2015/05/23(土) - 09:04
質実剛健なバイクデザインで高い信頼を得ているベルギーのリドレー。今回は、同社の誇るエアロロードバイク「NOAH」シリーズの最新軽量モデル「ノアSL」をインプレッション。平地でも山でも活躍できるオールラウンドエアロロードの実力とは。
UCIの重量制限ルールもあり、主だったロードバイクブランドのラインアップには必ず存在するようになったと言っても過言ではないエアロロードバイク。しかしリドレーは、エアロロードが未だ一般的ではなかった時からNOAHの名を冠したシリーズをそのラインナップに用意してきた。
その初登場は2006年、今から9年前に遡る。今では一般的になったが当時最先端であったISP(インテグレーテッドシートポスト)やテーパードヘッドといった規格を採用し、空気を切り裂くかのようなエッジの立ったチュービングのフレームで見るものの目を釘付けにした。
それから3年後の2009年、NOAHはフルモデルチェンジを果たし、それまでの直線的なフレームから一転した曲線的なデザインやフォーク及びシートステーのスリットなどを採用し、軽量モデル「HELIUM」と並び立つエアロバイクとしての位置付けを明確にした。
2011年には、専用設計のカンティ式ブレーキキャリパーをフレームやフォークと一体化することで更なるエアロダイナミクスの向上を図ったNOAH FASTを登場させ、サイクリスト達の度肝を抜いた。その後、続々とエアロダイナミクスを重視した専用ブレーキを装備したバイクが各社から発表されたことは、機材に精通されている方ならばご存じだろう。
そして、今年登場したNOAH SLは、これまで空力性能を追い求めてきたNOAHシリーズに、「軽量性」という新たな武器を与えたもの。空力に優れたバイクは、そのボリュームある独特の形状を構成するためにどうしても重量がかさんでしまいがちだった。これまでのNOAHシリーズもその例に漏れず、重量面では最新の軽量バイクには一歩劣っていたのは事実。そのデメリットを解消すべく、NOAH SLはフレーム重量950gと、エアロロードとは思えない軽量な仕上がりを見せている。
軽量化に大きな役割を果たしたのは、ダウンチューブの断面形状の見直しだ。従来の翼断面形状の後端を切り落としたカムテール形状をベースとし、進行方向前方の左右に切り欠きを設けた新チューブプロファイル「inmold F-Surface+」を採用することで、空力性能と軽量性の両立を実現。
これは2代目NOAHから搭載され、チューブ表面にヤスリ状のテープを貼り付けることで整流効果を高めた「F-Surface」のコンセプトを踏襲している新技術。従来の「F-Surface」が直進方向にのみ作用していたのに対して、「inmold F-Surface+」はどの様な風向きからでも高い空気抵抗低減効果を発揮し、一般的なカムテール断面に対して平均で7%程度低いドラッグを記録しているという。
空気抵抗の削減を目的としたフレームワークは、緩やかな弧を描くトップチューブやスリットが設けられたフォークなど、先代のNOAHの面影を残す部分がある一方、一目でわかるほどの違いも数多い。例えば、フレームを流れるように繋がるフォーククラウン、リアホイールを覆い隠すようなシートチューブのデザイン、まるで同社のTTバイク「DEAN FAST」のようにコンパクトになったリア三角などだ。
加えて、ISPを廃止したことも大きな変化といえるだろう。快適性や重量面でメリットがあるISPだが、調整がしづらいということも事実であり、細かく調整が出来る普通のシートピラー方式は扱いやすく、多くの人にメリットがあるだろう。シートピラーもエアロ形状の専用品を用いるほか、シートクランプもトップチューブに内蔵されることで余計な突起を作らずドラッグの増加を抑えているというこだわりようだ。
扱いやすさと言う面では、ブレーキが通常のキャリパーブレーキを採用しているということもポイントだ。リドレー自身が先鞭をつけた専用ブレーキ採用バイクだが、やはり部品の交換性や制動力、メンテナンス性を考慮するとトラディショナルなブレーキに軍配が上がるだろう。これも、供給しているUCIプロチームのロット・ソウダルからのフィードバックもあったという。
こうして、軽く速く扱いやすいマルチパーパスなエアロロードとして生まれたNOAH SL。今回インプレッションするのはカンパニョーロ・コーラスと、ホイールにはFFDW F6R、タイヤにはヴィットリアのコルサエリートをアッセンブルした試乗車だ。新世代のエアロロードをインプレライダーの2人はどう受け止めるのか。それでは早速インプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「どういった乗り方をしても応えてくれる懐の深さを持っている」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
こんなにもエアロロードバイク然としたフォルムからは想像できないオールマイティーな乗り味のフレームで、見た目から受ける印象からは良い意味で裏切られました。前モデルはまるでGTカーのような肉厚で踏みごたえのある乗り味でしたが、かなり方向性を変えてきましたね。
乗り味だけの印象で言えば、まるでオールラウンド系の軽量バイクの様です。ただ軽量化のために贅肉を削っただけでなく、設計自体を見直したような変わりっぷりですね。非常にバランスがいいバイクです。トップチューブにハリがあって、直進安定性が高いので、巡航している時に上半身が楽で力まずに進むことができます。
平坦で真っ直ぐ進んでいると、まるで勝手に進んでいくような感覚があり、乗っていて非常に楽しいですね。スローピングさせていることと、フレームがコンパクトにまとまっているために、重心が低く仕上がっています。それがダンシングしたときのバイクの振りやすさにもつながっています。
かといって、最近の軽量バイクにありがちなガチガチな踏み味ではありません。適度なしなりを出すことで、どんなレベルのライダーでも乗りこなしやすいオールラウンドバイクとして高次元のバランスを実現しています。どこにも文句をつけられるところがないですね。全部90点といえる出来栄えです。
乗り方としては、ギアをかけてパワーをかけていくのもよし、ケイデンス高めでクルクルと回していくのも良し、どういった乗り方をしても応えてくれる懐の深さを持っています。斜度、路面、ライダーの脚質にあわせてしっかりと前に進んでいってくれますね。
コンパクトなリア三角から想像するほど、乗り心地も悪くないですし、反応性も非常に高いですね。しかし、このバイクでもっとも印象的なのはやはり抜群の直進安定性です。まるでトップチューブが長く、フロントセンターが大きいバイクのようですね。しかし、一方でコーナーが曲がりづらいということもなく、自然と思い描いたラインをトレースできます。
ですので、ロングライドに非常に向いているでしょうね。レースでも距離が長くなるほど、アドバンテージになっていくでしょう。ヒルクライムレースをメインに戦っている人でもなければ、このバイクを選ばずに他のバイクを選ぶ理由は薄いでしょうね。エアロ効果も体感できますし、さまざまなレースを1台でこなしたいという方にはぜひ選択肢に加えてほしい一台です。
「条件が悪いほどアドバンテージを築くことが出来る、タフなバイク」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
かなり安定志向のハンドリングです。最近のクイックなハンドリングのバイクに慣れている人だと少し挙動が遅く感じてしまうかもしれないぐらいのどっしりと構えているバイクです。ダンシングをした時にも、その直進安定性が現れてくるほどで、バイクを振ろうとしても勝手に真っ直ぐ進んでいこうとするほどです。
とはいっても、安楽志向のサイクリング向けのバイクというわけではありません。この直進安定性は、密度の高い集団でコンタクトが多いレースや、路面の荒れたレースなどで活きてくるように持たされた性能なのでしょう。ベルギーブランドであるリドレーが考えるピュアレースバイクとしての味付けなのだろうと感じます。
フレームもしっかりしているので、パワーを逃すようなことはありません。レース志向でパワーがあればギアをかけて踏みこんでいくというのもいいですが、無尽蔵にパワーがあるわけではない普通のホビーレーサーにとっても、ギアを軽くしてケイデンスを上げていっても気持ちよく進ませられるフレームです。どんなギア比でもギア比なりのリズムで走ることができますね。
剛性は絶対的には高くはありません。ハンガー周りにも適度なたわみが感じられ、ほどよく逃がすような感覚があるバイクです。1枚板のような剛性の塊のようなバイクではないということですね。人間の感覚にフィットする剛性感で、縦と横の剛性バランスも非常に優れています。
正しいペダリングができるのであれば、ギアをかけてケイデンスも低めで踏みながら回していくような乗り方が一番このバイクのポテンシャルを引き出すことができるでしょうね。疲れてきてペダリングが乱れてきたら、ギアを軽くしてあげたほうがいいでしょうね。直進安定性の高さも相まって、どんなシチュエーションでも我慢してペダリングを続ければ進んでいけるバイクです。
下りではエアロ効果もあって、スピードの伸びも素晴らしいものがあります。高速になればなるほど、安定性に優れた性格が効いてきますね。スピードが出てもバタつかないので、ダウンヒルの安心感は段違いです。コーナーリングも非常に素直です。
登りも脚があるうちはどう走っても良く進みます。ダンシング、シッティングどちらでもライダーの好みに合わせて登っていけるだけのポテンシャルを秘めたバイクです。ダンシングではあまりハンドルに体重をかけすぎず、腰で踏んでいってあげるような登り方をしたほうがいいでしょうね。バイクが進もうとしている方向を邪魔しないように、力を加えることがキモですね。
フレームの作りも非常にオーソドックスで、メカニック視点で見ても非常に扱いやすさに優れていることも大きなメリットです。トラブルが起きづらい、長く乗り続けられるバイクと言えるでしょう。コストパフォーマンスにも優れているのもかなり嬉しいポイントでしょう。ビジュアル的にはディープリムが良いですが、乗り心地を考えると35mm程度のリム高に抑えていても良いかもしれません。
総じてレースをやりたいという人に向いた自転車だと思いますが、ある程度高いスピードでの長距離ツーリングを楽しんでいる人にとっても向いているでしょうね。穏やかなハンドリングのおかげで、後半の集中力を欠いた場面でも安心して走ることができます。レースユースにしても、条件が悪ければ悪いほど、他のバイクに対してアドバンテージを築くことが出来る、タフなバイクです。
リドレー NOAH SL
フレーム:60ton.40ton.30ton HM Carbon
重量:950g
フォーク重量:440g
サイズ:XXS. XS. S. M
カラー:NSL01Am . NSL01Bs
価 格:390,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:bici
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
UCIの重量制限ルールもあり、主だったロードバイクブランドのラインアップには必ず存在するようになったと言っても過言ではないエアロロードバイク。しかしリドレーは、エアロロードが未だ一般的ではなかった時からNOAHの名を冠したシリーズをそのラインナップに用意してきた。
その初登場は2006年、今から9年前に遡る。今では一般的になったが当時最先端であったISP(インテグレーテッドシートポスト)やテーパードヘッドといった規格を採用し、空気を切り裂くかのようなエッジの立ったチュービングのフレームで見るものの目を釘付けにした。
それから3年後の2009年、NOAHはフルモデルチェンジを果たし、それまでの直線的なフレームから一転した曲線的なデザインやフォーク及びシートステーのスリットなどを採用し、軽量モデル「HELIUM」と並び立つエアロバイクとしての位置付けを明確にした。
2011年には、専用設計のカンティ式ブレーキキャリパーをフレームやフォークと一体化することで更なるエアロダイナミクスの向上を図ったNOAH FASTを登場させ、サイクリスト達の度肝を抜いた。その後、続々とエアロダイナミクスを重視した専用ブレーキを装備したバイクが各社から発表されたことは、機材に精通されている方ならばご存じだろう。
そして、今年登場したNOAH SLは、これまで空力性能を追い求めてきたNOAHシリーズに、「軽量性」という新たな武器を与えたもの。空力に優れたバイクは、そのボリュームある独特の形状を構成するためにどうしても重量がかさんでしまいがちだった。これまでのNOAHシリーズもその例に漏れず、重量面では最新の軽量バイクには一歩劣っていたのは事実。そのデメリットを解消すべく、NOAH SLはフレーム重量950gと、エアロロードとは思えない軽量な仕上がりを見せている。
軽量化に大きな役割を果たしたのは、ダウンチューブの断面形状の見直しだ。従来の翼断面形状の後端を切り落としたカムテール形状をベースとし、進行方向前方の左右に切り欠きを設けた新チューブプロファイル「inmold F-Surface+」を採用することで、空力性能と軽量性の両立を実現。
これは2代目NOAHから搭載され、チューブ表面にヤスリ状のテープを貼り付けることで整流効果を高めた「F-Surface」のコンセプトを踏襲している新技術。従来の「F-Surface」が直進方向にのみ作用していたのに対して、「inmold F-Surface+」はどの様な風向きからでも高い空気抵抗低減効果を発揮し、一般的なカムテール断面に対して平均で7%程度低いドラッグを記録しているという。
空気抵抗の削減を目的としたフレームワークは、緩やかな弧を描くトップチューブやスリットが設けられたフォークなど、先代のNOAHの面影を残す部分がある一方、一目でわかるほどの違いも数多い。例えば、フレームを流れるように繋がるフォーククラウン、リアホイールを覆い隠すようなシートチューブのデザイン、まるで同社のTTバイク「DEAN FAST」のようにコンパクトになったリア三角などだ。
加えて、ISPを廃止したことも大きな変化といえるだろう。快適性や重量面でメリットがあるISPだが、調整がしづらいということも事実であり、細かく調整が出来る普通のシートピラー方式は扱いやすく、多くの人にメリットがあるだろう。シートピラーもエアロ形状の専用品を用いるほか、シートクランプもトップチューブに内蔵されることで余計な突起を作らずドラッグの増加を抑えているというこだわりようだ。
扱いやすさと言う面では、ブレーキが通常のキャリパーブレーキを採用しているということもポイントだ。リドレー自身が先鞭をつけた専用ブレーキ採用バイクだが、やはり部品の交換性や制動力、メンテナンス性を考慮するとトラディショナルなブレーキに軍配が上がるだろう。これも、供給しているUCIプロチームのロット・ソウダルからのフィードバックもあったという。
こうして、軽く速く扱いやすいマルチパーパスなエアロロードとして生まれたNOAH SL。今回インプレッションするのはカンパニョーロ・コーラスと、ホイールにはFFDW F6R、タイヤにはヴィットリアのコルサエリートをアッセンブルした試乗車だ。新世代のエアロロードをインプレライダーの2人はどう受け止めるのか。それでは早速インプレッションに移ろう。
―― インプレッション
「どういった乗り方をしても応えてくれる懐の深さを持っている」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
こんなにもエアロロードバイク然としたフォルムからは想像できないオールマイティーな乗り味のフレームで、見た目から受ける印象からは良い意味で裏切られました。前モデルはまるでGTカーのような肉厚で踏みごたえのある乗り味でしたが、かなり方向性を変えてきましたね。
乗り味だけの印象で言えば、まるでオールラウンド系の軽量バイクの様です。ただ軽量化のために贅肉を削っただけでなく、設計自体を見直したような変わりっぷりですね。非常にバランスがいいバイクです。トップチューブにハリがあって、直進安定性が高いので、巡航している時に上半身が楽で力まずに進むことができます。
平坦で真っ直ぐ進んでいると、まるで勝手に進んでいくような感覚があり、乗っていて非常に楽しいですね。スローピングさせていることと、フレームがコンパクトにまとまっているために、重心が低く仕上がっています。それがダンシングしたときのバイクの振りやすさにもつながっています。
かといって、最近の軽量バイクにありがちなガチガチな踏み味ではありません。適度なしなりを出すことで、どんなレベルのライダーでも乗りこなしやすいオールラウンドバイクとして高次元のバランスを実現しています。どこにも文句をつけられるところがないですね。全部90点といえる出来栄えです。
乗り方としては、ギアをかけてパワーをかけていくのもよし、ケイデンス高めでクルクルと回していくのも良し、どういった乗り方をしても応えてくれる懐の深さを持っています。斜度、路面、ライダーの脚質にあわせてしっかりと前に進んでいってくれますね。
コンパクトなリア三角から想像するほど、乗り心地も悪くないですし、反応性も非常に高いですね。しかし、このバイクでもっとも印象的なのはやはり抜群の直進安定性です。まるでトップチューブが長く、フロントセンターが大きいバイクのようですね。しかし、一方でコーナーが曲がりづらいということもなく、自然と思い描いたラインをトレースできます。
ですので、ロングライドに非常に向いているでしょうね。レースでも距離が長くなるほど、アドバンテージになっていくでしょう。ヒルクライムレースをメインに戦っている人でもなければ、このバイクを選ばずに他のバイクを選ぶ理由は薄いでしょうね。エアロ効果も体感できますし、さまざまなレースを1台でこなしたいという方にはぜひ選択肢に加えてほしい一台です。
「条件が悪いほどアドバンテージを築くことが出来る、タフなバイク」
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
かなり安定志向のハンドリングです。最近のクイックなハンドリングのバイクに慣れている人だと少し挙動が遅く感じてしまうかもしれないぐらいのどっしりと構えているバイクです。ダンシングをした時にも、その直進安定性が現れてくるほどで、バイクを振ろうとしても勝手に真っ直ぐ進んでいこうとするほどです。
とはいっても、安楽志向のサイクリング向けのバイクというわけではありません。この直進安定性は、密度の高い集団でコンタクトが多いレースや、路面の荒れたレースなどで活きてくるように持たされた性能なのでしょう。ベルギーブランドであるリドレーが考えるピュアレースバイクとしての味付けなのだろうと感じます。
フレームもしっかりしているので、パワーを逃すようなことはありません。レース志向でパワーがあればギアをかけて踏みこんでいくというのもいいですが、無尽蔵にパワーがあるわけではない普通のホビーレーサーにとっても、ギアを軽くしてケイデンスを上げていっても気持ちよく進ませられるフレームです。どんなギア比でもギア比なりのリズムで走ることができますね。
剛性は絶対的には高くはありません。ハンガー周りにも適度なたわみが感じられ、ほどよく逃がすような感覚があるバイクです。1枚板のような剛性の塊のようなバイクではないということですね。人間の感覚にフィットする剛性感で、縦と横の剛性バランスも非常に優れています。
正しいペダリングができるのであれば、ギアをかけてケイデンスも低めで踏みながら回していくような乗り方が一番このバイクのポテンシャルを引き出すことができるでしょうね。疲れてきてペダリングが乱れてきたら、ギアを軽くしてあげたほうがいいでしょうね。直進安定性の高さも相まって、どんなシチュエーションでも我慢してペダリングを続ければ進んでいけるバイクです。
下りではエアロ効果もあって、スピードの伸びも素晴らしいものがあります。高速になればなるほど、安定性に優れた性格が効いてきますね。スピードが出てもバタつかないので、ダウンヒルの安心感は段違いです。コーナーリングも非常に素直です。
登りも脚があるうちはどう走っても良く進みます。ダンシング、シッティングどちらでもライダーの好みに合わせて登っていけるだけのポテンシャルを秘めたバイクです。ダンシングではあまりハンドルに体重をかけすぎず、腰で踏んでいってあげるような登り方をしたほうがいいでしょうね。バイクが進もうとしている方向を邪魔しないように、力を加えることがキモですね。
フレームの作りも非常にオーソドックスで、メカニック視点で見ても非常に扱いやすさに優れていることも大きなメリットです。トラブルが起きづらい、長く乗り続けられるバイクと言えるでしょう。コストパフォーマンスにも優れているのもかなり嬉しいポイントでしょう。ビジュアル的にはディープリムが良いですが、乗り心地を考えると35mm程度のリム高に抑えていても良いかもしれません。
総じてレースをやりたいという人に向いた自転車だと思いますが、ある程度高いスピードでの長距離ツーリングを楽しんでいる人にとっても向いているでしょうね。穏やかなハンドリングのおかげで、後半の集中力を欠いた場面でも安心して走ることができます。レースユースにしても、条件が悪ければ悪いほど、他のバイクに対してアドバンテージを築くことが出来る、タフなバイクです。
リドレー NOAH SL
フレーム:60ton.40ton.30ton HM Carbon
重量:950g
フォーク重量:440g
サイズ:XXS. XS. S. M
カラー:NSL01Am . NSL01Bs
価 格:390,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
岐阜県瑞浪市にあるロードバイク専門プロショップ「サイクルショップDADDY」店主。20年間に及ぶ競輪選手としての経験、機材やフィッティングに対するこだわりから特に実走派ライダーからの定評が高い。現在でも積極的にレースに参加しツール・ド・おきなわ市民50kmで2007、09、10年と3度の優勝を誇る。一方で、グランフォンド東濃の実行委員長を努めるなどサイクルスポーツの普及活動にも力を入れている。
CWレコメンドショップ
サイクルショップDADDY
山添悟志(WALKRIDE コンセプトストア)
神奈川県厚木市に2014年にオープンしたロード系プロショップ、WALKRIDE コンセプトストアの店主。脚質はスプリンターで、過去にいわきクリテリウムBR-2で優勝した経験を持つ。走り系ショップとして有名だが、クラブ員と一緒にグルメツーリングを行うなど、「自転車で走る楽しみ」も同時に追求している。
CWレコメンドショップ
WALKRIDE コンセプトストア
ウェア協力:bici
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO
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