上り区間で圧倒したのは大町健斗(安芸府中)。自ら動いて作った5人でのスプリントを制し、ロードレース全国初制覇。女子は細谷夢菜(浦和工)がスプリントを制しトラックと合わせ選抜3冠を達成。



大町健斗(安芸府中)が全国大会ロード初優勝大町健斗(安芸府中)が全国大会ロード初優勝 photo:Hideaki TAKAGI
高校選抜大会4日目最終日は、3月27日(日)熊本県山鹿市でのロードレース。以前に行われていたUCI熊本国際ロードの北半分を延長したもので、山岳賞の設定される上り1か所と、その後に続く緩い上りで構成される丘陵地帯のコース。朝は晴れたがその後は曇り、時折小雨やあられまでが降るほど冷え込み、その後はまた晴れるという変化の多い天候でのレースに。

細谷夢菜(浦和工)がスプリントを制する

女子は3周33.3kmのレース。1周目の上りでアジアジュニアチャンピオンの下山美寿々(大教大天王寺)が抜け出し1回目の山岳賞を獲得し独走するがその後に吸収。この動きで集団は8名に絞られる。2周目へ入るコントロールラインに設定されたスプリント賞めがけて細谷夢菜(浦和工)がペースを上げこれを獲得。集団はばらけかけるも一つにまとまる。その後の上りでペースアップされメンバーが絞られる。

2周目で下山ら2名が下がって先頭は6名に。ここでもスプリント賞を細谷が獲得する。3周目に入ってもこの6人のままで進み、KOMは長石悠里(倉吉西)が獲得しこの6名でフィニッシュへ。スプリントは細谷が伸びて優勝。これに地元千原台高校の中冨尚子、そして石井菜摘(作新学院)らが続いた。

女子スタート女子スタート photo:Hideaki TAKAGI女子1周目 細谷夢菜(浦和工)がペースを上げる女子1周目 細谷夢菜(浦和工)がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI

女子 細谷夢菜(浦和工)が優勝。選抜3冠を達成女子 細谷夢菜(浦和工)が優勝。選抜3冠を達成 photo:Hideaki TAKAGI女子ロードレース表彰女子ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI

優勝した細谷は「自分向きのコースではなかったのですが、上りさえクリアできれば優勝できる可能性はあると思って臨みました。スプリント賞への上り程度の距離なら全然大丈夫なのでもがきました。ロードレースでの全国大会優勝は初めてです。出るレースは全部勝つ気持ちでこの選抜は臨みました。飯島コーチに日本でトップでないと世界では戦えないと教わっているので」と世界を見据える。

短い上りといえど細谷がもがけばライバルは脚を使う。上りに強い1年生の下山は1週間前の落車で負傷し本調子ではなかったこともあった。細谷が自分の脚で得意の展開に持ち込んだことが勝因だ。細谷は出場した500mTT、ケイリンそしてロードレースの3種目ともに優勝した。

大町健斗(安芸府中)がロード全国大会で初優勝

男子は7周77.7kmのレース。3周目までは大集団で推移。4周目から上りで人数が絞り込まれ5周目へは30人ほどで入る。その上り口から花田聖誠(昭和一学園)、奥村十夢(榛生昇陽)そして大町の順にペースアップし集団は分裂。この3名に亀谷昌慈(岐阜第一)と栗原悠(千原台)の加わった5人でKOMを越える。分裂した集団だったがその後にまとまり約20名の先頭集団に。ここから栗原が単独で集団を抜け出す。

男子スタート男子スタート photo:Hideaki TAKAGI男子6周目 上りを経て集団がばらける男子6周目 上りを経て集団がばらける photo:Hideaki TAKAGI

男子6周目 3つに分かれた前方の集団男子6周目 3つに分かれた前方の集団 photo:Hideaki TAKAGI男子6周目 先頭集団は17人に男子6周目 先頭集団は17人に photo:Hideaki TAKAGI

6周目に入り先頭の栗原を上りで大町と花田が追い上げ吸収、この3名と亀谷、小野寛斗(横浜)の加わった5名の先頭集団ができるが後続も追い上げ再び合流、17名の先頭集団に。フィニッシュ地点までの上りで再び栗原が抜け出し独走で最終の7周目へ。上り区間で後続が大町先頭で追い上げて栗原を吸収、KOMは大町、栗原、花田の3名でクリアする。その後の緩い上り区間で亀谷が、そして奥村が単独で合流し先頭は5名に。

それまで上りを中心に動いてきた5人は協力してフィニッシュ地点へ向かう。そしてこの5人によるスプリントとなり大町がこれを制して優勝。栗原、花田、奥村そして亀谷の順にフィニッシュした。毎周回のように先頭で展開してきたのはこの5人。上りに強いメンバーだけが同じ意思でまとまって集団を抜け出すことに成功した。最後はスピードのある大町が制したが大町はロードレースでは初の全国優勝。

男子7周目 先行する栗原悠(千原台)に上りで後続が追い上げる男子7周目 先行する栗原悠(千原台)に上りで後続が追い上げる photo:Hideaki TAKAGI男子7周目 奥村十夢(榛生昇陽)も追いついた5人の先頭から大町健斗(安芸府中)がペースを上げる男子7周目 奥村十夢(榛生昇陽)も追いついた5人の先頭から大町健斗(安芸府中)がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI

フィニッシュ 大町健斗(安芸府中)が伸びるフィニッシュ 大町健斗(安芸府中)が伸びる photo:Hideaki TAKAGI念願の全国大会ロードレース優勝の大町健斗(安芸府中)。2015年全日本個人TTジュニアチャンピオン念願の全国大会ロードレース優勝の大町健斗(安芸府中)。2015年全日本個人TTジュニアチャンピオン photo:Hideaki TAKAGI

大町は2015年の西日本チャレンジロードのエリートクラスで優勝、選抜大会は資格が得られずオープニング・ロードで走り独走優勝。2015年6月の全日本選手権個人TTのジュニアで優勝そして1週間前の西日本チャレンジロードのジュニアクラスはスプリントで制している。昨夏はTeam Eurasia-IRC Tireで渡欧経験もある。今回は3度の山岳賞すべてを獲ってもいる。

優勝した大町健斗(安芸府中)のコメント

男子ロードレース表彰男子ロードレース表彰 photo:Hideaki TAKAGI「(全国大会で)やっと勝てました。今まで長かったです。スプリンターを残したくなかったので自分の脚を使って動きました。最後に5人となってからは協力して回して、ゴールスプリントは待ってから仕掛けました。栗原選手はすごく強かったです。この5人で回せたのが良かったと思います」

「独走で勝ちたかったのですが力が足りませんでした。最近は競輪選手に教えていただいてバンクでスピード練習を取り入れ、今回はその成果が出たと思います。でもインターハイはこのままでは勝てないのでもっと力をつけて自分のスタイルで勝ちたいです」

地元のレースで2位となった栗原悠(千原台)

2位に入った地元山鹿市菊鹿町在住の栗原悠(千原台)を中田将次監督がねぎらう2位に入った地元山鹿市菊鹿町在住の栗原悠(千原台)を中田将次監督がねぎらう photo:Hideaki TAKAGI6周目そして7周目と単独アタックして上りで”前待ち”の状態で合流した2位の栗原は大会会場のある山鹿市菊鹿町在住。練習を繰り返してきた地元のコースで積極的に走り2位に。今まで全国大会のロードは2015年都道府県対抗大会(成年少年同クラス)で8位が最高。1週間前の九州チャレンジロードのジュニアクラスでは約20名のゴールスプリントを制している。

その栗原は「自分のペースで上りたかったので抜け出して走りました。ゴールまで独走できればいいですが、合流してきたら少人数で行ければと考えていました。この大会は中学2年生の時からオープニングで走らせてもらって、地元のこのコースは熟知しています。今回は勝てませんでしたが応援が力になりました。もっと上を目指します」と語る。

オープニング・レース 全体および高校生の部 増田勝伍(川越工)が独走優勝オープニング・レース 全体および高校生の部 増田勝伍(川越工)が独走優勝 photo:Hideaki TAKAGI男子学校対抗総合はロードで5位に入った岐阜第一が逆転で南大隅と並び、優勝者のいる岐阜第一が1位に。女子は浦和工が1位となった。
オープニング・レース 中学生の部 日野泰静(チームグロシャ)が優勝オープニング・レース 中学生の部 日野泰静(チームグロシャ)が優勝 photo:Hideaki TAKAGIオープニング・レース 一般の部 白石真悟(シマノドリンキング)が優勝オープニング・レース 一般の部 白石真悟(シマノドリンキング)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
結果

男子 77.7km
1位 大町健斗(安芸府中)2時間06分12秒
2位 栗原悠(千原台)
3位 花田聖誠(昭和一学園)
4位 奥村十夢(榛生昇陽)+01秒
5位 亀谷昌慈(岐阜第一)+05秒
6位 尾形尚彦(東北)+23秒
7位 片桐東次郎(昭和一学園)
8位 篠田孝希(前橋工)
9位 花田凱成(祐誠)
10位 渡辺慶太(浦和工)

女子 33.3km
1位 細谷夢菜(浦和工)1時間03分15秒
2位 中冨尚子(千原台)
3位 石井菜摘(作新学院)+01秒
4位 長石悠里(倉吉西)+02秒
5位 菅原朱音(倉吉総産)+05秒
6位 山口伊吹(鹿町工)
7位 下山美寿々(大教大天王寺)+2分05秒
8位 松本詩乃(昭和一学園)+2分51秒

オープニング・レース 33.3km

高校生の部 1位 増田勝伍(川越工)
中学生の部 1位 日野泰静(チームグロシャ)
一般の部 1位 白石真悟(シマノドリンキング)

photo&text:高木秀彰