがMCの紹介を受ける。
カヴェンディッシュはEBウィルスによる伝染性単核球症を患っており、3月のミラノ〜サンレモ以降レースから遠ざかっている。まだ復帰時期は未定で、ツール・ド・フランスに間に合うかもわからない。「病気にかかっているという自覚はなくて、ただ単にコンディションが上がっていないだけの状態。少なくとも自転車には乗れている」と楽観的だ。
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ヴェロンの公開データによると、体重70kgのフライレは最初の2級山岳コンスーマ峠で465Wを6分34秒間出して逃げに乗り、最後のスプリントでは27秒間933W(5秒間1170W)を出し、最高速65.6km/hを出して勝利している。得意の勝ちパターンに持ち込みながらも2位に終わった体重68kgのルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)は25秒間741W(5秒間867W)で、最高速64.5km/hだった。
キャノンデール・ドラパックのジョナサン・ヴォータースGMのツイートによると、ステージ3位のピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)は4時間21分間のレースで4,775kcalを消費し、レース中のNP(ノーマライズドパワー)は357W。体重は68kg。TSS(トレーニング・ストレス・スコア)は321.8だった。
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下り区間では波乱も起きず、どの選手も安全に下りきった。危険なステージを終えたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)は「すべてがコントロール下にあった。ストレスはなかった」と語り、マリアローザのプレッシャーを感じさせない落ち着き払った表情を見せる。山岳アシストとして期待されていたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)のブロックハウスでのリタイアが悔やまれるが、サンウェブはリードを守る準備ができている。
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text&photo:Kei Tsuji in Bagno di Romagna, Italy
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