2009/10/25(日) - 16:27
アジア最大のワンディレース第18回ジャパンカップ・サイクルロードレースは、近年まれに見る激しい山岳決戦が繰り広げられた。第18代勝者に輝いたのは、果敢に攻撃を仕掛けたクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)。若き山岳スペシャリストが今シーズン初勝利を飾った。
選手たちを迎えたのは秋の曇り空。気温15〜18度の冷たい空気を切り裂いて、総勢63名の選手たちが古賀志林道の山岳周回コースに繰り出した。
ヨーロッパチームがコントロールするメイン集団から1周目で飛び出したのは、山本雅道(チームブリヂストン・アンカー)、畑中勇介(シマノレーシング)、菊池誠晃(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)、小森亮平(ジャパンナショナルチーム)、廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)の5名。
3回目の古賀志林道で逃げグループ内に落車が発生するなどのトラブルに見舞われながらも、5名の逃げは最大2分30秒のリードを稼ぎ出すことに成功。3周毎に設定された山岳賞は、畑中、廣瀬、小森が獲得した。
地元宇都宮の声援に応えるように奮闘した廣瀬だったが、やがて先頭から脱落してしまう。メイン集団をコントロールするヨーロッパチームは容赦なく先頭グループのリードを食いつぶし、ゴールまで3周を残して集団が本格的なペースアップを開始するとエスケープは終了。ゴールまで2周半を残して、レースは加速度的に慌ただしさを増した。
まず動いたのは、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)やイヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)を含む4名。断続的なアタック合戦によって集団は大きく人数を減らし、残り2周回に突入する頃には先頭は16名が飛び出した状態に。
この先頭グループに残った日本人選手は新城幸也(Bboxブイグテレコム)、宮沢崇史(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)、土井雪広(ジャパンナショナルチーム)の3名。逆にイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)やグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)の姿は無かった。
やがて古賀志林道の上りでファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)が攻撃的なペースアップを図ると、先頭は一気に7名まで縮小。ケースデパーニュは3名(ロドリゲス、ラストラス、モレーノ)を残した。
追走した新城とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)は何とか最終周回突入前の鶴カントリーの上りで先頭にジョイン。しかし新城は追走に力を使ったため、カウンターアタックで飛び出したセレンセンとパブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)の動きには反応出来なかった。
最後の古賀志林道の上りに突入したセレンセンとラストラス。ロドリゲスやコーボを含む追走グループはこの2名を捉えきれず、観客が詰めかけた上りでもう一段加速したセレンセンが独走を開始し、単独で頂上を越えた。
残り8km。後方にチームメイトはいない。セレンセンの選択肢はただ一つ。ゴールまで踏み抜くこと。「後続とのタイム差が小さい苦しい状況。ラスト5kmはとにかく全力で踏み抜いた」。ゴールが近づいて牽制状態に入った追走グループを尻目に、セレンセンが2位以下を24秒引き離してゴールまで逃げ切った。
2007年にチームCSC(現サクソバンク)に合流し、初年度のブエルタ・ア・エスパーニャで総合19位に入るなど、山岳スペシャリストとして頭角を現したセレンセン。昨年はドーフィネ・リベレの山岳ステージで優勝を飾り、北京五輪ロードレース12位、ロード世界選手権13位。今シーズンは10月のジロ・デッレミリアで8位に入るなど存在感を見せたが、勝利数はゼロ。最後の最後でシーズン初勝利を手にした。
2位に入ったのは、3名を残しながらもその利点を発揮出来なかったケースデパーニュのダニエル・モレーノ(スペイン)。「終盤にかけてチーム内の連携が上手く取れていなかった」と敗因を語る。なお、モレーノは来年オメガファーマ・ロット(現サイレンス・ロット)への移籍が決まっている。
バッソの不調によって戦略が狂ってしまったリクイガスは、“もう一人のイヴァン”サンタロミータを3位に送り込むことに成功している。サンタロミータは2007年のツール・ド・ジョージアで総合10位に入ったクライマー。今回の活躍により、チーム内の評価を大きく上げることに成功した。
日本人選手として唯一トップ戦線に加わっていた新城だったが、最終周回で失速。ゴール後新城は「最後の古賀志林道の上りで脚がいっぱいになってしまいました。沢山の応援ありがとうございました。来年もツール・ド・フランスに出場出来るように頑張ります」とコメントを残している。日本人選手としては、最終周回で追い上げた鈴木真理(シマノレーシング)がラーションをスプリントで下し、日本人最高位の9位に入った。
ジャパンカップ2009結果
1位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 4h06'19"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、ケースデパーニュ) +24"
3位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)
4位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)
5位 パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ) +40"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ) +59"
7位 ヴァレリオ・アニョリ(イタリア、リクイガス) +1'25"
8位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)
9位 鈴木真理(日本、シマノレーシング) +2'08"
10位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)
山岳賞
3周目 畑中勇介(日本、シマノレーシング)
6周目 廣瀬佳正(日本、宇都宮ブリッツェン)
9周目 小森亮平(日本、ジャパンナショナルチーム)
アジア最優秀選手賞
鈴木真理(日本、シマノレーシング)
U23最優秀選手賞
伊丹健治(日本、チームブリヂストン・アンカー)
敢闘賞
小森亮平(日本、ジャパンナショナルチーム)
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano
選手たちを迎えたのは秋の曇り空。気温15〜18度の冷たい空気を切り裂いて、総勢63名の選手たちが古賀志林道の山岳周回コースに繰り出した。
ヨーロッパチームがコントロールするメイン集団から1周目で飛び出したのは、山本雅道(チームブリヂストン・アンカー)、畑中勇介(シマノレーシング)、菊池誠晃(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)、小森亮平(ジャパンナショナルチーム)、廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)の5名。
3回目の古賀志林道で逃げグループ内に落車が発生するなどのトラブルに見舞われながらも、5名の逃げは最大2分30秒のリードを稼ぎ出すことに成功。3周毎に設定された山岳賞は、畑中、廣瀬、小森が獲得した。
地元宇都宮の声援に応えるように奮闘した廣瀬だったが、やがて先頭から脱落してしまう。メイン集団をコントロールするヨーロッパチームは容赦なく先頭グループのリードを食いつぶし、ゴールまで3周を残して集団が本格的なペースアップを開始するとエスケープは終了。ゴールまで2周半を残して、レースは加速度的に慌ただしさを増した。
まず動いたのは、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)やイヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)を含む4名。断続的なアタック合戦によって集団は大きく人数を減らし、残り2周回に突入する頃には先頭は16名が飛び出した状態に。
この先頭グループに残った日本人選手は新城幸也(Bboxブイグテレコム)、宮沢崇史(EQA・梅丹本舗・グラファイトデザイン)、土井雪広(ジャパンナショナルチーム)の3名。逆にイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)やグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)の姿は無かった。
やがて古賀志林道の上りでファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)が攻撃的なペースアップを図ると、先頭は一気に7名まで縮小。ケースデパーニュは3名(ロドリゲス、ラストラス、モレーノ)を残した。
追走した新城とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)は何とか最終周回突入前の鶴カントリーの上りで先頭にジョイン。しかし新城は追走に力を使ったため、カウンターアタックで飛び出したセレンセンとパブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ)の動きには反応出来なかった。
最後の古賀志林道の上りに突入したセレンセンとラストラス。ロドリゲスやコーボを含む追走グループはこの2名を捉えきれず、観客が詰めかけた上りでもう一段加速したセレンセンが独走を開始し、単独で頂上を越えた。
残り8km。後方にチームメイトはいない。セレンセンの選択肢はただ一つ。ゴールまで踏み抜くこと。「後続とのタイム差が小さい苦しい状況。ラスト5kmはとにかく全力で踏み抜いた」。ゴールが近づいて牽制状態に入った追走グループを尻目に、セレンセンが2位以下を24秒引き離してゴールまで逃げ切った。
2007年にチームCSC(現サクソバンク)に合流し、初年度のブエルタ・ア・エスパーニャで総合19位に入るなど、山岳スペシャリストとして頭角を現したセレンセン。昨年はドーフィネ・リベレの山岳ステージで優勝を飾り、北京五輪ロードレース12位、ロード世界選手権13位。今シーズンは10月のジロ・デッレミリアで8位に入るなど存在感を見せたが、勝利数はゼロ。最後の最後でシーズン初勝利を手にした。
2位に入ったのは、3名を残しながらもその利点を発揮出来なかったケースデパーニュのダニエル・モレーノ(スペイン)。「終盤にかけてチーム内の連携が上手く取れていなかった」と敗因を語る。なお、モレーノは来年オメガファーマ・ロット(現サイレンス・ロット)への移籍が決まっている。
バッソの不調によって戦略が狂ってしまったリクイガスは、“もう一人のイヴァン”サンタロミータを3位に送り込むことに成功している。サンタロミータは2007年のツール・ド・ジョージアで総合10位に入ったクライマー。今回の活躍により、チーム内の評価を大きく上げることに成功した。
日本人選手として唯一トップ戦線に加わっていた新城だったが、最終周回で失速。ゴール後新城は「最後の古賀志林道の上りで脚がいっぱいになってしまいました。沢山の応援ありがとうございました。来年もツール・ド・フランスに出場出来るように頑張ります」とコメントを残している。日本人選手としては、最終周回で追い上げた鈴木真理(シマノレーシング)がラーションをスプリントで下し、日本人最高位の9位に入った。
ジャパンカップ2009結果
1位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 4h06'19"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、ケースデパーニュ) +24"
3位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)
4位 ファンホセ・コーボ(スペイン、フジ・セルヴェット)
5位 パブロ・ラストラス(スペイン、ケースデパーニュ) +40"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ) +59"
7位 ヴァレリオ・アニョリ(イタリア、リクイガス) +1'25"
8位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)
9位 鈴木真理(日本、シマノレーシング) +2'08"
10位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク)
山岳賞
3周目 畑中勇介(日本、シマノレーシング)
6周目 廣瀬佳正(日本、宇都宮ブリッツェン)
9周目 小森亮平(日本、ジャパンナショナルチーム)
アジア最優秀選手賞
鈴木真理(日本、シマノレーシング)
U23最優秀選手賞
伊丹健治(日本、チームブリヂストン・アンカー)
敢闘賞
小森亮平(日本、ジャパンナショナルチーム)
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano
関連ファイル
JAPANCUP2009_Result.pdf
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