2015/12/12(土) - 09:15
今回のインプレッションで取り上げるのは、ケモ「KE-R8 4KS」。イタリアで20年以上に渡ってカーボンバイクの開発と製造に携わってきたエキスパートが、自らの理想を追求するべく立ち上げた新興ブランドの実力はいかに。
「風の中で踊る」というケルト語をその名に冠した2014年創業のヨーロピアンブランド「KEMO(ケモ)」。創業間もない2014年、早くもフランスのプロコンチームであるブルターニュ・セシェがチームバイクに採用。その年にはツール・ド・フランスに初登場し注目を集めた、気鋭のバイクメーカーである。
その指揮を取るのは、カーボンバイクのエキスパートとも言うべきエルマンノとマリオのコマリ兄弟だ。2人は、多くのブランドが金属素材を使用したバイクをフラッグシップとしていた1990年代中盤ごろよりカーボン素材の可能性に着目。2001年にミラノショーでカーボンバイクを発表し、高い評価を得る。その後も高性能なレーシングバイクを次々と開発、その間に蓄積してきた技術や経験を元手に、自らの理想をさらに追求すべく、2014年にケモを立ち上げた。
同社の特徴の1つといえるのが、スイスを拠点に開発及び設計を行う一方で、製造自体はコマリ兄弟が勝手知ったるイタリアで行っていることにある。これは理想の性能を実現するための重要な鍵の1つであり、優れた技術を有するイタリアの職人達がケモの高品質の原動力になっている。
ラインアップはロードバイクが中心で、国内展開されるのは2モデルのTTバイクを合わせた計7モデル。その中で、オールラウンドモデルに位置づけられるのが今回インプレッションする「KE-R8 4KS」だ。ブルターニュ・セシェがツールで使用したハイエンドモデル「KE-R8 5KS」と共通のフレーム形状とメイン素材を採用するセカンドグレードにあたる。
カーボンのエキスパートによるブランドらしく、このKE-R8にもおいても技術的なコアとなっているのは使用されるマテリアルである。KE-R8では、他社のハイエンドにも多く採用される60Tの高張力カーボンをメインに、耐力に優れる「5T」をミックス。素材本来の性能を発揮させるべく、1枚のプリプレグが可能な限り長くなるようレイアップを設計している。
そして実際の製造行程では、カッティング時に素材が変質することを抑えるために、デジタルCNCを使用し各プレプリグを裁断。EPSプロセスを用いて成型中に各部の厚みをコントロールし、応力集中による強度低下の原因となる内部のシワを抑え、同時に無駄を省くことで軽量化を図った。
なお、KE-R8 5KSとKE-R8 4KSの違いは表層のカーボンにあり、5KSが炭素シートを編み込んだ革新的な構造による大きな網目が特徴的なTeXtreamとしたのに対し、4KSでは網目の細かな1Kカーボンを採用。5KSと比較してわずかに重量増となる替わりに、より優れた振動吸収性とホビーレーサーにも最適な剛性感を獲得しているという。
フレーム形状は近年のトレンドに倣い、ヘッド~ダウンチューブ~BBのボトムラインに剛性を担わせ、トップチューブとシートステーにシートチューブを加えたアッパーラインの柔軟性を高めている。
ボトムラインの中でも特に際立っているのが、BB周りのボリュームだ。シェル幅を目一杯拡幅することのできるBB386規格を採用し、各チューブとの接続部の面積を拡大。そしてシートステーのBB側の端部は長方形断面とし、タイヤクリアランスを確保しつつ可能な限りボリュームを高めることで、ペダリングロスを低減。一方で、BBとシートチューブの接続部は上方へ向かってシュッと細くなる形状に。大きな弧を描くベンド形状のトップチューブやシートステーとあわせて、振動吸収性を向上させた。
サイズはXXS、XS、S、M、L、XLの6種類をラインアップ。フレーム(Sサイズ)とフォークの重量は、それぞれ969gと328g。ネオンカラーを中心とした全8色展開となる。
販売パッケージは4種類の完成車とフレームセットの計5種類で、完成車の場合、コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2、DURA-ACE、ULTEGRA Di2、ULTEGRAから選択できる。今回のインプレッションバイクはシマノULTEGRA完成車を使用。ホイール及びタイヤはシマノWH-RS-81-C24-CLにヴィットリアDiamanteという組み合わせだ。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「これぞ高級バイク 高張力カーボンによる乾いた乗り味と優れた加速感が魅力の1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
素材の良さが全面に出ており、パリッと乾いたイメージの乗り味や、肉薄なことによる「カンカンカン」という振動音は、高張力カーボンならでは。ひと踏みしただけで「これぞ高級バイク」ということが伝わってきました。脚力レベルの高いライダーにこそ最適なレーシングバイクですね。
このバイクの最大の持ち味は加速感ですね。樹の幹のごとくBB周りは圧倒的なボリューム感で、そこからダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーが枝分かれしているかのような印象を覚えるほど。402mmと他メーカーよりもリアセンターが短いことも反応性の高さに貢献しているのでしょう。特に下りでは、力強く踏み込むと「シューッ」と勢い良くスピードが伸びてくれます。
登りでは、重量的な軽さと高い剛性感による高級バイクならではの軽やかさを顕著に感じることができ、優れた加速感が発揮されます。シッティングでもダンシングでも気持ちよく進んでくれますが、硬さを活かすという意味ではケイデンスは高めが有効ですね。具体的には70~80rpmで、踏力が無駄なく推進力へと変換されていると感じることができました。激坂も卒なくこなしてくれます。
平地巡航では速度を上げざるを得ませんね(笑)。私が思うに、この様な高級バイクはゆっくり走っていても本来の良さが出にくく、ライダーにハイスピードを要求してきます。それでいてKE-R8 4KSは加速感が良いためついつい踏んでしまいますし、もっと踏めるのではないかとライダーの気持ちを高めてくれますね。
ハンドリングについては、フォークのオフセットが48mmとやや大きめのためかアンダーステア気味。コーナリングでは身体を意図的に倒してあげる必要がありますが、慣れの範疇ではあるでしょう。ブレーキングも卒なく、ヘッドやフォークが負けることもありません。
快適性はスゴく良いという訳でもないですが、加速感をスポイルしない範囲で最大限に高められている印象です。路面のインフォメーションを的確に伝えつつも振動による疲労感が少なく、レーシングバイクとしては充分。素材の良さも振動吸収性に貢献していますね。
ブランドとしての歴史はまだ浅いですが、他ブランドのトップレンジと肩を並べる性能を持った1台で、実績ある技術者によるブランドということで信頼性という点でも不安はありません。JPTクラスの脚力のライダーでも満足できるでしょう。チャンスがあれば是非とも試乗して頂きたいですし、乗ればすぐに分かる性能の高さがあります。
また、為替の影響でメジャーな欧州ブランドのハイエンドモデルが手の届きにくい価格設定となってしまっている中にあって、コスト面でも優れていますね。今回の試乗車パッケージと同等の金額で、フレームセットというバイクも多いですから、バリューは高いといえるでしょう。そして、欧州には多くのバイクブランドがありますが、その中でも確かな性能を持ちながらも、他人とは被りにくいバイクがほしいという方には持ってこいですね。
「ダンシング性能に現れる設計の妙 隙のない高性能レーシングバイク」
山崎敏正(シルベストサイクル)
愛車を新調したくなってしまうほどに心躍る1台でした。各メーカーからも高性能なバイクが次々とリリースされ、全体的な水準が高くなっている中にあって、新興ブランドからハッとさせられるバイクが登場したというのは驚き。爆発的な加速性能を持ちつつ、コントローラブルで、意のままに操ることができます。
位置づけとしては、ピュアレーシングバイクですね。エンデューロやロングライドではなく、登録系レースやクリテリウムでこそ真価を発揮します。フレーム単体で100,000円以上高価な、プロツアーチームが採用する各社のハイエンドと同等かそれ以上の性能を持っています。
サドルに深く腰掛けて高ケイデンスで回したり、あるいは前のめりになってトルクを掛けたりと、どのような走り方でも卒なく進んでくれますが、中でもダンシング時の走りがこのバイクの持ち味です。一般的に、ダンシングを続けてスピードが上がると左右の振りが早くなり、バイクと身体の動きがずれてギクシャクするものですが、今回のテストバイクはいつまでも同調したままダンシングし続けることができました。
もちろん振り自体も軽く、軽量なフルカーボンチューブラーホイールを装着しているのでは?という錯覚すら覚えるほど。疲労が溜まってきて、他のバイクならシッティングのみになってしまうシーンでも、これなら腰を上げてバイクを左右に振りながらペダルを踏み込めますね。それだけダンシングしやすさが卓越しています。恐らく、ジオメトリーやカーボンのレイヤリングなどあらゆる設計要素が、これ以上ないバランスで同調できたために、この素晴らしいダンシング時の走りを実現できたのでしょう。
剛性は確実に高く、踏み込んだ際にもたわみを感じない一方で、硬すぎて反発することはありません。登りではリズミカルにダンシングとシッティングを繰り返しながら乗るとうまく走ってくれます。際立って軽いわけではないので、激坂というよりも、緩斜面が長く続く峠やアップダウンが得意ですね。
レーシングバイクですので、優れた快適性を狙った1台ではないですが、充分に振動は吸収してくれます。
ビギナーが乗ってどう感じるかは分かりかねますが、ハンドリングやブレーキングの挙動は至ってニュートラル。総じてとても戦闘力の高いバイクで、全く隙がありません。
コンポーネントにシマノULTEGRAを、ホイールにシマノWH-RS81-C24を採用した今回のテストバイクのパーツアッセンブルも隙がありません。実業団のE1クラスタでも優勝を狙うこともできますね。
ケモ KE-R8 4KS
フレーム素材:60T、1K
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
重 量:969g(フレーム単体Sサイズ)、328g(フォーク)
カラー:ブラック/ホワイト、ブラック/グレー、ブラック/イエロー、ブラック/グリーン、ブラック/オレンジ、カーボンホワイト、カーボンオレンジ、カーボンイエロー
税抜価格(カッコ内はホイール):
シマノ DURA-ACE Di2 820,000円(WH-9000 C-24 CL)、713,000円(WH-RS11)
シマノ DURA-ACE 693,000円(WH-9000 C-24 CL)、586,000円(WH-RS11)
シマノ ULTEGRA Di2 616,200円(WH-RS81-C24-CL)、557,000円(WH-RS11)
シマノ ULTEGRA 545,000円(WH-RS81-C24-CL)、486,000円(WH-RS11)
フレームセット 356,000円(シートピラー付属)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
「風の中で踊る」というケルト語をその名に冠した2014年創業のヨーロピアンブランド「KEMO(ケモ)」。創業間もない2014年、早くもフランスのプロコンチームであるブルターニュ・セシェがチームバイクに採用。その年にはツール・ド・フランスに初登場し注目を集めた、気鋭のバイクメーカーである。
その指揮を取るのは、カーボンバイクのエキスパートとも言うべきエルマンノとマリオのコマリ兄弟だ。2人は、多くのブランドが金属素材を使用したバイクをフラッグシップとしていた1990年代中盤ごろよりカーボン素材の可能性に着目。2001年にミラノショーでカーボンバイクを発表し、高い評価を得る。その後も高性能なレーシングバイクを次々と開発、その間に蓄積してきた技術や経験を元手に、自らの理想をさらに追求すべく、2014年にケモを立ち上げた。
同社の特徴の1つといえるのが、スイスを拠点に開発及び設計を行う一方で、製造自体はコマリ兄弟が勝手知ったるイタリアで行っていることにある。これは理想の性能を実現するための重要な鍵の1つであり、優れた技術を有するイタリアの職人達がケモの高品質の原動力になっている。
ラインアップはロードバイクが中心で、国内展開されるのは2モデルのTTバイクを合わせた計7モデル。その中で、オールラウンドモデルに位置づけられるのが今回インプレッションする「KE-R8 4KS」だ。ブルターニュ・セシェがツールで使用したハイエンドモデル「KE-R8 5KS」と共通のフレーム形状とメイン素材を採用するセカンドグレードにあたる。
カーボンのエキスパートによるブランドらしく、このKE-R8にもおいても技術的なコアとなっているのは使用されるマテリアルである。KE-R8では、他社のハイエンドにも多く採用される60Tの高張力カーボンをメインに、耐力に優れる「5T」をミックス。素材本来の性能を発揮させるべく、1枚のプリプレグが可能な限り長くなるようレイアップを設計している。
そして実際の製造行程では、カッティング時に素材が変質することを抑えるために、デジタルCNCを使用し各プレプリグを裁断。EPSプロセスを用いて成型中に各部の厚みをコントロールし、応力集中による強度低下の原因となる内部のシワを抑え、同時に無駄を省くことで軽量化を図った。
なお、KE-R8 5KSとKE-R8 4KSの違いは表層のカーボンにあり、5KSが炭素シートを編み込んだ革新的な構造による大きな網目が特徴的なTeXtreamとしたのに対し、4KSでは網目の細かな1Kカーボンを採用。5KSと比較してわずかに重量増となる替わりに、より優れた振動吸収性とホビーレーサーにも最適な剛性感を獲得しているという。
フレーム形状は近年のトレンドに倣い、ヘッド~ダウンチューブ~BBのボトムラインに剛性を担わせ、トップチューブとシートステーにシートチューブを加えたアッパーラインの柔軟性を高めている。
ボトムラインの中でも特に際立っているのが、BB周りのボリュームだ。シェル幅を目一杯拡幅することのできるBB386規格を採用し、各チューブとの接続部の面積を拡大。そしてシートステーのBB側の端部は長方形断面とし、タイヤクリアランスを確保しつつ可能な限りボリュームを高めることで、ペダリングロスを低減。一方で、BBとシートチューブの接続部は上方へ向かってシュッと細くなる形状に。大きな弧を描くベンド形状のトップチューブやシートステーとあわせて、振動吸収性を向上させた。
サイズはXXS、XS、S、M、L、XLの6種類をラインアップ。フレーム(Sサイズ)とフォークの重量は、それぞれ969gと328g。ネオンカラーを中心とした全8色展開となる。
販売パッケージは4種類の完成車とフレームセットの計5種類で、完成車の場合、コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2、DURA-ACE、ULTEGRA Di2、ULTEGRAから選択できる。今回のインプレッションバイクはシマノULTEGRA完成車を使用。ホイール及びタイヤはシマノWH-RS-81-C24-CLにヴィットリアDiamanteという組み合わせだ。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「これぞ高級バイク 高張力カーボンによる乾いた乗り味と優れた加速感が魅力の1台」
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
素材の良さが全面に出ており、パリッと乾いたイメージの乗り味や、肉薄なことによる「カンカンカン」という振動音は、高張力カーボンならでは。ひと踏みしただけで「これぞ高級バイク」ということが伝わってきました。脚力レベルの高いライダーにこそ最適なレーシングバイクですね。
このバイクの最大の持ち味は加速感ですね。樹の幹のごとくBB周りは圧倒的なボリューム感で、そこからダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーが枝分かれしているかのような印象を覚えるほど。402mmと他メーカーよりもリアセンターが短いことも反応性の高さに貢献しているのでしょう。特に下りでは、力強く踏み込むと「シューッ」と勢い良くスピードが伸びてくれます。
登りでは、重量的な軽さと高い剛性感による高級バイクならではの軽やかさを顕著に感じることができ、優れた加速感が発揮されます。シッティングでもダンシングでも気持ちよく進んでくれますが、硬さを活かすという意味ではケイデンスは高めが有効ですね。具体的には70~80rpmで、踏力が無駄なく推進力へと変換されていると感じることができました。激坂も卒なくこなしてくれます。
平地巡航では速度を上げざるを得ませんね(笑)。私が思うに、この様な高級バイクはゆっくり走っていても本来の良さが出にくく、ライダーにハイスピードを要求してきます。それでいてKE-R8 4KSは加速感が良いためついつい踏んでしまいますし、もっと踏めるのではないかとライダーの気持ちを高めてくれますね。
ハンドリングについては、フォークのオフセットが48mmとやや大きめのためかアンダーステア気味。コーナリングでは身体を意図的に倒してあげる必要がありますが、慣れの範疇ではあるでしょう。ブレーキングも卒なく、ヘッドやフォークが負けることもありません。
快適性はスゴく良いという訳でもないですが、加速感をスポイルしない範囲で最大限に高められている印象です。路面のインフォメーションを的確に伝えつつも振動による疲労感が少なく、レーシングバイクとしては充分。素材の良さも振動吸収性に貢献していますね。
ブランドとしての歴史はまだ浅いですが、他ブランドのトップレンジと肩を並べる性能を持った1台で、実績ある技術者によるブランドということで信頼性という点でも不安はありません。JPTクラスの脚力のライダーでも満足できるでしょう。チャンスがあれば是非とも試乗して頂きたいですし、乗ればすぐに分かる性能の高さがあります。
また、為替の影響でメジャーな欧州ブランドのハイエンドモデルが手の届きにくい価格設定となってしまっている中にあって、コスト面でも優れていますね。今回の試乗車パッケージと同等の金額で、フレームセットというバイクも多いですから、バリューは高いといえるでしょう。そして、欧州には多くのバイクブランドがありますが、その中でも確かな性能を持ちながらも、他人とは被りにくいバイクがほしいという方には持ってこいですね。
「ダンシング性能に現れる設計の妙 隙のない高性能レーシングバイク」
山崎敏正(シルベストサイクル)
愛車を新調したくなってしまうほどに心躍る1台でした。各メーカーからも高性能なバイクが次々とリリースされ、全体的な水準が高くなっている中にあって、新興ブランドからハッとさせられるバイクが登場したというのは驚き。爆発的な加速性能を持ちつつ、コントローラブルで、意のままに操ることができます。
位置づけとしては、ピュアレーシングバイクですね。エンデューロやロングライドではなく、登録系レースやクリテリウムでこそ真価を発揮します。フレーム単体で100,000円以上高価な、プロツアーチームが採用する各社のハイエンドと同等かそれ以上の性能を持っています。
サドルに深く腰掛けて高ケイデンスで回したり、あるいは前のめりになってトルクを掛けたりと、どのような走り方でも卒なく進んでくれますが、中でもダンシング時の走りがこのバイクの持ち味です。一般的に、ダンシングを続けてスピードが上がると左右の振りが早くなり、バイクと身体の動きがずれてギクシャクするものですが、今回のテストバイクはいつまでも同調したままダンシングし続けることができました。
もちろん振り自体も軽く、軽量なフルカーボンチューブラーホイールを装着しているのでは?という錯覚すら覚えるほど。疲労が溜まってきて、他のバイクならシッティングのみになってしまうシーンでも、これなら腰を上げてバイクを左右に振りながらペダルを踏み込めますね。それだけダンシングしやすさが卓越しています。恐らく、ジオメトリーやカーボンのレイヤリングなどあらゆる設計要素が、これ以上ないバランスで同調できたために、この素晴らしいダンシング時の走りを実現できたのでしょう。
剛性は確実に高く、踏み込んだ際にもたわみを感じない一方で、硬すぎて反発することはありません。登りではリズミカルにダンシングとシッティングを繰り返しながら乗るとうまく走ってくれます。際立って軽いわけではないので、激坂というよりも、緩斜面が長く続く峠やアップダウンが得意ですね。
レーシングバイクですので、優れた快適性を狙った1台ではないですが、充分に振動は吸収してくれます。
ビギナーが乗ってどう感じるかは分かりかねますが、ハンドリングやブレーキングの挙動は至ってニュートラル。総じてとても戦闘力の高いバイクで、全く隙がありません。
コンポーネントにシマノULTEGRAを、ホイールにシマノWH-RS81-C24を採用した今回のテストバイクのパーツアッセンブルも隙がありません。実業団のE1クラスタでも優勝を狙うこともできますね。
ケモ KE-R8 4KS
フレーム素材:60T、1K
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
重 量:969g(フレーム単体Sサイズ)、328g(フォーク)
カラー:ブラック/ホワイト、ブラック/グレー、ブラック/イエロー、ブラック/グリーン、ブラック/オレンジ、カーボンホワイト、カーボンオレンジ、カーボンイエロー
税抜価格(カッコ内はホイール):
シマノ DURA-ACE Di2 820,000円(WH-9000 C-24 CL)、713,000円(WH-RS11)
シマノ DURA-ACE 693,000円(WH-9000 C-24 CL)、586,000円(WH-RS11)
シマノ ULTEGRA Di2 616,200円(WH-RS81-C24-CL)、557,000円(WH-RS11)
シマノ ULTEGRA 545,000円(WH-RS81-C24-CL)、486,000円(WH-RS11)
フレームセット 356,000円(シートピラー付属)
インプレライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
山崎敏正(シルベストサイクル)
「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在も現役でロードレースを走る。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供する。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
ウエア協力:reric
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
リンク