2015/05/13(水) - 16:05
イタリア海軍の艦船が停泊するラ・スペツィアにフィニッシュする第4ステージはまさにジェットコースターのようなコース。常に右に曲がってるか左に曲がってるか、もしくは下ってるか登っているか。日本人選手の様子を含め、予想以上に荒れたレースの模様をお伝えします。
20名に絞られたメイン集団がチンクエテッレを行く photo:Kei Tsuji
ジロに帯同する宮島正典マッサージャットーレ(ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
エリア・ファヴィッリ(イタリア、サウスイースト)と、ハンドルをつかんで離さない息子 photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリア2015第4ステージ image:RCS Sportラ・スペツィアはアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、サウスイースト)の故郷だが、特にペタッキ向きという配慮は無し。開幕前のインタビューで選手数名が「大会4日目にスプリンターが家に帰ってしまうんじゃない?」と笑っていたが、確かにそんな危険性のあるステージになった。
観客とハイタッチしてスタートに向かうサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiレース後半はチンクエ・テッレ国立公園を走る。チンクエ・テッレは直訳で「5つの土地/場所」という意味であり、その名の通り険しいリグーリア海岸にへばりつくように、体を寄せあうようにして並ぶ5つの小さな町を指す。Googleで「チンクエ・テッレ」を画像検索していただけるとわかりやすい。
先頭で3級山岳をクリアするダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji色彩豊かな家屋が共通する特徴で、北はモンテロッソ・アル・マーレから南はリオマッジョーレまでの一帯の総称であり、1997年にユネスコ世界遺産に登録されている。
プロ初勝利を飾ったダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waeleしかしコースはそんなチンクエ・テッレを見下ろす幹線道路を走るため、選手たちの視界には美しい街は入ってこない。チンクエ・テッレの景勝とプロトンを1枚に収めたいフォトグラファーたちは崖に登るなど奮闘したが、色とりどりの町並みをバックに撮るのは難しかった(個人的感想ですいません)。
逃げグループにとってもメイン集団にとってもサバイバルとなったこの日、序盤のアタック合戦をくぐり抜け、最後の3級山岳で飛び出したダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が勝った。
今年1月にニューヨークで行われたチーム発表会でインタビューを行った際に、出場したいグランツールとしてジロを挙げていた22歳は、ワクワクと目を輝かせながらレースを走っている印象。「2015年は勝ちたい」という言葉を早速実現して見せた。
もちろんまだレース序盤なので何も決まっていないが、この日、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が総合争いにおける三強であることが明白になった。
アスタナのプレス担当を務めるジェフリー曰く、ジロ開幕時点でアルはまだ体調に不安を抱えていたものの、第3ステージの山岳コースを走って自信を得たという。そしてその翌日にチームとして攻撃を開始した。
コンタドールとポートの一騎打ちと見られていたマリアローザ争いにアルが割って入る。一方のリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)は、山岳アシストのピーター・セリー(ベルギー)を前々日に失っている影響もあってか失速。三強から42秒も失っている。
シャンパンを振り回すダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waele
レース中盤、集団内で走るマリアローザのマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
急峻なリグーリアの山を進む photo:Tim de Waele
序盤の3級山岳で集団から遅れる石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiチンクエ・テッレを見下ろす橋のたもとにチームカーを止めてグルペットを待ったトレックファクトリーレーシングのアドリアーノ・バフィ監督は「今日はマスクロ(殺戮)の1日だ」と語った。多くの選手がタイムオーバーで足切りになる可能性があるという意味だ。
グルペットに食らいつく石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiラジオコルサ(競技無線)からはひっきりなしに「誰が先頭グループorメイン集団からアタック、誰が先頭グループorメイン集団に吸収、誰が先頭グループorメイン集団から脱落、タイム差何秒」という情報が飛んでくる。ラジオコルサは近年稀に見る忙しさだったと感じる。
20分遅れの集団内で走る別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji「(アタック合戦が続いた)最初の登りがかなり速かったのでキツかったですね」と振り返る石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)は一旦メイン集団から遅れたものの、その後ペースを落とした集団に復帰。2つ目の3級山岳通過後のアップダウンで遅れ、そこから10名に満たないグルペットの最後尾に食らいついた。
最後の3級山岳を乗り切る石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji「グルペットに入ったのですが、最後の3級山岳でそこからも遅れてゴールしました」と石橋。チームメイトのエドゥアルド・グロス(ルーマニア)とともにグルペットで走っていたが、最終的に単独走となり、23分38秒遅れでフィニッシュしている。
この日の平均スピードは39.5km/h。この第4ステージは中難易度のステージに指定されており、平均スピードが39km/hを超えたため優勝タイムの11%以上がタイムリミット。優勝タイムが3時間47分59秒(約228分)だったので、25分05秒以降が足切りだった。
仮に優勝者の平均スピードが39km/hを下回ればタイムリミットは10%にダウン。つまり優勝タイムがあと4分近く遅い3時間50分46秒以上であれば平均スピードが39km/hを下回り、23分05秒以降が足切りにあっていた。とにかく石橋はギリギリ時間内に滑り込んだことになる。
対照的なのは別府史之(トレックファクトリーレーシング)だ。断続的なアップダウンコースでたいそう疲れていると思いきや「力を使わなかったのでむしろ楽でした」と語る。
「逃げに乗りたかったので0km地点でアタックし、そのあとも集団前方に控えていたけどタイミングを逃してしまった。ティンコフのペースアップが始まってグルペットが形成された時点で気持ちを切り替えて休息日のつもりで走りました。余裕もあるし、しっかり自分の日を見つけてチャンスに繋げたい」。
先述のバフィ監督も「フミには安定感がありとてもよく登れている。完走云々の心配は全くしていない」と評する。別府は力を浪費することなく20分遅れの大集団でフィニッシュしている。
残り10kmアーチを通過した石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
text&photo:Kei Tsuji in La Spezia, Italy
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逃げグループにとってもメイン集団にとってもサバイバルとなったこの日、序盤のアタック合戦をくぐり抜け、最後の3級山岳で飛び出したダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が勝った。
今年1月にニューヨークで行われたチーム発表会でインタビューを行った際に、出場したいグランツールとしてジロを挙げていた22歳は、ワクワクと目を輝かせながらレースを走っている印象。「2015年は勝ちたい」という言葉を早速実現して見せた。
もちろんまだレース序盤なので何も決まっていないが、この日、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が総合争いにおける三強であることが明白になった。
アスタナのプレス担当を務めるジェフリー曰く、ジロ開幕時点でアルはまだ体調に不安を抱えていたものの、第3ステージの山岳コースを走って自信を得たという。そしてその翌日にチームとして攻撃を開始した。
コンタドールとポートの一騎打ちと見られていたマリアローザ争いにアルが割って入る。一方のリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)は、山岳アシストのピーター・セリー(ベルギー)を前々日に失っている影響もあってか失速。三強から42秒も失っている。
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この日の平均スピードは39.5km/h。この第4ステージは中難易度のステージに指定されており、平均スピードが39km/hを超えたため優勝タイムの11%以上がタイムリミット。優勝タイムが3時間47分59秒(約228分)だったので、25分05秒以降が足切りだった。
仮に優勝者の平均スピードが39km/hを下回ればタイムリミットは10%にダウン。つまり優勝タイムがあと4分近く遅い3時間50分46秒以上であれば平均スピードが39km/hを下回り、23分05秒以降が足切りにあっていた。とにかく石橋はギリギリ時間内に滑り込んだことになる。
対照的なのは別府史之(トレックファクトリーレーシング)だ。断続的なアップダウンコースでたいそう疲れていると思いきや「力を使わなかったのでむしろ楽でした」と語る。
「逃げに乗りたかったので0km地点でアタックし、そのあとも集団前方に控えていたけどタイミングを逃してしまった。ティンコフのペースアップが始まってグルペットが形成された時点で気持ちを切り替えて休息日のつもりで走りました。余裕もあるし、しっかり自分の日を見つけてチャンスに繋げたい」。
先述のバフィ監督も「フミには安定感がありとてもよく登れている。完走云々の心配は全くしていない」と評する。別府は力を浪費することなく20分遅れの大集団でフィニッシュしている。
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text&photo:Kei Tsuji in La Spezia, Italy
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