2016/05/16(月) - 20:12
アメリカ最大のステージレースである、ツアー・オブ・カリフォルニアがスタート。5月15日から22日までの全8ステージ、今年で11回目となるこの大会。サンディエゴで行われたチームプレゼンテーションと第1ステージを、現地の目黒誠子さんが独自の目線でレポートします。
「カリフォルニアブルー」がメインカラーであるツアーオブカリフォルニア。まさにそんな青空と海に囲まれたサンディエゴにビッグネームが集まりました。レース前のプレスカンファレンスが行われたのは、歴史あるサンディエゴ・ヨットクラブ。
過去、ツアー・オブ・カリフォルニアは、サンディエゴを通過したことはあるものの、スタート地点に選ばれたのは今年が初めて。重厚な雰囲気のヨットクラブ屋内での開催かと思いきや、会場に赴けば見事なカリフォルニアブルーが広がる青空の下。ペーター・サガン、ジョン・デゲンコルブ、テイラー・フィニ―、マーク・カヴェンディッシュ、ブラドレー・ウィギンスら、そうそうたるメンバーが顔を揃えました。
プレスカンファレンスが終わると、3時間後にはサンディエゴの観光名所でもある水族館「シーワールド」でチームプレゼンテーションが行われました。シーワールドのどこで?と疑問がつきまといましたが、行ってみて納得。従業員用の秘密の入り口から園内に入り、なんとゴンドラに!ミッションビーチの空を横切った先にあるシアターが会場でした。
印象的だったのは、ファンを集客せずにスポンサーや関係者、メディアだけを招待したかなりクローズドな雰囲気の中でチームプレゼンテーションが行われたこと。そのあとはピンクのフラミンゴが出迎える横で、ケータリングによるディナーがふ振舞われていました。一般ファンではなく、VIPに喜ばれるようなおもてなしでした。
ツアーオブカリフォルニアの冠スポンサーは「アムジェン」という企業。カリフォルニア州、ロサンゼルス郊外のサウザンドオークスに拠点を置く、世界最大の独立バイオテクノロジー会社です。サウザンドオークスが毎年ステージ開催地となるのもこのためであり、アムジェンは、第1回目から冠スポンサーとなっている大会に欠かせない存在です。
アムジェン社についてもう少し補足すると、2012年現在では世界の医薬品売上ランキング13位に入っており、日本最大規模の製薬会社である武田薬品工業を上回る規模。がんの治療薬にも力を入れており、そのため、プレスカンファレンスやチームプレゼンテーションでも、がんや難病を克服した患者やアムジェン社のプレゼンに大きく時間が割かれていました。
「人口よりも車の数が多い」と言われる車社会であるアメリカにおいて、サイクリングロードレースは日本と同じくまだマイナースポーツ。そのような環境の中で、アメリカ最大のステージレースの冠スポンサーを11年続ける理由は、どこにあるのでしょうか?それは、アメリカ国内にとどまらず全世界へ向けて発信される露出力、サイクリングによる人々の健康増強のイメージ、CO2削減などの環境問題に力を入れることに、大きなメリットがあると考えているからのようです。
サンディエゴにしばらく滞在し、疑問に思ったことがありました。タクシーの運転手さんやレストランなど、出会ったサンディエゴ市民の誰ひとりと、ツアーオブカリフォルニアの存在を知らない!果たして本当に開催されるのかと疑問に思うほど。街中に交通規制の看板も見当たらなく、唯一と言っていい情報は、ふと入った自転車屋さんでひっそり貼られたポスターを目にしただけでした。
地元アメリカのフォトグラファーが言うには、「ストリーム放送やテレビ放映を重視していて、レースを生で観に来る観客はあまり重要視していない」から。これが本当だとしたら、カリフォルニアの観光協会である「ビジットカリフォルニア」もサブスポンサーであるはずなのに。
第1ステージを取材して思ったのは、観客のほとんどが、いわゆる「プロ観客」と呼ばれていいような熱心なロードレースファン。サンディエゴ市民に宣伝するようなことは少なく、市外、または国外の、より多くのファンにカリフォルニアを宣伝することにより、より楽しませ満足してもらうことを第一に考えているように思います。れほどビッグネームが集まる大会なのに、選手との距離が近く、よりフレンドリーな大会となっていたのはこのためでしょうか。
プレスカンファレンス、チームプレゼンテーション、第1ステージと、ややクローズドな印象を持ったツアーオブカリフォルニアでしたが、だからこそ、よりロードレースファンにとっては魅力的な大会だと感じました。今年からツール・ド・フランスを主催するASOがパートナーとなり、コースも格段に良くなったと言われています。アメリカ大陸の広大な大地の、かつ、「ゴールデンステート」カリフォルニア州が舞台となるこのレースの魅力は計り知れなく、ますます目が離せなくなりそうです。
目黒誠子(めぐろせいこ)プロフィール
ツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当。2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。3月までオーストラリアで語学留学をしながら現地の自転車事情を取材。各プロチームとの親交を深めるべく活動している。
「カリフォルニアブルー」がメインカラーであるツアーオブカリフォルニア。まさにそんな青空と海に囲まれたサンディエゴにビッグネームが集まりました。レース前のプレスカンファレンスが行われたのは、歴史あるサンディエゴ・ヨットクラブ。
過去、ツアー・オブ・カリフォルニアは、サンディエゴを通過したことはあるものの、スタート地点に選ばれたのは今年が初めて。重厚な雰囲気のヨットクラブ屋内での開催かと思いきや、会場に赴けば見事なカリフォルニアブルーが広がる青空の下。ペーター・サガン、ジョン・デゲンコルブ、テイラー・フィニ―、マーク・カヴェンディッシュ、ブラドレー・ウィギンスら、そうそうたるメンバーが顔を揃えました。
プレスカンファレンスが終わると、3時間後にはサンディエゴの観光名所でもある水族館「シーワールド」でチームプレゼンテーションが行われました。シーワールドのどこで?と疑問がつきまといましたが、行ってみて納得。従業員用の秘密の入り口から園内に入り、なんとゴンドラに!ミッションビーチの空を横切った先にあるシアターが会場でした。
印象的だったのは、ファンを集客せずにスポンサーや関係者、メディアだけを招待したかなりクローズドな雰囲気の中でチームプレゼンテーションが行われたこと。そのあとはピンクのフラミンゴが出迎える横で、ケータリングによるディナーがふ振舞われていました。一般ファンではなく、VIPに喜ばれるようなおもてなしでした。
ツアーオブカリフォルニアの冠スポンサーは「アムジェン」という企業。カリフォルニア州、ロサンゼルス郊外のサウザンドオークスに拠点を置く、世界最大の独立バイオテクノロジー会社です。サウザンドオークスが毎年ステージ開催地となるのもこのためであり、アムジェンは、第1回目から冠スポンサーとなっている大会に欠かせない存在です。
アムジェン社についてもう少し補足すると、2012年現在では世界の医薬品売上ランキング13位に入っており、日本最大規模の製薬会社である武田薬品工業を上回る規模。がんの治療薬にも力を入れており、そのため、プレスカンファレンスやチームプレゼンテーションでも、がんや難病を克服した患者やアムジェン社のプレゼンに大きく時間が割かれていました。
「人口よりも車の数が多い」と言われる車社会であるアメリカにおいて、サイクリングロードレースは日本と同じくまだマイナースポーツ。そのような環境の中で、アメリカ最大のステージレースの冠スポンサーを11年続ける理由は、どこにあるのでしょうか?それは、アメリカ国内にとどまらず全世界へ向けて発信される露出力、サイクリングによる人々の健康増強のイメージ、CO2削減などの環境問題に力を入れることに、大きなメリットがあると考えているからのようです。
サンディエゴにしばらく滞在し、疑問に思ったことがありました。タクシーの運転手さんやレストランなど、出会ったサンディエゴ市民の誰ひとりと、ツアーオブカリフォルニアの存在を知らない!果たして本当に開催されるのかと疑問に思うほど。街中に交通規制の看板も見当たらなく、唯一と言っていい情報は、ふと入った自転車屋さんでひっそり貼られたポスターを目にしただけでした。
地元アメリカのフォトグラファーが言うには、「ストリーム放送やテレビ放映を重視していて、レースを生で観に来る観客はあまり重要視していない」から。これが本当だとしたら、カリフォルニアの観光協会である「ビジットカリフォルニア」もサブスポンサーであるはずなのに。
第1ステージを取材して思ったのは、観客のほとんどが、いわゆる「プロ観客」と呼ばれていいような熱心なロードレースファン。サンディエゴ市民に宣伝するようなことは少なく、市外、または国外の、より多くのファンにカリフォルニアを宣伝することにより、より楽しませ満足してもらうことを第一に考えているように思います。れほどビッグネームが集まる大会なのに、選手との距離が近く、よりフレンドリーな大会となっていたのはこのためでしょうか。
プレスカンファレンス、チームプレゼンテーション、第1ステージと、ややクローズドな印象を持ったツアーオブカリフォルニアでしたが、だからこそ、よりロードレースファンにとっては魅力的な大会だと感じました。今年からツール・ド・フランスを主催するASOがパートナーとなり、コースも格段に良くなったと言われています。アメリカ大陸の広大な大地の、かつ、「ゴールデンステート」カリフォルニア州が舞台となるこのレースの魅力は計り知れなく、ますます目が離せなくなりそうです。
目黒誠子(めぐろせいこ)プロフィール
ツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当。2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。3月までオーストラリアで語学留学をしながら現地の自転車事情を取材。各プロチームとの親交を深めるべく活動している。
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