フィニッシュ前で高速スプリントを繰り広げるスプリンターはロードレースの花形。今年もマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を懸けたバトルが幕開ける。平坦ステージで注目したいスプリンターたちをチェックしておこう。



フィニッシュ前を熱くするスプリンターたちの戦いフィニッシュ前を熱くするスプリンターたちの戦い photo:Tim de Waele


平坦ステージ優勝者に有利なポイント配分に変更

3年連続でマイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(スロバキア)3年連続でマイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(スロバキア) photo:Makoto Ayanoツール主催者ASOは21あるステージを「平坦」「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」の4種類に分類。それぞれ異なるポイント配分を設定している。

2014年大会第1ステージを制したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)2014年大会第1ステージを制したマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele2014年大会でペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がステージ0勝ながらマイヨヴェールを獲得。その反省を踏まえてか、2015年はポイントシステムに変更が加えられた。

これまで「平坦ステージ」の優勝者に与えられていたポイント配分が45ポイントから50ポイントに増加。一方で2位以下に与えられるポイントが減少している。「中級山岳」「上級山岳」「個人TT」のポイント配分には変更無し。つまり「平坦ステージ」で勝利したスプリンターがポイントを量産し、マイヨヴェール争いにおいてリードを得やすいポイント配分となっている。

2011年に変更されたスプリントポイントのポイントシステムは継承。1ステージ・1スプリントポイントに固定されており、スプリントポイントでのポイント配分は全ステージ共通(TTを除く)。ポイント通過上位15名まで、「上級山岳ステージ」のゴールと同等のポイントが与えられる。

このスプリントポイントでの獲得ポイントがマイヨヴェール争いに大きな影響を及ぼす。山岳ステージでも、コース前半にスプリントポイントが設定されている場合は、スプリンターチームがレースをコントロールするだろう。山岳ステージで逃げに乗るスプリンターも出てくるはず。

上位15名までポイントが与えられるため、10名に満たない逃げグループが形成されている場合は集団前方が活性化する。ポイント賞狙いの選手は、1日に2回スプリントすることになるだろう。スプリントポイントで脚を使えば、ステージ優勝に影響が出る。平坦ステージでも各チームの思惑が入り乱れそうだ。

また、厳しい山岳ステージを乗り切ることが出来ない限り、マイヨヴェール獲得のチャンスは回って来ない。そのためスプリンターたちはグルペットを形成し、タイムアウトの時間内にゴールを目指す。仮に審判の判断でタイムアウトが救済された場合は、その日のステージ優勝の獲得ポイントと同ポイントが減点される。



ポイント配分(いずれも上位15名に付与)
・平坦ステージ
優勝者50pts、以下30、20、18、16、14、12、10、8、7、6、5、4、3、2pts
・中級山岳ステージ
優勝者30pts、以下25、22、19、17、15、13、11、9、7、6、5、4、3、2pts
・上級山岳ステージ
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・タイムトライアル
優勝者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt
・スプリントポイント
先頭通過者20pts、以下17、15、13、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pt




注目はカヴ、クリストフ、グライペル、デゲンコルブ、サガン

パーマ&伸ばしてワイルドな髪型になったペーター・サガンパーマ&伸ばしてワイルドな髪型になったペーター・サガン photo:Makoto.AYANO2012年から3年連続でポイント賞を獲得しているペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は、チーム移籍後もマイヨヴェール候補の筆頭だ。大集団スプリントではピュアスプリンターに敵わないものの、中級山岳ステージでも勝負に残り、毎ステージ着実にポイントを重ねる。

出番を待つジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)出番を待つジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji前述の通りピュアスプリンターに有利なポイント配分に変更されたが、登りフィニッシュが設定されたサガン向きの平坦ステージも多く、ツール・ド・スイスでステージ2勝&ポイント賞、さらにスロバキア選手権ロード&TT制覇と波に乗るサガンがポイント賞争いの軸となる。チームはコンタドールのマイヨジョーヌ必勝体制だが、ベンナーティらがサガンに手を差し伸べるはず。

出番を待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)出番を待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsujiサガンと同様に、登れるスプリンターとして様々なステージでポイントを重ねると予想されるのは、2015年ミラノ〜サンレモとパリ〜ルーべを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)や、ジロとスイスでステージ1勝を飾ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らだ。

ステージに向かうアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)ステージに向かうアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Kei Tsuji2013年から2年連続で最終日シャンゼリゼを含むステージ4勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)は、春先に患ったウィルス感染からの回復の遅れによってツールを欠場する。代わってデゲンコルブがジャーマンチームのエーススプリンターに。デゲンコルブはジロとブエルタでステージ優勝しているが、ツールでの優勝経験はまだない。

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiキッテルは欠場するが、世界トップクラスのピュアスプリンターが一堂に会すると言って良い。これまでステージ通算25勝を飾り、エディ・メルクスがもつ34勝という最多勝記録を視野に入れるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)は、第1ステージで落車リタイアした1年前の悪夢を払拭することが出来るか。カヴは今シーズン13勝。発射台役のレンショーがカヴに付き添う。

この数年でトップスプリンターの仲間入りをし、ロンド・ファン・フラーンデレン制覇を含む今シーズン18勝を飾っているアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)はハラーとグアルニエーリという心強いリードアウトを得ての出場。2014年のツールではステージ2勝&ポイント賞2位という成績を残している。

ハンセンやシーベルグ、ヘンダーソンのリードアウトを受けるアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)はツールでステージ通算6勝。2011年から毎年欠かさずステージ優勝を飾っている。

フランス選手権のスプリント中に落車し、怪我を負ったナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)は欠場が囁かれたものの、コフィディスのエーススプリンターとしてスタートラインに並ぶ予定。フランス勢としてはアルノー・デマール(フランス、FDJ)やブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)らも勝負に絡むだろう。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)とタイラー・ファラー(アメリカ)を揃えるMTNキュベカの他、パリ〜ニースでステージ優勝を飾ったダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)やラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、キャノンデール・ガーミン)もダークホースとして注目だ。



ツール・ド・フランス2014ポイント賞ランキング
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)     431pts
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)         282pts
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)            271pts
4位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)           222pts
5位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ) 211pts



歴代マイヨヴェール受賞者
2014年 ペーター・サガン(スロバキア)
2013年 ペーター・サガン(スロバキア)
2012年 ペーター・サガン(スロバキア)
2011年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2010年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2009年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2008年 オスカル・フレイレ(スペイン)
2007年 トム・ボーネン(ベルギー)
2006年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2005年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2004年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2003年 バーデン・クック(オーストラリア)
2002年 ロビー・マキュアン(オーストラリア)
2001年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2000年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1999年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1998年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1997年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1996年 エリック・ツァベル(ドイツ)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1993年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1992年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1991年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1990年 オラフ・ルードヴィッヒ(ドイツ)

text:Kei Tsuji in Utrecht, Netherlands

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