第1ステージは平坦基調のコース。スピードに勝るニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)が昨日のTTに続いて圧倒。2位の綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)は2年ぶりのUCIポイント獲得。



熊野川温泉さつき前から正式スタート熊野川温泉さつき前から正式スタート photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・熊野2日目、第1ステージ赤木川清流コースが5月29日(金)、和歌山県新宮市熊野川町で行なわれた。JR新宮駅前から新宮市内をパレード走行のあと、国道168号で熊野川沿いを熊野川町方面へ。ここは和歌山県だけでも55人の死者・行方不明者を出した2011年の紀伊半島大水害の現場でもあり、ところどころ傷跡が今でも残る。正式スタート地点の熊野川温泉さつきも当時は屋根の上まで水没したが、現在では温泉の営業を再開している。壇上に上がった片山右京監督もこのことに触れ、集まった住民から暖かい拍手が送られた。

今大会参加は20チーム各6名までで計115名が参戦。TOJから続く海外チームはアヴァンティレーシングチームとRTSサンティックレーシングチーム。アヴァンティは熊野に相性のいいアンソニー・ジャコッポを入れてきた。ほかアタックチームガストはエリック・シェパード、トマス・ラボウ、ヤン・インホンなど熊野やおきなわに縁のある選手が参戦。一番の注目はやはり地元のキナンサイクリングチーム。メンバーをTOJから1名変え、ロイック・デリアックを入れて万全の構えだ。

子どもたちに人気の”りょうま君”子どもたちに人気の”りょうま君” photo:Hideaki TAKAGI2周目、メイン集団が赤木橋を渡る2周目、メイン集団が赤木橋を渡る photo:Hideaki TAKAGI

3周目、小口集落内を抜けるメイン集団3周目、小口集落内を抜けるメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI5周目、メイン集団を引くのは鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)5周目、メイン集団を引くのは鈴木真理(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI

この第1ステージのコースや距離は例年通りで1周16.3kmを7周する114.1km。コントロールライン手前に狭い急坂のKOMを、そしてコントロールラインより後方には狭く曲がりくねった道を入れている。この2箇所で伸びた集団は、ペースが上がると分断されて復帰不可能になる。「熊野で完走が一番難しいのは第1ステージ」そう選手の間ではささやかれている。

115名でスタートした第1ステージ、すぐに各チームによるアタックの応酬に。国内のほとんどのチームが先頭で展開する様はTOJでは見られなかった光景。クラブチームも入って活発に動く。2周目に6人の逃げができる。増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、入部正太朗(シマノレーシング)、中根英登(愛三工業レーシングチーム)、安原大貴(マトリックスパワータグ)、シェパード、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)の6名。

ラスト5km、キナンサイクリングチームが先頭でペースを作るラスト5km、キナンサイクリングチームが先頭でペースを作る photo:Hideaki TAKAGI
好メンバーによる逃げだったが3周目には吸収され、代わって新人賞ジャージのジャマリディン・ノバルディアント(ペガサスコンチネンタルサイクリングチーム)が単独で逃げる。ここでようやく集団は落ち着き差は1分、序盤にこぼれた選手たちもメイン集団へ復帰する。6周目に集団はひとつになるとふたたびアタックの応酬となり数人が常に抜け出している状況。イリヤ・ゴロドニチェフ(RTSサンティックレーシングチーム)が抜け出すも吸収され最終周回へ。

最終周回へ入ると集団の中で各チームがまとまる。なかでもキナンサイクリングチームは5人で先頭を引き集団を安定させる。隊列は乱れないままフィニッシュへ。集団のままラストの2つのコーナーを過ぎ、先頭で現れたのは昨日のプロローグ覇者、ヴァンデルプローグ。ただ一人抜け出した状態でリーダージャージはフィニッシュラインを駆け抜けた。これに綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)らが続いた。

ニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)がプロローグに続いて連勝ニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)がプロローグに続いて連勝 photo:Hideaki TAKAGI
ヴァンデルプローグはオーストラリア出身の27歳。2014年ツアー・オブ・チャイナ2で総合3位、2014年ヘラルドサンツアーで総合5位などの成績を持つスピード系の選手。「明日の第2ステージは山岳が厳しいから今のうちに勝っておきたかった」と語る。「真平にトラブルがあったので自分が行きました」と2位に入った綾部は2年ぶりのUCIポイント獲得に笑顔になる。そして4位5位は那須ブラーゼンの小野寺玲と鈴木龍。チームの強化がここにきて形になってきた。

翌第2ステージは熊野山岳コース。丸山千枚田など風光明媚な場所を走るが、厳しい上りと、日本一と言ってよい下りの厳しさが特徴のコース。特に札立峠の下り区間は、上りの2分差なら挽回できるほどのテクニカルコース。登坂力に加え自転車のコントロール能力も必要なタフなもの。日本勢が抜け出すのか、混戦になるのか、白熱したレース展開が期待できる。

綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)が2位。2年ぶりのUCIポイント獲得綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)が2位。2年ぶりのUCIポイント獲得 photo:Hideaki TAKAGI第1ステージ表彰第1ステージ表彰 photo:Hideaki TAKAGI

個人総合&ポイントリーダーのニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)個人総合&ポイントリーダーのニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム) photo:Hideaki TAKAGI山岳リーダーの中根英登(愛三工業レーシングチーム)山岳リーダーの中根英登(愛三工業レーシングチーム) photo:Hideaki TAKAGI



結果
第1ステージ赤木川清流コース 114.1km
1位 ニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)2時間35分52秒
2位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
3位 ティノ・ソメル(RTSサンティックレーシングチーム)
4位 小野寺玲(那須ブラーゼン)
5位 鈴木龍(那須ブラーゼン)
6位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
7位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
8位 野中竜馬(キナンサイクリングチーム)
9位 ジャン・サンジェ(RTSサンティックレーシングチーム)
10位 パトリア・ラストラ(ペガサスコンチネンタルサイクリングチーム)

個人総合 第1ステージ終了時点
1位 ニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)2時間36分32秒
2位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+07秒
3位 ティノ・ソメル(RTSサンティックレーシングチーム)
4位 大久保陣(宇都宮ブリッツェン)+11秒
5位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
6位 ベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)
7位 中村龍太郎(イナーメ信濃山形)+12秒
8位 青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)
9位 野中竜馬(キナンサイクリングチーム)
10位 ジャマリディン・ノバルディアント(ペガサスコンチネンタルサイクリングチーム)

新人賞 第1ステージ終了時点
1位 ジャマリディン・ノバルディアント(ペガサスコンチネンタルサイクリングチーム)

個人総合ポイント 第1ステージ終了時点
1位 ニール・ヴァンデルプローグ(アヴァンティレーシングチーム)35点
2位 ティノ・ソメル(RTSサンティックレーシングチーム)23点
3位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)20点

個人総合山岳 第1ステージ終了時点
1位 中根英登(愛三工業レーシングチーム)3点
2位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)2点
3位 安原大貴(マトリックスパワータグ)1点

チーム総合 第1ステージ終了時点
1位 愛三工業レーシングチーム 7時間50分12秒
2位 ペガサスコンチネンタルサイクリングチーム +01秒
3位 宇都宮ブリッツェン

photo&text:Hideaki TAKAGI

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