第9戦にして、2015シーズン最終戦の会場となったのは、宮崎県東諸郡国富町にある法華嶽公園。5月のシーズン開始以降シークレット会場とされ、昨年末にやっと発表された初開催会場に、北は北海道、南は鹿児島から87人のライダーが集まった。



キャンプ地として名高い南国、宮崎。土曜日の午前中は肌寒かったが太陽が出ると一気に温かさを感じた。キャンプ地として名高い南国、宮崎。土曜日の午前中は肌寒かったが太陽が出ると一気に温かさを感じた。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


最終戦のマイクを握ったのはご存知MCアリー。最終戦のマイクを握ったのはご存知MCアリー。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA自転車をそのまま抱えて乗車するのがホケダケスタイル。自転車をそのまま抱えて乗車するのがホケダケスタイル。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA法華嶽公園にある日本一美しいと評判の天然芝のグラススキー場には、冬も稼働しているリフトがある。ライダーが自転車を抱えるようにしてリフトに乗ってスタート地点へ上がる方法は、ローカルライダーが考案した法華嶽スタイル。

今回のコースは、全長735m、高低差113m。通常営業のコースに普段は走れないエリアを追加した特設コースだ。スタート直後はフラットな漕ぎ区間。「奈落」と呼ばれるガレ場と大きな右コーナーのあとは、わき水でいつもウェットな「濡れ濡れコーナー」、そして「フォレストジャンプ」で森から飛び出す。ここからは観戦ポイントとなり、ピンクの梅が咲き誇るなかをジャンプやバーム、コーナーが続き、今大会のために特設されたフラットとオフキャンバー区間を経てフィニッシュとなる。

土曜日は、朝から曇っていて肌寒く、「宮崎は暖かいって聞いて来たんだけど……」という会話があちらこちらで飛び交う。お昼に向けて風が強まり、時折吹く突風はブースに置かれていたチラシを舞い上がらせるほど。ただ、その強風のおかげか、タイムドセッションが始まると同時に雲一つ無い青空が広がった。



スタートヒルから少し登ったところにある「身投嶽展望台」からは、かすかにフィニッシュエリアが確認できた。スタートヒルから少し登ったところにある「身投嶽展望台」からは、かすかにフィニッシュエリアが確認できた。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
地元宮崎からXCバイククラスで参加した楠兄弟。序盤のハードなセクションだが、クロカンスタイルで元気に試走していた。地元宮崎からXCバイククラスで参加した楠兄弟。序盤のハードなセクションだが、クロカンスタイルで元気に試走していた。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA第7戦吉無田高原(熊本県)の現地オーガナイザーである高野欽司も参戦。第7戦吉無田高原(熊本県)の現地オーガナイザーである高野欽司も参戦。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA




福岡県からXCバイククラスに参戦する岡山優太。吉無田、法華嶽の九州2戦を制した。福岡県からXCバイククラスに参戦する岡山優太。吉無田、法華嶽の九州2戦を制した。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA女子トップエリートだった冨田敬子は引退後にパン屋を経営、ダウンヒルシリーズの出展常連だったが、ここ数戦で再び「走り」のスイッチが入り、参戦する側となっている。女子トップエリートだった冨田敬子は引退後にパン屋を経営、ダウンヒルシリーズの出展常連だったが、ここ数戦で再び「走り」のスイッチが入り、参戦する側となっている。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAXC BIKE Classから始まったタイムドセッション。最速タイムを出したのは、第6戦富士見パノラマ、第7戦吉無田高原、第8戦菖蒲谷森林公園と連勝を続ける井手川直樹選手(AKI FACTORY/STRIDER)。3秒遅れで、4ヶ月ぶりのレース復帰となる清水一輝選手(Patrol Mountain FJC)、そこから1秒遅れて九州の星・浦上太郎選手(Transition Airlines/Cleat)が続く。

全クラス総合の順位では、このあとにエリートクラスの藤村飛丸選手(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)が入った。今年の開幕戦十種ヶ峰WOODPARKでの優勝以降、表彰台には乗るもののなかなかもう一度勝つに至らない悔しさを味わう若者が、久々の好発進となった。

タイムドセッション後には、毎会場恒例のPROライダーによる参加者交流企画が開催された。今回は最終戦ということもあり、「PROライダー全員と歩く!法華嶽攻略」と題し、井手川選手、清水選手、浦上選手、井本はじめ選手(SRAM/LITEC)、阿藤寛選手(Topknot racing)、そして末政実緒選手(SRAM/LITEC)の6人が講師となる豪華なものに。1時間以上をかけた丁寧なコースウオークには50人以上のライダーが参加し、大盛況となった。



山頂部から宮崎市内方面の展望山頂部から宮崎市内方面の展望 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
日曜日、リフト沿いには多くの観客が集まった。それは地元国富町の呼びかけで訪れた地元の方々だった。歓声を受けて走る田上幸一。日曜日、リフト沿いには多くの観客が集まった。それは地元国富町の呼びかけで訪れた地元の方々だった。歓声を受けて走る田上幸一。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA開幕戦の地である十種ヶ峰(山口県)のボス、志賀孝治も参戦。常に他の会場をチェックし、運営側としてもスキルアップに勤めている。開幕戦の地である十種ヶ峰(山口県)のボス、志賀孝治も参戦。常に他の会場をチェックし、運営側としてもスキルアップに勤めている。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA




激戦のエリートクラス、勝ったのは田丸裕。プロクラスに挑戦して3位と確実に力をつけてきた。激戦のエリートクラス、勝ったのは田丸裕。プロクラスに挑戦して3位と確実に力をつけてきた。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA後半のオフキャンバーセクションは難易度が高く、タイムに大きく影響した。後半のオフキャンバーセクションは難易度が高く、タイムに大きく影響した。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA日曜日は朝から晴れ渡り、気温も上昇。ポカポカ陽気のなか、リフトの下の観戦ポイントにはライダーの家族だけでなく、地元の家族連れやおじいちゃんおばあちゃんなど、今シーズン一番と言っていいほどの観客がずらりと並んだ。

勝ちたい奴らしかいない、毎回激戦のエリート男子クラス。タイムドセッション1位の京都の藤村飛丸選手と、第7戦吉無田で初優勝し、こちらももう一度勝ちたい広島の若手・田丸裕選手(TAMARUfruits)、長年Jシリーズをエリートクラスで転戦し、九州といえばこの人とも言われる福岡の本村貴之選手(delsol/cleat/トクサガ峰)ら、西日本各地の強豪がひしめく。

しかし、本村選手はクラッシュでタイムが伸びず。タイムドセッション2位の田丸選手がフィニッシュに飛び込み、1分29秒169。最終走者の藤村選手は1分30秒042と僅か0.873秒及ばず。

結果、今シーズン2回目の優勝、そしてPROクラスへ挑戦する「下克上」の権利を得たのは田丸選手となった。



スタイル最優先の浦上太郎の最終ジャンプ。プロクラスには「魅せる」要素も詰まっている。観客から思わず声が出た瞬間だ。スタイル最優先の浦上太郎の最終ジャンプ。プロクラスには「魅せる」要素も詰まっている。観客から思わず声が出た瞬間だ。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


バリでの怪我から復帰戦となった清水一輝。6インチストロークのパトロール671を初めて実戦に投入、見事デビューウィンを飾った。バリでの怪我から復帰戦となった清水一輝。6インチストロークのパトロール671を初めて実戦に投入、見事デビューウィンを飾った。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA3連勝で最終戦を迎えた絶好調の井手川直樹。決勝では転倒し、4連勝はならなかったが年間チャンピオンの座を獲得した。3連勝で最終戦を迎えた絶好調の井手川直樹。決勝では転倒し、4連勝はならなかったが年間チャンピオンの座を獲得した。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA0.49秒差で2位となった井本はじめ。「調子は良い!」と語るがギリギリで勝てないレースが続く。0.49秒差で2位となった井本はじめ。「調子は良い!」と語るがギリギリで勝てないレースが続く。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA続くPROクラスは、まず「下克上」の田丸選手からスタート。1分27秒269という、自身のタイムを2秒近くも縮めてのフィニッシュ。タイムドセッションでは転倒してPROクラス最下位に沈んでいた井本選手がさすがの走りで1分24秒278。阿藤選手と浦上選手はクラッシュで1分38秒台。そして、前日のタイムドセッション後、「あと5秒は縮めますよ」と話していた清水選手が1分23秒と、宣言通り5秒縮めてトップに立つ。

そして3連覇中でノリに乗る最終走者・井手川選手のタイムをMCアリーが読み上げる。スタート直後の第2コーナーでクラッシュしていたようで、「1分22……23……24……」と清水選手のタイムを超えても姿は見えず、結果は1分27秒883。その瞬間、ホットシートに座っていた清水選手の優勝が決まった。10月にインドネシア・バリ島で開催されたアジアパシフィックダウンヒルチャレンジでの大クラッシュから約4ヶ月。復帰戦であり、2016年の初レースを年男・清水選手が、新機材Patrol671でのデビューウィンを飾った。

レース後、「怪我からの復帰戦で、この優勝は今シーズンのモチベーションに大きく影響するものになりました。人生で初めて宮崎県に来ましたが、宮崎県にもDHのプロライダーを目指す若者がいたのを知りました。環境的には不利だけど、法華嶽DHコースがより良くなることによって宮崎県の若者が育ち、世界へ羽ばたけるよう協力したいです。愛知から陸路で1000㎞かけて来た甲斐がありました!」と話した。

2位の井本選手は、「コースは1分半と短く特に難しいセクションもないなかで、タイムを縮めるのはプレッシャーでした。そんななかでも落ち着いて走れるのはすごい。難しくないコースほど、その人の力量が分かります」と清水選手を讃えた。



PROクラス表彰式PROクラス表彰式 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


XC BIKE Class表彰式XC BIKE Class表彰式 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAスポーツ女子クラス表彰式スポーツ女子クラス表彰式 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエリート女子クラス。11月に開催されたMTB4時間耐久in木城にも参加した末政は、「宮崎を身近に感じています」とコメント。エリート女子クラス。11月に開催されたMTB4時間耐久in木城にも参加した末政は、「宮崎を身近に感じています」とコメント。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA法華嶽大会を支えたメンバー。右から、国富町役場の矢野さん、法華嶽公園管理事務所副所長の後藤さん、コースを整備したローカルライダー代表の中村さん、運営計画を担当した三井さん、国富町役場の伊藤さん。法華嶽大会を支えたメンバー。右から、国富町役場の矢野さん、法華嶽公園管理事務所副所長の後藤さん、コースを整備したローカルライダー代表の中村さん、運営計画を担当した三井さん、国富町役場の伊藤さん。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAXC BIKE Classでは、第7戦吉無田高原に引き続き、岡山優太選手(MASAYA Bicycle Works)が2位に約6秒の差をつけて優勝。ファーストタイマー男子ではDOWNHILL SERIESに多くのライダーが参加している広島県福山市の「自転車屋ちゅう吉福山店」の店長・山下勝司選手が2位と0.079秒という僅差で優勝。

スポーツ男女クラスでは、「冬に自転車に乗れるだけで嬉しいです!」と話していた北海道からの参加者・間所崇選手(ゴミBIKE)と渡邉織江選手(札幌かえる庭園)が堂々の優勝。表彰台の一番高いところから、「北海道にも走りに来て下さい!北海道でも開催してください!」と呼びかけた。

エキスパート女子では、女子高生DHライダー崎野真子選手(DELSOLワイルドウインド)が優勝。エキスパート男子クラスでは、「勝ちたいです!いや、勝ちます!」とエントリー時から宣言していた法華嶽ローカル、野間葵至選手(チームホケダケ)が2位の郷丸勝範選手(ちゅう吉福山DH部)に0.187秒差で優勝。タイムが読み上げられた瞬間、ガッツポーズを空に掲げ、フィニッシュエリアで見守っていた家族もバンザイをして喜ぶ姿が見られた。

エリート女子クラスでは、末政実緒選手が本人も驚く好タイムで優勝。「昨年の秋にMTB4時間耐久in木城というXCイベントにゲストとして呼んで頂いて以来、宮崎県とご縁があります。そこで出合った人たちが今回初めてDHレースを見に来てくれたりしていました。そんな応援が力になりました」と話した。

なぜ会場発表がギリギリになったのか。この会場でのDOWNHILL SERIES開催の話が出たのはちょうど1年前のこと。16年前にコース造成を開始して以来、維持管理を行っているローカルライダーの中村さんからメールが来たことがきっかけだった。ただ、大きな大会を開催したことがないということや、いざ開催するとなったときのローカルパワーに不安があるという点がハードルとなり、なかなか開催決定には至らなかった。

ただ、法華嶽愛に溢れる中村さんの熱意と、九州・宮崎を代表するXCライダーでありイベンターでもある三井さんが協力することとなり、開催が決定。国富町役場の方の熱意も熱く、DOWNHILL SERIES会場では初めての「町」のブースが出展され、町のスーパーや銀行にはチラシが貼られ、ケーブルテレビでは告知CMが流された。ローカルライダー、参加者、行政が力を合わせて大会を作り上げる。今までとは少し体制の違う大会運営となったが、これがまさに各地を転戦するDOWNHILL SERIESが今後目指していく形なのかもしれないと強く感じられる一戦となった。

DOWNHILL SERIES 2016のスケジュールは間もなく公開される。



レースを終えて、日が暮れる前に撮影した集合写真。レースを終えて、日が暮れる前に撮影した集合写真。 (c)DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

report:DOWNHILL SERIES
photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

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