ライド中の機能を最大化する設計コンセプト「Dynamic Cycling Fit」に基づき開発したサイクルギアを展開するジャイアント。その中から今回はパフォーマンスサドル「CONTACT」シリーズをインプレッションした。



ジャイアント CONTACT SLサドル(手前:FORWARD/ホワイト、奥:NEUTRAL/ブラック)ジャイアント CONTACT SLサドル(手前:FORWARD/ホワイト、奥:NEUTRAL/ブラック)
ジャイアント CONTACT SLRサドル(FORWARD/ブラック)ジャイアント CONTACT SLRサドル(FORWARD/ブラック) ジャイアント CONTACT SLサドル(UPRIGHT/ホワイト)ジャイアント CONTACT SLサドル(UPRIGHT/ホワイト)


サドルほど多種多様な製品が揃う自転車部品も無いかもしれない。各メーカーがしのぎを削り、新規ブランドの参入も多い「激戦区」とも言うべきこのジャンルに名乗りを挙げたのが、世界最大の自転車メーカーであるジャイアント。今回インプレッションを行う「CONTACT」シリーズは、ロープロファイルの軽量モデルであり、ロードやシクロクロス、MTBクロスカントリーでの使用に適したモデルだ。

ジャイアントのサドルの特徴は、自転車やホイールと同様に、ライダーが動いている状態で機能を最大化する設計コンセプト「Dynamic Cycling Fit」に基づき開発したこと。骨盤の前傾度合いに基づいた独自のフィッティングシステムを導入していることがそのミソだ。

フィッティングに使用する専用サドルフィッティングに使用する専用サドル ライダーが動いている状態で機能を最大化する設計コンセプト「Dynamic Cycling Fit」に基づき開発されたライダーが動いている状態で機能を最大化する設計コンセプト「Dynamic Cycling Fit」に基づき開発された


サドルのフィッティングシステムは各社から考案されているが、そのほとんどが静止した状態で測定したデータを基にしている。対してジャイアントの場合は、ライディング中におけるお尻とサドルの接触状態を検証し、最も動的に適したサドルはどれかを導き出すという違いがある。

実際のフィッティングは、計測用サドルを自らのバイクに装着して、2分間ほどペダリングするだけと何ら難しくない。専用サドルの表面に浮かび上がる圧力分布をもとに骨盤の前傾度合を割り出し、この結果から適したサドルタイプを選定するのだ。

ライディングポジションの前傾度合いに応じた3つの座面形状が用意されるライディングポジションの前傾度合いに応じた3つの座面形状が用意される (c)ジャイアント・ジャパン特殊な微粒子によって快適性を高めた振動吸収材「PARTICLE FLOW TECHNOLOGY」を内蔵する特殊な微粒子によって快適性を高めた振動吸収材「PARTICLE FLOW TECHNOLOGY」を内蔵する (c)ジャイアント・ジャパン

座面中央には尿道への圧迫を軽減する溝を配置。溝の長さは3タイプそれぞれで異なる座面中央には尿道への圧迫を軽減する溝を配置。溝の長さは3タイプそれぞれで異なる バキューム成型されたマイクロファイバー製の表皮バキューム成型されたマイクロファイバー製の表皮

ベーシックモデルCONTACT SLは、グラスファイバーコンポジット製ベースに、7mmSST中空ステンレスレールを組み合わせるベーシックモデルCONTACT SLは、グラスファイバーコンポジット製ベースに、7mmSST中空ステンレスレールを組み合わせる CONTACT SLRは、ノーズ付近で左右が一体となる9mmフルカーボンレールを搭載する。ベースはカーボンコンポジット製だCONTACT SLRは、ノーズ付近で左右が一体となる9mmフルカーボンレールを搭載する。ベースはカーボンコンポジット製だ


「CONTACT」シリーズでは、対応する骨盤の前傾度合いが異なる「FOWARD」「NEUTRAL」「UPRIGHT(CONTACT SLのみで展開)」の3タイプが用意されている。タイプによって異なるのは、前後及び左右方向のカーブや圧力分散のためのチャネル(溝)の長さ、幅、後方に配置されるパッドの寸法など。基本的な構造や素材は3タイプとも共通だ。

そして衝撃吸収にも新しい構造を取り入れた。インフォームの下層に特殊な微粒子を敷いた「PARTICLE FLOW TECHNOLOGY」によって、不快感や痛みと言ったストレスの原因となる骨盤への圧力集中を、一般的なサドルと比べて20%以上軽減することに成功してる。バキュームで成型された表皮は、耐久性に優れるマイクロファイバー製だ。



ラインアップは軽量モデル「CONTACT SLR」と、ベーシックモデル「CONTACT SL」の2種類で、レールとベースの素材が異なる。SLRはカーボンコンポジット製ベースに9mmフルカーボンレールを、SLはグラスファイバーコンポジット製に7mmSST中空ステンレスレールを組み合わせている。



CONTACTサドルのフィッティング手順

1.自身のバイクや、自身のライドポジションを再現したフィッティングマシンに、専用フィッティングサドルを取り付ける1.自身のバイクや、自身のライドポジションを再現したフィッティングマシンに、専用フィッティングサドルを取り付ける 2.専用フィッティングサドルに跨がり、2分ほどペダルを回す。この時パッド付きのレーシングパンツを履いてはならない2.専用フィッティングサドルに跨がり、2分ほどペダルを回す。この時パッド付きのレーシングパンツを履いてはならない

3.専用フィッティングサドルのインジケーターをもとに、サドルタイプを選定する(写真の場合はUPRIGHT)3.専用フィッティングサドルのインジケーターをもとに、サドルタイプを選定する(写真の場合はUPRIGHT) 4.選定したタイプのサドルを自身のバイクに取り付けて試す4.選定したタイプのサドルを自身のバイクに取り付けて試す




ー インプレッション

「カッチリとした座り心地のサドル 独自のフィッティングシステムは高い精度を持つ」
細沼達男(細沼自転車店)


CONTACTシリーズの嬉しい点、それは高機能であることはもちろん、手頃な価格設定にあります。この手の薄型軽量サドルとしては安価でありますが、倍以上の価格のイタリア製サドルと比較しても、同等かそれ以上の完成度に仕上がっています。

ジャイアント CONTACTサドルをインプレッションジャイアント CONTACTサドルをインプレッション
フィッティグについてですが、専用サドルを使用して計測した圧力分布をもとに座面形状を決定するというジャイアント独自の方法ですが、精度が高いと感じます。

好みの座面形状や骨盤幅を基準に選んだサドルがフィットしないことは少なくないですし、実際に私もそうでした。まだCONTACT SLRを使いはじめてから日が浅いのですが、何の違和感もなくライドに集中できるほどの馴染みがあるんです。

「カッチリとした座り心地のサドル 独自のフィッティングシステムは高い精度を持つ」細沼達男(細沼自転車店)「カッチリとした座り心地のサドル 独自のフィッティングシステムは高い精度を持つ」細沼達男(細沼自転車店) ちなみに、これまでフィジークのKURVEやANTARES、セライタリアSLR(2世代目)などを使用しており、横にフラットで縦には少しカーブのあるサドルが好みです。フィッティングの結果は「ニュートラル」です。

実際にCONTACT SLRはカッチリとした印象を受けますが、硬すぎることはありません。座面が変形しすぎないため、腰が動かず力が逃げません。路面からの衝撃はベースのしなりとパッドの変形の双方でいなしているイメージで、独自のパッド構造はミニマムながらも的確に効果を発揮しています。

深い前傾や前乗り時も不快な印象はありませんでした。私は溝や穴が無いサドルでも問題なく使えるため、CONTACT SLRの溝の効果は感じづらいのですが、尿道の痛みが気になる方には効果を発揮してくれることでしょう。

SLRグレードに採用されているカーボンレールは信頼性が高そうですね。レールとベースの距離も充分に確保されているため、ヤグラが干渉して使えないということはまずないでしょう。グラフィック的にも「ジャイアント!」という主張が無いため、ジャイアント以外のバイクにも使える点が嬉しいですね。

CONTACT SL(FORWARD)の実測重量は224gCONTACT SL(FORWARD)の実測重量は224g CONTACT SLR(FORWARD)の実測重量は180gCONTACT SLR(FORWARD)の実測重量は180g


ジャイアント CONTACT SLRサドル
ベース素材:カーボンファイバーコンポジット
レール素材:カーボンファイバーコンポジット
パッド:PARTICLE FLOW
シェイプ:FORWARD、NEUTRAL
実測重量:180g(FORWARD)
カラー:ホワイト、ブラック
価 格:15,000円(税抜)

ジャイアント CONTACT SLサドル
ベース素材:グラスファイバーコンポジット
レール素材:SST(中空ステンレス)
パッド:PARTICLE FLOW
シェイプ:FORWARD、NEUTRAL、UPRIGHT
実測重量:224g(FORWARD)
カラー:ホワイト、ブラック
価 格:8,000円(税抜)




インプレライダーのプロフィール

細沼達男(細沼自転車店)細沼達男(細沼自転車店) 細沼達男(細沼自転車店)

東京都板橋区にあるジャイアントパートナーストア「細沼自転車店」店主。高校生の時にスポーツ自転車をはじめ、愛好歴は35年にのぼる。自動車会社勤務やフリーライターを経て、2011年から約3年半に渡りファンライド誌編集長を経験する。自転車メディアに関わる10年間に数多くのロードバイクインプレッションを実施し、海外ブランドの現地発表会への参加実績も豊富。その後2015年2月に自身のサイクルショップをオープンさせる。愛車はジャイアントTCR ADVANCED SL。

細沼自転車店

text&photo:Yuya.Yamamoto
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