2015/07/18(土) - 11:42
北海道ニセコの公道を使うワンウェイのロードレースがニセコクラシック。第2回目を迎える今年、140kmは韓国、70kmは台湾の選手が、女子は米田和美(Ready Go JAPAN)が優勝と国際色豊かな大会となりました。
公道を使うワンウェイのロードレースは国内で数少ない。そのひとつがこのニセコクラシック(主催:ニセコクラシック実行委員会)。2014年から開催し今年で2回目を迎え、特別協賛にボードマンバイクが今年から3年間の冠スポンサーとしてついた。コースは山岳の厳しい140kmと平坦の多い70kmの2つあり、いずれも往復する部分はわずか5kmほどと、周回でなくほとんどがワンウェイのコースレイアウト。ツール・ド・北海道で今まで使われてきたコースがメイン。
場所は北海道西部のニセコ地方。倶知安町、ニセコ町、共和町、蘭越町にまたがり、スタート地点は140kmがひらふスキー場、70kmが蘭越町で、フィニッシュはいずれもヒラフスキー場。交通規制はUCIレースのツール・ド・北海道と同じで、片側のみの規制。なので対向車線からは普通に車がやってくる。交差点や狭小区間は規制するものの、今回も含め事故なくレースが成立してきたのは30年以上にわたって公道レースの経験を重ねてきた関係者の努力と住民の理解の賜物だ。
ニセコでロードレースを そして世界へ
世界有数のパウダースノーのスキー場として世界的に名高いニセコ地方には、オーストラリアやニュージーランドから移住してきた人たちと地元が観光開発し現在に至っている。冬季の外国人比率は過半数といえるほど高く、宿泊施設によっては9割以上が海外からの観光客であり、英語が共通の公用語だ。冬季は国際的な賑わいを見せるニセコ地方。
冬以外のシーズンも恵まれた観光資源と宿泊施設などを活用し、滞在型のリゾートも充実している。スキーのために海外から移住してきた人たちの夏のスポーツはもともと自転車だった。ロス・フィンドレー氏(NACニセコアドベンチャーセンター代表)らが20年以上前から率先して自転車の文化を広げ、6年前からニセコ花園ヒルクライムを、そして昨年からついにロードレースを始めるに至った。
ニセコクラシックは公道を使う市民レース。将来的にはより国際的な大会へとステップアップする計画がある。コンチネンタル登録以上の競技者を除く選手が参加できるものだ。海外からの参加者がより増え、さらに世界的に意義のある大会となることを主催者は期待する。
激しいレース展開の140km
コースはニセコアンヌプリのKOMまで標高差700m以上や終盤の400~200mの上りを含む厳しいもの。序盤から伊藤舜紀(ボンシャンス)を中心に数人が抜け出す展開が続く。KOMへの上り区間に入ってから鈴木亮(Team Ukyo Reve)、菅原勇人(札幌自転車本舗)、ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)の3人が抜け出し、メイン集団からも追走がかかるが46km地点のKOMは鈴木を先頭に通過し、メイン集団は1分30秒差。
下り区間を経てメイン集団から4人が抜け出し78km地点で先頭に合流し7人に。しかし90m地点で先頭7人はメイン集団に吸収されレースは振り出しに。ここで招待選手の小渡健悟(シエルヴォ奈良)がアタック。独走状態の小渡にチェム・ドウワイ(GRCC)、白崎憲治(NSR)、高橋裕人(チーム輪駄)が追いつき先頭は4人に。さらに105km地点を過ぎ標高差400mの上り区間へ入ると山岳賞の鈴木が先頭のチェムに追いつき2人で坂を上る。
127km地点標高差200mの上りで鈴木が先行したがピーク地点では逆にチェムが先行しそのまま逃げ切って優勝。1分19秒差で石塚将人(Aprico/WCU)を先頭に13人のメイン集団がフィニッシュ。レースは逃げ、追走、メイン集団が常に展開する動きで、95km地点から先頭集団に入ったチェムが残り45kmを逃げ切った。
優勝したチェムは「マレーシア出身で今は韓国に住んでいます。とても暑かったですが105km地点の上りで仕掛けて前に出られました。今回のコースプロフィールは韓国国内にも似ていて走りやすかったですね。私はプロレーサーではないし今まではグランフォンドとかは出ていますが優勝は初めてです。美しいコースを走れて嬉しいです」と語る。
2位の石塚は「最初の逃げは追いかけて吸収できたのですが、追い風区間で逃げられてしまって。後半の山もきつかったですね。でも景色もよく面白いレースでした」と語る。常に先頭付近で走り山岳賞を獲得した鈴木は「本当にいい景色の中、いいレースでした。後半に水が足りなくなってしまいましたね。1週間前からこちらに来て試走もしていたのですが。1位の人は強かったですね。また来たいです」とリベンジを誓う。
70km男子はツ・チーハオ、女子は米田和美が制する
70kmは3人が逃げる展開となり、ツ・チーハオ(Columbus cycling team)が優勝。ジュニア年代のため140kmでなく70kmに出場した台湾のサイクリスト。トラックレースもこなす将来有望な選手だ。8秒差の2位には大会スポンサーでもあるボードマンバイクスの熊坂和也(Integratedridingjapan)が入った。熊坂は札幌出身でボンシャンスに所属していた時期にフランスで4シーズンを過ごしている。
女子70kmは米田和美(Ready Go JAPAN)が圧倒し連覇達成。「70km組みは全員同時スタートだったので、上り手前までは男子の先頭集団で走っていました。上りでその男子先頭から遅れてしまいました。このコースは70kmといえども上りが多く脚に来ますね。来年は男子の先頭集団でゴールしたいですね。今まで小橋勇利選手や中村圭佑選手らとも北海道で走っていて、女子選手も含めてもっと北海道から出てくれればという思いがあります」と語る。米田のタイムは男子の中でも第2集団に位置し16位に相当するものだ。
本田哲氏(倶知安観光協会会長)「国際的な市民レースへ」
昨年第1回大会を開きましたが、このニセコエリアは海外の人が多く住んでいるところです。彼らは冬はスキー、そして夏は自転車に乗り、自転車チームのチームニセコを作っていました。その活動の中でフィンドレーさんが市民のロードレースを、ヒルクラムをやりたいということで、観光協会としてもぜひやりたいとなって6年前からヒルクライムが実現しています。ここニセコエリアは、スキー客としては昨シーズンに海外から44万人が平均1週間滞在しました。夏は60歳以上のシニア層の夫婦を中心とした人たちが500組1.7ヶ月滞在しました。通年滞在型の観光としていま、自転車に注目しているところです。
今はニセコサイクルサマーとして毎週のようにサイクルイベントを開催しています。また、倶知安町とニセコ町だけでなく、70kmスタートは蘭越町に置いたようにこの地域全体が活性化できればと考えています。ニセコといえば自転車レースというブランドイメージを作りたいですね。ツール・ド・おきなわは本当にいい大会です。レースもあればサイクリングもある。幅広くお客さんが来てそして家族連れでも訪れる。このニセコでも自転車でそうなればと考えています。
今後はニセコ地域だけでなく周辺と連携したり、あるいは同じ自転車でもMTBをもっと広げたいですね。DHコースだけでなくクロスカントリーのコースをもっと整備したいと。それから羊蹄山1周のコースを取りたいです。基本平坦ですね。それが市民レースになるのかサイクリングになるのかは検討中です。さらに今後は国際的な市民レースの仕組みを取り入れたいですね。アジアではまだ開催されていないものです。今はそれのための準備をしているところです。
ロス・フィンドレー氏(NACニセコアドベンチャーセンター代表)「このニセコでロードレースをしたかった」
参加した皆さんが凄く楽しかったようで、警察、警備、ボランティアの皆さんなどご協力いただいて安全なレースができたかと思います。皆さんの笑顔がよかったですね。周回コースと違って達成感があるのでしょうね。それから選手も家族連れで来たりしていて嬉しいですね。
ニセコ地域では6年前から花園ヒルクライムをやっています。でも僕は本当は最初からこのロードレースをしたかったのです。ツール・ド・おきなわを見て、たくさんお客さんが集まっていて楽しいレースで、これをできるのはここニセコだけだと思いました。実現させるために警察や連盟と話して、そしてまずはとヒルクライムを始めました。そこから始まっています。
来年以降はもちろん続けて国際的な市民レースへ発展させたいですね。今回は100人以上が道外や海外からの参加者ですが、国際レースになればもっと増えるでしょう。今は国内外の連盟と調整しているところです。
結果
140kmオープン
1位 チェム・ドウワイ(GRCC)4時間11分22秒
2位 石塚将人(Aprico/WCU)+1分19秒
3位 清水乾(TEAM NISEKO)+1分23秒
4位 本谷渉(どうきゅう)+1分24秒
5位 福山碧斗(東洋大学自転車部)+1分25秒
6位 ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)+1分26秒
70kmオープン
1位 ツ・チーハオ(Columbus cycling team)2時間05分46秒
2位 熊坂和也(Integratedridingjapan)+8秒
3位 小山田智也(SUBARU RT)+14秒
70km女子
1位 米田和美(Ready Go JAPAN)2時間14分14秒
2位 青木紗矢香(BH ASTIFO)+6分59秒
3位 藤村祥子 +7分13秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
公道を使うワンウェイのロードレースは国内で数少ない。そのひとつがこのニセコクラシック(主催:ニセコクラシック実行委員会)。2014年から開催し今年で2回目を迎え、特別協賛にボードマンバイクが今年から3年間の冠スポンサーとしてついた。コースは山岳の厳しい140kmと平坦の多い70kmの2つあり、いずれも往復する部分はわずか5kmほどと、周回でなくほとんどがワンウェイのコースレイアウト。ツール・ド・北海道で今まで使われてきたコースがメイン。
場所は北海道西部のニセコ地方。倶知安町、ニセコ町、共和町、蘭越町にまたがり、スタート地点は140kmがひらふスキー場、70kmが蘭越町で、フィニッシュはいずれもヒラフスキー場。交通規制はUCIレースのツール・ド・北海道と同じで、片側のみの規制。なので対向車線からは普通に車がやってくる。交差点や狭小区間は規制するものの、今回も含め事故なくレースが成立してきたのは30年以上にわたって公道レースの経験を重ねてきた関係者の努力と住民の理解の賜物だ。
ニセコでロードレースを そして世界へ
世界有数のパウダースノーのスキー場として世界的に名高いニセコ地方には、オーストラリアやニュージーランドから移住してきた人たちと地元が観光開発し現在に至っている。冬季の外国人比率は過半数といえるほど高く、宿泊施設によっては9割以上が海外からの観光客であり、英語が共通の公用語だ。冬季は国際的な賑わいを見せるニセコ地方。
冬以外のシーズンも恵まれた観光資源と宿泊施設などを活用し、滞在型のリゾートも充実している。スキーのために海外から移住してきた人たちの夏のスポーツはもともと自転車だった。ロス・フィンドレー氏(NACニセコアドベンチャーセンター代表)らが20年以上前から率先して自転車の文化を広げ、6年前からニセコ花園ヒルクライムを、そして昨年からついにロードレースを始めるに至った。
ニセコクラシックは公道を使う市民レース。将来的にはより国際的な大会へとステップアップする計画がある。コンチネンタル登録以上の競技者を除く選手が参加できるものだ。海外からの参加者がより増え、さらに世界的に意義のある大会となることを主催者は期待する。
激しいレース展開の140km
コースはニセコアンヌプリのKOMまで標高差700m以上や終盤の400~200mの上りを含む厳しいもの。序盤から伊藤舜紀(ボンシャンス)を中心に数人が抜け出す展開が続く。KOMへの上り区間に入ってから鈴木亮(Team Ukyo Reve)、菅原勇人(札幌自転車本舗)、ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)の3人が抜け出し、メイン集団からも追走がかかるが46km地点のKOMは鈴木を先頭に通過し、メイン集団は1分30秒差。
下り区間を経てメイン集団から4人が抜け出し78km地点で先頭に合流し7人に。しかし90m地点で先頭7人はメイン集団に吸収されレースは振り出しに。ここで招待選手の小渡健悟(シエルヴォ奈良)がアタック。独走状態の小渡にチェム・ドウワイ(GRCC)、白崎憲治(NSR)、高橋裕人(チーム輪駄)が追いつき先頭は4人に。さらに105km地点を過ぎ標高差400mの上り区間へ入ると山岳賞の鈴木が先頭のチェムに追いつき2人で坂を上る。
127km地点標高差200mの上りで鈴木が先行したがピーク地点では逆にチェムが先行しそのまま逃げ切って優勝。1分19秒差で石塚将人(Aprico/WCU)を先頭に13人のメイン集団がフィニッシュ。レースは逃げ、追走、メイン集団が常に展開する動きで、95km地点から先頭集団に入ったチェムが残り45kmを逃げ切った。
優勝したチェムは「マレーシア出身で今は韓国に住んでいます。とても暑かったですが105km地点の上りで仕掛けて前に出られました。今回のコースプロフィールは韓国国内にも似ていて走りやすかったですね。私はプロレーサーではないし今まではグランフォンドとかは出ていますが優勝は初めてです。美しいコースを走れて嬉しいです」と語る。
2位の石塚は「最初の逃げは追いかけて吸収できたのですが、追い風区間で逃げられてしまって。後半の山もきつかったですね。でも景色もよく面白いレースでした」と語る。常に先頭付近で走り山岳賞を獲得した鈴木は「本当にいい景色の中、いいレースでした。後半に水が足りなくなってしまいましたね。1週間前からこちらに来て試走もしていたのですが。1位の人は強かったですね。また来たいです」とリベンジを誓う。
70km男子はツ・チーハオ、女子は米田和美が制する
70kmは3人が逃げる展開となり、ツ・チーハオ(Columbus cycling team)が優勝。ジュニア年代のため140kmでなく70kmに出場した台湾のサイクリスト。トラックレースもこなす将来有望な選手だ。8秒差の2位には大会スポンサーでもあるボードマンバイクスの熊坂和也(Integratedridingjapan)が入った。熊坂は札幌出身でボンシャンスに所属していた時期にフランスで4シーズンを過ごしている。
女子70kmは米田和美(Ready Go JAPAN)が圧倒し連覇達成。「70km組みは全員同時スタートだったので、上り手前までは男子の先頭集団で走っていました。上りでその男子先頭から遅れてしまいました。このコースは70kmといえども上りが多く脚に来ますね。来年は男子の先頭集団でゴールしたいですね。今まで小橋勇利選手や中村圭佑選手らとも北海道で走っていて、女子選手も含めてもっと北海道から出てくれればという思いがあります」と語る。米田のタイムは男子の中でも第2集団に位置し16位に相当するものだ。
本田哲氏(倶知安観光協会会長)「国際的な市民レースへ」
昨年第1回大会を開きましたが、このニセコエリアは海外の人が多く住んでいるところです。彼らは冬はスキー、そして夏は自転車に乗り、自転車チームのチームニセコを作っていました。その活動の中でフィンドレーさんが市民のロードレースを、ヒルクラムをやりたいということで、観光協会としてもぜひやりたいとなって6年前からヒルクライムが実現しています。ここニセコエリアは、スキー客としては昨シーズンに海外から44万人が平均1週間滞在しました。夏は60歳以上のシニア層の夫婦を中心とした人たちが500組1.7ヶ月滞在しました。通年滞在型の観光としていま、自転車に注目しているところです。
今はニセコサイクルサマーとして毎週のようにサイクルイベントを開催しています。また、倶知安町とニセコ町だけでなく、70kmスタートは蘭越町に置いたようにこの地域全体が活性化できればと考えています。ニセコといえば自転車レースというブランドイメージを作りたいですね。ツール・ド・おきなわは本当にいい大会です。レースもあればサイクリングもある。幅広くお客さんが来てそして家族連れでも訪れる。このニセコでも自転車でそうなればと考えています。
今後はニセコ地域だけでなく周辺と連携したり、あるいは同じ自転車でもMTBをもっと広げたいですね。DHコースだけでなくクロスカントリーのコースをもっと整備したいと。それから羊蹄山1周のコースを取りたいです。基本平坦ですね。それが市民レースになるのかサイクリングになるのかは検討中です。さらに今後は国際的な市民レースの仕組みを取り入れたいですね。アジアではまだ開催されていないものです。今はそれのための準備をしているところです。
ロス・フィンドレー氏(NACニセコアドベンチャーセンター代表)「このニセコでロードレースをしたかった」
参加した皆さんが凄く楽しかったようで、警察、警備、ボランティアの皆さんなどご協力いただいて安全なレースができたかと思います。皆さんの笑顔がよかったですね。周回コースと違って達成感があるのでしょうね。それから選手も家族連れで来たりしていて嬉しいですね。
ニセコ地域では6年前から花園ヒルクライムをやっています。でも僕は本当は最初からこのロードレースをしたかったのです。ツール・ド・おきなわを見て、たくさんお客さんが集まっていて楽しいレースで、これをできるのはここニセコだけだと思いました。実現させるために警察や連盟と話して、そしてまずはとヒルクライムを始めました。そこから始まっています。
来年以降はもちろん続けて国際的な市民レースへ発展させたいですね。今回は100人以上が道外や海外からの参加者ですが、国際レースになればもっと増えるでしょう。今は国内外の連盟と調整しているところです。
結果
140kmオープン
1位 チェム・ドウワイ(GRCC)4時間11分22秒
2位 石塚将人(Aprico/WCU)+1分19秒
3位 清水乾(TEAM NISEKO)+1分23秒
4位 本谷渉(どうきゅう)+1分24秒
5位 福山碧斗(東洋大学自転車部)+1分25秒
6位 ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)+1分26秒
70kmオープン
1位 ツ・チーハオ(Columbus cycling team)2時間05分46秒
2位 熊坂和也(Integratedridingjapan)+8秒
3位 小山田智也(SUBARU RT)+14秒
70km女子
1位 米田和美(Ready Go JAPAN)2時間14分14秒
2位 青木紗矢香(BH ASTIFO)+6分59秒
3位 藤村祥子 +7分13秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
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