今回インプレッションを行うのはカナディアンブランド「ルイガノ」が展開するレーシングライン「ガノー」のロードレーサーラインナップの頂点に位置するGENNIX R1(ジェニックスR1)だ。アパレル製造を原点とする同社らしい、曲線を多用したハイセンスなデザインの中に秘める性能はどれほどかを解き明かしていこう。



ガノー GENNIX R1ガノー GENNIX R1 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
カナダに拠点を置くブランド「ルイガノ」。13年間の自転車競技人生で、150勝を挙げ、個人パーシュートでカナダチャンピオンになったこともあるルイ・ガノー氏が1983年の秋にサイクリングアパレルの製造を始めたことが原点のブランドだ。その後、ヘルメットの製造などに事業を拡大していく中で自転車の製造も手掛けていく。

特に日本においては、カラフルでポップなデザインでクロスバイクが大人気であることはよく知られているだろう。ただ、それらのモデルと今回テストを行うGENNIX R1は全く異なる出自を持つ。前者は日本の輸入代理店であるアキコーポレーションが、日本のマーケットの中でも最もマスを狙って設定した日本オリジナルモデルなのに対し、GENNIX R1はルイガノ本社がレーシングライン「ガノー」の名を冠し、世界市場で戦うために開発・設計を行ったグローバルモデルという点だ。

特徴的な造形のヘッドチューブ特徴的な造形のヘッドチューブ トップチューブから流れるようにシートステーへと繋がっていくトップチューブから流れるようにシートステーへと繋がっていく 振動吸収性に優れ、剛性も調整しやすい一般的な形状のシートステーを採用する振動吸収性に優れ、剛性も調整しやすい一般的な形状のシートステーを採用する


ガノーがトップレベルのレースに対して情熱を持っているブランドであるということは、プロチームへの供給実績からも察することができる。2007年にケベック州とも縁の深いフランスのUCIプロチームであるブイグテレコムにヘルメットを供給。一度は他メーカーにスイッチしたものの、チーム名がユーロップカーに変わった2011年から現在に至るまで同チームをサポートし続けている。

そういった背景を持つガノーが、30年間にわたる用品製造のノウハウを結集し作り上げたのがGENNIXだ。その中でも、高い弾性率を持つカーボンファイバーを使用し、高い剛性と反応性を得ることを目標に開発されたのがGENNIXシリーズの中でもトップグレードとなるGENNIX R1だ。

上方向にオフセットするリアエンド周辺上方向にオフセットするリアエンド周辺 リアーブレーキワイヤーはヘッドチューブに入口を持つ内蔵仕様だリアーブレーキワイヤーはヘッドチューブに入口を持つ内蔵仕様だ

Di2バッテリー用台座は左チェーンステー下に装備されるDi2バッテリー用台座は左チェーンステー下に装備される PF86規格のメリットを最大限に活かした幅広のBB周辺の造形PF86規格のメリットを最大限に活かした幅広のBB周辺の造形


GENNIXシリーズの核となるのがRTCC(ライダーチューンカーボンコンポジット)テクノロジーだ。ライダーとカーボンの調和を目指して、モデルごとの目的に合わせて適材適所なカーボンシートのレイアップを行うRTCCの中でも、GENNIX R1のみ最も高弾性なカーボンを用いるRTCC3を採用する。RTCC2のみで製作されるセカンドグレードのGENNIX R2に比べ、剛性とライディングフィールを維持しながら10%の軽量化を達成している。

RTCC2とRTCC3のブレンドによって構成されるGENNIX R1は、カーボンレイヤー間の結合をより強固にするためにカーボンナノチューブが添加し、耐衝撃性を向上させている。優美な曲線を描くフレームは、いくつものパーツに分けられて製作されるが、ポリウレタンのモールドを使用することでカーボンレイヤー間に発生し、剛性や強度に悪影響を与える空隙(ボイド)を徹底的に排除。外側だけではなく、内側も美しいフレームを実現している。

トップチューブにはUCI認証を示すシールが配されるトップチューブにはUCI認証を示すシールが配される 中央部にかけて細く絞られる特徴的なトップチューブ中央部にかけて細く絞られる特徴的なトップチューブ


トップチューブからシートステーにかけての流れるようなデザインは、決してデザインコンシャスなだけのものではない。曲線を生かしたデザインは、路面からの衝撃を分散し不快な振動をライダーに伝えないW.A.V.Eテクノロジーによって生み出された機能美だ。同じく、インテグレートされたシートカラーも、できるだけシートピラーのしなりを生かすための配置となっており、ただデザインのためのデザインではない。

ヘッド周りは、最新のテーパードヘッドを採用。下側ワンポイントファイブのフォークコラムを持ち、優れたハンドリングとブレーキング性能に寄与する。トップチューブとダウンチューブのエッジのたったデザインは剛性を高めるために設計された外骨格のような補強リブであり、クイックな反応性をもたらしてくれる。また、BB86を採用するボトムブラケット周りは、チェーンステーと共に一体成型され、ペダリングパワーを余すところなく後輪に伝達する。

オーソドックスな形状のベンドフォークを採用オーソドックスな形状のベンドフォークを採用 緩やかな曲線を描くシートステーが路面からの衝撃を和らげる緩やかな曲線を描くシートステーが路面からの衝撃を和らげる シフトワイヤーはダウンチューブから内蔵されるシフトワイヤーはダウンチューブから内蔵される


サイズ展開は4サイズだがハンドリングを最適化するため、各サイズごとにオフセットの異なるフォークが用意される。とくに小さいサイズの自転車に乗る人にとっては福音であるが、メーカーにとってはコストがかかる割に、訴求力が小さいということで蔑ろにされがちなポイントだ。それでも、そこに力を入れているのは体に最も近いウエアという製品にルーツを持つルイガノだからこそ。人と自転車との一体感を重視した結果、妥協できない点だったのだろう。

アパレルブランドらしく、カラーリングにも拘りを見せているのもGENNIXの特徴。PC画面上でオリジナルカラーをデザインし、世界に一つだけのオリジナルバイクを手に入れられるというカスタムペインティングサービス「DREAM FACTORY」が開始されている。塗装はカナダの本社にある専用のペイントブースにて行うというこだわり様だ。

真摯な勝利への情熱を優美なシルエットに包み込んだレーシングバイクであるGENNIX R1。このバイクに秘められた性能をテストライダーはどう評価するのだろうか。早速インプレッションに移ろう。



―インプレッション

「良い意味でイメージを裏切られるレーシングフレーム」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

今回乗ったGENNIXは、ガノーに対して持っていたイメージを良い意味で裏切られたレーシングフレームでした。まず、持ちあげた時にとても軽く感じました。いざ、乗り始めると踏み出しの軽さが印象的なモデルです。一方で、トルクをかけた踏み方でもしっかりとパワーを受け止めて進んでいく感覚があります。

BB回りの剛性がしっかりとしているために、フレームへの入力をグッと受け止めて余すところなく推進力に変換していくことができるのでしょう。高回転でクルクルと回すようなペダリングでもスムーズに進んで行きますが、大パワーでぐいぐいとダンシングしたときに気持ちのいい加速感が味わえるバイクですね。

フレーム前後の剛性バランスが非常によく、どちらかに引っ張られるような感覚もないため、乗りやすい自転車です。過度な剛性があるわけでも、必要以上のしなりがあるわけでもない、絶妙なバランスが保たれることで非常にニュートラルな乗り味となっています。

「良い意味でイメージを裏切られるレーシングフレーム」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)「良い意味でイメージを裏切られるレーシングフレーム」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)
レーシングモデルとしては十分以上の快適性を備えているため、疲労感も少なく抑えてくれるでしょう。ヘッドチューブやフォークといったフロント周りの剛性もしっかりしているため、下りの高速コーナーでも体重をかけてしっかりとコーナーリングができ、非常に安定した旋回性能を持っています。

この自転車が向くシチュエーションは、スピードの上げ下げが大きいサーキットでのロードレースだと思います。かかりが良く、反応性にも優れているためダッシュが得意なフレームです。特に登りが得意なので、登り区間のあるコースに適正があるでしょう。ロングライドなどでも、持ち前の軽さを活かして走ることはできますが、レースに使ってこそといった性格のフレームですので、少々もったいないかとも感じます。

フラッグシップモデルとして、プライスに見合った性能を持っているフレームですね。レーシーなイメージのないブランドで、あまり乗っている人もいないため、ホビーレースで上位入賞を狙いながらも、あまり人と同じ自転車に乗りたくないという人におすすめの一台といえます。

「全ての点において平均点以上の性能を持つ」澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)

「全ての点において平均点以上の性能を持つ」澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)「全ての点において平均点以上の性能を持つ」澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)
ガノー GENNIX R1
フレーム素材:RTCC3 NANO CARBONw/EXO-NERV TECNOLOGY
カラー:CARBON/RED (カスタムペイントサービス「DREAM FACTORY」対応)
重 量:フレームセット:1,330g
サイズ(C-T):XS-460 / S-490/ M-510/ L-530(mm)
フォークオフセット:XS-50mm,S/M-45mm,L-40mm
フロントディレーラー台座:直付
シートクランプ径:27.2mm
※ワイヤー式/電動式変速両対応
価 格:297,000円(税別、フレームセット)



インプレライダーのプロフィール

宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi) 宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

千葉県流山市にある「SPORTS CYCLE SHOP Swacchi」のスタッフ。自転車歴は1995年からはじめて、2014年で19年目を迎える。アップダウンのあるスピードコースを得意とし、2013年のJBCF群馬CSCロードレースではE2カテゴリで6位入賞。日本体育協会自転車公認コーチの資格も有し、ロードバイクスクール開催に注力している。ショップ店員としてのモットーは「お客様に確かなものをオススメすること」。

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澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢) 澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)

東京都世田谷区駒沢に2010年12月にオープンした「Nicole EuroCycle 駒沢」の店長。実業団ロードレースチーム「Maidservant Subject」ではキャプテンを務め、シクロクロスレースにも積極的に参戦している。同時にトレイル巡りやツーリングなど楽しく自転車に乗ることも追求しており「誰とでも楽しめるサイクリスト」が目標。

Nicole EuroCycle 駒沢
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ウェア協力:ガノー

text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANAO