2017/05/17(水) - 15:08
波乱というべきか必然というべきか。デュムランの勝利は予想されていたが、キンタナに3分近い差を付けたことに各国報道陣は驚きの表情を見せた。これでマリアローザ争いは分からなくなった。最終日が平坦な個人TTであることもデュムランに味方している。
ラジオコルサ(競技無線)が「第1計測ポイントでデュムランがユンゲルスのタイムを18秒更新し、10分22秒のトップタイム。平均スピードは56.720km/h」と伝えると、そばで聞いていた観客が目を丸くした。スタート後しばらくは減速を強いるコーナーが連続したため、デュムランは序盤の平坦路を60km/h前後で巡航していたことになる。
デュムランとユンゲルスは3月のティレーノ〜アドリアティコ終了後に今回のTTコースを試走している。ユンゲルス曰く、当初の発表と微妙にコースが異なっていたため、前日の休息日に再び念入りに試走しなければならなかったそうだ。コースは車で走っていても目をしかめてしまうような穴ぼこだらけで、特に細めのタイヤを使用するTTバイクでは慎重なライン取りが要求される。凸凹なコースは体重でバイクを押さえ込むことができる大柄な選手向きであり、そこに追い打ちをかけるように風が丘を吹き抜けた。
一帯には、ウンブリア州の中でも有数のオリーブオイルやワイン造りが盛んな丘が延々と続く。ざっくり言って登り基調のコースを、デュムランは平均スピード47.178km/hで駆け抜けた。オランダ人選手によるステージ優勝は通算25勝目で、マリアローザ着用は30日目。そのうち7日間がデュムランによるもので、これはキンタナに肩を並べる数字だ。総合トップ10にオランダ人選手が3名(デュムラン、モレマ、クライスヴァイク)入っており、ジロに帯同しているオランダの報道関係者は例年よりも多い。
ヴェロンが公開しているデータによると、デュムランは登りを含むフィニッシュ手前の4kmを7分17秒かけて走っている。その間の平均スピードは32.5km/hで平均出力は411W。フィニッシュラインに向かう最後の30秒間は552Wを出力している。
デュムランとキンタナは2014年以降これまで8回同じタイムトライアルを走っており、いずれもデュムランに軍配が上がっている。8回のタイムトライアルでついたタイム差を平均すると、1kmにつき2.87秒ずつタイム差がつく計算。そのペースで39.8kmコースを走れば2分前後の差がつくとみられていたが、実際には3分近い差がついた。
様々な要素が絡むので必ずしも正しくはないが、仮にデュムランとキンタナが2分53秒差がついたこの日と同じペースで最終個人タイムトライアル(29.3km)を走れば、デュムランはキンタナに2分07秒差を付けることができる。しかもミラノにフィニッシュする最終個人TTはほぼ真っ平らなのでよりデュムラン向きであり、計算よりも大きなタイム差がつくことは容易に想像が可能だ。この先の山岳ステージでキンタナが挽回するのは間違いないが、キンタナは少なくとも3分前後のリードを築かなければデュムランに逆転される。
キンタナのブロックハウス圧勝により「残り2週間ずっとマリアローザのキンタナが勝ち続ける単調な展開になるんじゃないか」と思われたが、デュムランが1日で状況をひっくり返した。
第9ステージのブロックハウスで、270万人の国内テレビ視聴者(視聴率22%)を落胆させてしまったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は、キンタナから46秒を奪うことに成功したものの、総合順位は5位のままで上出来とは言えず。ステルス的な薄い存在感はプレッシャーを軽減する効果はあるが、イタリアの観客たちからすると面白くない。そしてイタリア人選手のステージ優勝空白期間も伸び続けている。
この日のサプライズは、2日前の肩脱臼を感じさせない走りでステージ2位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)だろう。グランツールでのステージ初優勝には届かなかったが、チームスカイのエースはまだ死んでないことを見せつけた。「まだ肩が痛むのでTTポジションには違和感があった。100%とは言えない状態だけど毎日トライするしかない。数日間リカバリーに徹して、次の山頂フィニッシュ(土曜日のオローパ)までに本調子に持っていきたい」と、G(トーマスの愛称)はまだ諦めていない。マリアローザを狙うには厳しいタイム差がついているが、「そう簡単に諦めがつくほど緩い準備をしてきたわけじゃない」という言葉がトーマスのモチベーションの高さを物語っている。
ブロックハウスと個人TTでマリアローザ候補は絞り込まれた。翌日の第11ステージは平坦区間がほぼない難易度4つ星の中級山岳ステージ。残り25km地点に登場する2級山岳モンテ・フマイオーロ(全長23.1km/平均3.7%)は長い登りだけでなくそのテクニカルな下りにも注意が必要だ。
text&photo:Kei Tsuji in Montefalco, Italy
ラジオコルサ(競技無線)が「第1計測ポイントでデュムランがユンゲルスのタイムを18秒更新し、10分22秒のトップタイム。平均スピードは56.720km/h」と伝えると、そばで聞いていた観客が目を丸くした。スタート後しばらくは減速を強いるコーナーが連続したため、デュムランは序盤の平坦路を60km/h前後で巡航していたことになる。
デュムランとユンゲルスは3月のティレーノ〜アドリアティコ終了後に今回のTTコースを試走している。ユンゲルス曰く、当初の発表と微妙にコースが異なっていたため、前日の休息日に再び念入りに試走しなければならなかったそうだ。コースは車で走っていても目をしかめてしまうような穴ぼこだらけで、特に細めのタイヤを使用するTTバイクでは慎重なライン取りが要求される。凸凹なコースは体重でバイクを押さえ込むことができる大柄な選手向きであり、そこに追い打ちをかけるように風が丘を吹き抜けた。
一帯には、ウンブリア州の中でも有数のオリーブオイルやワイン造りが盛んな丘が延々と続く。ざっくり言って登り基調のコースを、デュムランは平均スピード47.178km/hで駆け抜けた。オランダ人選手によるステージ優勝は通算25勝目で、マリアローザ着用は30日目。そのうち7日間がデュムランによるもので、これはキンタナに肩を並べる数字だ。総合トップ10にオランダ人選手が3名(デュムラン、モレマ、クライスヴァイク)入っており、ジロに帯同しているオランダの報道関係者は例年よりも多い。
ヴェロンが公開しているデータによると、デュムランは登りを含むフィニッシュ手前の4kmを7分17秒かけて走っている。その間の平均スピードは32.5km/hで平均出力は411W。フィニッシュラインに向かう最後の30秒間は552Wを出力している。
デュムランとキンタナは2014年以降これまで8回同じタイムトライアルを走っており、いずれもデュムランに軍配が上がっている。8回のタイムトライアルでついたタイム差を平均すると、1kmにつき2.87秒ずつタイム差がつく計算。そのペースで39.8kmコースを走れば2分前後の差がつくとみられていたが、実際には3分近い差がついた。
様々な要素が絡むので必ずしも正しくはないが、仮にデュムランとキンタナが2分53秒差がついたこの日と同じペースで最終個人タイムトライアル(29.3km)を走れば、デュムランはキンタナに2分07秒差を付けることができる。しかもミラノにフィニッシュする最終個人TTはほぼ真っ平らなのでよりデュムラン向きであり、計算よりも大きなタイム差がつくことは容易に想像が可能だ。この先の山岳ステージでキンタナが挽回するのは間違いないが、キンタナは少なくとも3分前後のリードを築かなければデュムランに逆転される。
キンタナのブロックハウス圧勝により「残り2週間ずっとマリアローザのキンタナが勝ち続ける単調な展開になるんじゃないか」と思われたが、デュムランが1日で状況をひっくり返した。
第9ステージのブロックハウスで、270万人の国内テレビ視聴者(視聴率22%)を落胆させてしまったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は、キンタナから46秒を奪うことに成功したものの、総合順位は5位のままで上出来とは言えず。ステルス的な薄い存在感はプレッシャーを軽減する効果はあるが、イタリアの観客たちからすると面白くない。そしてイタリア人選手のステージ優勝空白期間も伸び続けている。
この日のサプライズは、2日前の肩脱臼を感じさせない走りでステージ2位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)だろう。グランツールでのステージ初優勝には届かなかったが、チームスカイのエースはまだ死んでないことを見せつけた。「まだ肩が痛むのでTTポジションには違和感があった。100%とは言えない状態だけど毎日トライするしかない。数日間リカバリーに徹して、次の山頂フィニッシュ(土曜日のオローパ)までに本調子に持っていきたい」と、G(トーマスの愛称)はまだ諦めていない。マリアローザを狙うには厳しいタイム差がついているが、「そう簡単に諦めがつくほど緩い準備をしてきたわけじゃない」という言葉がトーマスのモチベーションの高さを物語っている。
ブロックハウスと個人TTでマリアローザ候補は絞り込まれた。翌日の第11ステージは平坦区間がほぼない難易度4つ星の中級山岳ステージ。残り25km地点に登場する2級山岳モンテ・フマイオーロ(全長23.1km/平均3.7%)は長い登りだけでなくそのテクニカルな下りにも注意が必要だ。
text&photo:Kei Tsuji in Montefalco, Italy
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