今年のツール・ド・北海道には、若手3選手が海外チームの一員として出場した。イタリアのNIPPO-ヴィーニファンティーニに所属する山本元喜、ニュージーランドのCCT p/b チャンピオンシステムに所属する徳田鍛造・優兄弟だ。最終ステージ終了後、今大会の事とこれまでのシーズンについてをインタビューした。



山本元喜「もっと力をつけて活躍出来る選手になりたい」

集団前方には必ず山本元喜の姿が見られた集団前方には必ず山本元喜の姿が見られた photo:Satoru.Kato
鹿屋体育大学在学中の2010年と2013年にステージ優勝した経験を持つ山本元喜。プロ2年目にして2年ぶりのツール・ド・北海道出場となった。当初は石橋学が出場予定だったが、調子が思わしくなかったために山本が出場する事になった。

スタートサインをする山本元喜(NIPPO-ヴィーニファンティーニ)スタートサインをする山本元喜(NIPPO-ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru.Kato第1ステージゴール後、カメラマンの高木氏にレース状況を話す山本元喜(NIPPO-ヴィーニファンティーニ)第1ステージゴール後、カメラマンの高木氏にレース状況を話す山本元喜(NIPPO-ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru.KatoNIPPO-ヴィーニファンティーニの一員として個人とチームの総合優勝に貢献NIPPO-ヴィーニファンティーニの一員として個人とチームの総合優勝に貢献 photo:Satoru.Kato−ツール・ド・北海道に出たかったそうですね?

そうですね。学生の時に2勝しているので相性の良い大会だと思っています。出られるものならば、ぜひ出場したいと思っていたので、誰が出るのかを常々監督らに確認していました。

-今回の大会ではチームが個人総合と団体総合で優勝し、ポイント賞も獲得しました。優勝したリカルド・スタキオッティをはじめ、大門監督も山本選手の働きを高く評価しています。

嬉しいですね。レース後にチームの皆から「ありがとう」と言ってもらえるので、励みになります。

-大門監督は、アシストの走りを理解してきているとおっしゃってましたが、自身ではどう感じてますか?

学生の時は自分が勝つため、自分のために走るばかりでした。でも、NIPPO-ヴィーニファンティーニに入ってからはそうはいかなかった。日々チームのために自分がどう動くべきなのかを考えたり、チームメートと話をして行動したりと学ぶ事ばかりです。その中で選手として成長している実感はあります。

-今年はチーム2年目ですが、これまでを振り返ってみてどうですか?

春先からヨーロッパの厳しいレースにいくつも出ましたけど、成績も出なくてしんどい思いをするばかりでした。でも、アジアのレースを中心に出場していた夏ごろに、以前とはまるで違うレベルで走れている事に気がつきました。それまでの期間は本当にしんどかったけど、力がついたと実感した瞬間でした。

でも、この状況に満足せずに、もうワンランク上の力をつけたいと思っています。まだヨーロッパで活躍出来るというレベルには達していないので、もっと力をつけていくしかないと思っています。

山本はこの後イタリアに戻り、ダミアーノ・クネゴらと共にUCIワールドツアーのイル・ロンバルディアに出場。その後「再来日」してジャパンカップに出場する予定だ。

NIPPO-ヴィーニファンティーニ 大門宏監督のコメント

元々、元喜は強い選手だったので、色々葛藤はあった思います。自分が勝ちたいけど、アシストとしてチームのために動かなければならない。元喜にとって今年は色々と考えさせられるシーズンだったのではないでしょうか。イタリアのレースを走って、チームに貢献するのがどういう事なのかを少しずつ理解してきました。今回のツール・ド・北海道では、自分が優勝に貢献できるという事を実感出来たのではないかと思っています。



徳田鍛造「厳しい目で見てくれる人から評価されるように」

大学生のグルペットを率いて第2ステージをゴールする徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム)大学生のグルペットを率いて第2ステージをゴールする徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Satoru.Kato
今年の春に鹿屋体育大学を卒業し、CCT p/b チャンピオンシステムに加入した徳田鍛造。チームの国籍はニュージーランドだが、活動拠点はベルギーだ。橋川監督によれば、ツール・ド・北海道前にレースが続いていた事と時差ボケもあって体調は万全とは言えない状態だったと言う。

開会式に臨む徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム)開会式に臨む徳田鍛造(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Satoru.KatoCCT p/b チャンピオンシステムのメンバー、スタッフとCCT p/b チャンピオンシステムのメンバー、スタッフと photo:Satoru.Katoチーム撮影に揃って納まる徳田兄弟チーム撮影に揃って納まる徳田兄弟 photo:Satoru.Kato−昨年は鹿屋大の一員としてツール・ド・北海道に出場してましたが、今年との違いはありますか?

今年はこれ(自転車競技)で生活させてもらってるので、チームのために動いて確実に勝たねばならない。昨年までもそう考えてはいましたが、今年はさらに強くそれを意識しました。スプリンターのセッペ・ヴェルスヒュレを勝たせるためにローテーションに加わって逃げを潰したり、弟の優を逃げに乗せるためにチームとして動いたり……。鹿屋でも同じ事はやってましたけど、今年はその精度をさらに高めてやる事が出来たと思っています。

−今年春先にベルギーに渡って、これまでのシーズンはどうでしたか?

プロケルメスを含めると50レース以上走らせてもらいましたけれど、シーズン序盤はなかなか結果が出ず、ベルギーに行く前の準備が甘かったなと感じてます。

−でも、橋川監督はベルギーに来た当初に比べれば成果も出てきたし、成長したとおっしゃてました。

自分で自分をプラスに評価しようとしたらそれは簡単なんです。チームメートや監督、あるいはチームのスポンサーとか、厳しい目で見てくれる人達から評価してもらえるという事はありがたたいですね。

−今大会では、先輩でもある山本元喜選手が評価の高い働きをしていましたね。

鹿屋にいた時は自分達が元喜さんをアシストしてましたけど、今は立場が逆になって元喜さんがチームメートのために身を粉にして働いている。その姿が僕の中ではとても大きかったです。

−この後の予定は?

ベルギーに戻って10月半ばまでレースに出場します。再挑戦するつもりで行こうと思っています。貴重な経験をさせてもらっているので、これを後に続く後輩に伝えて行く事も自分の役目だと考えています。



徳田優「支えてくれた人達に感謝の3日間」

第3ステージ 総合順位アップを狙って逃げに乗った徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム)第3ステージ 総合順位アップを狙って逃げに乗った徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Hideaki TAKAGI
鹿屋体育大学3年生の徳田優。大学の自転車部と並行して、兄の鍛造と共にCCT p/b チャンピオンシステムに所属する。今回のツール・ド・北海道は連日先頭集団に残り、最終日は逃げに乗る活躍を見せた。

第1ステージスタート前、鹿屋体育大のメンバーと話す徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム)第1ステージスタート前、鹿屋体育大のメンバーと話す徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Satoru.Katoスタート前、チームメートと徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム)スタート前、チームメートと徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Satoru.Kato第2ステージ、集団前方に位置して走る徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム)第2ステージ、集団前方に位置して走る徳田優(CCT p/b チャンピオンシステム) photo:Satoru.Kato-今日(第3ステージ)の逃げはチームの指示?

橋川監督からはチーム全体で逃げにのって行こうという話だったんですけど、、自分が11秒差で総合を狙える位置にいたので、キャプテンのマイケル・ヴィンクが『優で行こう』と言ってくれたんです。ホットスポットでボーナスタイムを1秒でも稼げば総合順位が大きく上がるから、自分を逃げに乗せるようにチームが動いてくれました。でも自分の力不足でボーナスタイムを獲れなかったので、申し訳ないです。

-今年は大学の自転車部と平行してチャンピオンシステムに所属していますが、ベルギーのレースはどうでしたか?

ベルギーでは完走も出来ない状態が続いて、精神的に苦しくて悩んでいました。チームに対して自分の存在意義を示せなかったので、とても辛かったです。今回のツール・ド・北海道は、そんな自分をチームメートが助けてくれたので本当に感謝していますし、チャンピオンシステムから出場出来るように計らって頂いた黒川監督や橋川監督にも感謝しています。それに応えるだけの結果を残せなかったのは悔しいけれど、嬉しかったですね。

-先日のインカレでは、「徳田優包囲網」に苦しめられたようですが?

予想していた事でしたけど、インカレで勝った先輩方や兄も同じような状況で勝ったんだなと思うと、先輩方の偉大さを感じたレースでした。

-この後の予定は?

ベルギーには戻らず、世界選手権に備えます。ジュニアの時以来の出場なので、これまで身につけた経験と力を発揮して良い成績を出せるようにしたいです。


CCT p/b チャンピオンシステム 橋川健監督のコメント

鍛造も優も、ベルギーに来た当初は話にならないくらい走れなかったし、チームの中でも相手にされてない状態でした。でも5月、6月頃には登りがきついレースで他の選手よりも良い成績を出せるようになったり、7月には賞金圏内でゴール出来たり、逃げに乗ってそこからアタックするまでになって、チーム内での評価が上がってきました。

今回のツール・ド・北海道では、鍛造はチームのためにボトル運びをしてくれたり、優は作戦通りに動いてくれてよく頑張りました。結果には結びつきませんでしたが、今後の成長につながるレースになったと思います。鍛造はベルギーで残りのシーズンを、優は世界選手権で良い走りをして、シーズンを締めくくって欲しいと思っています。



3選手に話を聞いていて、日本のレースとの違いやチームでの立場などで悩んで苦しみ、レースの中でその答えを見つけようとする姿勢が印象に残った。まだまだ若い3選手は「世界」の入口に立ったばかり。これからの彼等の成長に注目し、期待したい。

text:Satoru.Kato
photo:Satoru.Kato,Hideaki TAKAGI

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