2009/09/01(火) - 09:32
大会3回目の集団スプリントは、有力スプリンターが苦戦を強いられる中、2004年トラック世界選手権スクラッチ優勝者のグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)が持ち前のスピードで勝利を飾った。ヘンダーソンはグランツール初勝利。チームコロンビア・HTCはシーズン通算73勝目だ。
オランダ東部のフラットな189kmで行なわれた第3ステージ。レース中盤にはブエルタ史上初めてドイツに入国したが、コースレイアウト的なアクセントは無し。暖かな太陽の下、選手たちはオランダ3日目をスタートさせた。
レース開始直後に逃げを打ったのはラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)、ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)、ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア)の3名。このエスケープトリオは瞬く間に10分近いリードを稼ぎ出した。
しかしこの日もレースはスプリンターチームの独壇場。レース後半にかけてガーミン、クイックステップ、ミルラムの3チームが集団牽引を始めると、タイム差は縮小を開始。3名は苦しい逃げを強いられた。
「逃げが決まった時から、逃げ切りの難しさを実感していた。でも地元オランダの観客に自分の姿を見せたかったんだ」とレース後に語ったのは、オランダチーム所属のオランダ人ボーム。弱冠23歳ながら昨年シクロクロス世界チャンピオンに輝いた気鋭の新人で、2007年にはU23の世界選手権TTで優勝。昨年ロードとTTでオランダチャンピオンに輝いている。
同じくオランダチーム所属のオランダ人フーガーランドも「逃げ切るにはタイム差が少なすぎた。でも脚はよく回ったし、逃げに乗れて良かった」と、初出場のグランツールで逃げに乗れた喜びを語った。フーガーランドは昨年のツール・ド・北海道最終ステージで西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)に次いで2位に入った選手だ。
やがてゴールまで30kmを切ると、逃げグループからロセンドが飛び出して独走。しかしスプリンターチームの強力な追い上げの前には歯が立たずにラスト13kmでロセンドも吸収。集団スプリントに向けての体制は整った。
トレインを形成して大集団を率い、先頭でラスト1kmのアーチを駆け抜けたのはクイックステップとチームコロンビア・HTC。しかしラスト500mのコーナーでその隊列は崩れ、隙を突いてヴァカンソレイユの2人が先頭へ。ボルト・ボジッチ(スロベニア)の発射台役マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)先頭で最終ストレートに突入した。
スピードを上げきったマルカートの後方から、ラスト200mでボジッチが発射。位置取りに手間取ったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が苦戦する中、ボジッチの付き位置を確保していたヘンダーソンが飛び立った。
勢い良くボジッチを抜き去ったヘンダーソンは、追いすがるオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)らを振り切ってゴール。アシスト役のマルセル・シーベルグ(ドイツ)が勝利を確信して手を挙げるその前方で、ヘンダーソンが大きく両手を広げた。
2007年にTモバイル(現チームコロンビア・HTC)合流したヘンダーソンは、そのスピードを活かしてエーススプリンターの発射台役を務めてきた。その根底にはジュニア時代から取り組んでいたトラック競技があり、2004年にはトラック世界選手権スクラッチで金メダルに輝いている。
スプリントの状況を読み、急遽目標を自分のスプリントにスイッチしたヘンダーソンは、「このブエルタでの最大の目的は、チームメイトのグライペルを先頭でフィニッシュさせることだったんだ。でも今日はラスト500〜600mで隊列が崩れてしまったから、ラスト150mでスプリントを開始した。案外簡単に勝利できたよ」と、グランツール初勝利の感触を語っている。
トラック競技では輝かしい戦歴を残しているが、ロードレースではまだまだ勝利数は少なめ。今年はスペインレースと相性が良く、ワンデーレースのクラシカ・デ・アルメリアで優勝すると、ブエルタ・ア・ムルシアとボルタ・ア・カタルーニャでステージ優勝。今シーズンの4勝は全てスペインレースでの結果だ。
チームコロンビア・HTCは今年のグランツールで通算13勝目。今シーズンの勝利数を73勝に伸ばした。柔軟に勝利を狙う合理的なチーム戦略についてヘンダーソンはこう語る。「勝利数の記録表を見れば、チームコロンビアの選手の名前がズラリと並んでいる。でも勝っているのは一人じゃない。チームは互いに協力して闘っている。誰にでも勝つチャンスはあるんだ」。
一方で苦汁をなめたのが、最高のカタチでチームメイトに発射されながらもヘンダーソンに敗れたボジッチ。「望み通りの展開に持ち込めたのに、一歩届かなかった。でも先頭でスプリントに絡めたのは重要なこと」。オランダチームのヴァカンソレイユは連日逃げに選手を送り込み、攻撃的なレースを展開している。
選手コメントはチームコロンビア・HTC、ラボバンク、ヴァカンソレイユのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第3ステージ結果
1位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)4h41'01"
2位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
6位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
7位 ロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)
8位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
9位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、サイレンス・ロット)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)9h29'33"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)+06"
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)+08"
4位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
5位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
6位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
7位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)+16"
8位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
10位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+18"
モンターニャ(山岳賞)
1位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
プントス(ポイント賞)
1位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)38pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)33pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)28pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)5pts
3位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)7pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 28h29'30"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン +06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
オランダ東部のフラットな189kmで行なわれた第3ステージ。レース中盤にはブエルタ史上初めてドイツに入国したが、コースレイアウト的なアクセントは無し。暖かな太陽の下、選手たちはオランダ3日目をスタートさせた。
レース開始直後に逃げを打ったのはラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)、ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)、ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア)の3名。このエスケープトリオは瞬く間に10分近いリードを稼ぎ出した。
しかしこの日もレースはスプリンターチームの独壇場。レース後半にかけてガーミン、クイックステップ、ミルラムの3チームが集団牽引を始めると、タイム差は縮小を開始。3名は苦しい逃げを強いられた。
「逃げが決まった時から、逃げ切りの難しさを実感していた。でも地元オランダの観客に自分の姿を見せたかったんだ」とレース後に語ったのは、オランダチーム所属のオランダ人ボーム。弱冠23歳ながら昨年シクロクロス世界チャンピオンに輝いた気鋭の新人で、2007年にはU23の世界選手権TTで優勝。昨年ロードとTTでオランダチャンピオンに輝いている。
同じくオランダチーム所属のオランダ人フーガーランドも「逃げ切るにはタイム差が少なすぎた。でも脚はよく回ったし、逃げに乗れて良かった」と、初出場のグランツールで逃げに乗れた喜びを語った。フーガーランドは昨年のツール・ド・北海道最終ステージで西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)に次いで2位に入った選手だ。
やがてゴールまで30kmを切ると、逃げグループからロセンドが飛び出して独走。しかしスプリンターチームの強力な追い上げの前には歯が立たずにラスト13kmでロセンドも吸収。集団スプリントに向けての体制は整った。
トレインを形成して大集団を率い、先頭でラスト1kmのアーチを駆け抜けたのはクイックステップとチームコロンビア・HTC。しかしラスト500mのコーナーでその隊列は崩れ、隙を突いてヴァカンソレイユの2人が先頭へ。ボルト・ボジッチ(スロベニア)の発射台役マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)先頭で最終ストレートに突入した。
スピードを上げきったマルカートの後方から、ラスト200mでボジッチが発射。位置取りに手間取ったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)、アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)が苦戦する中、ボジッチの付き位置を確保していたヘンダーソンが飛び立った。
勢い良くボジッチを抜き去ったヘンダーソンは、追いすがるオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)らを振り切ってゴール。アシスト役のマルセル・シーベルグ(ドイツ)が勝利を確信して手を挙げるその前方で、ヘンダーソンが大きく両手を広げた。
2007年にTモバイル(現チームコロンビア・HTC)合流したヘンダーソンは、そのスピードを活かしてエーススプリンターの発射台役を務めてきた。その根底にはジュニア時代から取り組んでいたトラック競技があり、2004年にはトラック世界選手権スクラッチで金メダルに輝いている。
スプリントの状況を読み、急遽目標を自分のスプリントにスイッチしたヘンダーソンは、「このブエルタでの最大の目的は、チームメイトのグライペルを先頭でフィニッシュさせることだったんだ。でも今日はラスト500〜600mで隊列が崩れてしまったから、ラスト150mでスプリントを開始した。案外簡単に勝利できたよ」と、グランツール初勝利の感触を語っている。
トラック競技では輝かしい戦歴を残しているが、ロードレースではまだまだ勝利数は少なめ。今年はスペインレースと相性が良く、ワンデーレースのクラシカ・デ・アルメリアで優勝すると、ブエルタ・ア・ムルシアとボルタ・ア・カタルーニャでステージ優勝。今シーズンの4勝は全てスペインレースでの結果だ。
チームコロンビア・HTCは今年のグランツールで通算13勝目。今シーズンの勝利数を73勝に伸ばした。柔軟に勝利を狙う合理的なチーム戦略についてヘンダーソンはこう語る。「勝利数の記録表を見れば、チームコロンビアの選手の名前がズラリと並んでいる。でも勝っているのは一人じゃない。チームは互いに協力して闘っている。誰にでも勝つチャンスはあるんだ」。
一方で苦汁をなめたのが、最高のカタチでチームメイトに発射されながらもヘンダーソンに敗れたボジッチ。「望み通りの展開に持ち込めたのに、一歩届かなかった。でも先頭でスプリントに絡めたのは重要なこと」。オランダチームのヴァカンソレイユは連日逃げに選手を送り込み、攻撃的なレースを展開している。
選手コメントはチームコロンビア・HTC、ラボバンク、ヴァカンソレイユのチーム公式サイトより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第3ステージ結果
1位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)4h41'01"
2位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
6位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
7位 ロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)
8位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
9位 スチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)
10位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、サイレンス・ロット)
マイヨオロ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)9h29'33"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)+06"
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)+08"
4位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+09"
5位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+12"
6位 イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)+14"
7位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)+16"
8位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+17"
10位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+18"
モンターニャ(山岳賞)
1位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
プントス(ポイント賞)
1位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)38pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)33pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)28pts
コンビナーダ(複合賞)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)5pts
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)5pts
3位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームコロンビア・HTC)7pts
チーム総合成績
1位 リクイガス 28h29'30"
2位 サクソバンク +03"
3位 ガーミン +06"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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