2015/06/18(木) - 09:27
イタリアンロードバイクの雄として、多くのファンの心を掴んで離さないコルナゴ。フラッグシップである「C」シリーズの最新モデルである「C60」のデビューが話題を呼んだ。そして、もうひとつ。コルナゴが満を持して送りだすレーシングマシンが今回紹介する「V1-r」だ。
「イタリア御三家」。数あるイタリアンバイクブランドの中でも大きな存在感を放つ、3つの老舗ブランドのことだ。時代が移るにしたがって、御三家と聞いて人が思い浮かべるブランド名は様々に変化してきたが、その一角を常に占め続けてきたチクリ(工房)がコルナゴだ。
その始まりは選手として将来を嘱望されながらも、怪我により将来を絶たれたエルネスト・コルナゴが22歳の時に、溶接工としての経験を基に生まれ故郷であるミラノ郊外のカンビアーゴにて自らのチクリを立ち上げたところまで遡る。その後、ローマオリンピックでの金メダルや、史上最強の選手と呼び声高いエディ・メルクスのアワーレコード挑戦用のフレーム供給などをきっかけに一躍その名声を高めていった。
スチールバイクがプロトンの主流であった時代からレースシーンをリードし続けてきたコルナゴ。カーボンフレーム全盛の現代にあっては忘れられがちだが、イタリアの伝統あるチクリの中でもいち早くレーススペックのカーボンフレームの製作を手掛けはじめた先見性のあるブランドでもある。
コルナゴがカーボンファイバーに可能性を感じ始めたのは、1980年代後半、同郷のスポーツカーブランドであるフェラーリとのカーボンファイバーを使った共同開発プロジェクトにある。フェラーリとのコラボレーションは成功し、1989年にはコルナゴ初のカーボンフレーム「C35」をデビューさせることに。
そしてその5年後には、通算1000勝以上を挙げると共に、「北の地獄」パリ~ルーベを制した史上初のカーボンバイク「C40」を送り出すことで、カーボンフレームの技術を完全に手中に収めたコルナゴ。その系譜は脈々と受け継がれ、世界選手権を2度制した「C50」や新城幸也も駆る「C59」、そして昨年発表され大きな話題を呼んだ「C60」に至っている。
それらのフレームに通ずるのはラグドフレームであるということ。真っ直ぐなパイプを5つのラグで繋ぐ、スチール時代から続くトラディショナルなフレームを、最高のカーボンテクノロジーで製作することでコルナゴは独特の乗り味を実現してきたことで、その世界観に共感する多くのファンを獲得してきたといえるだろう。
しかし、5年前まではプロトンの中にもちらほらと見かけられたラグドフレームはどんどんと姿を消し、数多ある有名ブランドの中で外ラグ方式のカーボンフレームをトップレーシングモデルとして設定しているブランドはコルナゴだけとなってしまった。レースシーンで求められる軽量性や、剛性、そして近年取り沙汰されることの多いエアロダイナミクスを実現するには、パイプ形状の自由度が高いモノコックフレームが有利なのだ。
コルナゴは伝統を重んじるブランドであると同時に、レースに対する熱い情熱を燃やすことでも知られている。そんなコルナゴが最先端のカーボンテクノロジーを用いて生み出したモノコックレーサーこそがV1-rである。
ユーロップカーに所属するフランスの期待を担うクライマー、ピエール・ロラン(フランス)らを支え続けてきたM10の後継機となるV1-r。コルナゴ史上最軽量モデルとしてヒルクライムはもちろん、フェラーリとの共同開発によって獲得した高いエアロダイナミクスを活かして平坦から下りまでと、ありとあらゆる局面に対応するオールラウンドレーサーとして完成している。
それは、ユーロップカーの選手たちの使用バイクがほとんどこのV1-rで占められていることからも推察される。現代のロードレース環境において、このV1-rはコルナゴラインアップの中でもっともハイパフォーマンスな一台としてプロトンに受け入れられているということだ。
モノコックフレームではあるものの、コルナゴらしい直線的なデザインは失われていない。ダウンチューブはカムテール形状となっていたり、シートステーのリアエンド付近はベンドさせられていたりと、性能向上に寄与する設計がなされていながらも、全体としては非常にオーソドックスなフレームワークに仕上がっている。
また、ブレーキは前後ともダイレクトマウント方式を採用することで制動力と空力性能の向上を両立している。ボトムブラケットにはC60に採用した独自の規格である「スレッドフィット」を採用することで、剛性の向上という圧入式BBの利点と、メンテナンス性能とフレームへのダメージの少なさに優れるねじ切りBBの美点を兼ね備えている。
今回インプレッションするのは、スラム レッドにマヴィック キシリウムSLRを組み合わせた試乗車。タイヤにはマヴィックのイクシオン プロをアセンブルしている。コルナゴ最高のピュアレースバイクを二人のインプレッションライダーはどう受け止めるのか。それではインプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「高い走行性能をありとあらゆるレベルのライダーが享受できる優等生」鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
優等生過ぎてコメントに困ってしまいますね(笑)。トータルの性能に優れているので、どんなレベルの人がどんなコースで走ってもそつなくこなしてしまうと思います。レース機材ではあるんですが勝ち負けを気にしないようなシチュエーションでも乗っていて単純に楽しいです。
あえて、得意なフィールドを挙げるとするならばグランフォンドをはじめとした長距離系のライドでしょうか。絶対的な剛性は高過ぎず、優れた剛性バランスを持っており、大きなギアをかけて踏みこんでいったとしても受け入れてくれる優しさがあります。
ですので、登りでも軽いギアに落とすことなくダンシングで気持ち良く登ることが出来ますし、アタックをかける時でも決まりやすいでしょうね。ハンドリングもニュートラルで扱いやすい性格です。高速で下っている中でもきちんと車体を倒すことができて、安心して曲がっていけます。
このような高い走行性能をありとあらゆるレベルのライダーが享受できるバイクです。少し前までのレーシングバイクだと「脚の無い人お断り」といったような乗り味のものも多かったですが、このバイクは間口を広く開けているように感じます。コストを度外視すれば、初めてのロードバイクとして選んでも十分に走行性能を味わえます。
けして、快適性にステータスを中心的に振ったようなラグジュアリーバイクというわけではなく、過剰なまでの乗り心地の良さというものはありません。しかし、振動吸収性能と優れた剛性バランスによって長い距離を走った時の消耗度合いはかなり低く抑えられるでしょう。
長いステージレースでコルナゴから供給を受けるプロ選手がフラッグシップであるC60ではなく、こちらをチョイスするというのも納得の性能です。短距離で持てる力を最大限に活かすC60に対して、脚を温存し最後の勝負どころまでライダーを連れていくという点ではV1-rが優っているでしょうね。
レースから普段の練習やツーリングまで、これ1台あればカバーできる、バーサタイルなバイクです。ホイールも、軽やかに登りを走るならロープロファイルの軽量ホイール、オールラウンドな性能を求めるならば50mm程度のディープリムを組み合わせると良いでしょう。フレームがオールラウンドなので、ホイールによって味付けを変えることが出来ると思います。
「乗る場所、乗る人を選ばないオールラウンドバイク」山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
乗る場所、乗る人を選ばないオールラウンドバイクとして非常に高い完成度を持った一台です。当初、コルナゴ史上最軽量かつ最も空力に秀でたバイクという触れ込みだったので、かなりピーキーなバイクだと想像していたのですが、その予想は良い意味で裏切られましたね。前作のM10の美点であったロングライドでの乗り心地の良さもしっかりと受け継いでいます。
ただ、これまでのコルナゴバイクらしい性格ではないですね。今までのコルナゴは、長い間バイクと付き合っていく中でにじみ出るような良さがあるブランドでしたが、V1-rは踏み出した瞬間から軽いです。コルナゴと言えばホイールベースが長く感じるほど抜群の直進安定性のイメージですが、ハンドリングもニュートラルで曲がりやすい。
往年のコルナゴファンからすれば、期待を裏切られたような、肩すかしを食らったような気分になるのかもしれませんが、扱いやすい上に高い走行性能を持つV1-rは大多数を占める普通のサイクリストの目には理想のバイクとして映るのではないでしょうか。
コルナゴらしさを求めるファンにはC60がありますし、コルナゴ自身も似たようなバイクを作っても仕方がないと考えたはず。なので、この二つはかなり違った味付けになっています。とはいっても、レースで勝てるバイクを送りだすという意味においてはV1-rも確かにコルナゴスピリットを受け継いでいるといえるでしょう。
プロ選手がステージレースを中心にV1-rを使うのも納得できる味付けですね。全体的に身のこなしが軽く、剛性バランスに優れているので脚に来ない。この軽さは、フレーム重量もありますが、エアロでありながらもボックス形状を採用したチュービングに由来するものでしょうね。
ボリュームのあるフロント回りと、スリムなリアセクションという様に意図して剛性のバランスを整えていることが見て取れますし、他にも細いシートステーのエンド側だけを拡幅したりするような形状に対する工夫が、全体の性能に良い方向へと影響しているんだと思います。エアロロードですが、カムテール形状を採用していることもあり、極端な縦方向と横方向のバランスの崩れというのもありません。
素直で走りが軽いので、ホイールなども軽いロープロファイルのホイールがマッチするのではないでしょうか。ちょうどこの試乗車にアッセンブルされているキシリウムSLRのようなホイールはベストマッチでしょう。ロングライドからレースでも使えるバイクが欲しいけれど、硬すぎるバイクは嫌だという人にとってはかなりオススメできるバイクですね。
コルナゴ V1-r(フレームセット)
フレーム:HHM-HM CARBON
フォーク:V1-r CARBON
サイズ:420S、450S、480S、500S、520S、540S、560S、580S
価 格:490,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:bici
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO
「イタリア御三家」。数あるイタリアンバイクブランドの中でも大きな存在感を放つ、3つの老舗ブランドのことだ。時代が移るにしたがって、御三家と聞いて人が思い浮かべるブランド名は様々に変化してきたが、その一角を常に占め続けてきたチクリ(工房)がコルナゴだ。
その始まりは選手として将来を嘱望されながらも、怪我により将来を絶たれたエルネスト・コルナゴが22歳の時に、溶接工としての経験を基に生まれ故郷であるミラノ郊外のカンビアーゴにて自らのチクリを立ち上げたところまで遡る。その後、ローマオリンピックでの金メダルや、史上最強の選手と呼び声高いエディ・メルクスのアワーレコード挑戦用のフレーム供給などをきっかけに一躍その名声を高めていった。
スチールバイクがプロトンの主流であった時代からレースシーンをリードし続けてきたコルナゴ。カーボンフレーム全盛の現代にあっては忘れられがちだが、イタリアの伝統あるチクリの中でもいち早くレーススペックのカーボンフレームの製作を手掛けはじめた先見性のあるブランドでもある。
コルナゴがカーボンファイバーに可能性を感じ始めたのは、1980年代後半、同郷のスポーツカーブランドであるフェラーリとのカーボンファイバーを使った共同開発プロジェクトにある。フェラーリとのコラボレーションは成功し、1989年にはコルナゴ初のカーボンフレーム「C35」をデビューさせることに。
そしてその5年後には、通算1000勝以上を挙げると共に、「北の地獄」パリ~ルーベを制した史上初のカーボンバイク「C40」を送り出すことで、カーボンフレームの技術を完全に手中に収めたコルナゴ。その系譜は脈々と受け継がれ、世界選手権を2度制した「C50」や新城幸也も駆る「C59」、そして昨年発表され大きな話題を呼んだ「C60」に至っている。
それらのフレームに通ずるのはラグドフレームであるということ。真っ直ぐなパイプを5つのラグで繋ぐ、スチール時代から続くトラディショナルなフレームを、最高のカーボンテクノロジーで製作することでコルナゴは独特の乗り味を実現してきたことで、その世界観に共感する多くのファンを獲得してきたといえるだろう。
しかし、5年前まではプロトンの中にもちらほらと見かけられたラグドフレームはどんどんと姿を消し、数多ある有名ブランドの中で外ラグ方式のカーボンフレームをトップレーシングモデルとして設定しているブランドはコルナゴだけとなってしまった。レースシーンで求められる軽量性や、剛性、そして近年取り沙汰されることの多いエアロダイナミクスを実現するには、パイプ形状の自由度が高いモノコックフレームが有利なのだ。
コルナゴは伝統を重んじるブランドであると同時に、レースに対する熱い情熱を燃やすことでも知られている。そんなコルナゴが最先端のカーボンテクノロジーを用いて生み出したモノコックレーサーこそがV1-rである。
ユーロップカーに所属するフランスの期待を担うクライマー、ピエール・ロラン(フランス)らを支え続けてきたM10の後継機となるV1-r。コルナゴ史上最軽量モデルとしてヒルクライムはもちろん、フェラーリとの共同開発によって獲得した高いエアロダイナミクスを活かして平坦から下りまでと、ありとあらゆる局面に対応するオールラウンドレーサーとして完成している。
それは、ユーロップカーの選手たちの使用バイクがほとんどこのV1-rで占められていることからも推察される。現代のロードレース環境において、このV1-rはコルナゴラインアップの中でもっともハイパフォーマンスな一台としてプロトンに受け入れられているということだ。
モノコックフレームではあるものの、コルナゴらしい直線的なデザインは失われていない。ダウンチューブはカムテール形状となっていたり、シートステーのリアエンド付近はベンドさせられていたりと、性能向上に寄与する設計がなされていながらも、全体としては非常にオーソドックスなフレームワークに仕上がっている。
また、ブレーキは前後ともダイレクトマウント方式を採用することで制動力と空力性能の向上を両立している。ボトムブラケットにはC60に採用した独自の規格である「スレッドフィット」を採用することで、剛性の向上という圧入式BBの利点と、メンテナンス性能とフレームへのダメージの少なさに優れるねじ切りBBの美点を兼ね備えている。
今回インプレッションするのは、スラム レッドにマヴィック キシリウムSLRを組み合わせた試乗車。タイヤにはマヴィックのイクシオン プロをアセンブルしている。コルナゴ最高のピュアレースバイクを二人のインプレッションライダーはどう受け止めるのか。それではインプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「高い走行性能をありとあらゆるレベルのライダーが享受できる優等生」鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
優等生過ぎてコメントに困ってしまいますね(笑)。トータルの性能に優れているので、どんなレベルの人がどんなコースで走ってもそつなくこなしてしまうと思います。レース機材ではあるんですが勝ち負けを気にしないようなシチュエーションでも乗っていて単純に楽しいです。
あえて、得意なフィールドを挙げるとするならばグランフォンドをはじめとした長距離系のライドでしょうか。絶対的な剛性は高過ぎず、優れた剛性バランスを持っており、大きなギアをかけて踏みこんでいったとしても受け入れてくれる優しさがあります。
ですので、登りでも軽いギアに落とすことなくダンシングで気持ち良く登ることが出来ますし、アタックをかける時でも決まりやすいでしょうね。ハンドリングもニュートラルで扱いやすい性格です。高速で下っている中でもきちんと車体を倒すことができて、安心して曲がっていけます。
このような高い走行性能をありとあらゆるレベルのライダーが享受できるバイクです。少し前までのレーシングバイクだと「脚の無い人お断り」といったような乗り味のものも多かったですが、このバイクは間口を広く開けているように感じます。コストを度外視すれば、初めてのロードバイクとして選んでも十分に走行性能を味わえます。
けして、快適性にステータスを中心的に振ったようなラグジュアリーバイクというわけではなく、過剰なまでの乗り心地の良さというものはありません。しかし、振動吸収性能と優れた剛性バランスによって長い距離を走った時の消耗度合いはかなり低く抑えられるでしょう。
長いステージレースでコルナゴから供給を受けるプロ選手がフラッグシップであるC60ではなく、こちらをチョイスするというのも納得の性能です。短距離で持てる力を最大限に活かすC60に対して、脚を温存し最後の勝負どころまでライダーを連れていくという点ではV1-rが優っているでしょうね。
レースから普段の練習やツーリングまで、これ1台あればカバーできる、バーサタイルなバイクです。ホイールも、軽やかに登りを走るならロープロファイルの軽量ホイール、オールラウンドな性能を求めるならば50mm程度のディープリムを組み合わせると良いでしょう。フレームがオールラウンドなので、ホイールによって味付けを変えることが出来ると思います。
「乗る場所、乗る人を選ばないオールラウンドバイク」山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
乗る場所、乗る人を選ばないオールラウンドバイクとして非常に高い完成度を持った一台です。当初、コルナゴ史上最軽量かつ最も空力に秀でたバイクという触れ込みだったので、かなりピーキーなバイクだと想像していたのですが、その予想は良い意味で裏切られましたね。前作のM10の美点であったロングライドでの乗り心地の良さもしっかりと受け継いでいます。
ただ、これまでのコルナゴバイクらしい性格ではないですね。今までのコルナゴは、長い間バイクと付き合っていく中でにじみ出るような良さがあるブランドでしたが、V1-rは踏み出した瞬間から軽いです。コルナゴと言えばホイールベースが長く感じるほど抜群の直進安定性のイメージですが、ハンドリングもニュートラルで曲がりやすい。
往年のコルナゴファンからすれば、期待を裏切られたような、肩すかしを食らったような気分になるのかもしれませんが、扱いやすい上に高い走行性能を持つV1-rは大多数を占める普通のサイクリストの目には理想のバイクとして映るのではないでしょうか。
コルナゴらしさを求めるファンにはC60がありますし、コルナゴ自身も似たようなバイクを作っても仕方がないと考えたはず。なので、この二つはかなり違った味付けになっています。とはいっても、レースで勝てるバイクを送りだすという意味においてはV1-rも確かにコルナゴスピリットを受け継いでいるといえるでしょう。
プロ選手がステージレースを中心にV1-rを使うのも納得できる味付けですね。全体的に身のこなしが軽く、剛性バランスに優れているので脚に来ない。この軽さは、フレーム重量もありますが、エアロでありながらもボックス形状を採用したチュービングに由来するものでしょうね。
ボリュームのあるフロント回りと、スリムなリアセクションという様に意図して剛性のバランスを整えていることが見て取れますし、他にも細いシートステーのエンド側だけを拡幅したりするような形状に対する工夫が、全体の性能に良い方向へと影響しているんだと思います。エアロロードですが、カムテール形状を採用していることもあり、極端な縦方向と横方向のバランスの崩れというのもありません。
素直で走りが軽いので、ホイールなども軽いロープロファイルのホイールがマッチするのではないでしょうか。ちょうどこの試乗車にアッセンブルされているキシリウムSLRのようなホイールはベストマッチでしょう。ロングライドからレースでも使えるバイクが欲しいけれど、硬すぎるバイクは嫌だという人にとってはかなりオススメできるバイクですね。
コルナゴ V1-r(フレームセット)
フレーム:HHM-HM CARBON
フォーク:V1-r CARBON
サイズ:420S、450S、480S、500S、520S、540S、560S、580S
価 格:490,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:bici
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO
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