2016/01/16(土) - 09:07
1月10日に奈良競輪場にて行われた「サイクルジャージde競輪場へ行こう!」。普段はなかなか体験できないバンク走行をロードバイクで経験でき、しかも現役競輪選手とともに走ることができる貴重なイベントの様子をレポートします。
奈良競輪場でもイベントはたくさん行われているが、1月10日の”サイクルジャージde競輪場へ行こう!”は、奈良競輪場が直接主催するもの。”奈良けいりん”は自治体である奈良県が施行者であり、施設の正式名称は奈良県営競輪場。
今回のイベントはその奈良県の岡田尚之さんと、日本競輪選手会の田中祥之奈良支部長が中心となり企画。そして弘報舘、日本トーター、まんま亭が協力。2015年の2回に続いて1月10日に行われた第3回の様子をレポートしよう。
まずはバンク走行体験から
約40名の参加者のうち、バンク初体験は半数以上。まずはそれぞれが自分の力量に応じた場所とスピードで走ってみる。経験者はバンクの上のほうを難なく走りますが、初めての人は計測線よりも内側を走る。慣れたら徐々に計測線に沿って走れるように。
選手会奈良支部所属8名の競輪選手も同じように走ったりサポートしたり。こういうイベントで競輪選手が一緒に走るケースは、じつは少ない。もちろん皆が声をかけながら走るので思った以上に安全だ。この日は落車など事故はひとつも無し。慣れてきたら競輪選手が作る隊列に加わって一列で走るように。
1周333mのタイムトライアル
体が温まってきたら、次はバンク1周333mスタンディングスタートのタイムトライアル。模範走行は有馬雄二選手。さすが24秒5と速く、同じ競輪選手からも拍手が。そのままのペースで1kmを走れば(実際は無理ですが)1分04秒! そのタイムから競輪選手がいかに速いかがわかる。続いて参加者がそれぞれのスタイルで1周を走る。実際に走ると身体で理解できるが、333mは意外と長いのです。
ドキドキの車券購入!
次は車券売り場へ行って実際に車券を購入する(こういうイベントは少ないですね)。この日は場外車券ということで、和歌山競輪場で行われている和歌山グランプリ第2日の9レース、S級2次予選が対象です。ここには22歳で3場所連続の完全優勝を達成しS級特別昇級したばかりの新山響平選手、数々のタイトルを持ち全国で9人しかいないS級S班の山崎芳仁選手の2人が注目。
みんなが買ったのは初心者でも予想しやすい2枠複。枠番で1位または2位を選ぶもので、マークシート式のカードへ記入し発券機で購入します。どの枠を選ぶかはもちろん自分で考える。一番人気は山崎選手と新山選手の組み合わせ。戦績を考えたら当然で、オッズは2.4倍。圧倒的です。
前評判どおりに最終第4コーナーまで来たけれど
そしてレースがスタート。予想通り新山選手先頭、2番手に山崎選手で最終第4コーナーまで。「もらった!」と思ったら、あと数十mでズブズブと抜かれ...。波乱の結末で当たりは18種類中15番人気でなんと50倍超。当てたのは参加者でただ一人でした。
その伊藤さん「自分は41歳なので、頑張れ!同い年!と思ってその車券を買いました」と、2人いた41歳選手の枠を選んだそう。100円買っていたので5000円をゲット!という高配当だった。ちなみに筆者は1番人気も含め4種類購入しましたが、パー。しかも、1番人気が当たっても全体では損をするという、なんともダメな買い方をしてしまいました。悔しい。そして羨ましい。
競輪選手と個人追い抜き競走
興奮冷めやらぬなか、バンク内へ戻ると白玉入りぜんざいが用意されていた。まんまさんとまんまママさんの手によりみんなに振舞われた。これがとてもおいしかったので3杯いただいてしまいました。おなかは満たされたけど、2000円すってしまってやっぱり悔しい(笑)。
そしてこの後は希望者が競輪選手と5周1666mの個人追い抜き競走を行った。ホームとバックから同時にスタートし、追い抜けばそこで決着。そうでない場合は走りきった時点の着順で勝負が決まる。トップバッターは伊狩選手と辰巳さんの対戦。スタートはさすが伊狩選手が速いが、その後は「黄金のタレ」を披露するも持ち直し。さすがプロ、魅せますね。
2番目は2015年デビューの女子競輪溝口香奈選手。溝口選手はなんと日本写真判定株式会社の社員で、競輪場勤めだったという異色の経歴。レースを見ているうちに自分も、と練習を始めたそう。対戦者は競輪ファンの”5番車”鈴木さん。強そうないでたちでしたが、本気を出した溝口さんに途中で抜かれて、ジ・エンド。
検車場で座談会
さらに1kmTTにトライする参加者もあり、バンク走行はこれでおしまい。場所を検車場に移し座談会へ。初めてのバンク走行の感動や、競輪選手と走れた楽しさ、車券の楽しさと悔しさなど、それぞれの思いを語ります。「競輪をこれからも続けるためには、若い人に来てもらえるような環境づくりを」と提言する人も。
確かにそうですね。若い新規の客を獲得することは存続のために重要です。このあとTシャツ(ガールズ島田優里選手デザイン)やウエイブワンからのネックウォーマーが各選手から「頑張ったで賞」で参加者に配られ、じゃんけん大会などを経てお開きに。
日本競輪選手会 田中祥之奈良支部長のコメント
1983年にB級からデビューし、わずか1年でS級にまで上がった田中支部長。1980年代に全プロ個人追い抜き3連覇や世界選出場など競技の世界でも活躍し、2004年から支部長に。
「今日はたくさんの人に来ていただいて嬉しいです。選手も楽しんでいたと思います。昨年の第1回は、ガールズケイリンの元砂七夕美と溝口香奈の2選手が同期デビューでしたのでそれに合わせました。第2回は競輪場の中を見ることと、もちろん走行体験も。そして今回の第3回はタイムを計測することにしました」
「車券は3回とも買っていただいています。車券は一人だと買いにくいかもしれませんが、みんなでならば買いやすいでしょう。新規のファンを獲得することにも繋がると思います。そしてアスリートである選手個々を応援してもらえれば嬉しいですね」。
奈良県営競輪場 岡田尚之さんのコメント
自転車が好きで県内のイベントに関わったこともある岡田さん。奈良県職員である岡田さんが、2008年アジア選手権トラックや2009年インターハイトラックの会場となった奈良競輪場担当であるのは奇遇以上のものがある。
「競輪に関心を持ってもらいたい、ひとりでも多くファンを増やしたい、そういう気持ちで試行錯誤しながら続けています。今回の参加者には競輪場とはどういう場所かを見て欲しいです。確かにギャンブルであるのでいろいろな考えがあると思います。今日一緒に走った選手の顔や名前を少しでも覚えてもらえれば嬉しいですね」
聞けば、奈良競輪場は現在黒字となっており、県の財政にも寄与しているという。しかし開設以来65年、赤字の時期もあり新規顧客の獲得の努力は欠かさない。
「奈良競輪場に足を運んでいただいて、競輪や自転車競技を一度でも目の前で見てもらえれば」と岡田さんは願う。
photo&text:高木秀彰
奈良競輪場でもイベントはたくさん行われているが、1月10日の”サイクルジャージde競輪場へ行こう!”は、奈良競輪場が直接主催するもの。”奈良けいりん”は自治体である奈良県が施行者であり、施設の正式名称は奈良県営競輪場。
今回のイベントはその奈良県の岡田尚之さんと、日本競輪選手会の田中祥之奈良支部長が中心となり企画。そして弘報舘、日本トーター、まんま亭が協力。2015年の2回に続いて1月10日に行われた第3回の様子をレポートしよう。
まずはバンク走行体験から
約40名の参加者のうち、バンク初体験は半数以上。まずはそれぞれが自分の力量に応じた場所とスピードで走ってみる。経験者はバンクの上のほうを難なく走りますが、初めての人は計測線よりも内側を走る。慣れたら徐々に計測線に沿って走れるように。
選手会奈良支部所属8名の競輪選手も同じように走ったりサポートしたり。こういうイベントで競輪選手が一緒に走るケースは、じつは少ない。もちろん皆が声をかけながら走るので思った以上に安全だ。この日は落車など事故はひとつも無し。慣れてきたら競輪選手が作る隊列に加わって一列で走るように。
1周333mのタイムトライアル
体が温まってきたら、次はバンク1周333mスタンディングスタートのタイムトライアル。模範走行は有馬雄二選手。さすが24秒5と速く、同じ競輪選手からも拍手が。そのままのペースで1kmを走れば(実際は無理ですが)1分04秒! そのタイムから競輪選手がいかに速いかがわかる。続いて参加者がそれぞれのスタイルで1周を走る。実際に走ると身体で理解できるが、333mは意外と長いのです。
ドキドキの車券購入!
次は車券売り場へ行って実際に車券を購入する(こういうイベントは少ないですね)。この日は場外車券ということで、和歌山競輪場で行われている和歌山グランプリ第2日の9レース、S級2次予選が対象です。ここには22歳で3場所連続の完全優勝を達成しS級特別昇級したばかりの新山響平選手、数々のタイトルを持ち全国で9人しかいないS級S班の山崎芳仁選手の2人が注目。
みんなが買ったのは初心者でも予想しやすい2枠複。枠番で1位または2位を選ぶもので、マークシート式のカードへ記入し発券機で購入します。どの枠を選ぶかはもちろん自分で考える。一番人気は山崎選手と新山選手の組み合わせ。戦績を考えたら当然で、オッズは2.4倍。圧倒的です。
前評判どおりに最終第4コーナーまで来たけれど
そしてレースがスタート。予想通り新山選手先頭、2番手に山崎選手で最終第4コーナーまで。「もらった!」と思ったら、あと数十mでズブズブと抜かれ...。波乱の結末で当たりは18種類中15番人気でなんと50倍超。当てたのは参加者でただ一人でした。
その伊藤さん「自分は41歳なので、頑張れ!同い年!と思ってその車券を買いました」と、2人いた41歳選手の枠を選んだそう。100円買っていたので5000円をゲット!という高配当だった。ちなみに筆者は1番人気も含め4種類購入しましたが、パー。しかも、1番人気が当たっても全体では損をするという、なんともダメな買い方をしてしまいました。悔しい。そして羨ましい。
競輪選手と個人追い抜き競走
興奮冷めやらぬなか、バンク内へ戻ると白玉入りぜんざいが用意されていた。まんまさんとまんまママさんの手によりみんなに振舞われた。これがとてもおいしかったので3杯いただいてしまいました。おなかは満たされたけど、2000円すってしまってやっぱり悔しい(笑)。
そしてこの後は希望者が競輪選手と5周1666mの個人追い抜き競走を行った。ホームとバックから同時にスタートし、追い抜けばそこで決着。そうでない場合は走りきった時点の着順で勝負が決まる。トップバッターは伊狩選手と辰巳さんの対戦。スタートはさすが伊狩選手が速いが、その後は「黄金のタレ」を披露するも持ち直し。さすがプロ、魅せますね。
2番目は2015年デビューの女子競輪溝口香奈選手。溝口選手はなんと日本写真判定株式会社の社員で、競輪場勤めだったという異色の経歴。レースを見ているうちに自分も、と練習を始めたそう。対戦者は競輪ファンの”5番車”鈴木さん。強そうないでたちでしたが、本気を出した溝口さんに途中で抜かれて、ジ・エンド。
検車場で座談会
さらに1kmTTにトライする参加者もあり、バンク走行はこれでおしまい。場所を検車場に移し座談会へ。初めてのバンク走行の感動や、競輪選手と走れた楽しさ、車券の楽しさと悔しさなど、それぞれの思いを語ります。「競輪をこれからも続けるためには、若い人に来てもらえるような環境づくりを」と提言する人も。
確かにそうですね。若い新規の客を獲得することは存続のために重要です。このあとTシャツ(ガールズ島田優里選手デザイン)やウエイブワンからのネックウォーマーが各選手から「頑張ったで賞」で参加者に配られ、じゃんけん大会などを経てお開きに。
日本競輪選手会 田中祥之奈良支部長のコメント
1983年にB級からデビューし、わずか1年でS級にまで上がった田中支部長。1980年代に全プロ個人追い抜き3連覇や世界選出場など競技の世界でも活躍し、2004年から支部長に。
「今日はたくさんの人に来ていただいて嬉しいです。選手も楽しんでいたと思います。昨年の第1回は、ガールズケイリンの元砂七夕美と溝口香奈の2選手が同期デビューでしたのでそれに合わせました。第2回は競輪場の中を見ることと、もちろん走行体験も。そして今回の第3回はタイムを計測することにしました」
「車券は3回とも買っていただいています。車券は一人だと買いにくいかもしれませんが、みんなでならば買いやすいでしょう。新規のファンを獲得することにも繋がると思います。そしてアスリートである選手個々を応援してもらえれば嬉しいですね」。
奈良県営競輪場 岡田尚之さんのコメント
自転車が好きで県内のイベントに関わったこともある岡田さん。奈良県職員である岡田さんが、2008年アジア選手権トラックや2009年インターハイトラックの会場となった奈良競輪場担当であるのは奇遇以上のものがある。
「競輪に関心を持ってもらいたい、ひとりでも多くファンを増やしたい、そういう気持ちで試行錯誤しながら続けています。今回の参加者には競輪場とはどういう場所かを見て欲しいです。確かにギャンブルであるのでいろいろな考えがあると思います。今日一緒に走った選手の顔や名前を少しでも覚えてもらえれば嬉しいですね」
聞けば、奈良競輪場は現在黒字となっており、県の財政にも寄与しているという。しかし開設以来65年、赤字の時期もあり新規顧客の獲得の努力は欠かさない。
「奈良競輪場に足を運んでいただいて、競輪や自転車競技を一度でも目の前で見てもらえれば」と岡田さんは願う。
photo&text:高木秀彰
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