決して平坦とは言えない中級山岳ステージの最後を締めくくる集団スプリント。向かい風によってレース時間が6時間を超えた長い戦いはアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のスプリント勝利とマリアローザ獲得で締めくくられた。



サルデーニャ島東部の山岳地帯を走るサルデーニャ島東部の山岳地帯を走る photo:Kei Tsuji / TDWsport

ジロ・デ・イタリア2017第2ステージジロ・デ・イタリア2017第2ステージ image:RCSsportジロ第2ステージは引き続きサルデーニャ島を反時計回りに進む。コースの難易度は初日の第1ステージと同じ2つ星だが、内陸を進むため標高のあるアップダウンが続き、しかも距離が長い。中級山岳ステージに分類されており、この日の集団スプリントに残るためには登坂力が欠かせない。残り47km地点の2級山岳ジェンナ・シラーナは平均勾配こそ3.2%と緩いが、登坂距離が19.6kmに達する長い登りだ。

この日も下馬評はスプリンターたちだが、獲得標高差が2,800mという数字を叩き出しており、スプリンターが登りで苦しむようなことがあれば逃げ切りにもチャンスがある。オルビアの町を出発してすぐ、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)が2日連続のエスケープを開始。この日の伴侶はイリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ウィリエール・トリエスティーナ)とエフゲニー・シャルノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)、シモーネ・アンドレッタ(イタリア、バルディアーニCSF)だった。

スタート地点に立ち込めていた雨雲を脱し、乾燥した内陸の山岳地帯に向かうにつれてタイム差は6分を超える。ヘルメットからショーツまで青で揃えたチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)はマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を失う可能性があったが、山岳賞3位のテクレハイマノを含む逃げに反応せず。ベネデッティは総合リーダーチームのメンバーとしての役割に徹した。

獲得標高差2,800mのタフなステージを走る獲得標高差2,800mのタフなステージを走る photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアローザを着て走るルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)マリアローザを着て走るルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsport2級山岳ジェンナ・シラーナを登るダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ら2級山岳ジェンナ・シラーナを登るダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport

人数の揃った逃げをボーラ・ハンスグローエが追いかける展開が長らく続いたが、南からの向かい風によってレースの進行は遅め。中盤にかけて降雨も観測されたことも影響し、平均スピード33km/h前後のペースでレースは進む。山岳賞狙いと思われたテクレハイマノが2つの中間スプリントを先頭通過し、ボーナスタイム6秒を獲得することに成功している。

2級山岳ジェンナ・シラーナの長い登りを進むうちに逃げグループとメイン集団のタイム差は縮小。タイム差は1分を切り、逃げグループがメイン集団の視界に入ったところでテクレハイマノがアタックした。スプリントで追いすがる選手を振り切ったテクレハイマノが2級山岳を先頭通過して15ポイント獲得。ベネデッティからマリアアッズーラを奪うことに成功している。

ハイスピードで2級山岳を登りきったメイン集団からは、膝の故障で長らく戦線を離脱していたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)が脱落。2級山岳の頂上通過後にテクレハイマノが吸収されると、ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)とダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、クイックステップフロアーズ)が下りを利用してカウンターアタック。しかしこの動きはバーレーン・メリダの集団コントロールによって封じ込められる。

サルデーニャ島東部の山岳地帯を走るサルデーニャ島東部の山岳地帯を走る photo:Kei Tsuji / TDWsport
マリアアッズーラのチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)が集団を牽引マリアアッズーラのチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)が集団を牽引 photo:Kei Tsuji / TDWsport2級山岳通過後にアタックしたネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)とダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、クイックステップフロアーズ)2級山岳通過後にアタックしたネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)とダヴィデ・マルティネッリ(イタリア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

どの選手も安全に長い下り区間を走りきり、フィニッシュまでの10km平坦区間に入った大集団。スプリントに向けて熱気が上がる中、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)がメカトラによってストップする。ザカリンはチームメイトのバイクを借りて再スタートし、その後カチューシャ・アルペシンの全力サポートを得たが集団に追いつくことはなかった。この日ザカリンはライバルに対して20秒のタイムを失っている。

スプリンターチームが先頭を固める集団はハイスピードで平坦区間を駆け抜け、残り2kmの最終コーナーを曲がるとオリカ・スコットとロット・ソウダルが隊列を組んでリードアウト開始。マリアローザを着るルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)もこのポジション争いに絡むが、ビッグスプリンターに押しのけられてポジションを落としてしまう。

ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット)のリードアウトが終わると、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、そしてグライペルがほぼ同時にスプリントを開始した。ガビリアが一気に先頭を奪った一方で、同じ22歳のユアンはペダルを外して失速する。ガビリアのスプリントは伸びず、道のど真ん中を突き進んだグライペルが先頭に躍り出た。

スプリントを繰り広げるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)スプリントを繰り広げるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)やアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji / TDWsport娘の名前が刻まれた左腕をあげてフィニッシュするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)娘の名前が刻まれた左腕をあげてフィニッシュするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)の追い上げも届かず、ドイツチャンピオンジャージのグライペルがまず片手を突き上げ、そして両手を広げてフィニッシュ。ジロのステージ通算7勝目を飾るとともに、グライペルはステージ15位のペストルベルガーからマリアローザを奪うことに成功した。

「向かい風の中、登りの多いコースを6時間にわたって走ることは簡単なことじゃない。でも逆に向かい風のおかげでアタックが生まれにくかったとも言える。またジロのスプリントの主役に戻ってこれて本当に嬉しい。このステージ優勝とマリアローザはチームメイトたちと母親に捧げたい」。グライペルは2008年のブエルタ・ア・エスパーニャ以降、出場したすべてのグランツールでステージ優勝を飾っている。若手の台頭が目立つスプリントの舞台で34歳のベテランが勝負強さを見せつけた。

マリアローザを獲得したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)マリアローザを獲得したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ジロ・デ・イタリア2017第2ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)            6h05'18"
2位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
3位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
4位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
5位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
6位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
7位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
8位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
9位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)           11h18'39"
2位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)    +04"
3位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +08"
4位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
5位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      +10"
6位 パヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)           +12"
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)       +14"
8位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
9位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
10位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             75pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       72pts
3位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)    51pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       20pts
2位 チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)       9pts
3位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)           8pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)  11h18'43"
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)           +04"
8位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      +06"

チーム総合成績
1位 オリカ・スコット         33h56'39"
2位 ボーラ・ハンスグローエ
3位 UAEチームエミレーツ

text&photo:Kei Tsuji in Tortoli, Italy
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