2015/11/24(火) - 12:28
名物の長い砂セクションに泥が追加されたコクサイデ。好調ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)との一騎打ちを制したスヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク)がUCIシクロクロスワールドカップ通算50勝目を飾った。
ベルギー・コクサイデと言えば砂コース。砂地でありながらアップダウンがあるのが特徴で、トップ選手であっても担ぎ&押しを余儀なくされる難所がいくつも登場する。今年はレース中も降り続いた雨によってウェットな状態となり、砂と泥が組み合わされる難コースとなった。
フランスのパリ同時多発テロ事件以後、ベルギーのセキュリティレベルが引き上げられたことを受けて一時は開催も危ぶまれたものの、警備人員を増やして大会はスタートした。
8月のツール・ド・ラヴニールでの落車で膝を痛め、10月に手術を受けた世界チャンピオンのマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)が久々に登場。20歳ファンデルポールとの戦いを楽しみにしていたという同年代21歳の絶好調ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)がスタート後すぐに先頭に立った。
泥に覆われた重馬場を踏み続けるファンアールトにはローレンス・スウィーク(ベルギー、エラリアルエステート)やトム・メーウセン(ベルギー、テレネット・フィデア)が合流してハイペースを刻む。一方でネイスは15番手前後のスロースタート。
アルカンシェルを着るファンデルポールはブランクを感じさせない走りで砂区間を攻略して先頭に立ったが、世界チャンピオンの独走は長続きせず、すぐさまUCIワールドカップリーダーのファンアールトが合流。シクロクロス界を牽引する若き2人がリードして1周目を終えた。
スウィークやラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)らが先頭パックに合流するシーンも見られたものの、ファンデルポールとファンアールトが常に先頭ポジションをキープする。この若手2人に追いついたのは、後方からじわりじわりとポジションを上げたネイスだった。
レース開始から20分が経過する頃にはファンデルポールが失速し、最速ラップを記録したネイスが先頭ファンアールトをキャッチ。ここからフィニッシュまで5周回にわたって両者がバトルを繰り広げることになる。
泥をまとった白いUCIワールドカップリーダージャージを着てアタックを繰り返したファンアールトの後ろには常にネイスの姿が。逆にファンアールトはリアタイヤのパンクによってバイク交換を強いられ、ネイスに10秒の先行を許してしまう。
巧みなバイクコントロールで自分のラインを見つけて砂セクションを突き進んだネイスだったが、フィニッシュまで2周回を残してファンアールトに追いつかれて再び先頭は2人に。ネイスとファンアールトは競り合いながら後続3番手ファンデルポールから46秒リードで最終周回に入った。
最も長い砂セクションをそれぞれのラインでこなし、肩を突き合わしながら泥の下に隠れた表情を探り合うネイスとファンアールト。砂の登りを乗車でクリアしたファンアールトが一歩リードするも、すぐにネイスがギャップを埋める。続くネイスの先行もファンアールトが潰す。観客の絶叫を受けながら、2人は最後の泥セクションに差し掛かった。
重い泥のストレートで繰り広げられた最終コーナーに向けたパワー勝負。コーナーのイン側を突き進んだネイスがわずかに先行して舗装路の最終ストレートに入り、そのままファンアールトを振り切った。
「インクレディブル(信じられない気分)だ」と、壮絶な戦いを制したネイスは語る。「寒く、泥に溢れ、テクニカルでタフなレースだった。最後は力と力のぶつかり合いだった。世界最高のシクロクロスライダーとの一騎打ちにアドレナリンが出たよ。キャリアの絶頂期のような気分。今シーズンはすでに成功だと言える。すでに大きな幸せに包まれている」。
現在39歳のネイスにとってこれが記念すべきUCIワールドカップ50勝目。今シーズン限りでの引退を表明しているネイスはレース後に「コクサイデのUCIワールドカップで勝利。こうしてチャンピオンとしてキャリアを締めくくるんだ!」とツイートしている。なお、ネイスが初めてUCIワールドカップで勝利したのは1999年のこと。この日最後まで競り合ったファンアールトは当時5歳だった。
UCIワールドカップリーダーの座を辛くも守ったファンアールトは「パンクで遅れた時、またネイスに追いつけると信じて走り続けた。でも今日はテクニカルなコースでミスも犯したし、自分の日ではなかった。ネイスと彼の輝かしいキャリアは大きなリスペクトに値するよ」とコメントしている。
中盤にポジションを落としながらも終盤にかけてペースを戻し、3位に入ったファンデルポールは復帰戦について「序盤は抑えるべきだったけど、身体が言うことを聞かなかった。そこから落ち着いて数周回を走り、再びペースを上げたんだ。でも序盤に抑えていたところで結果は変わらなかった(ネイスとファンアールトには敵わなかった)と思うよ」と語っている。
UCIシクロクロスワールドカップ2015-2016第3戦
1位 スヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク) 1h02’39”
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス) +04”
3位 マテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン) +1’06”
4位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +1’12”
5位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、エラリアルエステート) +1’19”
6位 トム・メーウセン(ベルギー、テレネット・フィデア) +1’31”
7位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア) +1’34”
8位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +1’46”
9位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・フィデア) +2’00”
10位 ジュリアン・タラマルカス(スイス、エラリアルエステート) +2’06”
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
ベルギー・コクサイデと言えば砂コース。砂地でありながらアップダウンがあるのが特徴で、トップ選手であっても担ぎ&押しを余儀なくされる難所がいくつも登場する。今年はレース中も降り続いた雨によってウェットな状態となり、砂と泥が組み合わされる難コースとなった。
フランスのパリ同時多発テロ事件以後、ベルギーのセキュリティレベルが引き上げられたことを受けて一時は開催も危ぶまれたものの、警備人員を増やして大会はスタートした。
8月のツール・ド・ラヴニールでの落車で膝を痛め、10月に手術を受けた世界チャンピオンのマテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン)が久々に登場。20歳ファンデルポールとの戦いを楽しみにしていたという同年代21歳の絶好調ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス)がスタート後すぐに先頭に立った。
泥に覆われた重馬場を踏み続けるファンアールトにはローレンス・スウィーク(ベルギー、エラリアルエステート)やトム・メーウセン(ベルギー、テレネット・フィデア)が合流してハイペースを刻む。一方でネイスは15番手前後のスロースタート。
アルカンシェルを着るファンデルポールはブランクを感じさせない走りで砂区間を攻略して先頭に立ったが、世界チャンピオンの独走は長続きせず、すぐさまUCIワールドカップリーダーのファンアールトが合流。シクロクロス界を牽引する若き2人がリードして1周目を終えた。
スウィークやラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)らが先頭パックに合流するシーンも見られたものの、ファンデルポールとファンアールトが常に先頭ポジションをキープする。この若手2人に追いついたのは、後方からじわりじわりとポジションを上げたネイスだった。
レース開始から20分が経過する頃にはファンデルポールが失速し、最速ラップを記録したネイスが先頭ファンアールトをキャッチ。ここからフィニッシュまで5周回にわたって両者がバトルを繰り広げることになる。
泥をまとった白いUCIワールドカップリーダージャージを着てアタックを繰り返したファンアールトの後ろには常にネイスの姿が。逆にファンアールトはリアタイヤのパンクによってバイク交換を強いられ、ネイスに10秒の先行を許してしまう。
巧みなバイクコントロールで自分のラインを見つけて砂セクションを突き進んだネイスだったが、フィニッシュまで2周回を残してファンアールトに追いつかれて再び先頭は2人に。ネイスとファンアールトは競り合いながら後続3番手ファンデルポールから46秒リードで最終周回に入った。
最も長い砂セクションをそれぞれのラインでこなし、肩を突き合わしながら泥の下に隠れた表情を探り合うネイスとファンアールト。砂の登りを乗車でクリアしたファンアールトが一歩リードするも、すぐにネイスがギャップを埋める。続くネイスの先行もファンアールトが潰す。観客の絶叫を受けながら、2人は最後の泥セクションに差し掛かった。
重い泥のストレートで繰り広げられた最終コーナーに向けたパワー勝負。コーナーのイン側を突き進んだネイスがわずかに先行して舗装路の最終ストレートに入り、そのままファンアールトを振り切った。
「インクレディブル(信じられない気分)だ」と、壮絶な戦いを制したネイスは語る。「寒く、泥に溢れ、テクニカルでタフなレースだった。最後は力と力のぶつかり合いだった。世界最高のシクロクロスライダーとの一騎打ちにアドレナリンが出たよ。キャリアの絶頂期のような気分。今シーズンはすでに成功だと言える。すでに大きな幸せに包まれている」。
現在39歳のネイスにとってこれが記念すべきUCIワールドカップ50勝目。今シーズン限りでの引退を表明しているネイスはレース後に「コクサイデのUCIワールドカップで勝利。こうしてチャンピオンとしてキャリアを締めくくるんだ!」とツイートしている。なお、ネイスが初めてUCIワールドカップで勝利したのは1999年のこと。この日最後まで競り合ったファンアールトは当時5歳だった。
UCIワールドカップリーダーの座を辛くも守ったファンアールトは「パンクで遅れた時、またネイスに追いつけると信じて走り続けた。でも今日はテクニカルなコースでミスも犯したし、自分の日ではなかった。ネイスと彼の輝かしいキャリアは大きなリスペクトに値するよ」とコメントしている。
中盤にポジションを落としながらも終盤にかけてペースを戻し、3位に入ったファンデルポールは復帰戦について「序盤は抑えるべきだったけど、身体が言うことを聞かなかった。そこから落ち着いて数周回を走り、再びペースを上げたんだ。でも序盤に抑えていたところで結果は変わらなかった(ネイスとファンアールトには敵わなかった)と思うよ」と語っている。
UCIシクロクロスワールドカップ2015-2016第3戦
1位 スヴェン・ネイス(ベルギー、クレランAAドリンク) 1h02’39”
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ファストフートサービス) +04”
3位 マテュー・ファンデルポール(オランダ、BKCPコレンドン) +1’06”
4位 ラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +1’12”
5位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、エラリアルエステート) +1’19”
6位 トム・メーウセン(ベルギー、テレネット・フィデア) +1’31”
7位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア) +1’34”
8位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー、サンウェブ・ナポレオンゲームス) +1’46”
9位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・フィデア) +2’00”
10位 ジュリアン・タラマルカス(スイス、エラリアルエステート) +2’06”
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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