2015/07/03(金) - 14:11
愛知県瀬戸市のオフロードコース「SRAMPARK 瀬戸」で6月27、28日に開催された「DOWNHILL SERIES #2 SRAMPARK」。高校生ライダー井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)が並み居るプロライダーを相手に金星を挙げた。
PROクラス最終走者の加藤将来選手のあまりのパワーにタイヤが外れたとき、会場がざわめいた。プロクラスライダーの全員を抑えて優勝したのは、エリートクラス優勝者に与えられる「下克上システム」を使ってPRO クラスライダーに挑戦した、高校2年生のローカルライダー、井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)だった。
6 月27日、28 日に開催された、#2 SRAMPARK。コースは全長425m。スラムパークの山頂をスタートとし、すぐに90 度ターンのクランクが続くシングルトラックに入る。シングルを抜けてからは、リズムセクションの連続。ジャンプと細かいバンクが組み合わされたコースは、「下りのパンプトラック」と言ってもいいほど。どんどんスピードがあがるため、短いわりに体力を使ううえに、いかにバイクに置いていかれないようにコントロールできるかがポイント。
昨年は、土砂降りのなかのレースとなったスラムパーク会場。今回も週間天気予報を見る限り雨の週末になる覚悟をしていたものの、土曜の明け方にやんだ雨はコースを湿らせ、試走が始まる頃には、路面コンディションとしては最高のものに。ただし、ヌタヌタの沼になったセクションが一カ所あり、そこではフロントが埋まって前転するライダーも見られた。
この会場最大のポイントは、コースの全てが見えること。全長の短さもあって、スタート直後からフィニッシュまで、コース脇には観客が並ぶ。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース攻略の鍵だ。
軽トラックでの搬送は約5分。この会場では昨年に引き続き、このスラムパークを練習拠点とするFMX(フリースタイルモトクロス)ライダーが搬送ドライバーを務めてくれている。タイムドセッション前の昼休みにはFMX ショーも行われ、普段なかなか見ることのない、エンジン付きバイクの空中ショーに参加者たちも大盛り上がりだった。
今回のエントリーは96 人。土曜日のタイムドセッションには76人が参加した。今年から全クラス総合ランキングも参考として発表しており、タイムドセッションでの総合1位はエリートクラスの泉野龍雅選手(桜丘高校/KONA/自転車道)。2位に加藤将来選手( AKI FACTORY/ACCEL ) 、3位には井本はじめ選手(SRAM/LITEC)。この3人が51秒台を出した。4位には、ショートダウンヒル荒らしとも呼ばれるハードテールの使い手、エリートクラス出走の増田直樹選手(DTP)が入った。
日曜日も、朝から快晴。梅雨はどこへ行った?と言いたくなるほどの青空が広がった。朝から試走には長い列ができ、最終的には20本近く走ったという強者も。どんどん乾く路面は、すでにホコリっぽい。「濡れて滑るのと、乾いて滑るのは全然違う。昨日と今日じゃ、違うコースだと言ってもいいくらい変わっている。」とは、SRAMPARK 管理人の波多野さんの談。
本戦が始まる頃になると、急に風が強くなりはじめた。スタート地点から吹き下ろす風は、MCアリーの立つテントを飛ばしそうになるほど。今回も、エリート男子優勝者は「下克上システム」でPRO クラスライダーに挑戦できる権利を持つ。そこで表彰台に乗った場合はもちろん賞金も与えられる。
若手から、往年の名選手までが揃った今回は、開幕戦の十種ヶ峰で「下克上システム」の権利を獲得し、PRO クラス4位に入った藤村飛丸選手(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)もなりを潜めた。前日のタイムドセッションの結果をもとに、リバーススタートによる本戦が始まると、みんな着々とタイムを更新していく。
タイムドセッション3 位の井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)が出走したとき、突風が吹いてフィニッシュゲートが倒れるというアクシデントが発生。しかし、その突風に乗ったかのようにフィニッシュに飛び込んできた井岡選手が、今大会初めての50秒台を出す。タイムドセッション2位の泉野と3位の増田は51秒台となり、PROクラスへの挑戦権を得たのはスラムパークをホームコースとする地元の若手・井岡選手となった。
PRO クラスの前走者として、もう一度山頂からスタートした井岡選手は、エリート優勝を決めた自身のタイムをさらに0.349 秒更新し、50 秒283 という数字を叩き出す。疲れが見えないのは、さすが若者?
その後、プロライダーたちが次々にスタートするものの、なかなか51秒を切れない。残り2人、ここで井岡選手の表彰台は確定。プロライダーとして負けるわけにはいかない開幕戦優勝者の井本はじめ選手がついに50秒台を出すも0.029秒井岡選手に届かず。
最終走者の加藤将来選手も豪快な攻めの走りでゴールを目指す。しかし、中盤のタイトなバームでの切り返しで、あまりのパワーにタイヤが悲鳴を上げ「パンッ」という音と共に一瞬にしてタイヤがリムから外れてしまった。その瞬間、会場にはため息と、そして今日のローカルヒーローをたたえる拍手が湧いた。
「マジで嬉しいです。涙が出ました。タイムドセッションで勝てなくて、本戦でも勝てないんじゃないか、と今日一日吐きそうなくらいでした。」と話した井岡選手。ひとりだけ空中でもペダルを漕いでいた、という自転車歴5年、16歳の少年がプロクラスライダーに勝ってしまうという結果。
全エントリーの内、地元愛知県からの参加者は38人と約4割を占めた。SRAMPARKはできてから2年。自転車歴1年未満の若手ライダーのエントリーも多く、どんどんローカルライダーが育ってきているのが分かる。ご夫婦でスラムパークを走り込んでいるという吉川邦岳さんは、エリートで本戦7位となり、「数を走っていれば勝てるわけではないですね。色んなライン取りが見れて面白いです」と話してくれた。
ローカルヒーローに活躍してほしい!DOWNHILL SERIES を企画した当初の構想が、早くも現実となった一戦になった。#3は岐阜県ウイングヒルズ白鳥リゾートにて行われる。
report:DOWNHILL SERIES
photo:Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
PROクラス最終走者の加藤将来選手のあまりのパワーにタイヤが外れたとき、会場がざわめいた。プロクラスライダーの全員を抑えて優勝したのは、エリートクラス優勝者に与えられる「下克上システム」を使ってPRO クラスライダーに挑戦した、高校2年生のローカルライダー、井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)だった。
6 月27日、28 日に開催された、#2 SRAMPARK。コースは全長425m。スラムパークの山頂をスタートとし、すぐに90 度ターンのクランクが続くシングルトラックに入る。シングルを抜けてからは、リズムセクションの連続。ジャンプと細かいバンクが組み合わされたコースは、「下りのパンプトラック」と言ってもいいほど。どんどんスピードがあがるため、短いわりに体力を使ううえに、いかにバイクに置いていかれないようにコントロールできるかがポイント。
昨年は、土砂降りのなかのレースとなったスラムパーク会場。今回も週間天気予報を見る限り雨の週末になる覚悟をしていたものの、土曜の明け方にやんだ雨はコースを湿らせ、試走が始まる頃には、路面コンディションとしては最高のものに。ただし、ヌタヌタの沼になったセクションが一カ所あり、そこではフロントが埋まって前転するライダーも見られた。
この会場最大のポイントは、コースの全てが見えること。全長の短さもあって、スタート直後からフィニッシュまで、コース脇には観客が並ぶ。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース攻略の鍵だ。
軽トラックでの搬送は約5分。この会場では昨年に引き続き、このスラムパークを練習拠点とするFMX(フリースタイルモトクロス)ライダーが搬送ドライバーを務めてくれている。タイムドセッション前の昼休みにはFMX ショーも行われ、普段なかなか見ることのない、エンジン付きバイクの空中ショーに参加者たちも大盛り上がりだった。
今回のエントリーは96 人。土曜日のタイムドセッションには76人が参加した。今年から全クラス総合ランキングも参考として発表しており、タイムドセッションでの総合1位はエリートクラスの泉野龍雅選手(桜丘高校/KONA/自転車道)。2位に加藤将来選手( AKI FACTORY/ACCEL ) 、3位には井本はじめ選手(SRAM/LITEC)。この3人が51秒台を出した。4位には、ショートダウンヒル荒らしとも呼ばれるハードテールの使い手、エリートクラス出走の増田直樹選手(DTP)が入った。
日曜日も、朝から快晴。梅雨はどこへ行った?と言いたくなるほどの青空が広がった。朝から試走には長い列ができ、最終的には20本近く走ったという強者も。どんどん乾く路面は、すでにホコリっぽい。「濡れて滑るのと、乾いて滑るのは全然違う。昨日と今日じゃ、違うコースだと言ってもいいくらい変わっている。」とは、SRAMPARK 管理人の波多野さんの談。
本戦が始まる頃になると、急に風が強くなりはじめた。スタート地点から吹き下ろす風は、MCアリーの立つテントを飛ばしそうになるほど。今回も、エリート男子優勝者は「下克上システム」でPRO クラスライダーに挑戦できる権利を持つ。そこで表彰台に乗った場合はもちろん賞金も与えられる。
若手から、往年の名選手までが揃った今回は、開幕戦の十種ヶ峰で「下克上システム」の権利を獲得し、PRO クラス4位に入った藤村飛丸選手(BlankyDog/MUDDY CHOCOLATE)もなりを潜めた。前日のタイムドセッションの結果をもとに、リバーススタートによる本戦が始まると、みんな着々とタイムを更新していく。
タイムドセッション3 位の井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)が出走したとき、突風が吹いてフィニッシュゲートが倒れるというアクシデントが発生。しかし、その突風に乗ったかのようにフィニッシュに飛び込んできた井岡選手が、今大会初めての50秒台を出す。タイムドセッション2位の泉野と3位の増田は51秒台となり、PROクラスへの挑戦権を得たのはスラムパークをホームコースとする地元の若手・井岡選手となった。
PRO クラスの前走者として、もう一度山頂からスタートした井岡選手は、エリート優勝を決めた自身のタイムをさらに0.349 秒更新し、50 秒283 という数字を叩き出す。疲れが見えないのは、さすが若者?
その後、プロライダーたちが次々にスタートするものの、なかなか51秒を切れない。残り2人、ここで井岡選手の表彰台は確定。プロライダーとして負けるわけにはいかない開幕戦優勝者の井本はじめ選手がついに50秒台を出すも0.029秒井岡選手に届かず。
最終走者の加藤将来選手も豪快な攻めの走りでゴールを目指す。しかし、中盤のタイトなバームでの切り返しで、あまりのパワーにタイヤが悲鳴を上げ「パンッ」という音と共に一瞬にしてタイヤがリムから外れてしまった。その瞬間、会場にはため息と、そして今日のローカルヒーローをたたえる拍手が湧いた。
「マジで嬉しいです。涙が出ました。タイムドセッションで勝てなくて、本戦でも勝てないんじゃないか、と今日一日吐きそうなくらいでした。」と話した井岡選手。ひとりだけ空中でもペダルを漕いでいた、という自転車歴5年、16歳の少年がプロクラスライダーに勝ってしまうという結果。
全エントリーの内、地元愛知県からの参加者は38人と約4割を占めた。SRAMPARKはできてから2年。自転車歴1年未満の若手ライダーのエントリーも多く、どんどんローカルライダーが育ってきているのが分かる。ご夫婦でスラムパークを走り込んでいるという吉川邦岳さんは、エリートで本戦7位となり、「数を走っていれば勝てるわけではないですね。色んなライン取りが見れて面白いです」と話してくれた。
ローカルヒーローに活躍してほしい!DOWNHILL SERIES を企画した当初の構想が、早くも現実となった一戦になった。#3は岐阜県ウイングヒルズ白鳥リゾートにて行われる。
report:DOWNHILL SERIES
photo:Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES
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