8ステージのBIWASE CUPの後半、日本女子チームはローカルルールに対処しつつチームで戦う体制に。毎ステージゴールスプリントに絡む坂口、そして金子は個人総合5位と敢闘賞受賞と力を発揮した。



柿木孝之(JCFロード競技部会員)レポート Vol.2

第5ステージ スタート前第5ステージ スタート前 photo:Takayuki KAKINOKI第5ステージ パンクして自力で集団復帰を図る坂口聖香第5ステージ パンクして自力で集団復帰を図る坂口聖香 photo:Takayuki KAKINOKI第5ステージ パンクの嵐。坂口が6位、金子が7位に

Stage5は前日の周回コースの観光地、Nha Trangをスタートしてそこから海岸線を南下する96kmのコース設定で、海からの風が予想された。前日に得た情報では10km地点から登り基調のアップダウンが3~4km続き、そこからゴールまでは平坦であるが海からの風が横から又は後ろから吹くというもの。

そこでチームとしてまとまって最初のアップダウン区間で攻撃をすることとし、集団を絞ってからレースを作っていくこととした。ニュートラル区間終了後数キロで登りに入り金子、坂口、合田の3名でまとまって攻撃を開始すると、集団は縦に長く伸びて2kmほどで大きく分裂する。

金子の先頭固定で登りきるが、2stageに比べて登り勾配が緩く、下り区間もところどころあるので先頭集団は20名弱まで小さくなるにとどまる。日本の選手が積極的に動き集団の人数を絞ることで、個人総合、チーム総合の逆転を狙うチームがその動きに同調することを期待したが、日本チーム以外はあまり積極的ではない。
第5ステージ 坂口聖香には許さなかったバイクペーサーでの集団復帰を、リーダーには許すコミッセールバイク第5ステージ 坂口聖香には許さなかったバイクペーサーでの集団復帰を、リーダーには許すコミッセールバイク photo:Takayuki KAKINOKI
合田、坂口がパンクで下がっていく

先頭グループは後続集団とは50秒ほどの差しかつけられない。追い風に乗って非常に速いペースでレースが進む中、先頭グループでは坂口が前輪をパンクして先頭グループからこぼれて50秒ほど離れた第2グループにも抜かれてしまう。タイム差が1分以上開いていなかったため、先頭グループへのサポートは認められておらず、ニュートラルバイクも走っていないこのレースでは致命的なパンクとなる。
第5ステージ パンクで坂口聖香と合田祐美子を失い先頭集団で一人戦う金子広美第5ステージ パンクで坂口聖香と合田祐美子を失い先頭集団で一人戦う金子広美 photo:Takayuki KAKINOKI
それでも今までの4ステージまではベトナムチームにはパンクや落車のトラブル時にはバイクペーサーでの復帰がコミッセールから許されていたのだが、コミッセールは第3ステージと同じく日本チームには断固として認めず、坂口は登りで遅れた選手ばかりの第3集団に取り残される。その直後に今度は合田がパンクする。中村メカニックのオートバイも坂口に対応した直後であり第3集団にいたため、合田は第4グループまで遅れてしまう。
第5ステージ 合田祐美子が集団から遅れた個人総合リーダーまで追いついてくる第5ステージ 合田祐美子が集団から遅れた個人総合リーダーまで追いついてくる photo:Takayuki KAKINOKI
集団ではパンクが相次ぎ、今度は総合リーダーのベトナムの選手がパンクする。これにはバイクがサポートし、先ほど坂口のバイクペーサーを認めなかったコミッセールもそれを認めるという信じがたい光景を目にする。その後もトラブルのベトナム選手にはバイクペーサーで集団に戻すというのが繰り返される。チーフコミッセールに猛抗議するも英語は全く通じず、車の隊列まで下がって英語の話せる通訳を通して抗議する。

先頭グループの金子は1人で危険な逃げに対応せねばならず厳しい状況であったが、リーダージャージのチームメイト全員がパンクしたチームリーダーを第2グループから先頭グループに戻すため後ろに降りてきて第2グループの先頭を牽き始める。坂口はタイの選手と協力して自分たちの脚だけで第3グループからこの第2グループに戻ることに成功していたおかげで、リーダーチームの牽引によりラスト20kmで金子のグループまで追いつくことが出来た。

第6ステージ ガタガタ道の追い風区間を進む集団 この区間で金子広美は集団から飛び出す第6ステージ ガタガタ道の追い風区間を進む集団 この区間で金子広美は集団から飛び出す photo:Takayuki KAKINOKI第6ステージ 金子広美ら4名の先頭集団を追いかけるメイン集団第6ステージ 金子広美ら4名の先頭集団を追いかけるメイン集団 photo:Takayuki KAKINOKIしかしなぜか総合リーダーはチームメイトが引っ張る集団から遅れてしまい、この日リーダージャージを失うことになった。金子と坂口のグループは、リーダージャージが後ろに取り残されたということで総合上位チームが中心になってペースを上げ続ける。先頭グループでは最後は30名弱のゴールスプリントとなり、坂口は6位、金子が7位に入った。合田はパンクで大きく遅れたが、当初コミッセールはバイクペーサーを認めなかったのだが、レース中盤になってその遅れグループから唯一合田のみが指名されてバイクペーサーで第3グループに戻ってきた。

ローカルルールとは

しかし合田のパンクにより、チームとしては狙っていたタイトルではなかったがチーム団体総合では5位まで落ちてしまった。この日はスタートからゴールまでペースが落ちる場面が少なく、非常に速いレースとなった。レース前半のアップダウンコースではチームで攻撃を仕掛け、レースを動かしたがその後の2人のパンクでチームとして動くことができなくなってしまった。レース後にコミッセール団にこの日のレースだけではなく、これまでのステージで起こっている様々な不可解なコミッセールの対応についての説明を求めた。

そこでは海外チームにのみ知らされていないローカルルールがあまりに多く驚かされた。例えばこの日のように集団が分断された状態の場合には総合リーダーとポイントリーダー、総合上位選手はトラブルが起きてもバイクペーサーで今までいたグループに戻される。「総合上位」選手か否かの判断はその場にいたコミッセールの裁量で決まる。日本チームは翌ステージも横風が予想される海岸区間で自分達から攻撃を仕掛けて、総合7位にいる金子、総合8位の坂口の上位進出と区間優勝を自分達の力で狙うこととした。
第6ステージ ゴール後の金子広美。他の逃げメンバーの協力を多くは得られず集団とのタイム差を17秒しか獲得できなかった第6ステージ ゴール後の金子広美。他の逃げメンバーの協力を多くは得られず集団とのタイム差を17秒しか獲得できなかった photo:Takayuki KAKINOKI
第5ステージ 結果
1位 Jutatip Maneephan(タイ)2時間5分26秒
2位 Nguyen Thi That(ベトナム VAG)同タイム
3位 Nguyen Phan Ngoc Trang(ベトナムCBD1)同タイム
6位 坂口聖香(パナソニックレディース)同タイム
7位 金子広美(イナーメアイランド信濃山形)同タイム
32位 合田祐美子(早稲田大)1分49秒差

第6ステージ 金子が逃げて区間4位、総合5位に浮上

この日のコースは地図で調べても登りはなく、86kmのコース全体が平坦であり、20kmほどの海岸線を通る際の風向きにより展開が変わると思われた。日本チームは横風区間では必ず前でまとまって動くことをレース前に確認する。レースはスタートからベトナムの選手の1人逃げが決まり、1分から1分半の差で集団は続く。集団はアタックと牽制によるペースの上げ下げを繰り返し、先頭の選手とのタイム差はなかなか変わらない。

海岸線に入ると、横風と荒れた路面が続き選手は消耗していく。その状況で集団からもう1人のベトナムの選手が先行する。荒れた路面が20km以上続く中、60kmほどの追い風区間で金子がアタックをかけると、総合リーダーを擁するベトナムのチームの選手がついて2人となり、前半から抜け出していた選手とそのあとに集団から飛び出した選手を吸収して4名の先頭グループを形成する。

第6ステージ後 選手のバイクを整備する中村仁メカニック(Hi-Bike)第6ステージ後 選手のバイクを整備する中村仁メカニック(Hi-Bike) photo:Takayuki KAKINOKI後続はタイチームがまとまって先頭を牽いて差を詰める動きをする。先頭グループでは金子とリーダーチームの選手のみがローテーションに入り、2名の先頭交代で集団とのタイム差1分を維持する。第2ステージの展開と同じような展開のなかで、金子は諦めずにタイム差を拡げる努力をし続ける。風向きが変わり、向かい風区間も強力な金子の牽引でタイム差を詰められずに済んでいたが、ラスト5kmになり先頭4名は少し牽制が入ってしまい一気にタイム差が縮まる。

金子はゴール近くでアタックをかけるが決まらず、最後は集団に18秒差まで迫られながらのスプリントで4位となった。金子は個人総合成績では8位から5位まで上がった。金子は日本では登りが得意な選手として知られているが、平坦も非常に強力に走れるところをみせた。第6ステージが終わり、個人総合成績で金子が22秒差の5位、坂口が41秒差の8位につけており、残りの2ステージではチームでチャンスを作ってさらなる個人総合上位と区間優勝を狙うこととした。

第6ステージ 結果
1位 Tran Thi Phuong Trang (ベトナム VAG)2時間5分26秒
2位 Nguyen Thi Bich Thuy(ベトナム VCT)1秒差
3位 Tran Thi Tuyet Nuong(ベトナム CBD2)
4位 金子広美(イナーメアイランド信濃山形)同タイム
11位 坂口聖香(パナソニックレディース)18秒差
29位 合田祐美子(早稲田大)18秒差

第7ステージ 坂口が逃げるも吸収、金子5位、坂口9位

第7ステージ レース前に明るい表情をみせる選手達第7ステージ レース前に明るい表情をみせる選手達 photo:Takayuki KAKINOKI第7ステージ レース前にコース確認を行なう選手第7ステージ レース前にコース確認を行なう選手 photo:Takayuki KAKINOKIこの日はニュートラル区間21kmのあとにスタートする105kmのコース設定で、アップダウン区間と狭い道が続くので、日本チームはここでの攻撃で金子または坂口の個人総合成績のアップを狙った。ニュートラル区間は第5ステージや第6ステージと同じくレース距離に含まれるとレース前に2回の確認をしていたが、実際走っているレースコースと前日に調べたコースの詳細と合わない。

レース中に唯一英語が話せるUCIコミッセールに尋ねてみると、レース直前にニュートラル区間はレースに含まないことになったと聞かされる。私はもちろん日本選手は誰も知らされていない。レース前に選手に説明していたコースポイントとは全く異なる状況の中で、日本選手はレース中盤までレースを走ることになる。スタート直後に坂口が7名の逃げに入る。その中には坂口より個人総合順位が上位の選手が2名入っていたが、坂口自身の個人総合のジャンプアップにも良い強力メンバーでの逃げである。

坂口が総合ジャンプアップへの逃げ
第7ステージ サポートバイクの隊列に牛の隊列が合流する第7ステージ サポートバイクの隊列に牛の隊列が合流する photo:Takayuki KAKINOKI第7ステージ ゴールの横断幕目指して集団スプリントが始まる第7ステージ ゴールの横断幕目指して集団スプリントが始まる photo:Takayuki KAKINOKI
しかしながら個人総合のリーダーもこの集団に含まれており、この選手はスプリントに強く、たとえ集団ゴールとなっても問題ない選手であるので回らず、坂口とマレーシア、タイの選手だけで逃げを牽引していく。集団とのタイム差は1分まで拡がったが、後ろのメイン集団も危険な逃げと判断して追う動きをみせ、差が15秒まで縮まった。しかし後ろのグループは差が縮まり安心して踏むのをやめたため、再び一気にタイム差が1分まで拡がる。

坂口はこの逃げを決めようと積極的に回していくが、ペースの上がり下がりが激しく、集団との差がそこから拡がらない。この段階になって総合3位の選手のチームが個人総合リーダーを含む逃げを許さないと決めたか強く牽き始め、20km以上の駆け引きの後に吸収される。そのあと小さな丘では集団から金子がアタックをかけ、合田も集団先頭付近で常に動き、3名の日本チームの誰かが危険な動きに対応していく。

前半逃げに乗っていた坂口も、中盤から後半にかけても攻撃をかけ続け、個人総合のジャンプアップを狙う。個人総合上位の金子はたびたび力で動くが、総合上位陣のマークも厳しく、またコースのアップダウンが思ったより緩く抜け出すのが難しい。中盤に若干集団の動きが止まるが、日本選手は常に前に行く動きを見せ続ける。後半は集団からの抜け出しが厳しく、追い風の状況で集団ゴールを迎える。

この日はラスト10kmまでで逃げられなかった場合、平坦スプリントで今回力をみせている坂口のために他の選手が動くこととしていた。しかしゴール前は緩く登りが続き、坂口が前半から後半まで攻撃し続けたことで思った以上に消耗しておりスプリントが伸びず、金子が5位、坂口が9位に終わった。この日の日本チームは少ない人数にも関わらず、常に攻撃し続けて戦うチームということをみせることができた。

ステージレースの戦い方とは

チームの連携はまだうまくいかない場面も多くみられたが、選手自身がチームで動くことを要求されることで改善しなければいけないポイントを理解し始めてきた。また自分達がチームで動くことでレースが大きく動くことを知り、自信をつけてきている。ステージレースの経験の少ない女子選手達ではあるが、戦うためには脚だけではなく、リザルトを分析しての戦い方が必要と感じることが出来るようになったこともこの7日間の大きな収穫である。

レースは本能で動くことも重要であるが、事前に準備して頭で考えて動くことも重要である。レース前にそれまでの個人総合成績を読み込み、他の上位選手達の考えていることを一瞬で判断できるか否かで自分達が脚を使わなくてよい場面なのか、逆に攻撃すべき場面であるのかいうのが理解できる。翌日の最終ステージは完全な平坦コースで大きな逃げを作るのは難しいが、チームで攻撃をして個人総合順位のアップと区間優勝を狙っていく。

第7ステージ 結果
1位 Nguyen Thi That (ベトナム VAG)2時間51分37秒
2位 Jutatip Maneephan(タイ)同タイム
3位 Panwaraporn Boonsawat(タイ)1秒差
5位 金子広美(イナーメアイランド信濃山形)同タイム
9位 坂口聖香(パナソニックレディース)同タイム
22位 合田祐美子(早稲田大)同タイム

第8ステージ 総合順位をかけた戦い、金子が総合5位&ミス・ビワセカップに

第8ステージ スタート前の金子広美第8ステージ スタート前の金子広美 photo:Takayuki KAKINOKI最終ステージとなる第8ステージは朝7時にスタートして、平坦のみの98kmで争われた。金子は個人総合5位であり、今までのレースでの動きから他のチームのマークが非常に厳しいが、チャンスがあればよりジャンプアップを狙った。坂口は個人総合成績が10位であり、逃げに乗れば個人総合上位に食い込むチャンスがあり、また最後のスプリントでも勝負に絡む走りが出来るので、レース状況をみてどちらで勝負するか判断を任せた。第8ステージ タイチームとオーガナイザーと一緒に記念写真第8ステージ タイチームとオーガナイザーと一緒に記念写真 photo:Takayuki KAKINOKI第8ステージ スタート後のアタック合戦から抜け出しを図る金子広美第8ステージ スタート後のアタック合戦から抜け出しを図る金子広美 photo:Takayuki KAKINOKI第8ステージ この日は道幅が広く走りやすい道が続いた第8ステージ この日は道幅が広く走りやすい道が続いた photo:Takayuki KAKINOKI
第8ステージ終了 個人総合で5位の金子広美と10位の坂口聖香第8ステージ終了 個人総合で5位の金子広美と10位の坂口聖香 photo:Takayuki KAKINOKI
第8ステージ終了 Miss BIWASEに輝いた金子広美第8ステージ終了 Miss BIWASEに輝いた金子広美 photo:Takayuki KAKINOKI金子よりはマークも緩く、逆転の可能性は坂口のほうが大きいと感じた。合田は個人総合で大きく遅れているので、大きな逃げに乗りそこでの区間優勝を、または集団でのゴール勝負の際には坂口のそばでスプリントの準備の役を担った。レースはスタート直後から追い風の中で激しいアタック合戦が繰り広げられる。個人総合リーダーが自分で反応する場面が多い。
第8ステージ終了 個人総合優勝のNguyen Thi that。ステージ3勝し、2位1回、3位3回とボーナスタイムを稼ぎ続けた第8ステージ終了 個人総合優勝のNguyen Thi that。ステージ3勝し、2位1回、3位3回とボーナスタイムを稼ぎ続けた photo:Takayuki KAKINOKI
激しいアタック合戦ののち集団ゴールへ

総合上位陣がレース前半から大きく動く中で、金子もチャンスをみて自ら動いて逃げを作りにいくが、ことごとく個人総合リーダーに反応されて逃げられない。総合上位陣が動いた後に、毎回レースの動きが止まる場面があり、ここは坂口や合田にとっては逃げるチャンスの場面でもあったが、ここで動けなかったのは今後の課題である。個人総合で大きく遅れた選手の単独逃げが決まり、総合上位陣の動きが収まる。

レース中盤のスプリントポイントを目指して集団のペースが上がり、逃げていた選手を捉えて集団が1つにまとまると、再び集団ではアタックが頻発する。ボーナスタイムのあるスプリントポイント争いでは坂口が1位通過すれば総合で8位まで上がるチャンスであったが、ここでは4位に終わり総合のジャンプアップは出来なかった。
ゴールまで20km地点でマレーシアの選手と前半単独で逃げていた選手が再び逃げて50秒ほどの差を集団につけるが、ラスト5kmで集団は一つになる。道幅の広い道での集団スプリントとなり、坂口が6位に入った。

金子が全ステージ通じて最も攻撃的に走りMiss of BIWASE CUPに

レースサポートは通常はチームカーからであるが、このBIWASE CUPはオートバイからサポートをした。日本チームでは2台のオートバイを使い、私(柿木)が補給、中村メカニックが機材故障に対応する形をとったが、集団後ろからレース全体を眺められるので、選手の動きをほぼ把握することが可能であり、選手の長所、短所も把握することができるレースであった。

個人総合順位では金子が5位、坂口が10位に入った。表彰式では、今大会8ステージを通して一番攻撃的に走り続けた選手におくられるMiss of BIWASE CUPに金子が選ばれた。登り区間だけではなく、平坦コースでも強力な走りをみせたのが評価されたが、チームのためにも、自分のためにもしっかり走れる選手で、西がリタイアして3人となったチームを自ら強力に引っ張った。

8ステージ全体で力をみせ果敢に攻撃する姿に、コミッセール、他のチーム監督や選手らからも金子の着用したゼッケンである「42」が非常に強いという言葉を大会期間中幾度となく聞くこととなった。今回の大会ではタイ、マレーシアとベトナムのナショナルチーム所属の選手らがライバルとなったが、コースがきつくレベルの高い選手が多く走るレースになれば金子の力はより発揮されるであろう。

経験を重ねた合田と坂口

合田は前半ステージでは集団走行技術に苦しめられ、常に風を受け、脚を使う位置で走ることとなったが、中盤のステージから集団前にとどまることで逃げに入るなど技術的な向上が図れた。参加選手の少ない国内レースでは、力があればすぐに集団を抜け出し、その中での勝負になるため集団走行技術を身につけていなくても成績は残せる。

しかし今回のレースのように、平坦基調で大きな集団のままレースが展開する場合は、力を温存する場面ではいかに脚を使わないで集団を利用するかの技術がレースに大きく影響する。合田は運動能力の高い選手であるが、今後はその能力をさらに伸ばすこと同時に、力を使わない技術を身につけることで、よりレベルの高い選手になるであろう。

坂口は大学進学する今年もまだジュニアカテゴリーの選手であるが、アタックしつつ集団スプリントでは必ず勝負に絡む走りをみせた。集団スプリントは日本のレースではあまり経験できない中、今回の遠征ではスプリントに連日絡み、位置取り、スプリンターたちの戦い方を毎日見ることで多くのものを学び取ってくれた。今年は国内選考を勝ち抜いて、ジュニアアジア選手権、ジュニア世界選手権で成績を残すことを目標にしているが、今回のレースとエリート選手との生活から学んだことは貴重な経験となったであろう。

今回のレースはUCI公認レースではなく、ローカルルールや審判の裁量が大きく戸惑うことも多かったが、8ステージ走ることでそこから選手達が学べることは多かった。オーガナイザーやコミッセールからは、今年起こった問題点は全て見直して改善するから来年もぜひ参加して欲しいとすでに2015年の招待状をいただいた。
次の女子ナショナルチームの遠征は4月8日から10日までのUCIレース、Tour of Thailandになる。今回のレースで学んだことを次のUCIレースでの走りにつなげていってもらいたい。

第8ステージ 結果
1位 Jutatip Maneephan(タイ)2時間20分57秒
2位 Vo Thi Phuong Phi(ベトナム CBD1)同タイム
3位 Nguyen Thi That(ベトナム VAG) 同タイム
6位 坂口聖香(パナソニックレディース)同タイム
30位 金子広美(イナーメアイランド信濃山形)同タイム
32位 合田祐美子(早稲田大)同タイム

個人総合成績
1位 Nguyen Thi That (ベトナム VAG)18時間5分16秒
2位 Jutatip Maneephan(タイ)18秒差
3位Tran Thi Phuong Trang(ベトナム VAG)22秒差

5位 金子広美(イナーメアイランド信濃山形)43秒差
9位 坂口聖香(パナソニックレディース)1分3秒差
22位 合田祐美子(早稲田大)3分8秒差

photo&text:柿木孝之(JCFロード競技部会員)
edit:高木秀彰

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