UCIワールドツアー最終戦、イル・ロンバルディアが10月1日(土)にイタリア北部で開催される。2017年のUCIワールドツアーライセンスの行方にも響く「落ち葉のクラシック」の見どころをチェックしておこう。



登坂力を要求する本格山岳コース ベルガモアルタの石畳坂で決着

イル・ロンバルディア2016イル・ロンバルディア2016 image:RCS Sport今年で開催110回目を迎えるイル・ロンバルディア(ジロ・ディ・ロンバルディア)。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。例年決まって秋に開催されることから、「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」と呼び親しまれている。

雨の上がったロンバルディア州の山岳地帯を走る雨の上がったロンバルディア州の山岳地帯を走る photo:Tim de Waeleレースの舞台となるのはレース名の通りイタリア北部のロンバルディア州。2016年大会はスタート地点とフィニッシュ地点が逆転。コモから山岳地帯を抜けてベルガモでフィニッシュを迎える241kmコースが用意された。

イル・ロンバルディア2016イル・ロンバルディア2016 image:RCS Sport例年コース後半に登場し、アタック合戦の火蓋が切って落とされる名物マドンナ・デル・ギザッロの登りはレース前半に移動。まだまだフィニッシュまで180km近く残したタイミングで登場するため、今年は勝負ポイントにはならないだろう。

フィニッシュ手前に登場するベルガモアルタの石畳坂フィニッシュ手前に登場するベルガモアルタの石畳坂 photo:Tim de Waeleコースの後半はまさにアップダウンしかない。ヴァリコ・ディ・ヴァルカヴァ(標高1336m/長さ11.6km/平均8%/最大17%)を皮切りに、サンアントニオ・アバンドナート(標高982m/長さ6.5km/平均8.9%/最大15%)、ミラゴロ・サンサルヴァトーレ(標高943m/長さ8.7km/平均7%/最大11%)、セルヴィーノ(標高948m/長さ6.9km/平均5.4%/最大9%)と、しっかりと高低差のある本格的な山岳が連続する。

これらの山岳でアタックが繰り返され、集団の人数は絞り込まれて行く。残り29km地点のセルヴィーノは比較的難易度が低いため、セレクションをかけたいチームは早め早めに動いてくるだろう。目を疑うような急勾配の登りは登場しないが、獲得標高差が4,400mに達する難コース。しかもレース当日は降雨が予想されており、厳しいサバイバルレースが予想される。

最後に登場するのが、残り4.5kmから始まるベルガモアルタの登りだ。丘の上に佇むベルガモ旧市街に向かう道は細く、荒い石畳が敷かれている。平均勾配7.9%/最大勾配12%の登りは残り3.5km地点でピークを迎え、そこから道幅のあるハイスピードダウンヒルと短い平坦区間を経てフィニッシュ。

同じレイアウトが設定された2014年大会では、登りアタックが決まらずに最後は9名の勝負に。残り500mでロングスパートを成功させたダニエル・マーティン(アイルランド、当時ガーミン・シャープ)が勝利している。



イル・ロンバルディア2016 フィニッシュレイアウトイル・ロンバルディア2016 フィニッシュレイアウト image:RCS Sportイル・ロンバルディア2016 残り5km高低図イル・ロンバルディア2016 残り5km高低図 image:RCS Sport


2017年度のUCIワールドツアーライセンスを占う最終戦

ディメンションデータのエースを担うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)ディメンションデータのエースを担うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー) photo:Tim de Waeleイル・ロンバルディアは2016年のUCIワールドツアー最終戦。つまりこのロンバルディアの結果でUCIワールドツアーのランキングが確定する。個人ランキングトップのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)は出場しないが、同ランキング2位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)と同ランキング3位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)も同様に欠場するため、サガンの初UCIワールドツアーシリーズ制覇は確定している。

ロンバルディアで注目が集まるのは個人ランキングではなくチームランキングだ。2017年度はUCIワールドチームの上限が現行のルールよりも1チーム少ない17チームとなるため、ティンコフとIAMサイクリングの2チームが解散するにも関わらず、ランプレ・メリダのライセンスを引き継ぐプロジェクトTJスポーツと、昇格を目指すボーラ・ハンスグローエ(現ボーラ・アルゴン18)、新規発足するバーレーン・メリダ、そして現在UCIワールドツアーチームランキング最下位のディメンションデータの4チームが3枠を争う形となる。

特にUCIワールドツアー残留を目指すディメンションデータにとってはロンバルディアでのポイント獲得が不可欠。チームランキング17位のジャイアント・アルペシンもポイントを稼いでおきたいところだ。



UCIワールドツアー 個人ランキング(エネコツアー終了時)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)         660pts
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)         609pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)         564pts
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)      428pts
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 420pts

UCIワールドツアー チームランキング(エネコツアー終了時)
14位 ランプレ・メリダ        442pts
15位 AG2Rラモンディアール      418pts
16位 IAMサイクリング         418pts
17位 ジャイアント・アルペシン    415pts
18位 ディメンションデータ      290pts

イル・ロンバルディアでの獲得ポイント
1位100pts, 2位80pts, 3位70pts, 4位60pts, 5位50pts, 6位40pts, 7位30pts, 8位20pts, 9位10pts, 10位pts


シーズン最後のビッグタイトルを狙うクライマーが勢揃い

ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleディフェンディングチャンピオンのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は欠場するが、アスタナはファビオ・アル(イタリア)と直前のミラノ〜トリノで優勝したミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア)を揃える。

¥エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)¥エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji未だかつてコロンビア人によるロンバルディア制覇は果たされていないが、1週間前のジロ・デッレミリアで圧倒的な登坂力を披露したエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)は優勝候補の筆頭。オーストラリアチームからはサイモン・イェーツ(イギリス)も出場する。また、ツール・ド・フランス総合2位のロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)はジロ・デッレミリアで2位の成績を残している。

グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:TDWsport/Kei Tsujiロペスモレーノとチャベスの他にも、コロンビアンクライマーとしてはリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)やヤルリンソン・パンタノ(IAMサイクリング)、ダルウィン・アタプマ(BMCレーシング)らが出場。例年以上に登坂力が要求される今年のコースはコロンビア勢に追い風だ。

ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) photo:CorVosフィリップ・ジルベール(ベルギー)とグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)という二大クラシックレーサーを揃えるBMCレーシングは強力だ。両者が山岳バトルに生き残れない場合はアタプマやダミアーノ・カルーゾ(イタリア)がエースを担う可能性も。

ダニエル・マーティン(アイルランド)とジュリアン・アラフィリップ(フランス)を揃えるエティックス・クイックステップや、ルイ・コスタ(ポルトガル)とディエゴ・ウリッシ(イタリア)のランプレ・メリダ、ミケル・ランダ(スペイン)とワウト・ポエルス(オランダ)のチームスカイは数の利を生かして戦略的に動いてくるだろう。

このロンバルディアでシーズンを締めくくる予定だったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)はインフルエンザによって欠場を発表している。スペイン勢としてはアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)やイゴール・アントン(ディメンションデータ)に注目。勝利が欲しいディメンションデータからはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)も出場する。

30年以上にわたってロンバルディアの勝利から遠ざかっているオランダからはトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)やロベルト・ヘーシンク(ロットNLユンボ)、バウク・モレマ(トレック・セガフレード)らが出場する。モレマのチームメイトであるライダー・ヘシェダル(カナダ)とフランク・シュレク(ルクセンブルク)にとってはこのロンバルディアが引退レースとなる。

日本からは、ジロ・デッレミリアから始まるイタリア5連戦を走った山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)が出場。今シーズンすでにUCIレースを11,900km以上、日数にして75日間(日本人最多)走っている山本が2年連続2度目のロンバルディアに挑む。

text:Kei Tsuji

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