2016/09/02(金) - 02:40
バスクファンに覆われた2級山岳エル・ビベロを集団内で乗り越えたオリカ・バイクエクスチェンジのイェンス・ケウケレールがスプリント勝利。妻子が見守る中でグランツール初勝利をつかんだ。
2年連続でブエルタはバスク州に足を踏み入れる。カンタブリア州のロス・コラレス・デ・ブエルナから内陸部を東に向かい、まずは1級山岳ラス・アリサス峠(10km/平均6%)をクリア。断続的なアップダウンをこなした後、バスク最大の都市ビルバオを中心にした周回コースに入る。合計2回通過する2級山岳エル・ビベロ(4.2km/平均8.5%)には多くのバスクファンが駆けつけた。
気温30度を超える暑さの中、この日も多くの選手が入念なウォーミングアップを施してスタートラインに並ぶ。アタックに次ぐアタックの末にフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)や新城幸也(ランプレ・メリダ)を含む逃げグループが形成されるも、タイム差は22秒で頭打ち。逃げが吸収されると再びアタック合戦が再開される。
結局、逃げを決めるアタックは49km地点の1級山岳ラス・アリサス峠までもつれ込んだ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)までアタックに加わる本格的な登坂勝負に。モビスターとチームスカイが互いに攻撃し合いながら登りを進む。
すると、標高675mの頂上が近づいたところでピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)やダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)、ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)ら7名が先行を開始。そこで1時間以上にわたる高速アタック合戦は終わりを告げた。
逃げグループの中で総合成績が最も良いのはケノーで、マイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)から6分32秒遅れ。チームスカイが2名を送り込んだ逃げを快く思わないモビスターがメイン集団を率い、逃げグループのリードを2分に抑え込んだ。
先頭ではアタプマが落車で脱落。モビスターのコントロールによってタイム差が2分を割り込む中、先頭グループはビルバオの街中を抜けて1回目の2級山岳エル・ビベロへ。その後もタイム差は縮まり続け、フィニッシュまで18kmを残した2回目の2級山岳エル・ビベロ登坂口で逃げは吸収された。
この日最後の難所である2級山岳エル・ビベロの登りが始まるとすぐにドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)がアタックし、すぐさまメイン集団から45秒ものタイム差を奪うことに成功する。続いてジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)やアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、アスタナ)が飛び出すも吸収される。
勾配が増したところでアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がアタックしたが集団が完全に分裂するには至らず。コントロールを失った集団からは断続的にアタックがかかり、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)やヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が追走グループを形成したが、先頭デヴェナインスの背中には届かなかった。
約40名に絞られた状態で2級山岳エル・ビベロの頂上をクリアしたメイン集団は、アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)らが牽引してビルバオの町を目指す。メイン集団はまず追走グループを捉え、ビルバオ市内に入ったところで先頭デヴェナインスを射程圏内に。結局残り1km地点でデヴェナインスは捉えられ、最終的に集団に残った42名によるスプリント勝負が始まった。
「前を塞がれてスプリントできないような状況だけは避けたかった」というケウケレールが、互いに牽制し合う集団先頭から残り250mで加速する。ほぼ同時にスプリントを開始したマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)は伸びずにケウケレールが先行。ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)やクリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)も対抗したが届かない。先頭でスプリントを続けたケウケレールが先着した。
「もし最後まで集団に残っているならスプリントで勝利を狙えと監督に言われていた」というケウケレールがグランツール初勝利をマーク。石畳系クラシックも得意とし、主にワンデーレースを中心に成績を残していた27歳がオリカ・バイクエクスチェンジに今シーズン20勝目をもたらした。
「選手全員が苦しんでいる日に自分だけ調子が良かったわけじゃない。でもなんとか登りを乗り越えて勝負に残ることができた。4週間前に父親になったばかりで、今日はガールフレンドと息子が会場に来ていた。だからこの勝利は特別だ」と、チャンスをものにしたケウケレールは語る。
総合上位陣は同タイムでフィニッシュし、タイム差や順位に変動は起こらず。キンタナがクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に対して54秒のリードを保ったままピレネーに向かう。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第12ステージ結果
1位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・バイクエクスチェンジ) 4h31’43”
2位 マキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
5位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
6位 ペーリョ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
10位 マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)
68位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +7’41”
124位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +19’25”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 42h21’48”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +54”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1’05”
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +2’34”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +3’08”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +3’09”
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +3’25”
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) +3’34”
9位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’45”
10位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +3’56”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 89pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 65pts
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 62pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 21pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 20pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 19pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 5pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 13pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 19pts
チーム総合成績
1位 モビスター 139h45’22”
2位 チームスカイ +4’46”
3位 キャノンデール・ドラパック +8’51”
敢闘賞
ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)
text&photo:Kei Tsuji in Bilbao, Spain
2年連続でブエルタはバスク州に足を踏み入れる。カンタブリア州のロス・コラレス・デ・ブエルナから内陸部を東に向かい、まずは1級山岳ラス・アリサス峠(10km/平均6%)をクリア。断続的なアップダウンをこなした後、バスク最大の都市ビルバオを中心にした周回コースに入る。合計2回通過する2級山岳エル・ビベロ(4.2km/平均8.5%)には多くのバスクファンが駆けつけた。
気温30度を超える暑さの中、この日も多くの選手が入念なウォーミングアップを施してスタートラインに並ぶ。アタックに次ぐアタックの末にフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)や新城幸也(ランプレ・メリダ)を含む逃げグループが形成されるも、タイム差は22秒で頭打ち。逃げが吸収されると再びアタック合戦が再開される。
結局、逃げを決めるアタックは49km地点の1級山岳ラス・アリサス峠までもつれ込んだ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)までアタックに加わる本格的な登坂勝負に。モビスターとチームスカイが互いに攻撃し合いながら登りを進む。
すると、標高675mの頂上が近づいたところでピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)やダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)、ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)ら7名が先行を開始。そこで1時間以上にわたる高速アタック合戦は終わりを告げた。
逃げグループの中で総合成績が最も良いのはケノーで、マイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)から6分32秒遅れ。チームスカイが2名を送り込んだ逃げを快く思わないモビスターがメイン集団を率い、逃げグループのリードを2分に抑え込んだ。
先頭ではアタプマが落車で脱落。モビスターのコントロールによってタイム差が2分を割り込む中、先頭グループはビルバオの街中を抜けて1回目の2級山岳エル・ビベロへ。その後もタイム差は縮まり続け、フィニッシュまで18kmを残した2回目の2級山岳エル・ビベロ登坂口で逃げは吸収された。
この日最後の難所である2級山岳エル・ビベロの登りが始まるとすぐにドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)がアタックし、すぐさまメイン集団から45秒ものタイム差を奪うことに成功する。続いてジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)やアンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、アスタナ)が飛び出すも吸収される。
勾配が増したところでアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がアタックしたが集団が完全に分裂するには至らず。コントロールを失った集団からは断続的にアタックがかかり、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)やヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が追走グループを形成したが、先頭デヴェナインスの背中には届かなかった。
約40名に絞られた状態で2級山岳エル・ビベロの頂上をクリアしたメイン集団は、アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)らが牽引してビルバオの町を目指す。メイン集団はまず追走グループを捉え、ビルバオ市内に入ったところで先頭デヴェナインスを射程圏内に。結局残り1km地点でデヴェナインスは捉えられ、最終的に集団に残った42名によるスプリント勝負が始まった。
「前を塞がれてスプリントできないような状況だけは避けたかった」というケウケレールが、互いに牽制し合う集団先頭から残り250mで加速する。ほぼ同時にスプリントを開始したマキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)は伸びずにケウケレールが先行。ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)やクリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)も対抗したが届かない。先頭でスプリントを続けたケウケレールが先着した。
「もし最後まで集団に残っているならスプリントで勝利を狙えと監督に言われていた」というケウケレールがグランツール初勝利をマーク。石畳系クラシックも得意とし、主にワンデーレースを中心に成績を残していた27歳がオリカ・バイクエクスチェンジに今シーズン20勝目をもたらした。
「選手全員が苦しんでいる日に自分だけ調子が良かったわけじゃない。でもなんとか登りを乗り越えて勝負に残ることができた。4週間前に父親になったばかりで、今日はガールフレンドと息子が会場に来ていた。だからこの勝利は特別だ」と、チャンスをものにしたケウケレールは語る。
総合上位陣は同タイムでフィニッシュし、タイム差や順位に変動は起こらず。キンタナがクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に対して54秒のリードを保ったままピレネーに向かう。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第12ステージ結果
1位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・バイクエクスチェンジ) 4h31’43”
2位 マキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
5位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
6位 ペーリョ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)
10位 マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)
68位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +7’41”
124位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +19’25”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 42h21’48”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +54”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1’05”
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +2’34”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +3’08”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +3’09”
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +3’25”
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) +3’34”
9位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’45”
10位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +3’56”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 89pts
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 65pts
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 62pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 21pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 20pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 19pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 5pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 13pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 19pts
チーム総合成績
1位 モビスター 139h45’22”
2位 チームスカイ +4’46”
3位 キャノンデール・ドラパック +8’51”
敢闘賞
ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)
text&photo:Kei Tsuji in Bilbao, Spain
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