2015/03/12(木) - 22:21
延々と続く幹線道路で繰り返されたアタック合戦。ようやく形成された8名の逃げを、メイン集団は完全に容認した。独走に持ち込んだソ・ジュンヨン(韓国、KSPO)が優勝。中島康晴(愛三工業レーシング)は悔しいステージ4位に終わった。
選手たちを押し出すように海風が南に向かって吹く。200kmの長丁場となったツール・ド・ランカウイ第5ステージ。序盤からハイスピードな展開となったレースの主役は、アタック合戦をかいくぐって飛び出した8名の逃げ選手たちだった。
スタート後60kmにわたって繰り返されたアタックと吸収の応酬。中島康晴を含めた8名が飛び出すとようやくメイン集団はスピードを落とした。逃げメンバーは全員が総合で25分前後遅れ。つまり第3ステージの1級山岳で遅れ、総合争いから脱落した選手たちだ。
リーダージャージ擁するオリカ・グリーンエッジも、スプリント4勝目がかかったアスタナも集団牽引に興味を示さない。タイム差の拡大は止まらず、ちょうどレース中間の100km地点でタイム差は15分に。距離にして10kmもの開きが生まれる。
逃げグループ通過後にレースが終了したと勘違いした一般車両が大量にコースに流れ込むほど、その後もタイム差は拡大する。追い風に乗ってハイペースを刻んだ先頭8名のリードは、残り90kmの時点で18分をマークした。
サウスイーストとMTNキュベカが集団牽引を開始したものの時すでに遅し。タイム差は14分まで縮まったものの、8名を捕まえるには追撃開始が遅すぎた。
フィニッシュまで60kmを残してメイン集団は再びペースダウン。フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)らのカウンターアタックは捕らえられ、メイン集団は完全逃げ切り容認ペースに戻った。
逃げ切りが確定的となった8名の中では、残り20kmを切ったところでステージ優勝を懸けた駆け引きが始まる。単独で飛び出したのはKSPOのソ・ジュンヨン。韓国のナショナルチャンピオンが独走に持ち込んだ。「コーナーで先行して、後ろを振り向いてからそのままもがいて行った」と中島は回想する。
アジア人選手にとって、ツール・ド・シンカラやツール・ド・イーストジャワ、ツアー・オブ・ハイナンでステージ優勝を飾り、昨年ツアー・オブ・タイランドで総合優勝に輝いた中島康晴は有名な存在だ。ソ・ジュンヨンを追走する立場となった逃げグループの協調体制は崩れ、中島は徹底マークを遭うことになる。
中島が積極的に牽引する追走グループからカウンターアタックがかかり、吸収し、ペースが落ち、再びアタック。淡々とペースを刻んだ先頭ソ・ジュンヨンは10秒強のリードを得てフィニッシュ地点クアンタンの街に差し掛かる。最終ストレートに入った韓国チャンピオンの後ろに追走グループの姿はなかった。
追い風の影響もあり、平均スピード46.4km/hという高速レースを制したソ・ジュンヨンは2009年EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインに所属した26歳(3月14日に27歳)。この日と同じクアンタンにフィニッシュする2012年ツール・ド・ツール・ド・ランカウイ第7ステージでも逃げて2位、2013年のツアー・オブ・ジャパン堺ステージで2位。昨年ツール・ド・北海道の最終ステージでスプリント勝利を飾っている。
「序盤から順調にリードを築いたものの、タイムボードに書かれたタイム差を見て驚いたよ。逃げ切りが確定的になったので、残り25kmを切ってから飛び出したんだ」と、ソ・ジュンヨンは語る。「自分の走りを誇りに思う。ランカウイでステージ優勝したアジア人選手は11人しかいない。毎日勝利を追い求めて、今日、ようやく掴むことが出来た」。
追走グループはスプリントの末、ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)を先頭に13秒遅れでフィニッシュ。中島はスプリントでステージ4位に入ったものの、フィニッシュ後は落胆で肩を落とした。
「自分はセオ(ソ・ジュンヨン)の強さを知っているので追いたかったんですけど、マレーシアとインドネシアの選手に徹底的にマークされて、まぁそれがレースなんですけど、悔しいですね。セオに行かれたことも悔しいけど、最後に2位を取れなかったことも、表彰台に上れなかったことも。今日は勝ちたかった。チャンスでしたけど、チャンスを生かしてこそ選手ですから」。悔しさに潰されそうにながらも中島は気丈に振る舞う。「また気を取り直して明日から戦いますよ」と笑いながらチームカーに戻って行った。
メイン集団は急ぐことなく13分38秒遅れでフィニッシュ。総合トップ10やポイント賞、山岳賞、アジアンライダー賞に変動は起こらなかった。
ツール・ド・ランカウイ2015第5ステージ
1位 ソ・ジュンヨン(韓国、KSPO) 4h18’47”
2位 ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +13”
3位 モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
4位 中島康晴(日本、愛三工業レーシング)
5位 パトリア・ラストラ(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)
6位 メヘル・ハスナウイ(チュニジア、スカイダイブドバイ)
7位 フアン・モラノ(コロンビア、コロンビア) +15”
8位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム) +35”
9位 マ・ガントン(中国、ヘンシャンサイクリング) +5’20”
10位 バイ・リジュン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム)
個人総合成績
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 19h24’29”
2位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) +17”
3位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) +20”
4位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア) +22”
7位 フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ) +23”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +24”
9位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
10位 ロビン・マヌリアン(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +25”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)
チーム総合成績
MTNキュベカ
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
選手たちを押し出すように海風が南に向かって吹く。200kmの長丁場となったツール・ド・ランカウイ第5ステージ。序盤からハイスピードな展開となったレースの主役は、アタック合戦をかいくぐって飛び出した8名の逃げ選手たちだった。
スタート後60kmにわたって繰り返されたアタックと吸収の応酬。中島康晴を含めた8名が飛び出すとようやくメイン集団はスピードを落とした。逃げメンバーは全員が総合で25分前後遅れ。つまり第3ステージの1級山岳で遅れ、総合争いから脱落した選手たちだ。
リーダージャージ擁するオリカ・グリーンエッジも、スプリント4勝目がかかったアスタナも集団牽引に興味を示さない。タイム差の拡大は止まらず、ちょうどレース中間の100km地点でタイム差は15分に。距離にして10kmもの開きが生まれる。
逃げグループ通過後にレースが終了したと勘違いした一般車両が大量にコースに流れ込むほど、その後もタイム差は拡大する。追い風に乗ってハイペースを刻んだ先頭8名のリードは、残り90kmの時点で18分をマークした。
サウスイーストとMTNキュベカが集団牽引を開始したものの時すでに遅し。タイム差は14分まで縮まったものの、8名を捕まえるには追撃開始が遅すぎた。
フィニッシュまで60kmを残してメイン集団は再びペースダウン。フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)らのカウンターアタックは捕らえられ、メイン集団は完全逃げ切り容認ペースに戻った。
逃げ切りが確定的となった8名の中では、残り20kmを切ったところでステージ優勝を懸けた駆け引きが始まる。単独で飛び出したのはKSPOのソ・ジュンヨン。韓国のナショナルチャンピオンが独走に持ち込んだ。「コーナーで先行して、後ろを振り向いてからそのままもがいて行った」と中島は回想する。
アジア人選手にとって、ツール・ド・シンカラやツール・ド・イーストジャワ、ツアー・オブ・ハイナンでステージ優勝を飾り、昨年ツアー・オブ・タイランドで総合優勝に輝いた中島康晴は有名な存在だ。ソ・ジュンヨンを追走する立場となった逃げグループの協調体制は崩れ、中島は徹底マークを遭うことになる。
中島が積極的に牽引する追走グループからカウンターアタックがかかり、吸収し、ペースが落ち、再びアタック。淡々とペースを刻んだ先頭ソ・ジュンヨンは10秒強のリードを得てフィニッシュ地点クアンタンの街に差し掛かる。最終ストレートに入った韓国チャンピオンの後ろに追走グループの姿はなかった。
追い風の影響もあり、平均スピード46.4km/hという高速レースを制したソ・ジュンヨンは2009年EQA・梅丹本舗・グラファイトデザインに所属した26歳(3月14日に27歳)。この日と同じクアンタンにフィニッシュする2012年ツール・ド・ツール・ド・ランカウイ第7ステージでも逃げて2位、2013年のツアー・オブ・ジャパン堺ステージで2位。昨年ツール・ド・北海道の最終ステージでスプリント勝利を飾っている。
「序盤から順調にリードを築いたものの、タイムボードに書かれたタイム差を見て驚いたよ。逃げ切りが確定的になったので、残り25kmを切ってから飛び出したんだ」と、ソ・ジュンヨンは語る。「自分の走りを誇りに思う。ランカウイでステージ優勝したアジア人選手は11人しかいない。毎日勝利を追い求めて、今日、ようやく掴むことが出来た」。
追走グループはスプリントの末、ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)を先頭に13秒遅れでフィニッシュ。中島はスプリントでステージ4位に入ったものの、フィニッシュ後は落胆で肩を落とした。
「自分はセオ(ソ・ジュンヨン)の強さを知っているので追いたかったんですけど、マレーシアとインドネシアの選手に徹底的にマークされて、まぁそれがレースなんですけど、悔しいですね。セオに行かれたことも悔しいけど、最後に2位を取れなかったことも、表彰台に上れなかったことも。今日は勝ちたかった。チャンスでしたけど、チャンスを生かしてこそ選手ですから」。悔しさに潰されそうにながらも中島は気丈に振る舞う。「また気を取り直して明日から戦いますよ」と笑いながらチームカーに戻って行った。
メイン集団は急ぐことなく13分38秒遅れでフィニッシュ。総合トップ10やポイント賞、山岳賞、アジアンライダー賞に変動は起こらなかった。
ツール・ド・ランカウイ2015第5ステージ
1位 ソ・ジュンヨン(韓国、KSPO) 4h18’47”
2位 ジャマリディン・ノバルディアント(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +13”
3位 モハマドアディク・オスマン(マレーシア、トレンガヌサイクリング)
4位 中島康晴(日本、愛三工業レーシング)
5位 パトリア・ラストラ(インドネシア、ペガサスコンチネンタル)
6位 メヘル・ハスナウイ(チュニジア、スカイダイブドバイ)
7位 フアン・モラノ(コロンビア、コロンビア) +15”
8位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム) +35”
9位 マ・ガントン(中国、ヘンシャンサイクリング) +5’20”
10位 バイ・リジュン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム)
個人総合成績
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 19h24’29”
2位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) +17”
3位 ヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ) +20”
4位 ピエールルック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)
5位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コロンビア) +22”
7位 フレデリック・ブルン(フランス、ブルターニュ・セシェ) +23”
8位 チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・シャンピオンシステム) +24”
9位 リュー・ジャンペン(中国、ヘンシャンサイクリング)
10位 ロビン・マヌリアン(インドネシア、ペガサスコンチネンタル) +25”
ポイント賞
カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
アジアンライダー賞
チャン・ウェンロン(中国、ジャイアント・チャンピオンシステム)
チーム総合成績
MTNキュベカ
アジアンチーム総合成績
ペガサスコンチネンタル
text&photo:Kei Tsuji
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