2016/10/29(土) - 09:18
世界最大の自転車メーカー、ジャイアントが誇るレーシングロードバイク「TCR」シリーズ。今回のインプレッションバイクはセカンドグレードとなるTCR ADVANCED PROに追加されたディスクブレーキモデルだ。今後のディスクロードのベンチマークとなる、注目の一台の実力に迫る。
ロードバイクを取り巻く様々な技術的な進化は目まぐるしいものがある。その中でも、今現在もっともその行方に注目が集まっているのがディスクブレーキロードという分野だろう。UCIルールの改正は未だ行われず、プロレースの現場では本採用には至っていないものの、世界の主要自転車ブランドは既にディスクブレーキロードをラインアップに加えており、その時を今か今かと待っている状況だ。
世界最大の自転車メーカーとして知られるジャイアントも、例外ではない。むしろ、その流れを作り出したリーディングブランドとも言える存在だ。まだ大手メーカーが一歩を踏み出せずにいた2015年、エンデュランスモデルであるDEFYシリーズをフルモデルチェンジし、エントリーグレードを除いたほぼ全てのモデルにディスクブレーキ化するという決断を下した。
そして2017年モデルとして、ジャイアントが新たに送り出すのが昨年モデルチェンジしたばかりの「TCR ADVANCED」シリーズのディスクブレーキ仕様だ。エンデュランスモデルに続き、ラインアップの中核を担うオールラウンドレーサーがディスクブレーキ化を果たしたことからも、ジャイアントのディスクブレーキロードへの熱意が伝わってこよう。
少し歴史を振り返ろう。TCRのシリーズの始まりは1997年。当時、トップチューブが地面と平行の「ホリゾンタル」フレームが一般的だった時代、MTBのようにトップチューブを傾けたスローピングデザインで世界中の度肝を抜いた。その性能に懐疑的な目を向ける人も多かったというが、どちらが正しかったのかは、どのメーカーでも良いのでロードバイクカタログをめくってみればおのずと知れるだろう。
世界中の常識を一変させたTCRシリーズは、その後も常に他社のレースバイクに追われ続ける存在であった。カーボンファイバー、上下異径ステアリングコラム、インテグレーテッドシートピラー、圧入BBなど、TCRシリーズが導入してきた技術や規格は、じきにライバルたちも取り入れるようになった。
常に時代のベンチマークとして、輝き続けてきたTCRは、共に戦った選手たちにも恵まれてきた。オンセ、T-モバイル、HTCハイロード、ラボバンク、ジャイアント・アルペシンと、その時々の強豪チームに愛用され、グランツールや世界選手権、オリンピックといったビッグレースで輝かしい戦績を残してきた。
昨年施されたフルモデルチェンジによって、更なる進化を果たしたTCR。「TOTAL RACE BIKE」というコンセプトのもと、重量剛性比、ハンドリング性能、快適性という3つの性能を高次元でバランスさせたオールラウンドレーサーとして、その走りに磨きを掛けた。
各チューブはシェイプアップされより軽量になる一方、ねじれ剛性に優れる長方形断面の「MEGADRIVE」ダウンチューブ、シェル幅を目一杯広げた「POWERCORE」ボトムブラケットなどによって重量剛性比の向上を果たしている。
ジャイアント独自の超大径ステアリングコラム「OVERDRIVE2」は安定したハンドリングを実現。DEFYに採用される「D-FUSE」デザインと、先代TCR ADVANCEDシリーズに採用されていた涙滴断面の「VECTOR」デザインをミックスした設計の「VARIANT」シートポストによって、レースバイクに求められる振動吸収性を確保した。
今回追加されたディスクブレーキモデルは、それらの仕様をもれなく引き継いでいる。ジオメトリーにも変更は加えられず、ディスブレーキ化に伴い延長されることが多いチェーンステー長も405mmと短いまま。重量は公開されていないが、ブレーキマウント周辺にも極端なボリュームアップは見られず、リムブレーキモデルからの重量増加は最低限に抑えられているだろう。TCR ADVANCED PRO DISCは、レーシングバイクの身上たるキビキビとした軽快感を保ったまま、ディスクブレーキという新たな武器を手に入れた。
気になるディスクブレーキ関連の規格はシマノが主導する最新規格に準じている。つまり、前後ともに12mmスルーアクスルに対応し、エンド幅はフロント100mm/リア142mmという設計で、ブレーキの台座はコンパクトなフラットマウントを採用する。ローター径は前後共に140mmとなっており、制動力と軽量化を両立している。
リア側のブレーキホースはフレームに内装される一方で、フロント側は左フォークブレードに沿わせる外装仕様。これにはきちんと理由があり、内装のための穴がフロントフォークの強度に悪影響を与えるため。多少の見た目の美しさと走行性能を秤にかけて後者を選択するところが、TCRがあくまでピュアレースバイクだということを示している。
今回インプレッションを行ったのは、T-700グレードのカーボン原糸から製造される「ADVANCED」カーボンを素材としたセカンドグレードフレームにアルテグラDi2を組み合わせたTCR ADVANCED PRO DISC。ブレーキ周りはシマノのハイドローリックブレーキシステムを採用し、足回りはジャイアントで固められる。ミドルハイトのカーボンホイール 「SLR1 DISC CARBON」にチューブレスタイヤ「GAVIA SL」が組み合わせられ、最高のマッチングを発揮している。
今後、大きなフロンティアとして注目が集まるディスクブレーキロード。常にレースバイクの中心であり続けたTCRシリーズに加わったディスクブレーキモデルの出来は、続くバイクたちに大きな影響を与えるはずだ。そんな重要な位置付けを持つだろうこのバイクを、インプレッションライダー達はどのように評価するのだろうか。それではインプレッションへと移ろう。
ー インプレッション
「ロングライドバイクとレーシングバイクの良さを兼ね備えたオールラウンダー」
藤岡徹也(シルベストサイクル)
TCRのカーボンモデルに乗るのは初めてなのですが、とてもオールラウンドで軽快に走ることが出来るバイクですね。登りから平坦、下りまでありとあらゆる場面で気持ち良く進んでくれる一台だと感じました。
中でも、登りは得意分野ですね。私自身はトルクを掛けてぐいぐいと踏みこむタイプなのですが、軽いギアでケイデンス高めで回していっても、非常に心地よく登っていけました。これならずっと登ってられるかも?なんて思ってしまうほどです。
おそらく、重心が後ろよりで安定感があるため、クランクを回すことに集中できるのが大きな要因なのでしょう。フレームの剛性感としては、がっちりと硬いということはなく、むしろしなって進んでいくタイプだと感じました。どこかが飛びぬけて硬い、もしくは柔らかいということはなく、フレーム全体が上手くバランスしているので、しなるといっても嫌な感触はありませんね。
しなりがパワーロスに繋がっているという事は無く、脚への負担が軽減されるような良い味付けとなっています。ホイールも同じような性格ですね。それらのマッチングも相まって、ホビーレースからロングライドまで幅広く対応してくれます。ディスクブレーキモデルですので、登録レースには出ることができませんが、バイクの雰囲気としても、もうすこし遊びの要素を含んだような乗り方がぴったりだと感じます。
ディスクローターが140mmということもあってか、制動力自体はリムブレーキに対して圧倒的に効くとは感じませんでした。逆に言えば、リムブレーキからの移行もしやすいフィーリングに仕上がっているとも感じます。油圧ブレーキらしく、コントロール性は非常に良好ですからトータルのブレーキ性能としてはやはりこちら軍配が上がるでしょう。
レースで速く走りたい!というシリアスライダーの方であれば、現状では登録レースへは出走できないこともありますし、別の選択があるでしょう。しかし、自転車に乗ること自体が好きで、いつでもどんなところへも自転車で走りに行きたいという、アドベンチャーな楽しみ方を求めている人にとっては、とても良い候補となるのではないでしょうか。
「直進安定性と快適性に優れるロングライドにピッタリな一台」
渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)
TCRというと、レースバイクというイメージですが、このバイクはロングライドやグランフォンドでも活躍してくれそうな乗り味ですね。直進安定性が高く、とても乗り心地が良い。そしてディスクブレーキなので、長距離ライドで急に天気が崩れても安心ですし、長い下りも楽しくこなせます。
少し踏み心地は重めに感じましたが、よりハイトの低い軽量なホイールに交換すれば、見違えたように登ってくれそうです。フレーム自体は軽く、剛性もしっかりしています。平坦で踏みこんでも、キビキビと反応してくれるので、基本的な走行性能はプロツアーを走る上位モデル譲りなのだと感じました。
12mmスルーアクスルですのでホイール周りの剛性は高めですし、ボトムブラケット周辺もしっかりとしていて、よほどパワーのあるスプリンターが踏みこむのでなければ、フレームが負けるというようなことは無いでしょうね。踏んだ力がダイレクトに加速に繋がる感覚はとても心地良いです。
ディスクローターやキャリパーなどの影響もあって、重心はとても低く感じます。低重心化されたことによって、直進安定性の高さにつながっているのだと感じます。一方、ハンドリングはニュートラルで扱いやすいので、初心者でも安心できるでしょう。
用途としては、レースよりもロングライドが向いているでしょう。シートステーも扁平に加工されており、標準で装備されるチューブレスタイヤと相まって、快適性にも非常に優れていますから、ますますロングライドにぴったりなバイクです。ロードレースを中心に走るのであればリムブレーキモデル、ロングライドをメインで、たまにエンデューロなどに参戦するというのであればディスクブレーキモデルといったように、用途に応じて選ぶと良いでしょう。
コストパフォーマンスにも優れていますし、初めてのディスクブレーキロードとしても、オススメできますね。ホビーレースでもいいでしょうし、バイクパッキングなどでツーリングに出ても楽しいでしょう。色々な楽しみ方が広がるバイクです。
ジャイアント TCR ADVANCED PRO DISC(完成車)
フレーム:Advanced-Grade Composite、OLD142mm VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Pro-Spec, Advanced-Grade Composite, Full Composite OverDrive 2 Column 12mm Axle
メインコンポーネント:シマノ ULTEGRA Di2
ブレーキ:シマノ R785/RS805
ローター径:140mm
ホイール:ジャイアント SLR1 DISC CARBON
タイヤ:ジャイアント GAVIA SLR 700x25C
サイズ:425mm(XS)、445mm(S)、470mm(M)、500mm(ML)
重 量:7.5kg(Sサイズ)
価 格:470,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル)
シルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める28歳。プロロードレーサーとしてマトリックスやNIPPOに所属し国内外のレースを転戦。ツール・ド・フクオカでは優勝、ツール・ド・熊野の個人TTで2位などの実績を持つ。今もシルベストの一員として実業団レースに参戦中。スタッフとして乗り方や最適なアイテムの提案、走行会を通じて「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)
新潟県三条市のスポーツサイクル サカモトで、メカニック作業から接客まで幅広く担当する。自転車にのめり込んだきっかけはオートバイレースのトレーニング。ロードバイクやMTB、小径車などジャンルを問わず探求し、特にブロンプトンに関しては造詣が深い。接客では製品のメリットとデメリットを丁寧に説明した上で、ユーザーに適したサービスや製品を提案することを大切にしている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウェア協力:ピアソン
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
ロードバイクを取り巻く様々な技術的な進化は目まぐるしいものがある。その中でも、今現在もっともその行方に注目が集まっているのがディスクブレーキロードという分野だろう。UCIルールの改正は未だ行われず、プロレースの現場では本採用には至っていないものの、世界の主要自転車ブランドは既にディスクブレーキロードをラインアップに加えており、その時を今か今かと待っている状況だ。
世界最大の自転車メーカーとして知られるジャイアントも、例外ではない。むしろ、その流れを作り出したリーディングブランドとも言える存在だ。まだ大手メーカーが一歩を踏み出せずにいた2015年、エンデュランスモデルであるDEFYシリーズをフルモデルチェンジし、エントリーグレードを除いたほぼ全てのモデルにディスクブレーキ化するという決断を下した。
そして2017年モデルとして、ジャイアントが新たに送り出すのが昨年モデルチェンジしたばかりの「TCR ADVANCED」シリーズのディスクブレーキ仕様だ。エンデュランスモデルに続き、ラインアップの中核を担うオールラウンドレーサーがディスクブレーキ化を果たしたことからも、ジャイアントのディスクブレーキロードへの熱意が伝わってこよう。
少し歴史を振り返ろう。TCRのシリーズの始まりは1997年。当時、トップチューブが地面と平行の「ホリゾンタル」フレームが一般的だった時代、MTBのようにトップチューブを傾けたスローピングデザインで世界中の度肝を抜いた。その性能に懐疑的な目を向ける人も多かったというが、どちらが正しかったのかは、どのメーカーでも良いのでロードバイクカタログをめくってみればおのずと知れるだろう。
世界中の常識を一変させたTCRシリーズは、その後も常に他社のレースバイクに追われ続ける存在であった。カーボンファイバー、上下異径ステアリングコラム、インテグレーテッドシートピラー、圧入BBなど、TCRシリーズが導入してきた技術や規格は、じきにライバルたちも取り入れるようになった。
常に時代のベンチマークとして、輝き続けてきたTCRは、共に戦った選手たちにも恵まれてきた。オンセ、T-モバイル、HTCハイロード、ラボバンク、ジャイアント・アルペシンと、その時々の強豪チームに愛用され、グランツールや世界選手権、オリンピックといったビッグレースで輝かしい戦績を残してきた。
昨年施されたフルモデルチェンジによって、更なる進化を果たしたTCR。「TOTAL RACE BIKE」というコンセプトのもと、重量剛性比、ハンドリング性能、快適性という3つの性能を高次元でバランスさせたオールラウンドレーサーとして、その走りに磨きを掛けた。
各チューブはシェイプアップされより軽量になる一方、ねじれ剛性に優れる長方形断面の「MEGADRIVE」ダウンチューブ、シェル幅を目一杯広げた「POWERCORE」ボトムブラケットなどによって重量剛性比の向上を果たしている。
ジャイアント独自の超大径ステアリングコラム「OVERDRIVE2」は安定したハンドリングを実現。DEFYに採用される「D-FUSE」デザインと、先代TCR ADVANCEDシリーズに採用されていた涙滴断面の「VECTOR」デザインをミックスした設計の「VARIANT」シートポストによって、レースバイクに求められる振動吸収性を確保した。
今回追加されたディスクブレーキモデルは、それらの仕様をもれなく引き継いでいる。ジオメトリーにも変更は加えられず、ディスブレーキ化に伴い延長されることが多いチェーンステー長も405mmと短いまま。重量は公開されていないが、ブレーキマウント周辺にも極端なボリュームアップは見られず、リムブレーキモデルからの重量増加は最低限に抑えられているだろう。TCR ADVANCED PRO DISCは、レーシングバイクの身上たるキビキビとした軽快感を保ったまま、ディスクブレーキという新たな武器を手に入れた。
気になるディスクブレーキ関連の規格はシマノが主導する最新規格に準じている。つまり、前後ともに12mmスルーアクスルに対応し、エンド幅はフロント100mm/リア142mmという設計で、ブレーキの台座はコンパクトなフラットマウントを採用する。ローター径は前後共に140mmとなっており、制動力と軽量化を両立している。
リア側のブレーキホースはフレームに内装される一方で、フロント側は左フォークブレードに沿わせる外装仕様。これにはきちんと理由があり、内装のための穴がフロントフォークの強度に悪影響を与えるため。多少の見た目の美しさと走行性能を秤にかけて後者を選択するところが、TCRがあくまでピュアレースバイクだということを示している。
今回インプレッションを行ったのは、T-700グレードのカーボン原糸から製造される「ADVANCED」カーボンを素材としたセカンドグレードフレームにアルテグラDi2を組み合わせたTCR ADVANCED PRO DISC。ブレーキ周りはシマノのハイドローリックブレーキシステムを採用し、足回りはジャイアントで固められる。ミドルハイトのカーボンホイール 「SLR1 DISC CARBON」にチューブレスタイヤ「GAVIA SL」が組み合わせられ、最高のマッチングを発揮している。
今後、大きなフロンティアとして注目が集まるディスクブレーキロード。常にレースバイクの中心であり続けたTCRシリーズに加わったディスクブレーキモデルの出来は、続くバイクたちに大きな影響を与えるはずだ。そんな重要な位置付けを持つだろうこのバイクを、インプレッションライダー達はどのように評価するのだろうか。それではインプレッションへと移ろう。
ー インプレッション
「ロングライドバイクとレーシングバイクの良さを兼ね備えたオールラウンダー」
藤岡徹也(シルベストサイクル)
TCRのカーボンモデルに乗るのは初めてなのですが、とてもオールラウンドで軽快に走ることが出来るバイクですね。登りから平坦、下りまでありとあらゆる場面で気持ち良く進んでくれる一台だと感じました。
中でも、登りは得意分野ですね。私自身はトルクを掛けてぐいぐいと踏みこむタイプなのですが、軽いギアでケイデンス高めで回していっても、非常に心地よく登っていけました。これならずっと登ってられるかも?なんて思ってしまうほどです。
おそらく、重心が後ろよりで安定感があるため、クランクを回すことに集中できるのが大きな要因なのでしょう。フレームの剛性感としては、がっちりと硬いということはなく、むしろしなって進んでいくタイプだと感じました。どこかが飛びぬけて硬い、もしくは柔らかいということはなく、フレーム全体が上手くバランスしているので、しなるといっても嫌な感触はありませんね。
しなりがパワーロスに繋がっているという事は無く、脚への負担が軽減されるような良い味付けとなっています。ホイールも同じような性格ですね。それらのマッチングも相まって、ホビーレースからロングライドまで幅広く対応してくれます。ディスクブレーキモデルですので、登録レースには出ることができませんが、バイクの雰囲気としても、もうすこし遊びの要素を含んだような乗り方がぴったりだと感じます。
ディスクローターが140mmということもあってか、制動力自体はリムブレーキに対して圧倒的に効くとは感じませんでした。逆に言えば、リムブレーキからの移行もしやすいフィーリングに仕上がっているとも感じます。油圧ブレーキらしく、コントロール性は非常に良好ですからトータルのブレーキ性能としてはやはりこちら軍配が上がるでしょう。
レースで速く走りたい!というシリアスライダーの方であれば、現状では登録レースへは出走できないこともありますし、別の選択があるでしょう。しかし、自転車に乗ること自体が好きで、いつでもどんなところへも自転車で走りに行きたいという、アドベンチャーな楽しみ方を求めている人にとっては、とても良い候補となるのではないでしょうか。
「直進安定性と快適性に優れるロングライドにピッタリな一台」
渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)
TCRというと、レースバイクというイメージですが、このバイクはロングライドやグランフォンドでも活躍してくれそうな乗り味ですね。直進安定性が高く、とても乗り心地が良い。そしてディスクブレーキなので、長距離ライドで急に天気が崩れても安心ですし、長い下りも楽しくこなせます。
少し踏み心地は重めに感じましたが、よりハイトの低い軽量なホイールに交換すれば、見違えたように登ってくれそうです。フレーム自体は軽く、剛性もしっかりしています。平坦で踏みこんでも、キビキビと反応してくれるので、基本的な走行性能はプロツアーを走る上位モデル譲りなのだと感じました。
12mmスルーアクスルですのでホイール周りの剛性は高めですし、ボトムブラケット周辺もしっかりとしていて、よほどパワーのあるスプリンターが踏みこむのでなければ、フレームが負けるというようなことは無いでしょうね。踏んだ力がダイレクトに加速に繋がる感覚はとても心地良いです。
ディスクローターやキャリパーなどの影響もあって、重心はとても低く感じます。低重心化されたことによって、直進安定性の高さにつながっているのだと感じます。一方、ハンドリングはニュートラルで扱いやすいので、初心者でも安心できるでしょう。
用途としては、レースよりもロングライドが向いているでしょう。シートステーも扁平に加工されており、標準で装備されるチューブレスタイヤと相まって、快適性にも非常に優れていますから、ますますロングライドにぴったりなバイクです。ロードレースを中心に走るのであればリムブレーキモデル、ロングライドをメインで、たまにエンデューロなどに参戦するというのであればディスクブレーキモデルといったように、用途に応じて選ぶと良いでしょう。
コストパフォーマンスにも優れていますし、初めてのディスクブレーキロードとしても、オススメできますね。ホビーレースでもいいでしょうし、バイクパッキングなどでツーリングに出ても楽しいでしょう。色々な楽しみ方が広がるバイクです。
ジャイアント TCR ADVANCED PRO DISC(完成車)
フレーム:Advanced-Grade Composite、OLD142mm VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Pro-Spec, Advanced-Grade Composite, Full Composite OverDrive 2 Column 12mm Axle
メインコンポーネント:シマノ ULTEGRA Di2
ブレーキ:シマノ R785/RS805
ローター径:140mm
ホイール:ジャイアント SLR1 DISC CARBON
タイヤ:ジャイアント GAVIA SLR 700x25C
サイズ:425mm(XS)、445mm(S)、470mm(M)、500mm(ML)
重 量:7.5kg(Sサイズ)
価 格:470,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル)
シルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める28歳。プロロードレーサーとしてマトリックスやNIPPOに所属し国内外のレースを転戦。ツール・ド・フクオカでは優勝、ツール・ド・熊野の個人TTで2位などの実績を持つ。今もシルベストの一員として実業団レースに参戦中。スタッフとして乗り方や最適なアイテムの提案、走行会を通じて「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
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渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)
新潟県三条市のスポーツサイクル サカモトで、メカニック作業から接客まで幅広く担当する。自転車にのめり込んだきっかけはオートバイレースのトレーニング。ロードバイクやMTB、小径車などジャンルを問わず探求し、特にブロンプトンに関しては造詣が深い。接客では製品のメリットとデメリットを丁寧に説明した上で、ユーザーに適したサービスや製品を提案することを大切にしている。
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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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