2014/08/29(金) - 20:19
連載でお届けするプロバイクレポート。今回はツール・ド・フランス2014を走った最新鋭のTTバイクに迫る第2弾。オメガファーマ・クイックステップ、ユーロップカー、FDJ.fr、IAMサイクリング、ブルターニュ・シェセ、カチューシャのマシンにフォーカスする。
オメガファーマ・クイックステップ 【スペシャライズド S-Works Shiv TT】
オメガファーマ・クイックステップのTTバイクはスペシャライズド「S-Works Shiv TT」。今回は世界チャンピオンの実力を遺憾なく発揮し、今大会唯一の個人TTを制したトニ・マルティン(ドイツ)が使用した、闘牛のデザインが特徴的なスペシャルペイントのマシンにフォーカスする。なおスペアバイクとしては、アルカンシェルカラーのS-Works Shiv TTと、リアにディスクホイールを装着したロードバイクを用意していた。
コンポーネントはスラムRED22をメインに、S-Works Fact Carbonクランクや58Tという超ビッグなメーカー不明のチェーンリングを組み合わせた。なお、斜度のある登りがあることを考慮してか、リアのカセットをワイドレシオとし、リアディレーラーにはプーリーケージの長いWiFliタイプをアッセンブルしてのが特徴的だ。
ホイールはジップで、デカールがアルカンシェルカラーに換装されていた。タイヤはスペシャライズドのプロトタイプで、おそらくS-Works Turboのトレッドにコットンケーシングを組み合わせることで、グリップとトラクションの向上を図っているのだろう。
ハンドルはおそらくジップ。サドルは既に廃盤になっているスペシャライズドTTSをベースに、おそらく摩擦係数を増やして腰をより安定させるために、紙ヤスリの様な素材を表皮に貼る独特のカスタムを施している。
ユーロップカー 【コルナゴ K.ZERO】
ユーロップカーが使用するTTバイクはコルナゴ「K.ZERO」。比較的、保守的な立場を取ることが多いコルナゴだが、トップチューブと面一となるステムやコンパクトなリア三角などTTバイクにおけるトレンドを多く取り入れたモデルだ。今回は新城幸也のバイクをピックアップ。
コンポーネントはカンパニョーロRECORD EPSで、クランクはスパイダーアームを円盤状としエアロ効果を高め、回転部にはセラミックベアリングを組み合わせたBORA ULTRAとしている。ホイールもカンパニョーロで、フロントは80mmハイトのBORA ULTRA 80、リアは大きな網目が特徴的なBORA ULTRA DISCというアッセンブリーだ。タイヤはユッチンソンPROTOUR TUBLARを使用する。
ハンドルはおそらく専用品で、ステムのクランプ部分はそれに対応して、丸断面ではなく翼断面となっている。サドルはTT用ではなく、ロードバイクでも愛用しているセライタリアSLRで、先端を切り落としてUCIルールに適合。ボトルとボトルケージは形状や表面のディンプルを見るにエリートのKIT CHRONOだが、スポンサーのタックスのロゴを貼り付けている。サイクルコンピューターはシグマROX6.0だ。
FDJ.fr 【ラピエール AEROSTORM】
FDJ.frが使用するTTバイクはラピエール「AEROSTORM」。トレンドに忠実ながらも、エッジの効いたシートチューブの造形や垂直なシートポストなどフレンチブランドらしいユニークさが光るモデルだ。コンポーネントは9070系シマノDURA-ACE Di2で、SRMのパワーメーターを搭載したクランクの使用はライダー次第といったところ。
ホイールはフロントが50mmハイトのWH-9000-C50-TU、リアがPROのディスク、こちらはワイドプロファイル&ツヤ消し仕上げの現行モデルと、ツヤあり仕上げの従来モデルの2モデルを選手によって使い分けた。なお、従来モデルのディスクは10速時代のアルテグラのハブをベースとしているため、本来取り付けられないはずの11速スプロケットが装着されていた。つまりメカニックが何かしらの加工をフリーボディもしくはスプロケットに施しているのだろう。タイヤはシュワルベのハイエンドモデル「ONE」だ。
ハンドルはPROのMissileシリーズで、ステムを高くできないため、ベースバーとエクステンションバーの間にスペーサーを多く積んだセットアップが目立つ。サドルはフィジークで、新型のTRITONEと従来からラインナップされるARESを好みに合わせて使い分けた。その他、ボトル&ボトルケージはエリートKIT CHRONO、SRMのモニターマウントはK-EDGEとしている。
IAMサイクリング 【スコット PLASMA5、PLASMA3】
スコットは大会期間中にトライアスロン用のみを正式に発表した新型モデル「PLASMA5」のTT用をIAMサイクリングの一部ライダーにのみ供給。基本的なコンセプトは恐らく従来モデルと共通で、フロントブレーキのインテグレーテッド化やリア三角の高剛性化などによって完成度を高めてきたという印象だ。なお、PLASMA5が供給されていないライダーは従来モデルの「PLASMA3」を使用していた。
コンポーネントはペダルまで9070/9000系シマノDURA-ACEをメインとしている。もともとシマノと結びつきの強いメーカーとあってか、ジャンクションを混みやすいステム付近ではなくサドルレール付近にマウントしているのがユニーク。何故かリアディレーラーのテンションプーリー(下側)をアルミ製の赤いサードパティーに変更していたバイクも見られた。
ホイールはフロントがスポンサーのDTスイス、リアがDTスイスからリリースされているライトウェイ製ディスクという組み合わせ。ハンドルは恐らくPROが製造するPLASMA専用品。サドルとバーテープはプロロゴだ。
ブルターニュ・シェセ 【ケモ KE-T5】
ブルターニュ・シェセが使用するTTバイクはスイスの新興ブランドであるケモの「KE-T5」。前後ともに外出しのブレーキキャリパーや翼断面のチューブによる平べったいデザイン、ロードと同じ汎用規格のステムを使用する点など、ややトレンドを捉えきれていないという印象を抱かざるを得ない。
対照的にパーツアッセンブルは空力性能を追求しており、今大会に出場した22チームの中でもかなりマニアック。コンポーネントはヴィジョンMETRONシリーズがメイン。扁平形状のアームが特徴的なクランクセットやプーリーゲージをカウルで覆ったリアディレーラーによって空気抵抗の低減を追求している。また、シートステーの内側を通る独特のリアディレーラーのワイヤリングもエアロ効果を高めるための一環なのだろう。
ホイールも同じくヴィジョンMETRONで、フロントが既に廃盤となっている90mmハイトのMETRON 90、リアがディープリムにカウルを貼り付けてディスク化したMETRON DISCというセットアップが多かった様だ。タイヤにはイタリアのチャレンジを組み合わせている。もちろん、ハンドルとステムもヴィジョン。サドルはセライタリア。サイルコンピューターはポラールのV650で、エクステンションバーの間に無理くり装着している。
カチューシャ 【キャニオン Speedmax CF Evo】
カチューシャが使用するTTバイクはキャニオン「Speedmax CF Evo」。インテグレーテッドデザインのヘッドチューブ周りやブレーキなどトレンドをほぼ網羅しつつも、スッキリとしたデザインに仕上がっていることが特徴のモデル。また、ベースバーの元々の位置が低いことから、ホアキン・ロドリゲスやダニエル・モレノ(共にスペイン)ら小柄なライダーにとってもポジションが出しやすいこともポイントといえるだろう。
コンポーネントは9070系シマノDURA-ACE Di2がメイン。ホイールはフロントが80mmハイトのCXR80、リアがCOMETという組み合わせで、タイヤもマヴィックとしている。ハンドル周りはキャニオンのオリジナルで、サドルはセライタリア。ボトルケージはエリートKIT CHRONOで、一般的にはダウンチューブ側に取り付けるのがセオリーだが、写真のバイクではシートチュー部側にマウントしている。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
オメガファーマ・クイックステップ 【スペシャライズド S-Works Shiv TT】
オメガファーマ・クイックステップのTTバイクはスペシャライズド「S-Works Shiv TT」。今回は世界チャンピオンの実力を遺憾なく発揮し、今大会唯一の個人TTを制したトニ・マルティン(ドイツ)が使用した、闘牛のデザインが特徴的なスペシャルペイントのマシンにフォーカスする。なおスペアバイクとしては、アルカンシェルカラーのS-Works Shiv TTと、リアにディスクホイールを装着したロードバイクを用意していた。
コンポーネントはスラムRED22をメインに、S-Works Fact Carbonクランクや58Tという超ビッグなメーカー不明のチェーンリングを組み合わせた。なお、斜度のある登りがあることを考慮してか、リアのカセットをワイドレシオとし、リアディレーラーにはプーリーケージの長いWiFliタイプをアッセンブルしてのが特徴的だ。
ホイールはジップで、デカールがアルカンシェルカラーに換装されていた。タイヤはスペシャライズドのプロトタイプで、おそらくS-Works Turboのトレッドにコットンケーシングを組み合わせることで、グリップとトラクションの向上を図っているのだろう。
ハンドルはおそらくジップ。サドルは既に廃盤になっているスペシャライズドTTSをベースに、おそらく摩擦係数を増やして腰をより安定させるために、紙ヤスリの様な素材を表皮に貼る独特のカスタムを施している。
ユーロップカー 【コルナゴ K.ZERO】
ユーロップカーが使用するTTバイクはコルナゴ「K.ZERO」。比較的、保守的な立場を取ることが多いコルナゴだが、トップチューブと面一となるステムやコンパクトなリア三角などTTバイクにおけるトレンドを多く取り入れたモデルだ。今回は新城幸也のバイクをピックアップ。
コンポーネントはカンパニョーロRECORD EPSで、クランクはスパイダーアームを円盤状としエアロ効果を高め、回転部にはセラミックベアリングを組み合わせたBORA ULTRAとしている。ホイールもカンパニョーロで、フロントは80mmハイトのBORA ULTRA 80、リアは大きな網目が特徴的なBORA ULTRA DISCというアッセンブリーだ。タイヤはユッチンソンPROTOUR TUBLARを使用する。
ハンドルはおそらく専用品で、ステムのクランプ部分はそれに対応して、丸断面ではなく翼断面となっている。サドルはTT用ではなく、ロードバイクでも愛用しているセライタリアSLRで、先端を切り落としてUCIルールに適合。ボトルとボトルケージは形状や表面のディンプルを見るにエリートのKIT CHRONOだが、スポンサーのタックスのロゴを貼り付けている。サイクルコンピューターはシグマROX6.0だ。
FDJ.fr 【ラピエール AEROSTORM】
FDJ.frが使用するTTバイクはラピエール「AEROSTORM」。トレンドに忠実ながらも、エッジの効いたシートチューブの造形や垂直なシートポストなどフレンチブランドらしいユニークさが光るモデルだ。コンポーネントは9070系シマノDURA-ACE Di2で、SRMのパワーメーターを搭載したクランクの使用はライダー次第といったところ。
ホイールはフロントが50mmハイトのWH-9000-C50-TU、リアがPROのディスク、こちらはワイドプロファイル&ツヤ消し仕上げの現行モデルと、ツヤあり仕上げの従来モデルの2モデルを選手によって使い分けた。なお、従来モデルのディスクは10速時代のアルテグラのハブをベースとしているため、本来取り付けられないはずの11速スプロケットが装着されていた。つまりメカニックが何かしらの加工をフリーボディもしくはスプロケットに施しているのだろう。タイヤはシュワルベのハイエンドモデル「ONE」だ。
ハンドルはPROのMissileシリーズで、ステムを高くできないため、ベースバーとエクステンションバーの間にスペーサーを多く積んだセットアップが目立つ。サドルはフィジークで、新型のTRITONEと従来からラインナップされるARESを好みに合わせて使い分けた。その他、ボトル&ボトルケージはエリートKIT CHRONO、SRMのモニターマウントはK-EDGEとしている。
IAMサイクリング 【スコット PLASMA5、PLASMA3】
スコットは大会期間中にトライアスロン用のみを正式に発表した新型モデル「PLASMA5」のTT用をIAMサイクリングの一部ライダーにのみ供給。基本的なコンセプトは恐らく従来モデルと共通で、フロントブレーキのインテグレーテッド化やリア三角の高剛性化などによって完成度を高めてきたという印象だ。なお、PLASMA5が供給されていないライダーは従来モデルの「PLASMA3」を使用していた。
コンポーネントはペダルまで9070/9000系シマノDURA-ACEをメインとしている。もともとシマノと結びつきの強いメーカーとあってか、ジャンクションを混みやすいステム付近ではなくサドルレール付近にマウントしているのがユニーク。何故かリアディレーラーのテンションプーリー(下側)をアルミ製の赤いサードパティーに変更していたバイクも見られた。
ホイールはフロントがスポンサーのDTスイス、リアがDTスイスからリリースされているライトウェイ製ディスクという組み合わせ。ハンドルは恐らくPROが製造するPLASMA専用品。サドルとバーテープはプロロゴだ。
ブルターニュ・シェセ 【ケモ KE-T5】
ブルターニュ・シェセが使用するTTバイクはスイスの新興ブランドであるケモの「KE-T5」。前後ともに外出しのブレーキキャリパーや翼断面のチューブによる平べったいデザイン、ロードと同じ汎用規格のステムを使用する点など、ややトレンドを捉えきれていないという印象を抱かざるを得ない。
対照的にパーツアッセンブルは空力性能を追求しており、今大会に出場した22チームの中でもかなりマニアック。コンポーネントはヴィジョンMETRONシリーズがメイン。扁平形状のアームが特徴的なクランクセットやプーリーゲージをカウルで覆ったリアディレーラーによって空気抵抗の低減を追求している。また、シートステーの内側を通る独特のリアディレーラーのワイヤリングもエアロ効果を高めるための一環なのだろう。
ホイールも同じくヴィジョンMETRONで、フロントが既に廃盤となっている90mmハイトのMETRON 90、リアがディープリムにカウルを貼り付けてディスク化したMETRON DISCというセットアップが多かった様だ。タイヤにはイタリアのチャレンジを組み合わせている。もちろん、ハンドルとステムもヴィジョン。サドルはセライタリア。サイルコンピューターはポラールのV650で、エクステンションバーの間に無理くり装着している。
カチューシャ 【キャニオン Speedmax CF Evo】
カチューシャが使用するTTバイクはキャニオン「Speedmax CF Evo」。インテグレーテッドデザインのヘッドチューブ周りやブレーキなどトレンドをほぼ網羅しつつも、スッキリとしたデザインに仕上がっていることが特徴のモデル。また、ベースバーの元々の位置が低いことから、ホアキン・ロドリゲスやダニエル・モレノ(共にスペイン)ら小柄なライダーにとってもポジションが出しやすいこともポイントといえるだろう。
コンポーネントは9070系シマノDURA-ACE Di2がメイン。ホイールはフロントが80mmハイトのCXR80、リアがCOMETという組み合わせで、タイヤもマヴィックとしている。ハンドル周りはキャニオンのオリジナルで、サドルはセライタリア。ボトルケージはエリートKIT CHRONOで、一般的にはダウンチューブ側に取り付けるのがセオリーだが、写真のバイクではシートチュー部側にマウントしている。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto