2014/04/28(月) - 12:13
第100回記念大会となったリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2014。クラシックシーズンの最後を飾る大一番は、壮絶なアタック合戦の末、サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がスプリント勝利を飾った。
「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」とも呼ばれる、非常に歴史と格式高い栄光のクラシックレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。今年で記念すべき100回目を迎える本大会は「モニュメント」とも呼ばれ、世界5大クラシックの一つとして数えられる。アルデンヌクラシックのフィナーレを飾ると共に、最も重要度の高いレースだ。
2011年にこのレースを制しているフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)の地元、ベルギーはワロン地方がリエージュの舞台。南方の丘陵地帯を駆け巡る計262.9kmのコースには無数のアップダウンが散りばめられ、そしてそれら登りの距離は2km以上と長く、総計の獲得標高は4500m以上を数える。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、これがリエージュが「山のレース」と呼ばれる所以である。
そのため、このレースで活躍するのはオールラウンダーやパンチャーなど、登坂力に長ける選手。昨年はダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が、一昨年はマキシム・イグリンスキー(カザフスタン)が逃げ切り、もしくは小集団によるスプリントを制してきた。
今年はこれら過去の優勝経験選手に加え、今期好調をキープしているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、フレーシュをパスして調整してきたゲランスなど有力選手がずらり勢揃い。日本からはジロ・デ・イタリアに出場を予定している新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)がスタートラインに着いた。
レースは序盤、ジャコ・ヴェンテール(南アフリカ、MTNキュベカ)、プリミン・ラング(スイス、IAMサイクリング)、マルコ・ミナール(フランス、ワンティ)、マッテーオ・ボーノ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ミケル・コッホ(ドイツ、キャノンデールプロサイクリング)、ピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポート・フランデレン)という6名がエスケープ。57km地点で15分弱をつけるという、落ち着いた展開でレースは進んでいく。
レースがにわかに動きを見せたのは残り100kmを切ってから。ユーロップカーが集団のペースを上げ始めると、そこからピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)が軽いアタックを繰り出す。これをきっかけとして集団の雰囲気が変わり、逃げ集団とのタイム差は急速に縮小していった。
勝負所に向けて落ち着かない集団内では落車が頻発し、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)や、アルカンシエルを着るルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)らが地面に投げ出される。クロイツィゲルはレースを続行したが、コスタはリタイアを喫することとに。
徐々に活性化していく集団と逃げグループのタイムギャップは、残り65kmで5分、残り55kmで2分45秒。双方ともに人数を減らした状態で、まず勝負のゴングが鳴らされる218.5km地点の登り「コート・ド・ラ・ルドゥット」へと突入した。
長さ2.0km・平均勾配8.9%を数えるルドゥットでは、まずロメン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)がアタック。これをジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)やバルベルデらが追い集団から抜け出たものの、頂上を過ぎてから吸収される。
サミュエル・サンチェス(スペイン)らBMCレーシング勢が積極的に動くメイン集団からは、次いでデニス・ファネンデール(ベルギー、ロット・ベリソル)、アレックス・ハウズ(アメリカ、ガーミン・シャープ)らが追走グループを形成したものの、決定的な動きには至らない。残り20kmを切り序盤から逃げ続けていたボーノも吸収され、レースは再び振り出しに戻った。
するとカウンターでアレドンドとドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)がアタック。クライマー2名を追う集団からはサンチェスが飛び出したが、合流することは叶わない。メイングループはアタックと吸収を繰り返しながら、残り10kmで逃げる2名を飲み込んでいく。
そして集団は、長さ1.2km・平均勾配8.6%を誇る最後の勝負所、コート・ド・サンニコラへ。ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)のアタックをきっかけとして、ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)とポッツォヴィーヴォが抜け出した。
タイミング良く後方を10秒ほど引き離したイタリアンコンビは、その差をキープしたまま残り1.5km地点をクリアする。しかし後方からはミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やマーティン、ゲランスらが追い上げ、ラスト300mでポッツォヴィーヴォを吸収する。
最後の左直角コーナーで絶好の位置に付けたマーティンがスリップダウンする一方、その後方から追い上げたゲランスがスプリントを開始する。逃げ続けるカルーゾをゴール前100mで抜き、バルベルデの追撃を交わしたゲランスがガッツポーズ。リエージュ8回目の出場にして初の栄冠を勝ち取った。
「これまでにも何度か美しい勝利を経験してきたけれど、リエージュは僕にとって本当に特別な勝利になった。」と語るゲランス。「リエージュで勝つことをプロになって以来夢見てきた。間違いなく一番タフかつ栄光あるワンデイレースだ。100回目のリエージュを、初めてオーストラリアチーム所属のオーストラリア人が勝った。僕らのチームにとって、過去を振り返っても間違いなく最高の瞬間だと思う。」とコメント。ゲランスはオーストラリア人として、また南半球出身選手として初のリエージュ制覇を成し遂げた。
また、新城幸也は完走したもののDNFとなり、別府史之はメカトラブルによりDNF。「本当についてない。最悪のタイミングでチェーンが絡まってしまいレース終了。」と悔しさを自身のTwitterにて語っている。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2014結果
text:So.Isobe
photo:Cor.Vos
「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」とも呼ばれる、非常に歴史と格式高い栄光のクラシックレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。今年で記念すべき100回目を迎える本大会は「モニュメント」とも呼ばれ、世界5大クラシックの一つとして数えられる。アルデンヌクラシックのフィナーレを飾ると共に、最も重要度の高いレースだ。
2011年にこのレースを制しているフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)の地元、ベルギーはワロン地方がリエージュの舞台。南方の丘陵地帯を駆け巡る計262.9kmのコースには無数のアップダウンが散りばめられ、そしてそれら登りの距離は2km以上と長く、総計の獲得標高は4500m以上を数える。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、これがリエージュが「山のレース」と呼ばれる所以である。
そのため、このレースで活躍するのはオールラウンダーやパンチャーなど、登坂力に長ける選手。昨年はダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が、一昨年はマキシム・イグリンスキー(カザフスタン)が逃げ切り、もしくは小集団によるスプリントを制してきた。
今年はこれら過去の優勝経験選手に加え、今期好調をキープしているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、フレーシュをパスして調整してきたゲランスなど有力選手がずらり勢揃い。日本からはジロ・デ・イタリアに出場を予定している新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)がスタートラインに着いた。
レースは序盤、ジャコ・ヴェンテール(南アフリカ、MTNキュベカ)、プリミン・ラング(スイス、IAMサイクリング)、マルコ・ミナール(フランス、ワンティ)、マッテーオ・ボーノ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ミケル・コッホ(ドイツ、キャノンデールプロサイクリング)、ピーター・ヤコブス(ベルギー、トップスポート・フランデレン)という6名がエスケープ。57km地点で15分弱をつけるという、落ち着いた展開でレースは進んでいく。
レースがにわかに動きを見せたのは残り100kmを切ってから。ユーロップカーが集団のペースを上げ始めると、そこからピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)が軽いアタックを繰り出す。これをきっかけとして集団の雰囲気が変わり、逃げ集団とのタイム差は急速に縮小していった。
勝負所に向けて落ち着かない集団内では落車が頻発し、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)や、アルカンシエルを着るルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)らが地面に投げ出される。クロイツィゲルはレースを続行したが、コスタはリタイアを喫することとに。
徐々に活性化していく集団と逃げグループのタイムギャップは、残り65kmで5分、残り55kmで2分45秒。双方ともに人数を減らした状態で、まず勝負のゴングが鳴らされる218.5km地点の登り「コート・ド・ラ・ルドゥット」へと突入した。
長さ2.0km・平均勾配8.9%を数えるルドゥットでは、まずロメン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)がアタック。これをジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)やバルベルデらが追い集団から抜け出たものの、頂上を過ぎてから吸収される。
サミュエル・サンチェス(スペイン)らBMCレーシング勢が積極的に動くメイン集団からは、次いでデニス・ファネンデール(ベルギー、ロット・ベリソル)、アレックス・ハウズ(アメリカ、ガーミン・シャープ)らが追走グループを形成したものの、決定的な動きには至らない。残り20kmを切り序盤から逃げ続けていたボーノも吸収され、レースは再び振り出しに戻った。
するとカウンターでアレドンドとドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)がアタック。クライマー2名を追う集団からはサンチェスが飛び出したが、合流することは叶わない。メイングループはアタックと吸収を繰り返しながら、残り10kmで逃げる2名を飲み込んでいく。
そして集団は、長さ1.2km・平均勾配8.6%を誇る最後の勝負所、コート・ド・サンニコラへ。ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)のアタックをきっかけとして、ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)とポッツォヴィーヴォが抜け出した。
タイミング良く後方を10秒ほど引き離したイタリアンコンビは、その差をキープしたまま残り1.5km地点をクリアする。しかし後方からはミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)やマーティン、ゲランスらが追い上げ、ラスト300mでポッツォヴィーヴォを吸収する。
最後の左直角コーナーで絶好の位置に付けたマーティンがスリップダウンする一方、その後方から追い上げたゲランスがスプリントを開始する。逃げ続けるカルーゾをゴール前100mで抜き、バルベルデの追撃を交わしたゲランスがガッツポーズ。リエージュ8回目の出場にして初の栄冠を勝ち取った。
「これまでにも何度か美しい勝利を経験してきたけれど、リエージュは僕にとって本当に特別な勝利になった。」と語るゲランス。「リエージュで勝つことをプロになって以来夢見てきた。間違いなく一番タフかつ栄光あるワンデイレースだ。100回目のリエージュを、初めてオーストラリアチーム所属のオーストラリア人が勝った。僕らのチームにとって、過去を振り返っても間違いなく最高の瞬間だと思う。」とコメント。ゲランスはオーストラリア人として、また南半球出身選手として初のリエージュ制覇を成し遂げた。
また、新城幸也は完走したもののDNFとなり、別府史之はメカトラブルによりDNF。「本当についてない。最悪のタイミングでチェーンが絡まってしまいレース終了。」と悔しさを自身のTwitterにて語っている。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2014結果
1位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
6位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
11位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー・ロットベリソル)
12位 エンリコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
13位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
14位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
15位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
16位 ルディ・モラール(フランス、コフィディス)
17位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、ネットアップ・エンデューラ)
18位 アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)
19位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレシング)
20位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
6位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
11位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー・ロットベリソル)
12位 エンリコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
13位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)
14位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
15位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
16位 ルディ・モラール(フランス、コフィディス)
17位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、ネットアップ・エンデューラ)
18位 アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)
19位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレシング)
20位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
6h37'43"
+03"
+05"
+06"
+08"
+10"
+12"
+03"
+05"
+06"
+08"
+10"
+12"
text:So.Isobe
photo:Cor.Vos
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