2016/01/01(金) - 10:18
UCIの規則改定により、公式レースでの使用が解禁されるディスクブレーキロード。その中でも最軽量を謳うのが、今回インプレッションする「フォーカス IZALCO MAX DISC」だ。重量増を最小限に抑えつつ、スルーアクスルにより安定性を向上させ、更に快適性をも追及した最先端の1台に迫る。
「German Engineered」という信念のもと、レースで勝利できる自転車を開発することを目標に掲げる総合バイクブランド、フォーカス。創業1992年とその歴史は浅いながらも、高品質なバイク造りに加え、サポートプロ選手の活躍により、今やドイツを代表するブランドに登り詰めた存在だ。
そんなフォーカスのロードバイクラインナップにおいて、最高峰に位置するのが「IZALCO(イザルコ)」シリーズ。2000年代中盤に初代がデビューして以降プロチームへと供給され、フィードバックを得ながら進化を続けてきたピュアレーシングバイクだ。
その最新モデルである「IZALCO MAX」は、ブランド史上最軽量を実現した一台。細身のフロントフォークに、振動吸収性やトラクション性能などのライドクオリティーを高めたフレームという、新たな軽量バイクの在り方を示した1台である。そして、今回のテスト車両である「IZALCO MAX DISC」は基本的なフレーム設計をキャリパーブレーキモデルから受け継ぎ、剛性や軽量性を維持しつつ、ディスクブレーキのメリットを最大限に引き出すべく、各部をアップデートした進化バージョンだ。
形状面で大きく変化したのは主に3箇所。まず1つ目がディスクブレーキキャリパーを受け止めるフォークとチェーンステーだ。他ブランドのリムブレーキ仕様のフレームと比較しても依然細身だが、IZALCO MAXのリムブレーキ仕様と比較すると、ボリュームを増しており、ディスクブレーキの高い制動力を受け止めるべく高強度化を図っている。また、開発の段階ではブレーキ熱による素材の変質についても調査されるという徹底ぶりだ。
一方でブレーキが取り除かれたシートステーから、2本の間を繋ぐブリッジを除去。これが2つ目の形状面での大きな変化である。より滑らかな形状となり、合わせて内部の積層にも手が加えられ、トップチューブとシートステーの接続部や、大きな開口部を持つ新型シートポストと合わせ、振動吸収性を高めている。
そして、3つ目がスルーアクスル化。CXチームのRapha-FOCUSのフィードバックをもとに開発されたR.A.T(Rapid Axle Technology)という、フォーカス独自の機構を採用する。これまでがスルーアクスル先端の雄ねじをフレーム側に設けられた雌ねじにねじ込んでいたのに対して、R.A.Tはスルーアクスル先端をT字のフックとしてフレーム側の専用形状の受けに掛けることでホイールを固定するもの。
これによりハブ周りの剛性を高め、ディスクブレーキの制動力を余すことなく受け止めることが可能に。同時に、レバーをたった90°ひねるだけで脱着可能となり、ホイール交換に要する作業時間を大幅に短縮した。従来のスルーアクスルより固定力が向上した点も見逃せない。
ディスクブレーキ化に伴うアップデートは形状面のみならず、走りを司るジオメトリーにも手が加えられている。リアエンドは130mmから142mmに延長し、変速性能を確保すべくリアセンターは405mmから415mmへと10mm延長。シート角及びヘッド角も変更されており、今回インプレッションで使用したXXSサイズでは、シート角を-0.2°、ヘッド角を-0.5°とし、安定感を高めた格好だ。タイヤクリアランスも28cタイヤを装着できるよう拡大された。
その他、プロチームのリクエストに応えシフトワイヤーを外装仕様のままとし、内装ワイヤリングとした場合に発生する重量増をセーブしつつ、油圧ブレーキホースは内蔵仕様に。ブレーキのマウントはフロントがポストマウント(テストバイクではアダプターを用いてフラットマウントに変換)、リアがシマノが提唱する新規格のフラットマウントという組み合わせ。ローター系はフロントが160mm、リアが140mmだ。
カーボン材質は「HM」と「ウルトラHM」という2種類のカーボンを独自比率でブレンドし、シートそれぞれの面積を可能な限り大きく取ることで高強度化と軽量を同時に実現した。同時に応力集中や重量増の原因となるフレーム内部のシワを防止し、より大きな負荷が掛かるディスクブレーキ仕様においては強度確保の重要なテクノロジーとなっている。
加えて、プロユースにも耐えうる強度を確保すべく、トップチューブ〜ヘッドチューブ〜ダウンチューブと繋がるコの字状のリブを配置。これは「ブーストボックス」というテクノロジーであり、安定感高いハンドリングの実現に貢献している。もちろん軽量化のためのフレーム一体式のフルカーボン製FD台座や、「THE MAX CRAMP」と名付けられた僅か18gのシートクランプも引き継がれている。
結果、リムブレーキ仕様からの重量増はフレームが65g、フォークが25gと最小限に抑えられており、市販のディスクブレーキロードとしては最軽量クラスのフレーム790g、フォーク325gを達成した。もちろんフォーカス製カーボンフレームの特長である「SSPS」、つまりフレームサイズによってチューブの外径を変え、トップチューブとダウンチューブの剛性バランスを調整するシステムが投入されており、各サイズ間で性能差が出ないよう配慮されている。
今回のテストバイクはシマノの油圧式ブレーキに機械式DURA-ACEのドライブトレインというアッセンブリーで、ホイールはチューブレスレディのDTスイス R23 DISC、タイヤはシュワルベONEの25C。完成車重量は7.2kgだ。2015年のユーロバイクアワードを獲得した、話題の1台のインプレッションをお届けしよう。
ーインプレッション
「グラベルロードの走破性とロードの軽快さを両立 ディスクブレーキの利点を大いに活かした1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
グラベルロードに近い乗り味のバイクというのが第一印象です。ディスクブレーキを搭載する都合で延長したチェーンステーと、シートステー間のブリッジを廃したことが、この乗り味を生み出しているのでしょう。ただし軽快さも十分ですし、このバイクに乗って自分のペースで1日中走り回りたい、と感じました。
性格としては全体的に穏やかで、脚に堪えるような硬さはなく、長距離を走るには持ってこい。でも反対にダンシングで加速したり大トルクの踏み込みに対しては苦手で、レースバイクとしてみれば少しマイルドな印象でした。ディスクブレーキ化をきっかけに、従来とは異なる方向に舵を切ったのかな、と思います。
ディスクブレーキロードという新ジャンルに関しては、私も普段から常用しており大賛成です。一般的なカーボンホイールの場合、ブレーキングの際にガツンと制動力が立ち上がる場合があります。しかしディスクはそういったことが無く、常に安定しており、特に当て効きがしやすいですね。下り坂で疲れていても少ない力で制動でき、雨の日でも制動力が落ちにくいなど、他にも多くのメリットがあります。
このIZALCO MAXについては、スルーアクスルを採用しているため、フォーク左右の動きのズレが少ない。ディスクブレーキは左側にしかキャリパーとローターが無い都合上、クイックレリーズ仕様だと左側の動きが大きくなってしまうのですが、今回のインプレッションではそういった感覚が希薄でした。ディスクブレーキにはスルーアクスルという今回の仕様が、今後の標準となるでしょう。
また、一度調整をしておけば、それ以降は締め加減を気にすることなくホイールを固定できるのは、フォーカスのスルーアクスルならではの特長ですね。もちろん、リムブレーキのバイクと走る際には制動力の差を気にする必要はありますが、当て効きがしやすく、スピードコントロールが容易なため、集団走行でも慣れればストレスを感じません。
フレーム設計において最も特徴的なのは、細身のフロントフォークですね。石畳のような荒れた路面では積極的に振動を吸収してくれて、ほとんど手に振動が伝わってきません。ロングライドでは強い味方になってくれることでしょう。かといって剛性不足でハンドリングの安定性に欠けたり、ブレーキング時にフォークがたわむことも無い。リア側もしなやかですし、ホイールベースが長いため、下りでの安定感も秀逸です。
平地巡航もケイデンスは高めがおすすめで、気持ちよく走ってくれました。下りは安定感が高く、ホイールベースが長いことによるアンダーステア気味の操作感がバイク全体の乗り味と良くマッチしていますね。
総じてIZALCO MAX DISCはディスクブレーキロードの方向性を示す1台といえるでしょう。リムブレーキ仕様と差別化されており、ディスクブレーキの利点を大いに活かしたバイクに仕上がっています。オススメなのは、グランフォンドでも順位を競ったり、ロングライドにもスピードを求める方、コンディションに関わらず走り続けなければならないブルベを好む方ですね。
デュラエースをメインに、FSAのカーボンクランクやDTスイスのホイールという組み合わせを考えれば妥当な価格設定でしょう。25Cのタイヤも良い。標準仕様のホイールも完成度が高いのですが、ホイールの選択肢がより多くなると、よりディスクブレーキロードが選択肢に入ってくるでしょう。各部の規格が統一されておらず、躊躇する方は少なくないと思われますが、新しいモノ好きの方には面白いのではないでしょうか。
「路面や天候を問わないという意味でもオールラウンドな1台 ロングライドに最適」
山崎敏正(シルベストサイクル)
新しい形のロードバイクですから、試乗前から個人的にも期待感が大きく、スルーアクスルの構造はとても興味深いものでした。実際に試乗してみての第一印象は、あらゆるシチュエーションに高い次元で対応できる1台。用途に加え、路面コンディションや天候を問わないという2つの意味でオールラウンドですね。
ブレーキ自体はコントローラブルで、高速域からの急制動でもガツンと止めることができ、当て効きでは思い通りに速度を落とせます。わざとフロントブレーキを頻繁にかけてみても、オンオフ感こそ拭えないものの、リムブレーキに近い感触で扱うことができました。
フレーム側も、キャリパー取り付け部やホイール固定部の剛性は充分に高く、ディスクブレーキの高い制動力をきっちりと受け止めていますね。特にフロントのスルーアクスルが大きな役割を果たしているのでしょう。ただ、リムブレーキとの性能差が大きいということには留意したいですね。雨では、特に顕著な差が出ますし、レースなどの集団走行時には気をつけたいところです。
フレーム設計においては、昨今では珍しく丸パイプを多用している部分が興味深いですね。バイク自体の剛性は高いレベルにあるものの、硬さを感じないという点でうまくコントロールできているのでしょう。ディスクブレーキ化に伴いシートステーブリッジが省略されていますが、これは剛性バランスを考えての設計と感じました。
横剛性が高いためロスが少ないのですが、縦方向の柔軟性に優れていることも目につきますね。大きな衝撃をいなしつつ、小さな振動をインフォメーションとして伝えてくれるため、路面状況をリニアに感じとることができました。前後の剛性バランスもよく、ダンシングしてもフロントとリアが常に同調し続けてくれます。
また、ディスクブレーキに伴ってリアセンターが延長されたためか、レーシングバイクとしてみると反応性に物足りなさを感じます。それでも、長距離ライドがメインという方であれば気にならない程度ではあります。細身のフォークは見た目には頼りない印象ですが、充分な剛性を持っていますね。
登りについては同価格帯のレーシングバイクと比較しても遜色ない性能があります。ダンシングかシッティングで言えば、シッティングのほうが得意だと感じました。どっかり腰を据えてグイグイと高トルクで踏んであげると、よりバイクは前に進んでくれる印象を受けました、また、ディスクブレーキ化により重心が低くなったことでダンシングの振りが軽いですね。
下りは非常に安定しています。ブレーキングに時にバイクが不自然な挙動を起こすと、ミスに繋がりやすく、冷や汗をかきますが、今回のインプレッションではそういったことはありませんでした。つまりはニュートラルということでしょう。ハンドルを曲げるのではなく、身体を倒しこんで重心を移動させるだけで自転車が滑らかに曲がってくれます。
路面や天候などのコンディションを選ばないという意味で、用途としてはロングライドが最も適していると言えそうです。ディスクブレーキですから雨でも不安感が無いですし、タイヤのクリアランスが大きい分だけ少しの泥なら気にせずに済むでしょうから、ちょっと脇道を探索なんて使い方もできますね。もちろんレースやエンデューロでも持ち味が活かせるでしょうし、アップダウンやコーナーが多いレースで雨が降れば大きなアドバンテージになるでしょう。
油圧ブレーキとデュラエースで640,000円というのは意外と安いかもしれません。気持ち良く走れるバイクを探していて、予算に余裕があるのであれば、是非検討して貰いたいです。今後の展望としては、ホイールの選択肢が増えてきて、ブレーキの挙動がリムブレーキにより近くなれば、このバイクの価値もより高まってくることでしょう。
フォーカス IZALCO MAX DISC(完成車)
フレーム:IZALCO MAX P2T 10 DISC カーボン
フォーク:IZALCO MAX P2T 10 DISC カーボンモノコック T4
メインコンポーネント:シマノ DURA-ACE
ブレーキ:シマノ ST-RS685/BR-RS805
クランク:FSA SL-K Light Carbon
ホイール:DTスイス R23 DISC tubeless ready (R.A.T.)
タイヤ:シュワルベ ONE 700x25C
サイズ:48、50、52cm
重 量:790g(フレーム単体)、325g(フォーク単体)7.2kg(完成車)
カラー:CARBON - BLUE - WHITE
価 格:648,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
「German Engineered」という信念のもと、レースで勝利できる自転車を開発することを目標に掲げる総合バイクブランド、フォーカス。創業1992年とその歴史は浅いながらも、高品質なバイク造りに加え、サポートプロ選手の活躍により、今やドイツを代表するブランドに登り詰めた存在だ。
そんなフォーカスのロードバイクラインナップにおいて、最高峰に位置するのが「IZALCO(イザルコ)」シリーズ。2000年代中盤に初代がデビューして以降プロチームへと供給され、フィードバックを得ながら進化を続けてきたピュアレーシングバイクだ。
その最新モデルである「IZALCO MAX」は、ブランド史上最軽量を実現した一台。細身のフロントフォークに、振動吸収性やトラクション性能などのライドクオリティーを高めたフレームという、新たな軽量バイクの在り方を示した1台である。そして、今回のテスト車両である「IZALCO MAX DISC」は基本的なフレーム設計をキャリパーブレーキモデルから受け継ぎ、剛性や軽量性を維持しつつ、ディスクブレーキのメリットを最大限に引き出すべく、各部をアップデートした進化バージョンだ。
形状面で大きく変化したのは主に3箇所。まず1つ目がディスクブレーキキャリパーを受け止めるフォークとチェーンステーだ。他ブランドのリムブレーキ仕様のフレームと比較しても依然細身だが、IZALCO MAXのリムブレーキ仕様と比較すると、ボリュームを増しており、ディスクブレーキの高い制動力を受け止めるべく高強度化を図っている。また、開発の段階ではブレーキ熱による素材の変質についても調査されるという徹底ぶりだ。
一方でブレーキが取り除かれたシートステーから、2本の間を繋ぐブリッジを除去。これが2つ目の形状面での大きな変化である。より滑らかな形状となり、合わせて内部の積層にも手が加えられ、トップチューブとシートステーの接続部や、大きな開口部を持つ新型シートポストと合わせ、振動吸収性を高めている。
そして、3つ目がスルーアクスル化。CXチームのRapha-FOCUSのフィードバックをもとに開発されたR.A.T(Rapid Axle Technology)という、フォーカス独自の機構を採用する。これまでがスルーアクスル先端の雄ねじをフレーム側に設けられた雌ねじにねじ込んでいたのに対して、R.A.Tはスルーアクスル先端をT字のフックとしてフレーム側の専用形状の受けに掛けることでホイールを固定するもの。
これによりハブ周りの剛性を高め、ディスクブレーキの制動力を余すことなく受け止めることが可能に。同時に、レバーをたった90°ひねるだけで脱着可能となり、ホイール交換に要する作業時間を大幅に短縮した。従来のスルーアクスルより固定力が向上した点も見逃せない。
ディスクブレーキ化に伴うアップデートは形状面のみならず、走りを司るジオメトリーにも手が加えられている。リアエンドは130mmから142mmに延長し、変速性能を確保すべくリアセンターは405mmから415mmへと10mm延長。シート角及びヘッド角も変更されており、今回インプレッションで使用したXXSサイズでは、シート角を-0.2°、ヘッド角を-0.5°とし、安定感を高めた格好だ。タイヤクリアランスも28cタイヤを装着できるよう拡大された。
その他、プロチームのリクエストに応えシフトワイヤーを外装仕様のままとし、内装ワイヤリングとした場合に発生する重量増をセーブしつつ、油圧ブレーキホースは内蔵仕様に。ブレーキのマウントはフロントがポストマウント(テストバイクではアダプターを用いてフラットマウントに変換)、リアがシマノが提唱する新規格のフラットマウントという組み合わせ。ローター系はフロントが160mm、リアが140mmだ。
カーボン材質は「HM」と「ウルトラHM」という2種類のカーボンを独自比率でブレンドし、シートそれぞれの面積を可能な限り大きく取ることで高強度化と軽量を同時に実現した。同時に応力集中や重量増の原因となるフレーム内部のシワを防止し、より大きな負荷が掛かるディスクブレーキ仕様においては強度確保の重要なテクノロジーとなっている。
加えて、プロユースにも耐えうる強度を確保すべく、トップチューブ〜ヘッドチューブ〜ダウンチューブと繋がるコの字状のリブを配置。これは「ブーストボックス」というテクノロジーであり、安定感高いハンドリングの実現に貢献している。もちろん軽量化のためのフレーム一体式のフルカーボン製FD台座や、「THE MAX CRAMP」と名付けられた僅か18gのシートクランプも引き継がれている。
結果、リムブレーキ仕様からの重量増はフレームが65g、フォークが25gと最小限に抑えられており、市販のディスクブレーキロードとしては最軽量クラスのフレーム790g、フォーク325gを達成した。もちろんフォーカス製カーボンフレームの特長である「SSPS」、つまりフレームサイズによってチューブの外径を変え、トップチューブとダウンチューブの剛性バランスを調整するシステムが投入されており、各サイズ間で性能差が出ないよう配慮されている。
今回のテストバイクはシマノの油圧式ブレーキに機械式DURA-ACEのドライブトレインというアッセンブリーで、ホイールはチューブレスレディのDTスイス R23 DISC、タイヤはシュワルベONEの25C。完成車重量は7.2kgだ。2015年のユーロバイクアワードを獲得した、話題の1台のインプレッションをお届けしよう。
ーインプレッション
「グラベルロードの走破性とロードの軽快さを両立 ディスクブレーキの利点を大いに活かした1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
グラベルロードに近い乗り味のバイクというのが第一印象です。ディスクブレーキを搭載する都合で延長したチェーンステーと、シートステー間のブリッジを廃したことが、この乗り味を生み出しているのでしょう。ただし軽快さも十分ですし、このバイクに乗って自分のペースで1日中走り回りたい、と感じました。
性格としては全体的に穏やかで、脚に堪えるような硬さはなく、長距離を走るには持ってこい。でも反対にダンシングで加速したり大トルクの踏み込みに対しては苦手で、レースバイクとしてみれば少しマイルドな印象でした。ディスクブレーキ化をきっかけに、従来とは異なる方向に舵を切ったのかな、と思います。
ディスクブレーキロードという新ジャンルに関しては、私も普段から常用しており大賛成です。一般的なカーボンホイールの場合、ブレーキングの際にガツンと制動力が立ち上がる場合があります。しかしディスクはそういったことが無く、常に安定しており、特に当て効きがしやすいですね。下り坂で疲れていても少ない力で制動でき、雨の日でも制動力が落ちにくいなど、他にも多くのメリットがあります。
このIZALCO MAXについては、スルーアクスルを採用しているため、フォーク左右の動きのズレが少ない。ディスクブレーキは左側にしかキャリパーとローターが無い都合上、クイックレリーズ仕様だと左側の動きが大きくなってしまうのですが、今回のインプレッションではそういった感覚が希薄でした。ディスクブレーキにはスルーアクスルという今回の仕様が、今後の標準となるでしょう。
また、一度調整をしておけば、それ以降は締め加減を気にすることなくホイールを固定できるのは、フォーカスのスルーアクスルならではの特長ですね。もちろん、リムブレーキのバイクと走る際には制動力の差を気にする必要はありますが、当て効きがしやすく、スピードコントロールが容易なため、集団走行でも慣れればストレスを感じません。
フレーム設計において最も特徴的なのは、細身のフロントフォークですね。石畳のような荒れた路面では積極的に振動を吸収してくれて、ほとんど手に振動が伝わってきません。ロングライドでは強い味方になってくれることでしょう。かといって剛性不足でハンドリングの安定性に欠けたり、ブレーキング時にフォークがたわむことも無い。リア側もしなやかですし、ホイールベースが長いため、下りでの安定感も秀逸です。
平地巡航もケイデンスは高めがおすすめで、気持ちよく走ってくれました。下りは安定感が高く、ホイールベースが長いことによるアンダーステア気味の操作感がバイク全体の乗り味と良くマッチしていますね。
総じてIZALCO MAX DISCはディスクブレーキロードの方向性を示す1台といえるでしょう。リムブレーキ仕様と差別化されており、ディスクブレーキの利点を大いに活かしたバイクに仕上がっています。オススメなのは、グランフォンドでも順位を競ったり、ロングライドにもスピードを求める方、コンディションに関わらず走り続けなければならないブルベを好む方ですね。
デュラエースをメインに、FSAのカーボンクランクやDTスイスのホイールという組み合わせを考えれば妥当な価格設定でしょう。25Cのタイヤも良い。標準仕様のホイールも完成度が高いのですが、ホイールの選択肢がより多くなると、よりディスクブレーキロードが選択肢に入ってくるでしょう。各部の規格が統一されておらず、躊躇する方は少なくないと思われますが、新しいモノ好きの方には面白いのではないでしょうか。
「路面や天候を問わないという意味でもオールラウンドな1台 ロングライドに最適」
山崎敏正(シルベストサイクル)
新しい形のロードバイクですから、試乗前から個人的にも期待感が大きく、スルーアクスルの構造はとても興味深いものでした。実際に試乗してみての第一印象は、あらゆるシチュエーションに高い次元で対応できる1台。用途に加え、路面コンディションや天候を問わないという2つの意味でオールラウンドですね。
ブレーキ自体はコントローラブルで、高速域からの急制動でもガツンと止めることができ、当て効きでは思い通りに速度を落とせます。わざとフロントブレーキを頻繁にかけてみても、オンオフ感こそ拭えないものの、リムブレーキに近い感触で扱うことができました。
フレーム側も、キャリパー取り付け部やホイール固定部の剛性は充分に高く、ディスクブレーキの高い制動力をきっちりと受け止めていますね。特にフロントのスルーアクスルが大きな役割を果たしているのでしょう。ただ、リムブレーキとの性能差が大きいということには留意したいですね。雨では、特に顕著な差が出ますし、レースなどの集団走行時には気をつけたいところです。
フレーム設計においては、昨今では珍しく丸パイプを多用している部分が興味深いですね。バイク自体の剛性は高いレベルにあるものの、硬さを感じないという点でうまくコントロールできているのでしょう。ディスクブレーキ化に伴いシートステーブリッジが省略されていますが、これは剛性バランスを考えての設計と感じました。
横剛性が高いためロスが少ないのですが、縦方向の柔軟性に優れていることも目につきますね。大きな衝撃をいなしつつ、小さな振動をインフォメーションとして伝えてくれるため、路面状況をリニアに感じとることができました。前後の剛性バランスもよく、ダンシングしてもフロントとリアが常に同調し続けてくれます。
また、ディスクブレーキに伴ってリアセンターが延長されたためか、レーシングバイクとしてみると反応性に物足りなさを感じます。それでも、長距離ライドがメインという方であれば気にならない程度ではあります。細身のフォークは見た目には頼りない印象ですが、充分な剛性を持っていますね。
登りについては同価格帯のレーシングバイクと比較しても遜色ない性能があります。ダンシングかシッティングで言えば、シッティングのほうが得意だと感じました。どっかり腰を据えてグイグイと高トルクで踏んであげると、よりバイクは前に進んでくれる印象を受けました、また、ディスクブレーキ化により重心が低くなったことでダンシングの振りが軽いですね。
下りは非常に安定しています。ブレーキングに時にバイクが不自然な挙動を起こすと、ミスに繋がりやすく、冷や汗をかきますが、今回のインプレッションではそういったことはありませんでした。つまりはニュートラルということでしょう。ハンドルを曲げるのではなく、身体を倒しこんで重心を移動させるだけで自転車が滑らかに曲がってくれます。
路面や天候などのコンディションを選ばないという意味で、用途としてはロングライドが最も適していると言えそうです。ディスクブレーキですから雨でも不安感が無いですし、タイヤのクリアランスが大きい分だけ少しの泥なら気にせずに済むでしょうから、ちょっと脇道を探索なんて使い方もできますね。もちろんレースやエンデューロでも持ち味が活かせるでしょうし、アップダウンやコーナーが多いレースで雨が降れば大きなアドバンテージになるでしょう。
油圧ブレーキとデュラエースで640,000円というのは意外と安いかもしれません。気持ち良く走れるバイクを探していて、予算に余裕があるのであれば、是非検討して貰いたいです。今後の展望としては、ホイールの選択肢が増えてきて、ブレーキの挙動がリムブレーキにより近くなれば、このバイクの価値もより高まってくることでしょう。
フォーカス IZALCO MAX DISC(完成車)
フレーム:IZALCO MAX P2T 10 DISC カーボン
フォーク:IZALCO MAX P2T 10 DISC カーボンモノコック T4
メインコンポーネント:シマノ DURA-ACE
ブレーキ:シマノ ST-RS685/BR-RS805
クランク:FSA SL-K Light Carbon
ホイール:DTスイス R23 DISC tubeless ready (R.A.T.)
タイヤ:シュワルベ ONE 700x25C
サイズ:48、50、52cm
重 量:790g(フレーム単体)、325g(フォーク単体)7.2kg(完成車)
カラー:CARBON - BLUE - WHITE
価 格:648,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
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photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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