ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャにリーダージャージの供給するルコックスポルティフ。その2015春夏コレクションより、高機能フィルムとニット素材を採用した防水防寒ウェア「QC-840151(長袖)&QC-740451(半袖)」をインプレッション。冷雨での実走テストを含め、その実力を探った。



ルコックスポルティフ QC-840151(長袖、右)&QC-740451(半袖、左)ルコックスポルティフ QC-840151(長袖、右)&QC-740451(半袖、左) photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
3年程前からサイクルウェアにおいて大きなトレンドとなっているのが「レインウェアの高機能化」である。特にレースシーンにおいては、空気抵抗の原因となるバタつきが少ないウェアが求められており、各ブランドが凌ぎを削って開発競争を行っている状況だ。

フレンチトリコロールがあしらわれたシンプルなデザインだフレンチトリコロールがあしらわれたシンプルなデザインだ バックポケットのマチ部分にはメッシュを配し、雨水が溜まるをの防止バックポケットのマチ部分にはメッシュを配し、雨水が溜まるをの防止 そういった中になって、ルコックスポルティフがリリースしたのが「QC-840151(長袖)&QC-740451(半袖)」である。開発にあたっては国内プロチームのフィードバックを取入れており、不安定な天候に翻弄された昨年の全日本選手権ロードレースで土井雪広らが使用している。

素材には透湿性に優れるフィルムを、しなやかなで柔らかな肌触りのニット素材でサンドした3層構造の「Delta Knit Bonding Smooth」を採用する(ゴムでコーティングしたネオプレーン素材とは異なる)。フィルムは無孔性としており、多孔性素材の様に水分が孔を塞ぎ湿気がウェア内に溜まってしまうことがないという。

多くのサイクリストに着てほしいという思いから、コストを抑えるために止水ファスナーやシームテープを採用していないため、厳密にはレインウェアと呼ぶことはできないそう。しかし、開発担当者の井上大平さんは「雨でも十分な性能を発揮します」と自信を見せる。なお、耐水圧は15,000mm以上を誇る。

生地は春夏用モデルとしているため、他ブランドのレインウェアと比較するとやや薄手。カッティングは、競技者のみならず様々なサイクリストに快適にフィットするよう、ルコックスポルティフで3種類あるうちのノーマルフィットとしている。背面にはバックポケットが設けられており、雨水が溜まるのを防止するためにマチ部分にはメッシュ素材を使用。加えて、リフレクターが設けることで夜間走行時の安全性を高めている。

グラッフィックは長袖と半袖の両タイプでフレンチトリコロールをあしらったシンプルな仕上がりとなっており、あわせるウェアを選びにくいだろう。カラーは両タイプ共に4種類ずつがラインアップされる。今回は長袖タイプのQC-840151のインプレッションをお届けする。



ーインプレッション「優れた防水性能と透湿性 雨の中でもハイテンポなライドを楽しむ方にオススメ」

ルコックスポルティフといえば、比較的カジュアルでビギナー向けのウェアを得意とするが、デサントが製品開発を行うことからも想像できる様に、非常にハイテクな側面もあるブランドである。そんな同社が持つ優れたテクノロジーを取入れ開発されたのが、今回インプレッションする「QC-840151」である。

みぞれが混じる悪天候の中でインプレッションを行ったみぞれが混じる悪天候の中でインプレッションを行った photo:Yuya.Yamamoto
まずこのウェアの最も重要な性能である防水性能についてだが、驚く程に高い。少し水をかけたぐらいでは全く染み込まず、いとも簡単に弾いてしまう。実際に小雨で路面は完全にウェット(しかも季節外れのみぞれが降った日)という悪コンディションの中で1時間ほどテストしたが、中に着ていたアンダーウェアはほぼ濡れず。

非常に高い撥水性能を持つ非常に高い撥水性能を持つ 「優れた防水性能と透湿性 雨の中でもハイテンポなライドを楽しむ方にオススメ」「優れた防水性能と透湿性 雨の中でもハイテンポなライドを楽しむ方にオススメ」 止水ジッパーやシームテープなどの処理が施されていないために完全防水ではなく、長時間乗り込んだ際にはと若干染みこんできたが、水分が衣服内に侵入してくるスピードは至ってゆるやか。レインウェアと謳えないにしても、非常に高い防水性能を有している。

生地は薄手ながらも温かく、触った感じから想像するよりも高い保温効果をもつ。冬用の起毛アンダーとQC-840151だけで、寒いコンディションにも対応してくれる。そして襟が高く、冷気が衣服内に侵入しにくい。それでいて、アップテンポで走った際には暑くなりすぎず、これは素材がもつ透湿性が優れていることに理由があると感じる。

着心地だってかなり上質だ。シャカシャカとして突っ張ってしまい、動きづらいというのがこれまでのレインウェアの常だが、そういったことは感じられない。実際に着てみると軽くて、肌触りが柔らかく、非常に袖通しが良い。袖口のシーム部も丁寧な造りで「良い物だな」という印象を与えてくれる。

ノーマルフィットということだが、身長176cmの筆者でMサイズ(内側には長袖ジャージを一枚着用した)を着るとややタイト目に感じる。それでも生地に充分な伸縮性があるため不快感はなく、バタつきやすい肩周りもしっかりとフィットしてくれた。

これだけの性能と完成度ながら、今回インプレッションした長袖タイプで17,000円、半袖タイプで15,000円(共に税抜)と、ライバル製品よりも手頃な価格に抑えられている点も見逃せないポイント。個人的にはフレンチトリコロールを配したデザインも好印象だ。

雨の中でもハイペースなライドを行い、上質な着心地の雨用ウェアを求めている方にオススメしたい。これからの季節であっても充分に活躍してくれる1着で、高地をなど涼しい所で開催されるヒルクライムやロングライドイベントに参加される際には、万が一の悪天候に備えてバッグに忍ばせておくと安心できると思う。薄手であり半袖タイプも用意されているため、梅雨時期にはバッグに入れておくのも良いだろう。

impression:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO, Yuya.Yamamoto
text:Yuya.Yamamoto