2015/06/13(土) - 09:13
フランスの名門トップチーム「FDJ」が現在メインバイクとして使用するのが、今回インプレッションを行うラピエール「Aircode」。空力とロードバイク本来の高効率な走りとのバランスを追求した中にも、フレンチブランドらしい独創性が光るブランド初のエアロロードに焦点をあてる。
ラピエール Aircode 300 MCP photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
ワインとマスタードで有名なフランス中部のディジョンに居を構えるラピエールは、ロード、MTB、クロスバイクを中心に年間のべ9万台もの生産台数を誇るビッグブランドである。本格的に国内展開が開始されたのが2000年代に入ってからとあって新興ブランドと思われがちだが、意外にも創業は1946年と、イタリアのいわゆるチクリ達と肩を並べるほどの長い歴史を有している。
フランスのバイクブランドと言えば高品質なカーボンと他に類を見ない独走的な設計、通じて技術力が高いというのが常套句だが、それはラピエールにも共通することである。本社には巨大な研究施設を有し、ロードバイクの開発においては長年トップチーム「FDJ」をサポート。加えてシマノ・ヨーロッパとも協力関係を築き、昨今主流規格の1つとなったBB86も他ブランドに先駆けていち早く取り入れた。
エアロロードながら無理のないケーブルルーティング。ケーブル類は全て内装仕様だ
前方投影面積を低減したスリムなヘッドチューブ
フロントフォークのブレードは翼断面形状。オフセットを50mmとしハンドリングを最適化した
そんなラピエールだが、2014年まではオールラウンダーのXeliusとエンデュランスモデルのSensiumというラインアップ構成で、エアロロードに関しては静観のスタンスをとってきた。一方でTTバイクには積極的で、その開発過程においてエアロダイナミクスに関する豊富な知識やノウハウを蓄えてきた。そして、18ヶ月に及ぶ開発期間を経て、満を持して登場したのが今回インプレッションする「Aircode」である。
その開発コンセプトは「空力性能とロードバイク本来の高効率な走りの両立」にある。空力面についてはTTバイク「AEROSTORM」の研究成果をベースとし、これにフレームとライダーの周りのエアフローをCFD解析した結果を加味。結果、ダウンチューブとシートチューブを比較的長辺の長いカムテール断面をとし、直進時の空気抵抗を低減しつつ、横風への安定性を確保することに成功した。
Aircodeのアイコンとも言える曲線的なダウンチューブ
ヘッド周りの造形にXeliusの面影を見てとることができる
翼断面に近しいカムテール形状のダウンチューブ
フロントブレーキのみダイレクトマウント式としている
一方で、フォークブレードやシートステーには翼断面を採用。前方投影面積を低減したスリムなヘッドチューブ、ヘッドチューブ上面に段差を設けた「セミインテグレーテッドステム」デザイン、ダイレクトマウント式のフロントブレーキ、臼式シートクランプやケーブルの内蔵によって徹底的に空気の乱れを抑制。結果、時速50km/hで5~10Wの出力低減を実現している。
走行性能面ではXeliusの設計を踏襲。ヘッド~ダウンチューブ~BB~チェーンステーのボトムラインを顕著にオーバーサイズ化し、ヘッド及びBBに使用するカーボンを切断せず可能な限り長い状態のまま使用することで、駆動効率を最大限に高める「パワーボックステクノロジー」を採用した。
目一杯拡幅されたBB86規格のボトムブラケット
高い駆動効率に貢献するシートステー。剛性値はXeliusと同等とされている
加えて30トン、38トン、40トンと3種類のカーボンを適材適所で組み合わせることにより、BB86式のボトムブラケットシェル、ヘッドチューブ、リアトライアングルの剛性値をXelius EFIと同等とし、優れた駆動効率を実現。もちろん快適性にも配慮されており、トップチューブや細身のシートステーをベンドさせることで、長距離・長時間のレースでも最後まで脚を残せるだけの衝撃吸収性を確保。
同様にジオメトリーもXeliusの寸法を踏襲しているものの、フォークオフセットのみ43mmから50mmへと変更。テーパードヘッドデザインと合わせて操作性を高めている。なお、ブレーキはフロントがダイレクトマウントであるのに対して、リアは近年トレンドのワイドリム採用エアロホイールに対応するためにノーマルタイプのキャリパーとし、多くのエアロバイクに見られる扱いづらさを徹底的に解消している。
臼式の内蔵シートクランプにより空気抵抗の低減を追求
ゆるやかにベンドしたシートステーなどにより振動吸収性を確保
空気の流れを乱さぬようタイヤに沿わせたシートチューブのデザイン
そうして完成したAircodeは2014シーズン初頭よりFDJによって実戦投入され、直ぐさまメインバイクとして多くのライダーから迎え入れられることとなる。そして昨年のツール・ド・フランスではティボー・ピノ(フランス)がAircodeと共に新人賞&フランス人として17年ぶりとなる総合3位表彰台を獲得。2015シーズンもスプリンターのアルノー・デマール(フランス)がベルギーツアーでステージ2勝を飾るなど多くの勝利に貢献している。
ラインアップはフレーム素材別に、FDJ.frが使用するハイエンドモデル「Ultimate」、「500 FDJ MCP」、そして今回のインプレッションバイクである「300 MCP」の3グレードが設定されている。いずれもフレームサイズはXS(46)、S(49)、M(52)、L(55)の4種類が揃う。
「300 MCP」はシマノULTEGRAとフレームセットの2種類の販売パッケージが用意される。なお、実際の販売パッケージではホイール及びタイヤがマヴィック Ksyrium Equipe WTS 23Cだが、今回のインプレッションバイクには、輸入元の東商会が取り扱うゼンティスのカーボンディープホイール「XBL 4.2」のクリンチャーがアッセンブルされていた。それでは、早速インプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「細身のライダーでもアウターを踏み込めるしなやかな1台 サーキットエンデューロで成績を狙う方に」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
非常にしなやかで踏み出しが軽いというのが第一印象です。出力の低い細身なライダーでもアウターを踏み込むことができ、距離の長いレースで大逃げを打つと言う様なシチュエーションで真価を発揮してくれるでしょう。ただし、絶対的な剛性は決して高くないことから体重のあるパワーライダー向きというわけではないですね。
「細身のライダーでもアウターを踏み込めるしなやかな1台 サーキットエンデューロで成績を狙う方に」 鈴木雅彦(サイクルショップDADDY) 登坂においては普段ならインナーに落としてしまう様な箇所でもアウターでこなすことができます。一方で、インナーギアかつ高ケイデンスで同じ坂を登ってみましたが、私の場合はリズムが取りにくく感じました。恐らく変形してから戻るまでにやや時間がかかるからであり、インナーで高ケイデンスよりもアウターで踏み込んであげたほうが、バイクが落ち着いてくれるからだと考えられます。最適なケイデンスは100rpm以下でしょう。
ハンドリングについては比較的キレが強く、コーナリング中の回頭性は良いですね。ただ、私もそうなのですが、もう少し落ち着きが欲しいと感じる方もいるでしょう。恐らくトレールが小さいのか、前荷重にしてもハンドルが落ち着かず、平地で風が強いとハンドルを取られやすいかもしれません。個人的には少しトップチューブの剛性を上げるか、フロントセンターを大きくしてもらいたいと感じましたが、慣れの範疇ではあります。
また、ホイール次第でハンドリングを落ち着かせることもできます。横風でハンドルを取られやすくなる可能性はありますが、軽いギアかつ高ケイデンスで登るのが得意という訳でもないですから、軽量なロープロファイルモデルよりも、直進性の高い重めのディープ系のホイールがおすすめですね。例えるならばリム面がアルミのマヴィックCOSMIC CARBONなどが良いでしょう。
ブレーキングに関しては、試乗車のホイールがカーボンと言うこともありますが、しっかりと、そしてガツんと効いてくれます。ダイレクトマウントのフロントブレーキとフォークの相性、そしてフォーク自体の振動吸収性やコーナリング中の踏ん張りも良好です。ただ先に述べた通り、慣れていないと、キレがよすぎるが故に下りでひやっとすることもあるかもしれません。
総じて、グランフォンドやサイクリングよりもレースというのはもちろんのこと、競技形態としてはエンデューロやツール・ド・おきなわの長距離クラスの様なラインレースに適性がありますね。大きな加減速を繰り返す様なシチュエーションは得意という訳ではないですが、踏み込んだ際に一旦しなってから伸びてくれるためクリテリウムにも充分に対応してくれるでしょう。
「ルックス以上に平地の高速巡航が得意 がっちりとしたスピードマン系のライダーに適性がある」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
カムテール形状のチューブを用いたオールラウンダーよりのエアロロードと考えていたのですが、予想とは違って純粋に平坦路を得意とするバイクですね。車輪の影響が強いのかなと考え、途中でミッドプロファイルのアルミホイールに交換してみたのですが、その印象は大きくは変わりませんでした。エアロダイナミクスを高めたということもあり、平地巡航や下りでしっかりとスピードが伸びてくれます。
ナセル・ブアニが昨年ジロでステージ3勝を挙げた印象が強く、プリントですごく素直な挙動を示すのかなとイメージしていました。確かに掛かりは悪くないのですが、実際にはスプリントやスピードの緩急というよりも高い巡航速度を維持することを得意としています。プロの場合にはスプリントに入る前からハイスピードを維持しなければなりませんから、そういったい意味ではプロ仕様のスプリントバイクという見方もできるのかもしれません。
「ルックス以上に平地の高速巡航が得意 がっちりとしたスピードマン系のライダーに適性がある」 山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
フレーム剛性は縦横ともにレーシングマシンに求められるレベルをキチンと確保できていますが、ガチガチという訳ではなく、レース終盤までしっかりと足を残せる競技者好みの硬さといえるでしょう。平坦でも登りでも個人的には軽いギアで高ケイデンスというよりも、ケイデンスで言うと100rpm以下でグイグイと踏み込んだ方が良く進んでくれるという印象を受けました。平坦系とはいっても登りが不得意と言う訳ではなく、重いギアで乗り越えられる様な短距離の登坂では気持よく進んでくれます。
一方で、フォークはブレードの先端が細いがためにねじれるのか、やや頼りなく感じました。慣れの範疇ではありますが、下りで倒しこんだ際やダンシング時にはフォークとヘッドが違う方向を向いてしまっているかの様な印象があります。ただ、得意な平地巡航ではネガティブな要素にはなりませんし、ヘッドやフォークの根本はしっかりしています。制動力が高いダイレクトマウントブレーキにもしっかりと対応してくれます。
ハンドリングについては直進性が強めですね。一方で、コーナーの進入で倒しこんだ際に「倒しこみが足りないのかな」と一瞬思うと、少し遅れて倒れてきますし、曲がりながらのブレーキングや当て効きは、制動力が高いことも相まってシビアで、慣れを擁すでしょう。
乗り心地については翼断面を多用して訳ではないものの、ひところのTTバイクの様に縦の衝撃はゴツゴツと伝えてきます。それでもレースバイクとしてみれば充分な快適性がありますね。気になるという方はタイヤの銘柄、太さ、空気圧で調整してみると良いでしょう。また、ホイールをロープロファイルモデルにしたり、繊維スポークを使用したものにするという方法もあるかとは思いますが、フレームのキャラクターがスポイルされてしまうため個人的にはオススメしませんし、エアロを優先すべきでしょう。
ライダーの脚質的には国内トップクラスでも十二分に対応してくれると思いますが、タイプ的にはがっちりとしたスピードマン系のライダーにこそ適性があるでしょう。また、路面のきれいなサーキットエンデューロで成績を出したいという方にもオススメです。フレームセットで20万円代であれば、何の不満もないですし、完成車のパッケージも良好で、カーボンエアロホイールを買い足せば直ぐにでもレースで好成績を狙えるでしょう。
ラピエール Aircode 300 MCP photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
ラピエール Aircode 300 MCP
コンポーネント:シマノ ULTEGRA
ホイール:マヴィック Ksyrium Equipe WTS 23C
ハンドル:ジップ Service Course SL 80 Anatomic
ステム:ジップ Service Course SL 6°
シートポスト:ラピエール Carbon
サドル:フィジーク Antares Mg(Black/Black Matt)
サイズ:XS(46)、S(49)、M(52)、L(55)
重 量:6.9kg(サイズS、ゼンティスXBL 4.2クリンチャー装着時)
カラー:Black/Red
価 格:519,000円(税抜)、299,000円(税抜、フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY) 鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア) 山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:ルコックスポルティフ
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANAO
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ワインとマスタードで有名なフランス中部のディジョンに居を構えるラピエールは、ロード、MTB、クロスバイクを中心に年間のべ9万台もの生産台数を誇るビッグブランドである。本格的に国内展開が開始されたのが2000年代に入ってからとあって新興ブランドと思われがちだが、意外にも創業は1946年と、イタリアのいわゆるチクリ達と肩を並べるほどの長い歴史を有している。
フランスのバイクブランドと言えば高品質なカーボンと他に類を見ない独走的な設計、通じて技術力が高いというのが常套句だが、それはラピエールにも共通することである。本社には巨大な研究施設を有し、ロードバイクの開発においては長年トップチーム「FDJ」をサポート。加えてシマノ・ヨーロッパとも協力関係を築き、昨今主流規格の1つとなったBB86も他ブランドに先駆けていち早く取り入れた。
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そんなラピエールだが、2014年まではオールラウンダーのXeliusとエンデュランスモデルのSensiumというラインアップ構成で、エアロロードに関しては静観のスタンスをとってきた。一方でTTバイクには積極的で、その開発過程においてエアロダイナミクスに関する豊富な知識やノウハウを蓄えてきた。そして、18ヶ月に及ぶ開発期間を経て、満を持して登場したのが今回インプレッションする「Aircode」である。
その開発コンセプトは「空力性能とロードバイク本来の高効率な走りの両立」にある。空力面についてはTTバイク「AEROSTORM」の研究成果をベースとし、これにフレームとライダーの周りのエアフローをCFD解析した結果を加味。結果、ダウンチューブとシートチューブを比較的長辺の長いカムテール断面をとし、直進時の空気抵抗を低減しつつ、横風への安定性を確保することに成功した。
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一方で、フォークブレードやシートステーには翼断面を採用。前方投影面積を低減したスリムなヘッドチューブ、ヘッドチューブ上面に段差を設けた「セミインテグレーテッドステム」デザイン、ダイレクトマウント式のフロントブレーキ、臼式シートクランプやケーブルの内蔵によって徹底的に空気の乱れを抑制。結果、時速50km/hで5~10Wの出力低減を実現している。
走行性能面ではXeliusの設計を踏襲。ヘッド~ダウンチューブ~BB~チェーンステーのボトムラインを顕著にオーバーサイズ化し、ヘッド及びBBに使用するカーボンを切断せず可能な限り長い状態のまま使用することで、駆動効率を最大限に高める「パワーボックステクノロジー」を採用した。
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同様にジオメトリーもXeliusの寸法を踏襲しているものの、フォークオフセットのみ43mmから50mmへと変更。テーパードヘッドデザインと合わせて操作性を高めている。なお、ブレーキはフロントがダイレクトマウントであるのに対して、リアは近年トレンドのワイドリム採用エアロホイールに対応するためにノーマルタイプのキャリパーとし、多くのエアロバイクに見られる扱いづらさを徹底的に解消している。
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そうして完成したAircodeは2014シーズン初頭よりFDJによって実戦投入され、直ぐさまメインバイクとして多くのライダーから迎え入れられることとなる。そして昨年のツール・ド・フランスではティボー・ピノ(フランス)がAircodeと共に新人賞&フランス人として17年ぶりとなる総合3位表彰台を獲得。2015シーズンもスプリンターのアルノー・デマール(フランス)がベルギーツアーでステージ2勝を飾るなど多くの勝利に貢献している。
ラインアップはフレーム素材別に、FDJ.frが使用するハイエンドモデル「Ultimate」、「500 FDJ MCP」、そして今回のインプレッションバイクである「300 MCP」の3グレードが設定されている。いずれもフレームサイズはXS(46)、S(49)、M(52)、L(55)の4種類が揃う。
「300 MCP」はシマノULTEGRAとフレームセットの2種類の販売パッケージが用意される。なお、実際の販売パッケージではホイール及びタイヤがマヴィック Ksyrium Equipe WTS 23Cだが、今回のインプレッションバイクには、輸入元の東商会が取り扱うゼンティスのカーボンディープホイール「XBL 4.2」のクリンチャーがアッセンブルされていた。それでは、早速インプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「細身のライダーでもアウターを踏み込めるしなやかな1台 サーキットエンデューロで成績を狙う方に」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
非常にしなやかで踏み出しが軽いというのが第一印象です。出力の低い細身なライダーでもアウターを踏み込むことができ、距離の長いレースで大逃げを打つと言う様なシチュエーションで真価を発揮してくれるでしょう。ただし、絶対的な剛性は決して高くないことから体重のあるパワーライダー向きというわけではないですね。
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ハンドリングについては比較的キレが強く、コーナリング中の回頭性は良いですね。ただ、私もそうなのですが、もう少し落ち着きが欲しいと感じる方もいるでしょう。恐らくトレールが小さいのか、前荷重にしてもハンドルが落ち着かず、平地で風が強いとハンドルを取られやすいかもしれません。個人的には少しトップチューブの剛性を上げるか、フロントセンターを大きくしてもらいたいと感じましたが、慣れの範疇ではあります。
また、ホイール次第でハンドリングを落ち着かせることもできます。横風でハンドルを取られやすくなる可能性はありますが、軽いギアかつ高ケイデンスで登るのが得意という訳でもないですから、軽量なロープロファイルモデルよりも、直進性の高い重めのディープ系のホイールがおすすめですね。例えるならばリム面がアルミのマヴィックCOSMIC CARBONなどが良いでしょう。
ブレーキングに関しては、試乗車のホイールがカーボンと言うこともありますが、しっかりと、そしてガツんと効いてくれます。ダイレクトマウントのフロントブレーキとフォークの相性、そしてフォーク自体の振動吸収性やコーナリング中の踏ん張りも良好です。ただ先に述べた通り、慣れていないと、キレがよすぎるが故に下りでひやっとすることもあるかもしれません。
総じて、グランフォンドやサイクリングよりもレースというのはもちろんのこと、競技形態としてはエンデューロやツール・ド・おきなわの長距離クラスの様なラインレースに適性がありますね。大きな加減速を繰り返す様なシチュエーションは得意という訳ではないですが、踏み込んだ際に一旦しなってから伸びてくれるためクリテリウムにも充分に対応してくれるでしょう。
「ルックス以上に平地の高速巡航が得意 がっちりとしたスピードマン系のライダーに適性がある」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
カムテール形状のチューブを用いたオールラウンダーよりのエアロロードと考えていたのですが、予想とは違って純粋に平坦路を得意とするバイクですね。車輪の影響が強いのかなと考え、途中でミッドプロファイルのアルミホイールに交換してみたのですが、その印象は大きくは変わりませんでした。エアロダイナミクスを高めたということもあり、平地巡航や下りでしっかりとスピードが伸びてくれます。
ナセル・ブアニが昨年ジロでステージ3勝を挙げた印象が強く、プリントですごく素直な挙動を示すのかなとイメージしていました。確かに掛かりは悪くないのですが、実際にはスプリントやスピードの緩急というよりも高い巡航速度を維持することを得意としています。プロの場合にはスプリントに入る前からハイスピードを維持しなければなりませんから、そういったい意味ではプロ仕様のスプリントバイクという見方もできるのかもしれません。
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一方で、フォークはブレードの先端が細いがためにねじれるのか、やや頼りなく感じました。慣れの範疇ではありますが、下りで倒しこんだ際やダンシング時にはフォークとヘッドが違う方向を向いてしまっているかの様な印象があります。ただ、得意な平地巡航ではネガティブな要素にはなりませんし、ヘッドやフォークの根本はしっかりしています。制動力が高いダイレクトマウントブレーキにもしっかりと対応してくれます。
ハンドリングについては直進性が強めですね。一方で、コーナーの進入で倒しこんだ際に「倒しこみが足りないのかな」と一瞬思うと、少し遅れて倒れてきますし、曲がりながらのブレーキングや当て効きは、制動力が高いことも相まってシビアで、慣れを擁すでしょう。
乗り心地については翼断面を多用して訳ではないものの、ひところのTTバイクの様に縦の衝撃はゴツゴツと伝えてきます。それでもレースバイクとしてみれば充分な快適性がありますね。気になるという方はタイヤの銘柄、太さ、空気圧で調整してみると良いでしょう。また、ホイールをロープロファイルモデルにしたり、繊維スポークを使用したものにするという方法もあるかとは思いますが、フレームのキャラクターがスポイルされてしまうため個人的にはオススメしませんし、エアロを優先すべきでしょう。
ライダーの脚質的には国内トップクラスでも十二分に対応してくれると思いますが、タイプ的にはがっちりとしたスピードマン系のライダーにこそ適性があるでしょう。また、路面のきれいなサーキットエンデューロで成績を出したいという方にもオススメです。フレームセットで20万円代であれば、何の不満もないですし、完成車のパッケージも良好で、カーボンエアロホイールを買い足せば直ぐにでもレースで好成績を狙えるでしょう。
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ラピエール Aircode 300 MCP
コンポーネント:シマノ ULTEGRA
ホイール:マヴィック Ksyrium Equipe WTS 23C
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ステム:ジップ Service Course SL 6°
シートポスト:ラピエール Carbon
サドル:フィジーク Antares Mg(Black/Black Matt)
サイズ:XS(46)、S(49)、M(52)、L(55)
重 量:6.9kg(サイズS、ゼンティスXBL 4.2クリンチャー装着時)
カラー:Black/Red
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インプレライダーのプロフィール
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岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
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神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:ルコックスポルティフ
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANAO
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