2016/05/26(木) - 14:45
ドロミテからアルプスへの移動を開始したジロ。大都市ミラノの近くにフィニッシュする平坦ステージは地元ファンの落胆に終わった。プロトンがアルプス突入前のひと時の平穏を得たジロ第17ステージの現地レポート。
ジロ第17ステージのスタートを迎えたモルヴェーノの街 photo:Kei Tsuji
ホテル先回り係ではなく久々の現場でウキウキの宮島正典マッサー photo:Kei Tsuji
審判や先導バイクはカワサキ・ニンジャ1000(欧州名:Z1000SX) photo:Kei Tsuji
モルヴェーノ湖の湖畔をスタートする photo:Kei Tsuji
ドロミテでの戦いを終えて、ジロが山岳地帯からロンバルディア平原まで降りてきた。涼しい日々が続いていたので気温25度という暑さが数字以上に酷く鬱陶しいものに感じる(暑い日本よりはマシだとは思うけど)。第17ステージはブレシア、ベルガモ大都市の近くを通るためフィニッシュを含めて観客の数がどっと増えた。沿道には北イタリアの独立を求める北部同盟の旗も目立つ。
スタート地点のモルヴェーノには近くに住む2001年と2003年の総合優勝者ジルベルト・シモーニが家族連れで登場した。2010年のジロでキャリアを終えたシモーニは現在もバイクライドを楽しんでおり、引退選手にありがちな体型の変化もなし。今年は標高5000m以上のヒマラヤ山脈の高地を走るヒマラヤン・ハイエスト・MTBレースにも参戦予定だ。
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が「マリアローザを着てゆっくり走ることのできる最初で最後の1日」と振り返る第17ステージは、前日の荒れた展開が嘘のように平穏に進んだ。どちらかと言うと下り基調だったにもかかわらず平均スピードは43.317km/h。前日の登り基調のコースでの44.270km/hという数字がいかに異常だったかが分かる。
日本から来たファンと記念撮影する山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
近くに住むジルベルト・シモーニが登場 photo:Kei Tsuji
レース前にガゼッタ紙をチェックするのが慣習 photo:Kei Tsuji
スタート直前までヘルメットを被らないボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
観客のタッチに応えるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)はまたもステージ2位。ミラノ出身で「この辺りはよく知っているし、ジュニア時代からレースでも走ったこともある」というローカルライダーは集団の中で最も鋭い加速を見せたが、先行したロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)には届かなかった。
ニッツォロはステージ表彰台の回数(ステージ3位までに入った回数)を13まで伸ばした。ステージ優勝経験はないものの、ステージ2位が9回でステージ3位が4回。それでもなんと上には上がいて、1930年代に走ったピエトロ・リモルディはジロで14回表彰台を経験し、そしてステージ優勝することなく引退している。ニッツォロはそんな不名誉な記録まであと1に迫った。マリアロッサのリードをぐんぐん広げ、表彰台で地元ファンの声援ににこやかな笑顔で応えたニッツォロだが、残るチャンスは最終日トリノしかない。
4ステージ連続でステージ初優勝者が誕生。ここまでクルーゲ、キッテル、グライペルのジャーマンスプリンター3名だけでステージ6勝しており、約3分の1のステージでドイツ人が勝っている計算だ。2010年から2015年までの5年間でドイツ人が手にしたステージ5勝という数字を1大会で上回った。
クルーゲの勝利がIAMサイクリングの存続に少しでも良い影響があると良いが、すでに選手たちは他チームとの交渉を開始している。IAMサイクリングの解散や、ティンコフのスポンサー撤退、バーレーンで新チーム結成など、2017年シーズンは例年以上にストーブリーグが熱くなることが予想される。中でもペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の移籍先が最も注目を集めており、エティックスやBMCレーシング、アスタナの名前が挙がっているが、もちろん正式発表までは何もわからない。
イドロ湖を通過するプロトン photo:Kei Tsuji
拳を突き上げてフィニッシュするロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) photo:Kei Tsuji
悔しさを露わにするジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
ガゼッタ・デッロ・スポルト紙はヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)の不調の原因についてページ数を割いている。リオ五輪ロードレースにも出場するためジロのコンディショニングが上手くいかなかったのではないか、とか、バーレーンで立ち上がる新チームに移籍することが有力視されている中でアスタナで走るモチベーションを失っているのではないか、とか。
今シーズン、クランクの長さを172.5mmから175mmに変更したことも影響しているのではないかとガゼッタ紙。特集の中でパオロ・ベッティーニ氏は「すでに多くのレースで勝利している31歳の選手が今になってクランクの長さを変更するなんて驚いた」とコメントしている。
ドクターやトレーナーも不調の原因を掴めておらず、ニーバリは第18ステージの朝に診察を受ける予定。アスタナのマルティネッリ監督は「彼のキャリアの中で最も苦しい状況かもしれない」と語っているが、本人にはリタイアの考えはなく、トリノまで走り抜く意志を見せている。
ステージ11位のエドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
マリアローザを守ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
ルーポ・ウルフィーを背中に入れてチームバスに戻る photo:Kei Tsuji
text&photo:Kei Tsuji in Cassano d’Adda, Italy
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ドロミテでの戦いを終えて、ジロが山岳地帯からロンバルディア平原まで降りてきた。涼しい日々が続いていたので気温25度という暑さが数字以上に酷く鬱陶しいものに感じる(暑い日本よりはマシだとは思うけど)。第17ステージはブレシア、ベルガモ大都市の近くを通るためフィニッシュを含めて観客の数がどっと増えた。沿道には北イタリアの独立を求める北部同盟の旗も目立つ。
スタート地点のモルヴェーノには近くに住む2001年と2003年の総合優勝者ジルベルト・シモーニが家族連れで登場した。2010年のジロでキャリアを終えたシモーニは現在もバイクライドを楽しんでおり、引退選手にありがちな体型の変化もなし。今年は標高5000m以上のヒマラヤ山脈の高地を走るヒマラヤン・ハイエスト・MTBレースにも参戦予定だ。
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が「マリアローザを着てゆっくり走ることのできる最初で最後の1日」と振り返る第17ステージは、前日の荒れた展開が嘘のように平穏に進んだ。どちらかと言うと下り基調だったにもかかわらず平均スピードは43.317km/h。前日の登り基調のコースでの44.270km/hという数字がいかに異常だったかが分かる。
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ニッツォロはステージ表彰台の回数(ステージ3位までに入った回数)を13まで伸ばした。ステージ優勝経験はないものの、ステージ2位が9回でステージ3位が4回。それでもなんと上には上がいて、1930年代に走ったピエトロ・リモルディはジロで14回表彰台を経験し、そしてステージ優勝することなく引退している。ニッツォロはそんな不名誉な記録まであと1に迫った。マリアロッサのリードをぐんぐん広げ、表彰台で地元ファンの声援ににこやかな笑顔で応えたニッツォロだが、残るチャンスは最終日トリノしかない。
4ステージ連続でステージ初優勝者が誕生。ここまでクルーゲ、キッテル、グライペルのジャーマンスプリンター3名だけでステージ6勝しており、約3分の1のステージでドイツ人が勝っている計算だ。2010年から2015年までの5年間でドイツ人が手にしたステージ5勝という数字を1大会で上回った。
クルーゲの勝利がIAMサイクリングの存続に少しでも良い影響があると良いが、すでに選手たちは他チームとの交渉を開始している。IAMサイクリングの解散や、ティンコフのスポンサー撤退、バーレーンで新チーム結成など、2017年シーズンは例年以上にストーブリーグが熱くなることが予想される。中でもペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の移籍先が最も注目を集めており、エティックスやBMCレーシング、アスタナの名前が挙がっているが、もちろん正式発表までは何もわからない。
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今シーズン、クランクの長さを172.5mmから175mmに変更したことも影響しているのではないかとガゼッタ紙。特集の中でパオロ・ベッティーニ氏は「すでに多くのレースで勝利している31歳の選手が今になってクランクの長さを変更するなんて驚いた」とコメントしている。
ドクターやトレーナーも不調の原因を掴めておらず、ニーバリは第18ステージの朝に診察を受ける予定。アスタナのマルティネッリ監督は「彼のキャリアの中で最も苦しい状況かもしれない」と語っているが、本人にはリタイアの考えはなく、トリノまで走り抜く意志を見せている。
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text&photo:Kei Tsuji in Cassano d’Adda, Italy
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