2016/01/14(木) - 09:08
昨年に創業175周年を迎えたスペイン・バスク地方のバイクブランド、オルベアのミドルレンジロードバイク「ORCA OMP」をインプレッション。トップレンジの血統を色濃く引く、アンダー40万円完成車の実力に迫る。
オルベア ORCA OMP photo:Makoto.AYANO
バスク自治州ビスカヤ県に拠点を置く、スペイン最大の総合自転車ブランド、オルベア。1840年に火器製造企業としてスタートを切った同社は1930年代に自転車の製造を開始し、近年ではサミュエル・サンチェスとジュリアン・アブサロン(MTB)による北京オリンピック金メダル獲得、コフィディスへのサポートなど、絶えずプロレースとの関係を築き、勝利を重ねてきた。
オルベア2016モデルの最高峰に位置するのは、昨年フルモデルチェンジを行った第5世代のORCA OMRで変更無い。しかしミドルグレードのORCA OMPにはシマノ・105をメインコンポーネントに採用した完成車が登場し、コンフォートモデルのAVANT(アヴァン)と共に充実ぶりを発揮している。今回のテストバイクは、そのORCA OMP完成車。36万円のプライスタグを付ける、オルベアの世界戦略モデルだ。
シートステーもフロントフォーク同様に屈曲をつけたデザイン。振動吸収に貢献する部分だ
三角断面のダウンチューブ。剛性に寄与する部分だけにボリュームも高い
先端部に屈曲を設けた特徴的なフロントフォーク。先代から受け継ぐフォルムだ
そもそもORCA OMP(OMPはフレーム素材である「オルベア・モノコック・パフォーマンス・カーボン」の略)は、デビュー初年度である昨年はフレームセット32万円で発売されていた。カンパニョーロ社の最高峰コンポーネント、スーパーレコードEPSを搭載した完成車も用意されるなど、その部分からも力の入れようを測り知ることができる。
ORCA OMPと、ORCA OMRのフォルムは全く同様で、違いはフレーム素材と成型時の工法にある。OMPは標準的なレイアップ(同社のOMEカーボン)に対して高弾性・高強度繊維を5%追加することで重量と剛性のバランスを向上させている。成型時にはヘッドチューブとBBにポリウレタン製インサートを投入し、フレーム内側に発生するシワを除去することで、強度を落とすことなく重量増を防いでいるのだ。
現行ORCAで最も目を引くトップチューブ前方のデザイン。ヘッドチューブとの接合面積を増やすことで剛性を強化している
美しくまとめられたヘッドチューブ周辺のデザイン。ルーティングも無理が無い
ボリューム感に溢れるボトムブラケット。PF86規格を採用した
パワーメーター用マグネット台座も用意されている。レースバイクならではと言える
第5世代のORCAが目指したのは、ORCA史上最軽量のクライミングバイク。重量を徹底的に削減するために全てを見直し、トップチューブをスローピングさせ、シートステーとトップチューブはぐっと薄いフォルムに生まれ変わった。結果的にORCA OMPは先代(1230g)と比較して、180gを軽量化し1050g(53サイズ)に。昨今のミッドレンジロードバイクとしては優位な数値を獲得するに至った。
しかし4代目ORCAのアイコンであった、屈曲を設けたフロントフォークやシートステーのデザインは受け継がれている。これはサスペンションのように振動を吸収するためで、さらに同社のMTB・XCバイクであるALMAの設計を応用。乗車し、荷重がかかった状態でのフレームの挙動を研究し、フィードバックすることで実際の路面の凹凸を吸収しトラクションをかける能力を高めている。
シートステーに対し、チェーンステーはかなりボリュームの高い印象
ハンドルはFSAのコンパクト。小柄なライダーにも配慮されている
そしてオルベアのバイクを語る上で欠かせないのが、各フレームサイズ毎のスタックハイトとリーチを細かく煮詰めていることだ。更に47から2cm刻みで用意することで、小柄なライダーが多い日本マーケットにも受け入れられやすい設定としている。実際に今回の試乗車にはコンパクトハンドルや50-34Tのクランクセットがアッセンブルされており、好印象を受けた。
また、先代で専用品を使っていたシートポストはスタンダードな27.2mm径に変更され、ボトムブラケット規格はBB30からPF86に。ワイヤー類も内装だが、無理の無いルーティングであることも使い勝手が良いだろう。クランクやホイールなどで低価格化を図っているものの、昨年のフレームセット価格を考えれば、+4万円の36万円とかなりリーズナブルな値段設定と言えるだろう。
シートポストは27.2mm径を採用した。カーボン製のオリジナルポストが付属する
スペインの自社工場で製造されていることを表すシール。もちろんUCIの認証済みだ
下側1.5インチのテーパーヘッド。成型時に一手間を加えることで内部のシワを除去している
アクア、オニキスと、従来高い人気を誇ってきたオルベアのミドルレンジ。その期待を一身に担うORCA OMRの実力とはいかなるものだろうか。シルベストサイクルの山崎氏と、スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの鈴木氏がインプレッションを行った。
ーインプレッション
「店舗での人気も高い一台 いつまでも、どこまでも走っていたいと思わせてくれる」
山崎敏正(シルベストサイクル)
いつまでも、どこまでも走っていたい。そう思わせてくれる良いバイクです。その理由は身体への直接的なストレスが少なく、こうしたタイプのバイクにありがちな鈍重さが薄い。十分な剛性感があり、パワーが逃げることなくしっかり前に進んでくれます。最高級レーシングバイクのようなパリッとしたフィーリングこそありませんが、カテゴリーと価格に対しては十分な軽快感がありますね。
リア側から見るとチェーンステーとフォークの形状が独特で、この部分で振動をカットしているんだな、と気付かされます。この手のバイクですと薄く・細く作ることが多いのですが、オルカは違った路線を選んでいるように思います。振動を伝えないため、緊張感を乗る人に与えることなく、長い距離・時間をうまく走らせてくれる。衝撃吸収性という意味ではよく考えられていますね。
「店舗での人気も高い一台 いつまでも、どこまでも走っていたいと思わせてくれる」 山崎敏正(シルベストサイクル)
下りのワインディングや、高速コーナーでも安定していますし、不安に感じるような挙動もありません。重心がやや高めでしたが、ハードブレーキング時にもたわみなど不安はありません。前後・左右ともにバランス感に秀でていますね。
チェーンステーのボリュームがあるためか、ロスに繋がる「たわみ」は感じません。ダンシングでパワーを掛けても、BBやダウンチューブ周辺の剛性感と、トップチューブ周辺の軽さが相まって軽快に登坂をこなしてくれました。OMRに対してカーボンのグレードを落としているはずですが、安易なデチューンというイメージはありませんね。
ただ試乗車にセットされているホイールの印象があまり良くありませんでした。フレームの基本性能が高いので、もっと外周部が軽く、硬いホイールをセットしてあげるべきですね。そうすれば登りももっと楽になるし、加速性能にも磨きがかかると思います。例えブラインドテストを行ったとしても、並の高級グレードのバイクに匹敵する上質な乗り味を味わえるでしょう。長い目で見れば、パーツ交換によってチューンアップを楽しめる一台、とも言えるはずです。
初心者にとっても扱いやすい、良い意味でのオーソドックスさ。ケーブルやワイヤー類も内装されていますが、外出しのシートクランプなど、セッティング・調整のしやすさ、使いやすさは乗り手にとっても、ショップにとっても高評価できる部分ですね。
数年前までは、オルカといえばフレーム40〜50万円の高値の花でした。このOMPは「コストパフォーマンスが非常に高い!」という訳でこそありませんが、36万円で完成車を手にできるのはアリだと思います。ピンクとライトブルーの色合いもとても綺麗ですし、実際に店舗での人気も高いんです。関西のロングライドイベントでも多く目にしますね。
レース中のせめぎあいで、わずか数cmの差を狙うのであれば、上級モデルの「OMR」を選んだ方が良いでしょう。ただしそういうニーズを持つ方は少ないですし、ロングライドでのストレスフリーさは多くの乗り手の味方になってくれるはず。平均点が非常に高く、目につくマイナスポイントがありません。よく作りこまれた隙のないバイクでした。
「レース参戦を視野に入れるなら良い選択肢 スモールサイズに気を使ったパッケージ」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
「レース参戦を視野に入れるなら良い選択肢 スモールサイズに気を使ったパッケージ」 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) トップグレードと比較すればマイルドですが、レースバイクとしての乗り味も十分に感じることができました。BB周辺はかなり剛性が高いのですが、その周辺がしなることで乗りやすさを演出しているように思います。ロングライド的な乗り方にもいいと思いますし、過度に個性を出しすぎていないことも好印象ですね。
前述した通りBBの硬さが活きるので、ダンシングや、トルクを掛けたシッティングでも登坂がしやすいですね。ただし脚が跳ね返されるほどではありませんし、このバイクを選ぶ人にとって使いやすいよう調整されていると感じます。
一方でリアバックはBBの硬さをいなすように、フワッとした印象でした。だから純然たるレースバイクと比べてロングライドでも疲れを感じにくいでしょうし、少し荒れた道でも安定して走ってくれるはずです。振動減衰性はかなり高く突き上げをマイルドに伝えるので、通じて巡行も行いやすい。長い距離を淡々と走るブルベにも良いかもしれません。
スプリントで最高の武器になる、最高の振動吸収性、とは言えませんが、全ての平均点が高い。一台でレース、山岳グランフォンド、ロングライドと多用途に使いたい方にとってはオススメしやすいですね。
特徴的だったのはフロントフォークから生まれる直進安定性です。下りでもハンドルが安定しているため、初心者でも不安を感じることは少ないはず。スパン!と切れ込むレーシングバイクとは異なるフィーリングですが、ダルい印象もありません。ボリュームの大きいヘッドチューブとの組み合わせで急制動にも負けませんし、不意の衝撃もしっかりと受け止めてくれます。個人的にはヒルクライムやロードレースで頑張りたい人におすすめだと感じます。
オルベアはサイズ間の乗り味の差を調整しているため、スモールサイズの試乗車でも癖や乗り辛さを感じませんでした。たまにスモールサイズのバイクにあまり気を使わない欧米ブランドがありますが、良い傾向ですね。
36万円でコンポーネントがシマノ105にFSAのクランク。コスト的にはやや高めと思いがちですが、フレームの素性を理解できれば悪くはありません。プロロゴのサドルも乗り心地が良かったですし、フレームやバーテープのデザインも面白いですね。試乗の機会を見つけさえすれば、きっとこのバイクの価値を納得できるでしょう。
細かい作りを見ても、小さい試乗車にもかかわらずワイヤー類のルーティングも許せる範囲ですし、FSAのコンパクトハンドル、カーボンシートポストなど、そつが無く、かつ適正なパッケージングが選ばれていますね。日本人には嬉しい気配りです。
レース機材としても、例えばJBCFのエリートカテゴリーまでであれば武器になってくれるはずですが、ホイールは変更したいかな、と。踏み出しの軽さがあれば、OMPの不得意部分を引き上げることができるでしょう。デュラエースC35、ボーラ35など、ミドルハイトがマッチしそうです。アルミホイールであればシャマル、キシリウムSLE、SLRなどでしょうか。
レースも、ツーリングもこなせるのがこのOMP。ツーリングをメインながら、今後レース参戦を視野に入れている方にとっては良い選択肢になるのではないでしょうか。
オルベア ORCA OMR photo:Makoto.AYANO
オルベア ORCA OMP 105(完成車)
フレーム素材:オルカOMPカーボン
フォーク :OMPカーボン、カーボンコラム、カーボンドロップエンド1-1/8”-1.5”
カラー:ホワイトレッド、ブルーピンク、ピンクホワイト、ホワイトブルー、ブラック
サイズ 47、49、51、53、55、57
メインコンポーネント:シマノ 105
クランクセット:FSA CT50-34
ハンドル:FSA Gossamer Compact
ステム:Orbea OC-II
ホイール :ヴィジョン team25
価格:360,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル) 山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:So.Isobe
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バスク自治州ビスカヤ県に拠点を置く、スペイン最大の総合自転車ブランド、オルベア。1840年に火器製造企業としてスタートを切った同社は1930年代に自転車の製造を開始し、近年ではサミュエル・サンチェスとジュリアン・アブサロン(MTB)による北京オリンピック金メダル獲得、コフィディスへのサポートなど、絶えずプロレースとの関係を築き、勝利を重ねてきた。
オルベア2016モデルの最高峰に位置するのは、昨年フルモデルチェンジを行った第5世代のORCA OMRで変更無い。しかしミドルグレードのORCA OMPにはシマノ・105をメインコンポーネントに採用した完成車が登場し、コンフォートモデルのAVANT(アヴァン)と共に充実ぶりを発揮している。今回のテストバイクは、そのORCA OMP完成車。36万円のプライスタグを付ける、オルベアの世界戦略モデルだ。
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そもそもORCA OMP(OMPはフレーム素材である「オルベア・モノコック・パフォーマンス・カーボン」の略)は、デビュー初年度である昨年はフレームセット32万円で発売されていた。カンパニョーロ社の最高峰コンポーネント、スーパーレコードEPSを搭載した完成車も用意されるなど、その部分からも力の入れようを測り知ることができる。
ORCA OMPと、ORCA OMRのフォルムは全く同様で、違いはフレーム素材と成型時の工法にある。OMPは標準的なレイアップ(同社のOMEカーボン)に対して高弾性・高強度繊維を5%追加することで重量と剛性のバランスを向上させている。成型時にはヘッドチューブとBBにポリウレタン製インサートを投入し、フレーム内側に発生するシワを除去することで、強度を落とすことなく重量増を防いでいるのだ。
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しかし4代目ORCAのアイコンであった、屈曲を設けたフロントフォークやシートステーのデザインは受け継がれている。これはサスペンションのように振動を吸収するためで、さらに同社のMTB・XCバイクであるALMAの設計を応用。乗車し、荷重がかかった状態でのフレームの挙動を研究し、フィードバックすることで実際の路面の凹凸を吸収しトラクションをかける能力を高めている。
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そしてオルベアのバイクを語る上で欠かせないのが、各フレームサイズ毎のスタックハイトとリーチを細かく煮詰めていることだ。更に47から2cm刻みで用意することで、小柄なライダーが多い日本マーケットにも受け入れられやすい設定としている。実際に今回の試乗車にはコンパクトハンドルや50-34Tのクランクセットがアッセンブルされており、好印象を受けた。
また、先代で専用品を使っていたシートポストはスタンダードな27.2mm径に変更され、ボトムブラケット規格はBB30からPF86に。ワイヤー類も内装だが、無理の無いルーティングであることも使い勝手が良いだろう。クランクやホイールなどで低価格化を図っているものの、昨年のフレームセット価格を考えれば、+4万円の36万円とかなりリーズナブルな値段設定と言えるだろう。
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アクア、オニキスと、従来高い人気を誇ってきたオルベアのミドルレンジ。その期待を一身に担うORCA OMRの実力とはいかなるものだろうか。シルベストサイクルの山崎氏と、スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの鈴木氏がインプレッションを行った。
ーインプレッション
「店舗での人気も高い一台 いつまでも、どこまでも走っていたいと思わせてくれる」
山崎敏正(シルベストサイクル)
いつまでも、どこまでも走っていたい。そう思わせてくれる良いバイクです。その理由は身体への直接的なストレスが少なく、こうしたタイプのバイクにありがちな鈍重さが薄い。十分な剛性感があり、パワーが逃げることなくしっかり前に進んでくれます。最高級レーシングバイクのようなパリッとしたフィーリングこそありませんが、カテゴリーと価格に対しては十分な軽快感がありますね。
リア側から見るとチェーンステーとフォークの形状が独特で、この部分で振動をカットしているんだな、と気付かされます。この手のバイクですと薄く・細く作ることが多いのですが、オルカは違った路線を選んでいるように思います。振動を伝えないため、緊張感を乗る人に与えることなく、長い距離・時間をうまく走らせてくれる。衝撃吸収性という意味ではよく考えられていますね。
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下りのワインディングや、高速コーナーでも安定していますし、不安に感じるような挙動もありません。重心がやや高めでしたが、ハードブレーキング時にもたわみなど不安はありません。前後・左右ともにバランス感に秀でていますね。
チェーンステーのボリュームがあるためか、ロスに繋がる「たわみ」は感じません。ダンシングでパワーを掛けても、BBやダウンチューブ周辺の剛性感と、トップチューブ周辺の軽さが相まって軽快に登坂をこなしてくれました。OMRに対してカーボンのグレードを落としているはずですが、安易なデチューンというイメージはありませんね。
ただ試乗車にセットされているホイールの印象があまり良くありませんでした。フレームの基本性能が高いので、もっと外周部が軽く、硬いホイールをセットしてあげるべきですね。そうすれば登りももっと楽になるし、加速性能にも磨きがかかると思います。例えブラインドテストを行ったとしても、並の高級グレードのバイクに匹敵する上質な乗り味を味わえるでしょう。長い目で見れば、パーツ交換によってチューンアップを楽しめる一台、とも言えるはずです。
初心者にとっても扱いやすい、良い意味でのオーソドックスさ。ケーブルやワイヤー類も内装されていますが、外出しのシートクランプなど、セッティング・調整のしやすさ、使いやすさは乗り手にとっても、ショップにとっても高評価できる部分ですね。
数年前までは、オルカといえばフレーム40〜50万円の高値の花でした。このOMPは「コストパフォーマンスが非常に高い!」という訳でこそありませんが、36万円で完成車を手にできるのはアリだと思います。ピンクとライトブルーの色合いもとても綺麗ですし、実際に店舗での人気も高いんです。関西のロングライドイベントでも多く目にしますね。
レース中のせめぎあいで、わずか数cmの差を狙うのであれば、上級モデルの「OMR」を選んだ方が良いでしょう。ただしそういうニーズを持つ方は少ないですし、ロングライドでのストレスフリーさは多くの乗り手の味方になってくれるはず。平均点が非常に高く、目につくマイナスポイントがありません。よく作りこまれた隙のないバイクでした。
「レース参戦を視野に入れるなら良い選択肢 スモールサイズに気を使ったパッケージ」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
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前述した通りBBの硬さが活きるので、ダンシングや、トルクを掛けたシッティングでも登坂がしやすいですね。ただし脚が跳ね返されるほどではありませんし、このバイクを選ぶ人にとって使いやすいよう調整されていると感じます。
一方でリアバックはBBの硬さをいなすように、フワッとした印象でした。だから純然たるレースバイクと比べてロングライドでも疲れを感じにくいでしょうし、少し荒れた道でも安定して走ってくれるはずです。振動減衰性はかなり高く突き上げをマイルドに伝えるので、通じて巡行も行いやすい。長い距離を淡々と走るブルベにも良いかもしれません。
スプリントで最高の武器になる、最高の振動吸収性、とは言えませんが、全ての平均点が高い。一台でレース、山岳グランフォンド、ロングライドと多用途に使いたい方にとってはオススメしやすいですね。
特徴的だったのはフロントフォークから生まれる直進安定性です。下りでもハンドルが安定しているため、初心者でも不安を感じることは少ないはず。スパン!と切れ込むレーシングバイクとは異なるフィーリングですが、ダルい印象もありません。ボリュームの大きいヘッドチューブとの組み合わせで急制動にも負けませんし、不意の衝撃もしっかりと受け止めてくれます。個人的にはヒルクライムやロードレースで頑張りたい人におすすめだと感じます。
オルベアはサイズ間の乗り味の差を調整しているため、スモールサイズの試乗車でも癖や乗り辛さを感じませんでした。たまにスモールサイズのバイクにあまり気を使わない欧米ブランドがありますが、良い傾向ですね。
36万円でコンポーネントがシマノ105にFSAのクランク。コスト的にはやや高めと思いがちですが、フレームの素性を理解できれば悪くはありません。プロロゴのサドルも乗り心地が良かったですし、フレームやバーテープのデザインも面白いですね。試乗の機会を見つけさえすれば、きっとこのバイクの価値を納得できるでしょう。
細かい作りを見ても、小さい試乗車にもかかわらずワイヤー類のルーティングも許せる範囲ですし、FSAのコンパクトハンドル、カーボンシートポストなど、そつが無く、かつ適正なパッケージングが選ばれていますね。日本人には嬉しい気配りです。
レース機材としても、例えばJBCFのエリートカテゴリーまでであれば武器になってくれるはずですが、ホイールは変更したいかな、と。踏み出しの軽さがあれば、OMPの不得意部分を引き上げることができるでしょう。デュラエースC35、ボーラ35など、ミドルハイトがマッチしそうです。アルミホイールであればシャマル、キシリウムSLE、SLRなどでしょうか。
レースも、ツーリングもこなせるのがこのOMP。ツーリングをメインながら、今後レース参戦を視野に入れている方にとっては良い選択肢になるのではないでしょうか。
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オルベア ORCA OMP 105(完成車)
フレーム素材:オルカOMPカーボン
フォーク :OMPカーボン、カーボンコラム、カーボンドロップエンド1-1/8”-1.5”
カラー:ホワイトレッド、ブルーピンク、ピンクホワイト、ホワイトブルー、ブラック
サイズ 47、49、51、53、55、57
メインコンポーネント:シマノ 105
クランクセット:FSA CT50-34
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ステム:Orbea OC-II
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価格:360,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
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スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
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「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
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ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:So.Isobe
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