2014/07/28(月) - 18:04
朝から気温の上がった東京・お台場。多くの観客が見守る中、序盤からの4人の逃げはゴールまで届き、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が優勝。女子は上野みなみ・塚越さくらの鹿屋勢がワン・ツー。
会場はお台場エリア、朝から暑くなる photo:Hideaki TAKAGI
集中力を高める全日本チャンピオンの佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:Yuya.Yamamoto
スタート前にジャージを水で濡らすのは辻善光(湘南ベルマーレ) photo:Yuya.Yamamoto
今年は会場の位置が変更され、コースはパレットタウンの大観覧車の真下に設けられた photo:Yuya YAMAMOTO
学生クラス1 早坂貴大(山梨学院大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI7月27日(日)、東京・お台場エリアのシンボルプロムナード公園セントラル広場で行なわれた湾岸クリテリウム。学連大会は近年開かれているが、JBCF大会としては2年ぶり。2012年は辻善光が優勝している。ここお台場で2日間の湾岸サイクルフェスティバル(湾岸サイクルフェスティバル実行委員会主催)が行なわれ、それの注目イベントがJBCF湾岸クリテリウムだ。
学生クラス1 表彰 photo:Hideaki TAKAGI
コースは1周1.45kmのおよそ往復コース、緩いアップダウンがありむしろ完全平坦がないほど。風も吹き、35度を超えた気温もあいまって体力勝負のクリテリウムだ。スタート地点は人通りの多い場所に設けられ、日曜日のお台場を訪れた多くの人たちがスピードレースを目にした。
学連クラス1は早坂貴大(山梨学院大)が制する
女子 上野みなみ(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
初日の26日には学連の大会が行われ、クラス1はアタックが終始かかる中、ゴール勝負を早坂貴大(山梨学院大)が制し優勝。「クラス1では初めての優勝。今まで大きな優勝がなかったので嬉しい。今日は自分のチームは1人だけなので、逃げを逃さないようスプリントに持ち込めば着に入れると思ってスタート。ラスト2周くらいからゴールを意識しました。仕掛けるのが少し早過ぎたが勝てました。今日は保坂監督と家族にも来てもらっていたので、本当に勝てて嬉しいです」と早坂は語る。
女子 上野みなみと塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)は実業団登録して参戦 photo:Hideaki TAKAGI
上野みなみ、塚越さくらワン・ツーの女子
2日目の27日はJBCFの大会。午前中に実業団女子+学連女子として10周14.5kmで行なわれた。3周目に塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)がアタック、4周目に吸収されるタイミングで上野みなみ(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)がアタックしてここから独走開始。2位集団の中からはラスト3周で塚越が抜け出し、上野、塚越の鹿屋勢でワン・ツー達成。
大学院生の2人は、4年間を超える学連登録はできないため実業団登録しての参加。2人は「交互にアタックして逃げられたほうが逃げてとはスプリント、ということを考えてスタートしました。選手同士の連携などロードレースの経験を積むためにも登録して今日は参加しました。大学を卒業してからロードレースを走る機会が無いんです。次は和歌山県での都道府県ロード、そして最大の目標は9月のアジア大会で、ロードも出ます」と語る。
予選を勝ち上がった39名のP1クラスタ
P1クラスタ スタート photo:Hideaki TAKAGI
沿道には多くの観客が詰めかけた photo:Yuya.Yamamoto
P1クラスタは予選3組各13人計39人が決勝に進出。7名を送り込んだのは宇都宮ブリッツェンとマトリックスパワータグ。さらに全日本チャンピオンジャージをまとう佐野淳哉擁する那須ブラーゼン、平坦に強いクロップス×チャンピオンシステムらの動きが見どころ。決勝は24周34.8kmで行なわれた。
逃げ続ける4人 photo:Hideaki TAKAGI
序盤から各チームが動くが決まらない。追走には佐野が回る場面が多い。4周目に雨澤毅明(那須ブラーゼン)が抜け出し単独先頭に。ここへ阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、末永周平(クロップス×チャンピオンシステム)が合流し3人に。さらに和田力(マトリックスパワータグ)が合流して4人の先頭集団ができる。この時点で24周のうちまだ5周目、逃げ屋の阿部も入っていつもの逃げが形成され、メイン集団はペースダウン。差は30秒以上に開く。
終盤の追走集団 photo:Hideaki TAKAGI
各チームとも、終盤にこの逃げを吸収してエースをスプリントで勝たせるのが今日の作戦。序盤は送り込んでいないシエルヴォ奈良が、中盤までは一定間隔を保つ走りをマトリックスパワータグと宇都宮ブリッツェンが担う。中盤過ぎて増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が仕掛け、これに鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)、ベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)、遠藤績穂(クロップス×チャンピオンシステム)の4人が追走集団を形成。
ラスト3周、もはやメイン集団は先頭に追いつかない photo:Hideaki TAKAGI
先頭の阿部と和田へはそれぞれチームからペースを抑えるよう指示があり、先頭はおもに末永と雨澤が引くようになる。間にいた追走の4人はおもにマトリックスパワータグの動きでほどなく吸収される。その後もメイン集団では仕掛けと牽制を繰り返し、先頭4人との差はむしろ開いていく。
ラスト3周でも差は縮まらずいよいよ先頭4人の逃げ切りが濃厚に。ラスト2周では阿部と和田が仕掛けあい先行する場面があったが末永が追いつき先頭は3人に。最終周回のゴール前、先に仕掛けたのは末永。しかしこれを阿部がかわして優勝。
ゴール前、先行するのは末永周平(クロップス×チャンピオンシステム) photo:Hideaki TAKAGI
見せた逃げ屋の意地
優勝した阿部はほとんどのレースで序盤からアタックをしかけ逃げのメンバーに入る。そしてほとんどのレースではゴールまでに吸収されてチームの仕事を終える。しかし最終的に吸収されることをいつも良しとしているわけではない。自分が勝つというわずかの可能性も同時に持ち合わせている。それで本当に勝ってしまうほどの力があるからこそ、逃げ屋の価値は高まる。昨年の石川ロードでも同じくだ。本大会では阿部の判断が功を奏してチームの今年5勝目を自ら手繰り寄せた。
優勝した阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
チームの当初の想定とは全然違う動きになった。自分が逃げに入ったがメイン集団の動きを見つつ、最後僕に託されたのであれば勝つしかないので、若手相手にクレバーになった部分はある。いつも僕は逃げるとき、チームの役割もあるがいっぽうで自分が勝つという選択肢を持って走っている。今日は逃げのメンバーも良かった
いっぽうで清水裕輔監督は「当初は鈴木譲と鈴木真理で行く作戦だった。阿部の逃げはあっても追いついてゴールはその2人で行くという。阿部が勝ったので結果オーライだが、譲先頭の今日のメイン集団ゴールの様子が本来の展開だった」と語る。ここは阿部の状況判断が功を奏した。
2位の末永周平(クロップス×チャンピオンシステム)
「悔しいです!ラスト50mくらいで正直勝ったかなと思ったのですが、阿部さんにうまく入られて。勝負を急いでしまったところがあると思います。途中は雨澤さんが強くてかなり協力してもらえました。昨年まで明治大でトラックレースもやっていたので、1日で予選と決勝を走るというその経験などが生きたと思います」
3位の和田力(マトリックスパワータグ)
「自分は終盤でエースのスプリントを支えるというチームの作戦だったので、逃げにはチェックに入ったのが目的。でも途中で逃げが確定的になり、自分が前で行くことにボス(安原監督)から指令が出たのでそれに備えました。自分としてはスプリントで負ける気がしなかったです。でも自分の走りができずに負けてしまった。動き方に反省点は多いです」
阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
メイン集団は鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)先頭でゴール photo:Hideaki TAKAGI
声援に応える阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI
結果
学連クラス1 24.0km
1位 早坂貴大(山梨学院大)35分07秒
2位 小林和希(明治大)
3位 金井誠人(明治大)
4位 佐々木勇輔(早稲田大)
5位 高木三千成(立教大)+03秒
6位 菊地啓汰(順天堂大)+13秒
Fクラスタ 14.5km
1位 上野みなみ(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)23分34秒
2位 塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)+47秒
3位 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)+1分10秒
4位 伊藤杏菜(Champion System Japan-中京大学)
5位 棟近陽子(EURO-WORKS Racing)+2分09秒
6位 清水沙羅(Champion System Japan)+2分10秒
P1クラスタ 34.8km
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)49分31秒
2位 末永周平(クロップス×チャンピオンシステム)
3位 和田力(マトリックスパワータグ)+01秒
4位 雨澤毅明(那須ブラーゼン)+07秒
5位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)+1分11秒
6位 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)
7位 ベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)
8位 小室雅成(ロヂャースレーシングチーム)
9位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
10位 藤岡克磨(クロップス×チャンピオンシステム)+1分12秒
photo:Hideaki TAKAGI,Yuya YAMAMOTO
text:Hideaki TAKAGI
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学連クラス1は早坂貴大(山梨学院大)が制する
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初日の26日には学連の大会が行われ、クラス1はアタックが終始かかる中、ゴール勝負を早坂貴大(山梨学院大)が制し優勝。「クラス1では初めての優勝。今まで大きな優勝がなかったので嬉しい。今日は自分のチームは1人だけなので、逃げを逃さないようスプリントに持ち込めば着に入れると思ってスタート。ラスト2周くらいからゴールを意識しました。仕掛けるのが少し早過ぎたが勝てました。今日は保坂監督と家族にも来てもらっていたので、本当に勝てて嬉しいです」と早坂は語る。
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上野みなみ、塚越さくらワン・ツーの女子
2日目の27日はJBCFの大会。午前中に実業団女子+学連女子として10周14.5kmで行なわれた。3周目に塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)がアタック、4周目に吸収されるタイミングで上野みなみ(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)がアタックしてここから独走開始。2位集団の中からはラスト3周で塚越が抜け出し、上野、塚越の鹿屋勢でワン・ツー達成。
大学院生の2人は、4年間を超える学連登録はできないため実業団登録しての参加。2人は「交互にアタックして逃げられたほうが逃げてとはスプリント、ということを考えてスタートしました。選手同士の連携などロードレースの経験を積むためにも登録して今日は参加しました。大学を卒業してからロードレースを走る機会が無いんです。次は和歌山県での都道府県ロード、そして最大の目標は9月のアジア大会で、ロードも出ます」と語る。
予選を勝ち上がった39名のP1クラスタ
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P1クラスタは予選3組各13人計39人が決勝に進出。7名を送り込んだのは宇都宮ブリッツェンとマトリックスパワータグ。さらに全日本チャンピオンジャージをまとう佐野淳哉擁する那須ブラーゼン、平坦に強いクロップス×チャンピオンシステムらの動きが見どころ。決勝は24周34.8kmで行なわれた。
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先頭の阿部と和田へはそれぞれチームからペースを抑えるよう指示があり、先頭はおもに末永と雨澤が引くようになる。間にいた追走の4人はおもにマトリックスパワータグの動きでほどなく吸収される。その後もメイン集団では仕掛けと牽制を繰り返し、先頭4人との差はむしろ開いていく。
ラスト3周でも差は縮まらずいよいよ先頭4人の逃げ切りが濃厚に。ラスト2周では阿部と和田が仕掛けあい先行する場面があったが末永が追いつき先頭は3人に。最終周回のゴール前、先に仕掛けたのは末永。しかしこれを阿部がかわして優勝。
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見せた逃げ屋の意地
優勝した阿部はほとんどのレースで序盤からアタックをしかけ逃げのメンバーに入る。そしてほとんどのレースではゴールまでに吸収されてチームの仕事を終える。しかし最終的に吸収されることをいつも良しとしているわけではない。自分が勝つというわずかの可能性も同時に持ち合わせている。それで本当に勝ってしまうほどの力があるからこそ、逃げ屋の価値は高まる。昨年の石川ロードでも同じくだ。本大会では阿部の判断が功を奏してチームの今年5勝目を自ら手繰り寄せた。
優勝した阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
チームの当初の想定とは全然違う動きになった。自分が逃げに入ったがメイン集団の動きを見つつ、最後僕に託されたのであれば勝つしかないので、若手相手にクレバーになった部分はある。いつも僕は逃げるとき、チームの役割もあるがいっぽうで自分が勝つという選択肢を持って走っている。今日は逃げのメンバーも良かった
いっぽうで清水裕輔監督は「当初は鈴木譲と鈴木真理で行く作戦だった。阿部の逃げはあっても追いついてゴールはその2人で行くという。阿部が勝ったので結果オーライだが、譲先頭の今日のメイン集団ゴールの様子が本来の展開だった」と語る。ここは阿部の状況判断が功を奏した。
2位の末永周平(クロップス×チャンピオンシステム)
「悔しいです!ラスト50mくらいで正直勝ったかなと思ったのですが、阿部さんにうまく入られて。勝負を急いでしまったところがあると思います。途中は雨澤さんが強くてかなり協力してもらえました。昨年まで明治大でトラックレースもやっていたので、1日で予選と決勝を走るというその経験などが生きたと思います」
3位の和田力(マトリックスパワータグ)
「自分は終盤でエースのスプリントを支えるというチームの作戦だったので、逃げにはチェックに入ったのが目的。でも途中で逃げが確定的になり、自分が前で行くことにボス(安原監督)から指令が出たのでそれに備えました。自分としてはスプリントで負ける気がしなかったです。でも自分の走りができずに負けてしまった。動き方に反省点は多いです」
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結果
学連クラス1 24.0km
1位 早坂貴大(山梨学院大)35分07秒
2位 小林和希(明治大)
3位 金井誠人(明治大)
4位 佐々木勇輔(早稲田大)
5位 高木三千成(立教大)+03秒
6位 菊地啓汰(順天堂大)+13秒
Fクラスタ 14.5km
1位 上野みなみ(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)23分34秒
2位 塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)+47秒
3位 智野真央(NEILPRYDE-MENS CLUB JFT)+1分10秒
4位 伊藤杏菜(Champion System Japan-中京大学)
5位 棟近陽子(EURO-WORKS Racing)+2分09秒
6位 清水沙羅(Champion System Japan)+2分10秒
P1クラスタ 34.8km
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)49分31秒
2位 末永周平(クロップス×チャンピオンシステム)
3位 和田力(マトリックスパワータグ)+01秒
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5位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)+1分11秒
6位 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)
7位 ベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)
8位 小室雅成(ロヂャースレーシングチーム)
9位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
10位 藤岡克磨(クロップス×チャンピオンシステム)+1分12秒
photo:Hideaki TAKAGI,Yuya YAMAMOTO
text:Hideaki TAKAGI
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