2016/10/23(日) - 23:29
主催者発表8万5千人の前で展開されたジャパンカップ本戦。最終周回の古賀志で抜け出したダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)の独走力が冴え渡り、キャリア初勝利をここ宇都宮の地で飾った。
今年で開催25回目、節目のジャパンカップを迎えたのは宇都宮森林公園上空に広がる青空だった。この日の最高気温は20度まで上がり、ロードシーズンを締めくくるにふさわしい絶好のコンディションの中で選手たちがスタートラインに並ぶ。
スタートの1時間前から行われた出走サインでは、このレースで現役から退くクリスティアン・メイヤー(カナダ、オリカ・バイクエクスチェンジ)やシャビエル・ザンディオ(スペイン、チームスカイ)、伊丹健治(キナンサイクリングチーム)らがファンに挨拶。キャノンデール・ドラパックやNIPPOヴィーニファンティーニを先頭に午前10時ちょうど、佐藤栄一宇都宮市長の号砲によって4時間弱のレースが幕開けた。
出走サインのインタビューで「逃げる」宣言をしていた堀孝明(宇都宮ブリッツェン)と11月のツール・ド・おきなわで引退する井上和郎(ブリヂストン・アンカー)が積極的に動き、1周目の古賀志林道を下る頃にはマッティ・ブレシェル(デンマーク)とマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)も加わった4名が抜け出す形に。
奥の平坦路区間でトレック・セガフレードが集団前方に覆い被さるように蓋をしたが、それをこじ開けてベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)と安原大貴(マトリックス・パワータグ)が追走を試みる。2周目の古賀志林道で安原を千切ったヒル一人が3周目突入を前に何とか追いつき、先頭5名をメイン集団が追いかける「定型」が完成した。
逃げグループに強力なブレシェルが加わったことを考慮してか、当初のタイム差は2分半で頭打ち。トレック・セガフレードはエウジェニオ・アラファチ(イタリア)を、オリカ・バイクエクスチェンジは引退レースのメイヤーを、チームスカイは雨の2013年大会で5着に入ったダビ・ロペスガルシア(スペイン)を牽引役として集団前に配置する。ブレシェルを逃げに乗せたキャノンデール・ドラパックは中盤まで集団中ほどに位置し、戦力の温存を図った。
エスケープ内では山岳賞争いが行われ、最初は堀がガルシアとヒルを下して先頭通過し地元宇都宮のファンを盛り上げる。6周目は宣言通りに井上が、9周目と12周目はいずれもガルシアが獲り、この日の表彰台を確保。8周目には序盤のブリッジで力を使ったヒルが、11周目には井上が脱落し、先頭グループの戦力が削がれていく。
レースが動いたのは残り2周を切ってから。「昨日のミーティングで終盤にチームで仕掛けると決めていた。アタックが掛かったときに後手に回らないようにした」と増田成幸が振り返る通り、コントロールライン通過と同時に宇都宮ブリッツェンが組織立ったペースアップを敢行する。
昨年同様の動きで逃げグループは飲み込まれ、会場は大きく盛り上がったがしかし、TOJ覇者オスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)が切れ味鋭いアタックで被せていく。
プジョルの加速で集団は形を無くし、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)とロバート・パワー(オーストラリア)のオリカ・バイクエクスチェンジコンビとシモーネ・ペティッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)が合流する。バラバラと追走するメンバーに対して数秒差でKOMを通過したが、決定的な逃げに繋げるにはリードが足りなかった。
続いてピエルパオロ・デネグリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が田野町交差点後の登りでペースアップしたが、集団を引き延ばしたのみに留まる。残り1周回に入る直前でマヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)がアタックし、新城幸也(ランプレ・メリダ)らが追従したが、やはり抜け出しは決まらない。
ブリッツェン雨澤&増田、ブリヂストン・アンカー西園&初山、そして新城と5名の日本人選手を含む26名が一塊となって最終周回の鐘を聞いた。
コントロールライン手前で抜け出したペティッリをキャッチすると、クリストファー・シェルピング(ノルウェー、キャノンデール・ドラパック)がダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)を連れて猛然と加速。登りで解き放たれたヴィッレッラは渾身のアタックで追いすがるユールイェンセンとマヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)を引き千切り独走に持ち込んだ。
このアタックで集団は割れ、逃げるヴィッレッラをプジョル&ベンジャミン・プラデス(スペイン)のチーム右京コンビやパワーズとユールイェンセン(オリカ・バイクエクスチェンジ)、モーリ、アレックス・ピータース(イギリス、チームスカイ)らが追走する形に。KOMでのヴィッレッラのリードは十分と言えなかったが、複数メンバー優位な下りと平坦でもむしろタイム差を稼ぎ出す。
10月1日に開催されたロンバルディアで5位に入ったヴィッレッラの実力は本物だった。
最後の短い登りでもその勢いは衰えず、十分なリードを守ったまま大観衆が迎えるフィニッシュエリアへとヴィッレッラは到達。パワーの単独追走は6秒届かず、ヴィッレッラのキャリア初勝利がここ宇都宮で決まった。
「先頭集団に最終盤まで残ってアタックするのが優勝できる唯一の方法だった。1週間前にコースマップを見て、仕掛けるなら古賀志しかないと考えていた。最後はとにかく踏み続けた」と、たどたどしい英語でインタビューに答えたヴィッレッラは1991年生まれの25歳。
「この2年間は右膝の怪我で、難しい時間を過ごした。今シーズンもジロ・デ・イタリア出場を逃したが、ツール・ド・ポローニュから調子が上向き、ブエルタに出場。ロンバルディアではまぁまぁの結果で終えられた。そして、このジャパンカップで勝つことができた。現在とても調子が良いだけに、これでシーズンが終わってしまうのが残念だ。」と加えた。
スリップストリームスポーツとしては2014年のネイサン・ハース(オーストラリア、当時ガーミン・シャープ)に続く勝利。アジア選手最高順位は43秒遅れの9位に入った新城だった。全日本チャンピオンの初山翔(ブリヂストン・アンカー)は16位、増田は19位に入った。
ジャパンカップ2016結果
1位 ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 3h46’43”
2位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ) +06”
3位 ロバート・パワー(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14”
5位 オスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)
6位 アレックス・ピータース(イギリス、チームスカイ)
7位 ベンジャミン・プラデス(スペイン、チーム右京)
8位 ハビエル・メヒヤス(スペイン、チーム・ノボ ノルディスク) +17”
9位 新城幸也(ランプレ・メリダ) +43”
10位 ジョセフ・ロスコプフ(アメリカ、BMCレーシング)
11位 キャメロン・ベイリー (オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)
12位 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストン・アンカー) +45”
13位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) +48”
14位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’19”
15位 ピエルパオロ・デネグリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
16位 初山翔(ブリヂストン・アンカー)
17位 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)
18位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
19位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
20位 イウリィ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
山岳賞
1回目 堀孝明(宇都宮ブリッツェン)
2回目 井上和郎(ブリヂストン・アンカー)
3回目 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)
4回目 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)
アジア最優秀選手賞
新城幸也(ランプレ・メリダ)
U23最優秀選手賞
ロバート・パワー(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Yuya.Yamamoto, Hideaki TAKAGI, Kei Tsuji
今年で開催25回目、節目のジャパンカップを迎えたのは宇都宮森林公園上空に広がる青空だった。この日の最高気温は20度まで上がり、ロードシーズンを締めくくるにふさわしい絶好のコンディションの中で選手たちがスタートラインに並ぶ。
スタートの1時間前から行われた出走サインでは、このレースで現役から退くクリスティアン・メイヤー(カナダ、オリカ・バイクエクスチェンジ)やシャビエル・ザンディオ(スペイン、チームスカイ)、伊丹健治(キナンサイクリングチーム)らがファンに挨拶。キャノンデール・ドラパックやNIPPOヴィーニファンティーニを先頭に午前10時ちょうど、佐藤栄一宇都宮市長の号砲によって4時間弱のレースが幕開けた。
出走サインのインタビューで「逃げる」宣言をしていた堀孝明(宇都宮ブリッツェン)と11月のツール・ド・おきなわで引退する井上和郎(ブリヂストン・アンカー)が積極的に動き、1周目の古賀志林道を下る頃にはマッティ・ブレシェル(デンマーク)とマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)も加わった4名が抜け出す形に。
奥の平坦路区間でトレック・セガフレードが集団前方に覆い被さるように蓋をしたが、それをこじ開けてベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)と安原大貴(マトリックス・パワータグ)が追走を試みる。2周目の古賀志林道で安原を千切ったヒル一人が3周目突入を前に何とか追いつき、先頭5名をメイン集団が追いかける「定型」が完成した。
逃げグループに強力なブレシェルが加わったことを考慮してか、当初のタイム差は2分半で頭打ち。トレック・セガフレードはエウジェニオ・アラファチ(イタリア)を、オリカ・バイクエクスチェンジは引退レースのメイヤーを、チームスカイは雨の2013年大会で5着に入ったダビ・ロペスガルシア(スペイン)を牽引役として集団前に配置する。ブレシェルを逃げに乗せたキャノンデール・ドラパックは中盤まで集団中ほどに位置し、戦力の温存を図った。
エスケープ内では山岳賞争いが行われ、最初は堀がガルシアとヒルを下して先頭通過し地元宇都宮のファンを盛り上げる。6周目は宣言通りに井上が、9周目と12周目はいずれもガルシアが獲り、この日の表彰台を確保。8周目には序盤のブリッジで力を使ったヒルが、11周目には井上が脱落し、先頭グループの戦力が削がれていく。
レースが動いたのは残り2周を切ってから。「昨日のミーティングで終盤にチームで仕掛けると決めていた。アタックが掛かったときに後手に回らないようにした」と増田成幸が振り返る通り、コントロールライン通過と同時に宇都宮ブリッツェンが組織立ったペースアップを敢行する。
昨年同様の動きで逃げグループは飲み込まれ、会場は大きく盛り上がったがしかし、TOJ覇者オスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)が切れ味鋭いアタックで被せていく。
プジョルの加速で集団は形を無くし、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)とロバート・パワー(オーストラリア)のオリカ・バイクエクスチェンジコンビとシモーネ・ペティッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)が合流する。バラバラと追走するメンバーに対して数秒差でKOMを通過したが、決定的な逃げに繋げるにはリードが足りなかった。
続いてピエルパオロ・デネグリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が田野町交差点後の登りでペースアップしたが、集団を引き延ばしたのみに留まる。残り1周回に入る直前でマヌエル・クインツィアート(イタリア、BMCレーシング)がアタックし、新城幸也(ランプレ・メリダ)らが追従したが、やはり抜け出しは決まらない。
ブリッツェン雨澤&増田、ブリヂストン・アンカー西園&初山、そして新城と5名の日本人選手を含む26名が一塊となって最終周回の鐘を聞いた。
コントロールライン手前で抜け出したペティッリをキャッチすると、クリストファー・シェルピング(ノルウェー、キャノンデール・ドラパック)がダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)を連れて猛然と加速。登りで解き放たれたヴィッレッラは渾身のアタックで追いすがるユールイェンセンとマヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)を引き千切り独走に持ち込んだ。
このアタックで集団は割れ、逃げるヴィッレッラをプジョル&ベンジャミン・プラデス(スペイン)のチーム右京コンビやパワーズとユールイェンセン(オリカ・バイクエクスチェンジ)、モーリ、アレックス・ピータース(イギリス、チームスカイ)らが追走する形に。KOMでのヴィッレッラのリードは十分と言えなかったが、複数メンバー優位な下りと平坦でもむしろタイム差を稼ぎ出す。
10月1日に開催されたロンバルディアで5位に入ったヴィッレッラの実力は本物だった。
最後の短い登りでもその勢いは衰えず、十分なリードを守ったまま大観衆が迎えるフィニッシュエリアへとヴィッレッラは到達。パワーの単独追走は6秒届かず、ヴィッレッラのキャリア初勝利がここ宇都宮で決まった。
「先頭集団に最終盤まで残ってアタックするのが優勝できる唯一の方法だった。1週間前にコースマップを見て、仕掛けるなら古賀志しかないと考えていた。最後はとにかく踏み続けた」と、たどたどしい英語でインタビューに答えたヴィッレッラは1991年生まれの25歳。
「この2年間は右膝の怪我で、難しい時間を過ごした。今シーズンもジロ・デ・イタリア出場を逃したが、ツール・ド・ポローニュから調子が上向き、ブエルタに出場。ロンバルディアではまぁまぁの結果で終えられた。そして、このジャパンカップで勝つことができた。現在とても調子が良いだけに、これでシーズンが終わってしまうのが残念だ。」と加えた。
スリップストリームスポーツとしては2014年のネイサン・ハース(オーストラリア、当時ガーミン・シャープ)に続く勝利。アジア選手最高順位は43秒遅れの9位に入った新城だった。全日本チャンピオンの初山翔(ブリヂストン・アンカー)は16位、増田は19位に入った。
ジャパンカップ2016結果
1位 ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 3h46’43”
2位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ) +06”
3位 ロバート・パワー(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ) +14”
5位 オスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)
6位 アレックス・ピータース(イギリス、チームスカイ)
7位 ベンジャミン・プラデス(スペイン、チーム右京)
8位 ハビエル・メヒヤス(スペイン、チーム・ノボ ノルディスク) +17”
9位 新城幸也(ランプレ・メリダ) +43”
10位 ジョセフ・ロスコプフ(アメリカ、BMCレーシング)
11位 キャメロン・ベイリー (オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)
12位 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストン・アンカー) +45”
13位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) +48”
14位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’19”
15位 ピエルパオロ・デネグリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
16位 初山翔(ブリヂストン・アンカー)
17位 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)
18位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
19位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
20位 イウリィ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
山岳賞
1回目 堀孝明(宇都宮ブリッツェン)
2回目 井上和郎(ブリヂストン・アンカー)
3回目 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)
4回目 マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)
アジア最優秀選手賞
新城幸也(ランプレ・メリダ)
U23最優秀選手賞
ロバート・パワー(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Yuya.Yamamoto, Hideaki TAKAGI, Kei Tsuji
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