2016/05/02(月) - 07:41
ヨークシャー名物の急坂が連続して登場するツール・ド・ヨークシャー最終日は精鋭たちによるアタック合戦に。チームスカイ勢の攻撃を抑え込んだトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)がステージ優勝を飾るとともに総合優勝に輝いた。
ツール・ド・ヨークシャーを締めくくる第3ステージはミドルズブラをスタート。北海に面し、民謡「スカボロー・フェア」の舞台であるスカボロー(現地の発音はスカーブラに近い)に向かう198kmは今大会最難関の山岳コースだ。
クリーブランドヒルズと呼ばれる標高400m前後のダイナミックな丘陵地帯を進むコースにはカテゴリー山岳が6つ設定されている。順に1級、2級、1級、1級、2級、2級が続き、加えて勾配が平気で20%を超えるような名もない急坂が連発。もちろん登ったら同じだけ急勾配の下りが登場する。
日曜日だけに通過する街や山岳は大勢の観客に埋め尽くされ、その他の区間は吹きっさらしの強風。どんよりと立ち込める灰色の雲からは雨粒も落ち、気温が常に10度以下という過酷な最終ステージは10名の逃げで幕開けた。
ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)やマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)を含む逃げは最大2分のリード。前半の山岳ポイントを荒稼ぎしたハースが山岳賞トップに躍り出たが、レース中盤にかけてチームスカイ率いるメイン集団が容赦なくタイム差を削り取る。この日3つ目のカテゴリー山岳、1級山岳グロスモントを前に逃げは吸収された。
交通標識によると最大勾配33%(実際は20%程度)の1級山岳グロスモントでチームスカイがペースを上げるとメイン集団は一気に縮小。さらにその直後の横風区間でエシュロンが形成され、メイン集団は9名(チームスカイ5名)にまで絞られた。
その後、ヴォクレールを含む17名が先頭に追いつき、休む間も無く次の1級山岳ロビンフッドベイでセルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)がアタックしたが決まらない。フィニッシュまでの最後の1時間に差し掛かり、残り28km地点の2級山岳ハレウッドデイルでレースは動いた。
急勾配の登りでニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が先行開始。ここにヴォクレールとアントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)が追いつき、5名で残り10kmサインを通過する。
そして最後の2級山岳オリバーズマウントでロッシュがアタック。チームスカイの仕事を完遂すべくロッシュが勝負に出たが、ヴォクレールを振り切るには至らなかった。
フィニッシュまで6kmを残した最後の2級山岳を終えて先頭はロッシュとヴォクレール。遅れたイェーツ、クルイスウィク、トゥルジの追走を振り切って、観客であふれたスカボローのフィニッシュ地点にやってくる。
「冷静にいろんなシナリオを考えながら集中して勝負に挑んだ。彼(ロッシュ)には『一緒に協力して行こう。そしてスプリントで勝負しよう』と言ったんだ」というヴォクレールが残り300mで早めのスパート。ロッシュはこの加速に対抗できず、歓声とため息が入り混じるフィニッシュラインにヴォクレールが先頭で飛び込んだ。
「今日はチームスカイがレースを支配していた。風が強かったのでアタックのタイミングを待ち続けた。もし早めにアタックしていたらチームスカイの前に敗れ去っていたと思う。最後は経験が生きた。登りでリードを広げることは出来なかったものの、平坦路で後続を引き離せると確信していた」と、ヴォクレールは記者会見で勝利への道筋を一つ一つ丁寧に説明する。
「自分は今シーズンすでに42レースを消化していて、最も多くのレースを走っている選手だと思う。ツール・ド・フランスにも匹敵するほど熱狂的な観客が集まるこのヨークシャーで大きな勝利を手にしたことを嬉しく思う。お世辞ではなく、ヨークシャーの雰囲気は最高だったよ」とヴォクレール。1年前のヨークシャーを総合3位で終えているヴォクレールが、最終日に総合優勝を射止めた。
ツール・ド・ヨークシャー2016第3ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) 4h51’57”
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +09”
4位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ) +41”
7位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)
8位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ) +1’09”
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
10位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
個人総合成績
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) 13h05’16”
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +06”
3位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス) +16”
4位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +17”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +21”
6位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ) +52”
7位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) +53”
8位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +1’13”
9位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +1’20”
10位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンプロサイクリング) +1’21”
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
山岳賞
1位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Scarborough, United Kingdom
ツール・ド・ヨークシャーを締めくくる第3ステージはミドルズブラをスタート。北海に面し、民謡「スカボロー・フェア」の舞台であるスカボロー(現地の発音はスカーブラに近い)に向かう198kmは今大会最難関の山岳コースだ。
クリーブランドヒルズと呼ばれる標高400m前後のダイナミックな丘陵地帯を進むコースにはカテゴリー山岳が6つ設定されている。順に1級、2級、1級、1級、2級、2級が続き、加えて勾配が平気で20%を超えるような名もない急坂が連発。もちろん登ったら同じだけ急勾配の下りが登場する。
日曜日だけに通過する街や山岳は大勢の観客に埋め尽くされ、その他の区間は吹きっさらしの強風。どんよりと立ち込める灰色の雲からは雨粒も落ち、気温が常に10度以下という過酷な最終ステージは10名の逃げで幕開けた。
ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)やマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)を含む逃げは最大2分のリード。前半の山岳ポイントを荒稼ぎしたハースが山岳賞トップに躍り出たが、レース中盤にかけてチームスカイ率いるメイン集団が容赦なくタイム差を削り取る。この日3つ目のカテゴリー山岳、1級山岳グロスモントを前に逃げは吸収された。
交通標識によると最大勾配33%(実際は20%程度)の1級山岳グロスモントでチームスカイがペースを上げるとメイン集団は一気に縮小。さらにその直後の横風区間でエシュロンが形成され、メイン集団は9名(チームスカイ5名)にまで絞られた。
その後、ヴォクレールを含む17名が先頭に追いつき、休む間も無く次の1級山岳ロビンフッドベイでセルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)がアタックしたが決まらない。フィニッシュまでの最後の1時間に差し掛かり、残り28km地点の2級山岳ハレウッドデイルでレースは動いた。
急勾配の登りでニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が先行開始。ここにヴォクレールとアントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)が追いつき、5名で残り10kmサインを通過する。
そして最後の2級山岳オリバーズマウントでロッシュがアタック。チームスカイの仕事を完遂すべくロッシュが勝負に出たが、ヴォクレールを振り切るには至らなかった。
フィニッシュまで6kmを残した最後の2級山岳を終えて先頭はロッシュとヴォクレール。遅れたイェーツ、クルイスウィク、トゥルジの追走を振り切って、観客であふれたスカボローのフィニッシュ地点にやってくる。
「冷静にいろんなシナリオを考えながら集中して勝負に挑んだ。彼(ロッシュ)には『一緒に協力して行こう。そしてスプリントで勝負しよう』と言ったんだ」というヴォクレールが残り300mで早めのスパート。ロッシュはこの加速に対抗できず、歓声とため息が入り混じるフィニッシュラインにヴォクレールが先頭で飛び込んだ。
「今日はチームスカイがレースを支配していた。風が強かったのでアタックのタイミングを待ち続けた。もし早めにアタックしていたらチームスカイの前に敗れ去っていたと思う。最後は経験が生きた。登りでリードを広げることは出来なかったものの、平坦路で後続を引き離せると確信していた」と、ヴォクレールは記者会見で勝利への道筋を一つ一つ丁寧に説明する。
「自分は今シーズンすでに42レースを消化していて、最も多くのレースを走っている選手だと思う。ツール・ド・フランスにも匹敵するほど熱狂的な観客が集まるこのヨークシャーで大きな勝利を手にしたことを嬉しく思う。お世辞ではなく、ヨークシャーの雰囲気は最高だったよ」とヴォクレール。1年前のヨークシャーを総合3位で終えているヴォクレールが、最終日に総合優勝を射止めた。
ツール・ド・ヨークシャー2016第3ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) 4h51’57”
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +09”
4位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ) +41”
7位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)
8位 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ) +1’09”
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
10位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
個人総合成績
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) 13h05’16”
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +06”
3位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス) +16”
4位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +17”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +21”
6位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ) +52”
7位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) +53”
8位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +1’13”
9位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +1’20”
10位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンプロサイクリング) +1’21”
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
山岳賞
1位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Scarborough, United Kingdom
Amazon.co.jp
ヨークシャーティー ゴールド 80bags
Taylors of Harrogate
AOCコトーデクスアンプロヴァンス(白) シャトードヴォクレール 2009
シャトー・ド・ヴォクレール