2015/04/23(木) - 03:01
ライバルを完全に突き放すことは出来なかったものの、最大勾配26%の「ユイの壁」で先頭に立つには十分な加速。相次ぐ落車にライバルたちが苦しめられる中、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が軽やかな登坂力で大会連覇を果たしました。
4月22日、快晴のワロン地域で開催された第79回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)。朝方は気温が4度まで下がったものの、昼間は最高気温18度ほどの春らしい陽気に包まれた。
10km地点で形成されたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)やブリース・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)ら7名の逃げが8分先行し、モビスターやカチューシャが追いかける。しかし平穏は長続きせず、細かく進路を変える荒れ気味のコースが落車を誘発した。
1回目の「ユイの壁」手前で落車したダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)は大怪我を免れたものの、残り48km地点で落車したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のリタイアが地元の観客を落胆させる。さらにイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)やワウテル・ポエルス(オランダ、チームスカイ)も相次いで落車し、勝負が本格化する前に姿を消した。
2回目の「ユイの壁」で先手を打ったのはモビスターだった。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が集団から抜け出すと、ここにルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)が合流する。それまで逃げていた選手たちを抜いて、ヴィスコンティとサンチェスの2名がレースをリードし始める。
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の追走は届かず、エティックス・クイックステップ勢が牽引するメイン集団に対して20秒のリードを得た先頭2名。残り10kmを切ったところで落車したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が集団から脱落。単調になりがちだったレース展開に変化をつけようと主催者ASOが追加した新登場コート・ド・シュラーブ(残り5.5km地点)に、先頭のヴィスコンティとサンチェスが差し掛かった。
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らのアタックによって先頭2名が捕まると、今度はティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が勢いよくアタック。ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)の追走を振り切ったウェレンスが、ユイの街に向かう下り&平坦路を快走する。
TTポジションで独走を続け、モビスターやアスタナ、ランプレ・メリダ率いるメイン集団を10秒引き離した状態で「ユイの壁」に挑んだウェレンス。直線距離で30kmほどしか離れていない故郷から駆けつけたファンによる路面のTIMペイントが背中を押すが、徐々に増す勾配に対応出来ずに失速する。
残り600mでウェレンスが吸収されるといよいよ「ユイの壁」の真骨頂である急勾配区間がスタート。先頭に立ってペースを上げたのはバルベルデだった。
バルベルデによるペースアップによって集団は見る見るうちに人数を減らす。残り200mに差し掛かったところでバルベルデがもう一段ペースを上げるとミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)らが後退。急勾配区間で集団は崩壊した。
バルベルデの加速にミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が反応したものの、ディフェンディングチャンピオンとの距離が徐々に開く。カチューシャの優勝経験者2名、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)とダニエル・モレーノ(スペイン)も出遅れた。
「チームの働きはパーフェクトだったし、登りも自分にとってパーフェクトだった。残り200mが正しいタイミングだと判断してアタック。その時点で勝ったと思った。仮に追いつかれても、もう一度加速出来る力を残していたから」。後方を確認し、余裕を持ってフィニッシュしたバルベルデはそう語る。
フレーシュ連覇を達成したバルベルデは「常にペースが速く、落車も相次いだ。とてもハードな1日だった。こんなにナーバスなレースは初めてだ。ずっと集団内がピリピリしていた。だからこそ最後にこうして勝つことが出来て嬉しいよ」とレースを振り返った。
3度目のフレーシュ制覇はアルジェンティン、メルクス、キント、レベッリンに続く史上5人目。2012年から4年連続でスペイン人選手がユイを制したことになる(2012年ロドリゲス、2013年モレーノ、2014年バルベルデ、2015年バルベルデ)。
金曜日に35歳の誕生日を迎えるバルベルデは、日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2006年と2008年に続く3度目の勝利を目指す。「アムステルゴールドで2位で、フレーシュで1位。もちろんリエージュが楽しみだ。モチベーションは高いけど気持ちは落ち着いているよ」。
スタート地点で会場MCの質問に「今日はロランのアシスト」と語っていた新城幸也(ユーロップカー)は14位に入ったピエール・ロラン(フランス)に続くチーム内2番手となる2分16秒遅れの67位でフィニッシュ。「中盤から終盤にかけてチームメートのポジション取りをして、チームリーダーのバウケ・モレマを2度目のユイの坂の前に前へ連れていって仕事を終えた」と語る別府史之(トレックファクトリーレーシング)は126位でレースを終えている。ともに日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュにも出場予定だ。
フレーシュ・ワロンヌ2015
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h08’22”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
6位 アレクシ・ヴィエルモ(フランス、AG2Rラモンディアール) +04”
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
8位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
9位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
67位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +2’16”
126位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +13’20”
フレーシュ・ワロンヌ・フェミニン2015
1位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ) 3h18’46”
2位 アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ、ビグラプロサイクリング) +12”
3位 メーガン・グアルニエ(アメリカ、ボエルスドルマンス) +20”
39位 萩原麻由子(日本、ウィグル・ホンダ) +4’31”
text&photo:Kei Tsuji in Huy, Belgium
4月22日、快晴のワロン地域で開催された第79回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)。朝方は気温が4度まで下がったものの、昼間は最高気温18度ほどの春らしい陽気に包まれた。
10km地点で形成されたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)やブリース・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)ら7名の逃げが8分先行し、モビスターやカチューシャが追いかける。しかし平穏は長続きせず、細かく進路を変える荒れ気味のコースが落車を誘発した。
1回目の「ユイの壁」手前で落車したダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)は大怪我を免れたものの、残り48km地点で落車したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のリタイアが地元の観客を落胆させる。さらにイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)やワウテル・ポエルス(オランダ、チームスカイ)も相次いで落車し、勝負が本格化する前に姿を消した。
2回目の「ユイの壁」で先手を打ったのはモビスターだった。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が集団から抜け出すと、ここにルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)が合流する。それまで逃げていた選手たちを抜いて、ヴィスコンティとサンチェスの2名がレースをリードし始める。
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の追走は届かず、エティックス・クイックステップ勢が牽引するメイン集団に対して20秒のリードを得た先頭2名。残り10kmを切ったところで落車したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が集団から脱落。単調になりがちだったレース展開に変化をつけようと主催者ASOが追加した新登場コート・ド・シュラーブ(残り5.5km地点)に、先頭のヴィスコンティとサンチェスが差し掛かった。
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らのアタックによって先頭2名が捕まると、今度はティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が勢いよくアタック。ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)の追走を振り切ったウェレンスが、ユイの街に向かう下り&平坦路を快走する。
TTポジションで独走を続け、モビスターやアスタナ、ランプレ・メリダ率いるメイン集団を10秒引き離した状態で「ユイの壁」に挑んだウェレンス。直線距離で30kmほどしか離れていない故郷から駆けつけたファンによる路面のTIMペイントが背中を押すが、徐々に増す勾配に対応出来ずに失速する。
残り600mでウェレンスが吸収されるといよいよ「ユイの壁」の真骨頂である急勾配区間がスタート。先頭に立ってペースを上げたのはバルベルデだった。
バルベルデによるペースアップによって集団は見る見るうちに人数を減らす。残り200mに差し掛かったところでバルベルデがもう一段ペースを上げるとミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)らが後退。急勾配区間で集団は崩壊した。
バルベルデの加速にミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が反応したものの、ディフェンディングチャンピオンとの距離が徐々に開く。カチューシャの優勝経験者2名、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)とダニエル・モレーノ(スペイン)も出遅れた。
「チームの働きはパーフェクトだったし、登りも自分にとってパーフェクトだった。残り200mが正しいタイミングだと判断してアタック。その時点で勝ったと思った。仮に追いつかれても、もう一度加速出来る力を残していたから」。後方を確認し、余裕を持ってフィニッシュしたバルベルデはそう語る。
フレーシュ連覇を達成したバルベルデは「常にペースが速く、落車も相次いだ。とてもハードな1日だった。こんなにナーバスなレースは初めてだ。ずっと集団内がピリピリしていた。だからこそ最後にこうして勝つことが出来て嬉しいよ」とレースを振り返った。
3度目のフレーシュ制覇はアルジェンティン、メルクス、キント、レベッリンに続く史上5人目。2012年から4年連続でスペイン人選手がユイを制したことになる(2012年ロドリゲス、2013年モレーノ、2014年バルベルデ、2015年バルベルデ)。
金曜日に35歳の誕生日を迎えるバルベルデは、日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2006年と2008年に続く3度目の勝利を目指す。「アムステルゴールドで2位で、フレーシュで1位。もちろんリエージュが楽しみだ。モチベーションは高いけど気持ちは落ち着いているよ」。
スタート地点で会場MCの質問に「今日はロランのアシスト」と語っていた新城幸也(ユーロップカー)は14位に入ったピエール・ロラン(フランス)に続くチーム内2番手となる2分16秒遅れの67位でフィニッシュ。「中盤から終盤にかけてチームメートのポジション取りをして、チームリーダーのバウケ・モレマを2度目のユイの坂の前に前へ連れていって仕事を終えた」と語る別府史之(トレックファクトリーレーシング)は126位でレースを終えている。ともに日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュにも出場予定だ。
フレーシュ・ワロンヌ2015
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h08’22”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
6位 アレクシ・ヴィエルモ(フランス、AG2Rラモンディアール) +04”
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
8位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
9位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
67位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +2’16”
126位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +13’20”
フレーシュ・ワロンヌ・フェミニン2015
1位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ) 3h18’46”
2位 アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ、ビグラプロサイクリング) +12”
3位 メーガン・グアルニエ(アメリカ、ボエルスドルマンス) +20”
39位 萩原麻由子(日本、ウィグル・ホンダ) +4’31”
text&photo:Kei Tsuji in Huy, Belgium
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