アメリカ・ウィスコンシン州に居を構えるトレーニングデバイスブランド、パワータップ。メインプロダクトであるハブ型パワーメーター「パワータップ」を組み込んだ完組ホイールラインナップより、レイノルズAssault仕様とエンヴィ SES 3.4仕様を紹介する。今回は両モデルでテストライドを行い、完組ホイールとしてのディテールと走行性能についてチェックしたインプレをあわせて紹介する。



パワータップ レイノルズ Assault

「レイノルズ Assault(アサルト)」はパワータップの完組カーボンホイールのラインナップで、最も手頃な価格を実現したモデル。フルカーボンクリンチャーながら強度に優れ、日常的なトレーニングからレースまで様々なシチュエーションに対応してくれるホイールだ。

パワータップ レイノルズ Assaultパワータップ レイノルズ Assault (c)So.Isobe/cyclowired.jp
リムプロファイルは高さ46mm×幅21mmと標準的。しかしながら、引張係数が34msiと42msiの2種類の高品質単一方向性カーボンを組み合わせるなど素材にこだわり、レイノルズ社のコンピューター制御を用いた高温樹脂処理技術によって仕上げることで重量比剛性を高めている。

加えて、ブレーキング性能を向上させるためにレイノルズ独自のCTg(極低温ガラス転移)テクノロジーを搭載したこともトピックス。これは高品質樹脂を使用したカーボンシートの採用やカーボンレイアップの最適化によって、制動時に発生した熱をディープリムウォール表面(ブレーキ面以外)から逃がし、熱集積を抑制するというもの。

CTgテクノロジーによって安定的かつ強力な制動を可能としたブレーキ面CTgテクノロジーによって安定的かつ強力な制動を可能としたブレーキ面 しっかりとした造りのビードフック部分しっかりとした造りのビードフック部分


また、独自の高分子化合物を素材とする青色の専用ブレーキパッド「Cryo-Blue」と組み合わせることで、他メーカーのパッドと比較してブレーキ面の温度を104℃低減することに成功。熱による制動力の低下や過度の劣化を防止している。なお、タイヤの最大空気圧は130PSI(=9Bar)だ。

組み合わせられるハブは最新の「G3トルクチューブ」を使用し、ポピュラーなJベンドタイプのスポークに対応するパワータップG3。シチュエーションを問わず+/-1.5%という業界最高精度のパワー計測が可能だ。バッテリーには入手性の高いCR2032ボタン電池を使用する。

フリーボディはシマノ11S/スラムとカンパニョーロの2種類が揃う。またオプションでセラミックスピード社製セラミックベアリングを搭載したパワータップG3Cにアップグレードすることも可能だ。

フロントにもパワータップのハブを使用し、統一感を高めているフロントにもパワータップのハブを使用し、統一感を高めている 従来モデルよりも大幅にスマートになったパワータップハブ従来モデルよりも大幅にスマートになったパワータップハブ

付属の工具で簡単に電池交換を行うことができる付属の工具で簡単に電池交換を行うことができる パワーキャップとハブの内部。防水性も充分だパワーキャップとハブの内部。防水性も充分だ


スポークはバテッド加工によって軽さと強度を両立したDTスイス Competitionを使用し、スポーキングはフロントが20Hのラジアル組、リアが24Hの2クロス組。出荷状態でスポークテンションを高めに設定してあることから、切れ味鋭い乗り味を体感することができるだろう。

実測重量はフロント674g、リア936gとパワーメーター搭載による重量的なハンデは無く、実用性の高い仕上がりとなっている。付属品は専用ブレーキパッドとクイックリレーズ、パワーキャップ取外工具の3点。保証期間はリムが2年間、スポーク及びニップルが1年間となり、落車や事故等による破損は保障対象外だが、通常使用時のトラブルではしっかりと対応してもらえるため安心だ。

リムにはパワータップのロゴデカールが配されているリムにはパワータップのロゴデカールが配されている 付属するCryo-Blueパッドとの組み合わせによって高い制動力を実現している付属するCryo-Blueパッドとの組み合わせによって高い制動力を実現している


パワータップ レイノルズ Assault
リム:レイノルズ Assault
リム形式:クリンチャー
ハブ:パワータップ G3
対応スプロケット:シマノ11S/スラム、カンパニョーロ
スポーク:DTスイス Competition
スポーキング:フロント20Hラジアル、リア24H2クロス
重量:フリント674g、リア936g(実測、リムフラップ込)
価格:フロント65,000円(税込)、リア160,000円(税込)



パワータップ エンヴィ SES 3.4

4月に発売されたばかりのパワータップと初となるストレートプルスポーク対応モデル「GS」を使用した完組みホイールが早くもラインナップに追加されている。今回はその中から、「スマートエンヴィSystem SES 3.4」リム採用モデルをピックアップする。

パワータップ エンヴィ SES 3.4パワータップ エンヴィ SES 3.4 (c)So.Isobe/cyclowired.jp
スマートエンヴィとはF1のエンジニアとして活躍し自転車界では数多くの名車と呼ばれるTTを生み出してきたサイモン・スマート氏が開発したホイールシステムのこと。ホイールとフレームの流体力学的相互作用に着目し、前輪と後輪でリムプロファイルを変えバイクに装着した状態でのエアロダイナミクスを追求したことが特徴だ。

今回紹介する「エンヴィ SES 3.4」は、平地巡航からヒルクライムまで様々なシチュエーションで性能を発揮するオールラウンドモデル。リムプロファイルをフロントが高さ36mm×幅26mm、リアが高さ45mm×幅24mmとすることで巡航性を維持しながら、横風に対するハンドリングの安定性を重視している。また、ブレーキング性能に配慮されていることもトピックスで、ブレーキ面には梨地の特殊加工が施されている。

組み合わせられる「パワータップ GSハブ」はG3と共通の「G3トルクチューブ」によってシチュエーションを問わず+/-1.5%という業界最高精度のパワー計測を行うことができる。またハブとしての性能も高く、多くの高級完組ホイールにも採用される「DTスイス 240S」から定評のあるラチェットシステムなどを流用。優れた回転性能と伝達効率、メンテナンス性を実現した。

フロントハブもストレートスポークに対応するフロントハブもストレートスポークに対応する DTスイス240Sの機構を取入れ回転性能を高めたリアハブ。ストレートプル対応によって軽量化とスポークの長寿命化を可能としたDTスイス240Sの機構を取入れ回転性能を高めたリアハブ。ストレートプル対応によって軽量化とスポークの長寿命化を可能とした

丸みを帯びたリムプロファイルによって横風に対する安定性を高めている丸みを帯びたリムプロファイルによって横風に対する安定性を高めている リムには「HAND MADE IN USA」のデカールが貼られるリムには「HAND MADE IN USA」のデカールが貼られる


スポークはストレートプルながら汎用品として市販されている「DTスイス Aerolite」で、スポーキングはフロントが20Hのラジアル、リアが24ホールの2クロスと標準的だが、Jベンドタイプで同じスポーキングとした際と比較してスポークへの負担が減少することで長寿命化。さらに、ホイールとしての剛性の格段に高まっている。

ブレーキ面には特殊加工を施し、梨地とすることで制動力を高めているブレーキ面には特殊加工を施し、梨地とすることで制動力を高めている ラインナップはリム形式がチューブラーとクリンチャーの2種類、フリーボディがシマノ11S/スラムとカンパニョーロの2種類で計4種類が用意される。チューブラー・シマノ11S/スラム対応モデルで重量はフロントが600g、リアが864g(実測)と普段のトレーニングだけでなく、トップカテゴリーのレースでも使用できるだけの高い性能を持っている。また、セラミックスピード社製セラミックベアリングへのアップグレードや、Jベンドスポーク対応のG3仕様もオプションとして設定されている。

付属品は専用ブレーキパッドとクイックリレーズ、パワーキャップ取外工具の3点。保証期間はリムが2年間、スポーク及びニップルが1年間となり、落車や事故等による破損は保障対象外だが、通常使用時のトラブルではしっかりと対応してもらえるため安心だ。

パワータップ スマートエンヴィSystem SES 3.4
リム:スマートエンヴィSystem SES 3.4
リム形式:クリンチャー、チューブラー
ハブ:パワータップ G3、GS
対応スプロケット:シマノ11S/スラム、カンパニョーロ
スポーク:DTスイス Aerolite(ストレート)
重量:フリント600g、リア864g(実測)
価格:
GS仕様ペア 390,000円(税込)
G3仕様ペア 350,000円(税込)



― インプレッション

ここからは両モデルを使用してのテストライドによるインプレッションで、ホイール自体の性能に触れて行こう。

まずはフラッグシップモデルとも言える”パワータップ エンヴィ SES 3.4 チューブラー”から。フロント340g、リア380gというリム重量が物語るとおり、踏み出しの軽さは驚きのレベルだ。その後も踏力をドンドン足していっても、その軽快な軽さは変わらない。10%を超える登坂に楽しさすら感じるほどの軽快さである。試乗前から判り切っていた事ではあるが、やはりこのセットはレース機材以外の何物でもない。フロント35mmリア45mmと、さほど高くはないリムハイトながら、高速巡航もすこぶる快適だ。

パワータップ レイノルズ Assault & エンヴィ SES 3.4パワータップ レイノルズ Assault & エンヴィ SES 3.4 (c)So.Isobe/cyclowired.jp
このSESに採用されているストレートプルスポーク方式によりホイールの剛性感も十分に高く、反応も実に素晴らしい。私レベルでは非の打ちどころの無いホイールと言って過言ではなく、デュラエースハブに比すると78gほどの重量増も、回転中心部という事も手伝ってか、一切ネガティブに感じる事はなかった。確かに価格も驚きではあるが、その価格に見合うだけの満足を得られるホイールだと言えよう。

次は”パワータップ レイノルズ Assault クリンチャー”。 メーカー曰く、「日常的なトレーニングからレースまで様々なシチュエーションに対応してくれるホイール」とのことだが、300kmほど試乗した私の印象はこれとは違う。トレ-ニングユースには勿体無いほどのポテンシャルを感じたからだ。おそらく450g近辺のリム重量と思われるレイノルズ製のリムと、フロント20本リア24本のスポーキングにより、軽量高剛性なホイールセットに仕上がっている。私は贅沢にも普段乗りに”コスミックカーボンSLE”や”BORA One”を使用しているが、これらのホイール群と比しても、性能は勝るとも劣らない。

唯一、リムハイト46mmにしては巡航性能が今一つに感じた程度で、それ以外は、反応も良く、一般のアマチュアライダーにとっては決戦用とも言えるほどの軽快な走りを見せてくれた。この内容で前後セット225.000円という価格設定はひとえに素晴らしい。これからパワーメーターを取り入れてみたいと云う方にはオススメできる性能とコストパフォーマンスだと言えよう。最後に、レイノルズ製リムならではのブレーキ当り面の精度に拠る、安心のブレーキフィールを味わえる事も付け加えておこう。

text:Kenji.Degawa

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