2014/07/04(金) - 19:26
巨大なアレーナを舞台に、いまだかつてないほどの豪華な演出で開催されたチームプレゼンテーション。これを見ればイギリスがどれだけツール熱に冒されているかがよく分かる。
ツール・ド・フランス開幕を2日後に控えた7月3日、夕方18時半からチームプレゼンは開催された。会場は市街中心部にあるfirst direct arena。この2013年にできたばかりのアレーナは、巨大なコンサートホールのよう。資料によると13,500人収容のキャパをもつこのホール、開場してまもなく発表された観客数は1万人。オペラ劇場のような観覧席は最上段までほぼ満席状態だった。
華々しい光と映像のページェントでセレモニーはスタート。「Welcome to Yorkshire」のキャッチフレーズとともに、凝った映像と演出とで、さながらコンサートのようなショーが始まった。
前回のイギリス開催、ロンドンでのグランデパールが2007年。それから7年の時を経て再びツールを呼び寄せた道のりを、イギリス国内の自転車熱の高まりを表現した映像で感動的にまとめあげられていた。
出場チームのトップバッターはカチューシャ。ホアキン・ロドリゲスにはさっそくジロでの負傷から回復し、ツール出場に切り替えたことに対してMCがスペイン語で質問を投げかける。そしてすぐさま英語に翻訳して観客に伝える。
男女2人の司会進行役のうち、男性側に起用されたマルチ言語を話す長身のハンサムな男性はじつはASO職員で、ASO主催レースではプレスカンファレンスで各国選手の同時通訳を担当する人物。いつもの地味な裏方的通訳仕事とは比べものにならない檜舞台にもかかわらず、立派に務めていた。選手への的確なインタビューは、今やすっかり目の肥えたイギリスのサイクリングファンにも納得のもの。
4番目に登場のオリカ・グリーンエッジでは、誰よりも先に、(MCはエースのサイモン・ゲランスよりも先で申し訳ない、とコメントしながら)イギリス人のサイモン・イェーツへとインタビューが振られた。アダムという双子の兄弟選手(同チーム所属)をもつ、2013年のトラック世界選手権ポイントレース優勝の経歴を持つイギリス若手の星だ。
続いて腕と脚を包帯でぐるぐる巻にした痛々しい姿で登壇したマイケル・マシューズへも話がふられた。マシューズはリーズ入りすぐのトレーニングライドで小石を踏んで落車、手には6針縫う怪我を負っているという。チームは出場の可否は回復次第で直前に決めるとしている。
ティンコフ・サクソはいつものジャージから色を変えた蛍光色のジャージで登場した。これはマイヨジョーヌと見分けが付くようにとの配慮で、流行のイエローフルオとライトブルーの組み合わせとなった。
インタビューは英国に近いアイルランド出身のニコラス・ロッシュへ。なんとこの日が誕生日。ロッシュのバイクにはオレンジ色があしらわれていた。アイルランド国旗カラーかと思いきや、先日世界限定250台で発売された200万円のバイク、Tarmacマクラーレンモデルだという。
コンタドールも少したどたどしいながらブラッシュアップした英語での受け答え。フルームとの熱戦を期待して観客の声援もひときわ大きい。
いちばん若い選手といちばん歳の選手がいるトレック・ファクトリーレーシングが登場。人気者フォイクト・42歳と、ダニー・ファンポッペル・20歳。
そしてオメガファーマ・クイックステップは当然マーク・カヴェンディッシュに大歓声が沸く。第1ステージのハロゲートはカヴの母親の出生地で、今も親戚が暮らしている。スプリントステージで自身初のマイヨジョーヌに期待がかかる。
カヴたちが熱気とともに去ると登場したのはユーロップカー。ピエール・ロランにつづいて新城幸也も登壇。日本ナショナルジャージでない姿が見慣れない。ロランと英語の完璧なトマ・ヴォクレールへのインタビューであっさりめの紹介だった。
ユキヤは「スタジアムの大観衆の盛り上がりを見て、あぁツールが始まるなぁという気持ちになった。観客のノリがさすがイギリス、っていう感じで、ロックスターになった気分(笑)」とのこと。
ユキヤの日本人としての出場についてはすでに強調されることは無かった。代わりに今回のツールで歴史的ニュースなのは初の中国人出場選手となったジャイアント・シマノのジ・チェンだ。司会者が質問しているときに反対側の端にいたマルセル・キッテルはスマホをかざして自撮り中。
この「セルフィー」はここ最近の流行で、ステージ裏ではツール公式アカウントがほぼ全チームのセルフィーをハッシュタグ「#TDFselfie」つきでポスト。TLをたどればかなり面白いことになっている。
ペーター・サガンとキャノンデールプロサイクリングが登場。「マイヨ・ヴェールを家にコレクションしたい」と話して会場が沸く。今年の勝利ポーズは?の質問には「わかんないよ」と即答だが、乗ってきたカスタムバイクには睨みつける目が描かれている。「ウルヴァリン(野獣)モードだね」と語る。開幕後はチームの全選手がカスタムペイントのバイクに乗るという情報がまわってきた。
そして会場のあちこちでスタンディングオベーションが沸き起こるなかチームスカイが登場。イギリス人のゲラント・トーマスとフルームに地鳴りするような大歓声が沸く。「サー」ブラドレー・ウィギンズを外したことでチームには批判も上がっていたが、心配することはなかった。
ロックコンサートかオペラのような豪華な演出のプレゼンを終えたツール。これほどまでの大掛かりなプレゼンは私の過去16年の取材経験では比べるものが無いほどのものだった。イギリス人のツールへの関心と期待が十分に感じられるものだった。
photo&text:Makoto.AYANO(in Leeds England)
フォトギャラリー2(CW Facebook)
ツール・ド・フランス開幕を2日後に控えた7月3日、夕方18時半からチームプレゼンは開催された。会場は市街中心部にあるfirst direct arena。この2013年にできたばかりのアレーナは、巨大なコンサートホールのよう。資料によると13,500人収容のキャパをもつこのホール、開場してまもなく発表された観客数は1万人。オペラ劇場のような観覧席は最上段までほぼ満席状態だった。
華々しい光と映像のページェントでセレモニーはスタート。「Welcome to Yorkshire」のキャッチフレーズとともに、凝った映像と演出とで、さながらコンサートのようなショーが始まった。
前回のイギリス開催、ロンドンでのグランデパールが2007年。それから7年の時を経て再びツールを呼び寄せた道のりを、イギリス国内の自転車熱の高まりを表現した映像で感動的にまとめあげられていた。
出場チームのトップバッターはカチューシャ。ホアキン・ロドリゲスにはさっそくジロでの負傷から回復し、ツール出場に切り替えたことに対してMCがスペイン語で質問を投げかける。そしてすぐさま英語に翻訳して観客に伝える。
男女2人の司会進行役のうち、男性側に起用されたマルチ言語を話す長身のハンサムな男性はじつはASO職員で、ASO主催レースではプレスカンファレンスで各国選手の同時通訳を担当する人物。いつもの地味な裏方的通訳仕事とは比べものにならない檜舞台にもかかわらず、立派に務めていた。選手への的確なインタビューは、今やすっかり目の肥えたイギリスのサイクリングファンにも納得のもの。
4番目に登場のオリカ・グリーンエッジでは、誰よりも先に、(MCはエースのサイモン・ゲランスよりも先で申し訳ない、とコメントしながら)イギリス人のサイモン・イェーツへとインタビューが振られた。アダムという双子の兄弟選手(同チーム所属)をもつ、2013年のトラック世界選手権ポイントレース優勝の経歴を持つイギリス若手の星だ。
続いて腕と脚を包帯でぐるぐる巻にした痛々しい姿で登壇したマイケル・マシューズへも話がふられた。マシューズはリーズ入りすぐのトレーニングライドで小石を踏んで落車、手には6針縫う怪我を負っているという。チームは出場の可否は回復次第で直前に決めるとしている。
ティンコフ・サクソはいつものジャージから色を変えた蛍光色のジャージで登場した。これはマイヨジョーヌと見分けが付くようにとの配慮で、流行のイエローフルオとライトブルーの組み合わせとなった。
インタビューは英国に近いアイルランド出身のニコラス・ロッシュへ。なんとこの日が誕生日。ロッシュのバイクにはオレンジ色があしらわれていた。アイルランド国旗カラーかと思いきや、先日世界限定250台で発売された200万円のバイク、Tarmacマクラーレンモデルだという。
コンタドールも少したどたどしいながらブラッシュアップした英語での受け答え。フルームとの熱戦を期待して観客の声援もひときわ大きい。
いちばん若い選手といちばん歳の選手がいるトレック・ファクトリーレーシングが登場。人気者フォイクト・42歳と、ダニー・ファンポッペル・20歳。
そしてオメガファーマ・クイックステップは当然マーク・カヴェンディッシュに大歓声が沸く。第1ステージのハロゲートはカヴの母親の出生地で、今も親戚が暮らしている。スプリントステージで自身初のマイヨジョーヌに期待がかかる。
カヴたちが熱気とともに去ると登場したのはユーロップカー。ピエール・ロランにつづいて新城幸也も登壇。日本ナショナルジャージでない姿が見慣れない。ロランと英語の完璧なトマ・ヴォクレールへのインタビューであっさりめの紹介だった。
ユキヤは「スタジアムの大観衆の盛り上がりを見て、あぁツールが始まるなぁという気持ちになった。観客のノリがさすがイギリス、っていう感じで、ロックスターになった気分(笑)」とのこと。
ユキヤの日本人としての出場についてはすでに強調されることは無かった。代わりに今回のツールで歴史的ニュースなのは初の中国人出場選手となったジャイアント・シマノのジ・チェンだ。司会者が質問しているときに反対側の端にいたマルセル・キッテルはスマホをかざして自撮り中。
この「セルフィー」はここ最近の流行で、ステージ裏ではツール公式アカウントがほぼ全チームのセルフィーをハッシュタグ「#TDFselfie」つきでポスト。TLをたどればかなり面白いことになっている。
ペーター・サガンとキャノンデールプロサイクリングが登場。「マイヨ・ヴェールを家にコレクションしたい」と話して会場が沸く。今年の勝利ポーズは?の質問には「わかんないよ」と即答だが、乗ってきたカスタムバイクには睨みつける目が描かれている。「ウルヴァリン(野獣)モードだね」と語る。開幕後はチームの全選手がカスタムペイントのバイクに乗るという情報がまわってきた。
そして会場のあちこちでスタンディングオベーションが沸き起こるなかチームスカイが登場。イギリス人のゲラント・トーマスとフルームに地鳴りするような大歓声が沸く。「サー」ブラドレー・ウィギンズを外したことでチームには批判も上がっていたが、心配することはなかった。
ロックコンサートかオペラのような豪華な演出のプレゼンを終えたツール。これほどまでの大掛かりなプレゼンは私の過去16年の取材経験では比べるものが無いほどのものだった。イギリス人のツールへの関心と期待が十分に感じられるものだった。
photo&text:Makoto.AYANO(in Leeds England)
フォトギャラリー2(CW Facebook)
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