2009/07/22(水) - 23:29
休息日明けのアルプス山岳2日目はセントバーナード犬で有名なグラン・サン・ベルナール峠とプティ・サン・ベルナール峠を通る厳しい山岳ステージだ。今ツールの最高標高が「グラン」の2473m。プロトンはスイスを出発し、イタリアを通り、フランスへと帰る。
ツールの訪問国はモナコから数えて6つ目だ。そしてイタリアのアオスタ渓谷を通る約90kmほどの区間のおかげでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)が今ツールに出場できなかった。バルベルデはCONI(イタリア五輪委員会)からイタリアでのレースに関して出場停止処分を主張されているのだ。
フミ&ユキヤの正念場の2日間が始まる
今日と明日は山頂ゴールでは無いので総合成績を揺るがすような大きなステージにはなりにくい。しかし多くの選手にとっては遅れるとタイム差が開いてしまうステージだ。グランツール最終週の難関山岳ステージはタイムアウトとの闘い。日本人選手2人にとっては試練の2日間といえる。正念場だ。2人とも無理せずこなすつもりのようだ。
フミは言う「この2日間を乗り越えればパリが見えてきます。厳しいのは今日よりも明日。今日は最初の山を集団で越えられればいいと思います」。
アオスタ渓谷はフミがラ・ポム・マルセイユ時代に1勝を挙げたジロ・デル・ヴァッレ・ダオスタ(アオスタ渓谷一周レース)の舞台でもある。「美しいショーウィンドウ」と呼ばれるこのレースはプロのスカウトも目を光らせる有名レース。地元で観戦する人の中にはフミの名前を覚えている人もいるだろう。
ユキヤ「ここで踏んじゃったら最後までもたないな」と思ったら、そこで無理しない走りに切り替えます。50人ぐらいの集団になったらまた頑張っちゃおうかな!という気にもなるんですが...。山の上で観客が教えてくれるタイム差を参考にしながら頑張るんです.
皆さん親切なんですよね。チーム的にはピエリック(フェドリゴ)が前に行けば手伝うことになると思います。ピエリックにはまだ希望があるから」。
好調のフェドリゴはステージ2勝目を狙っている。ペリツォッティの意欲的な走りは驚異的だが、2日間の山岳ポイント獲得次第ではまだフェドリゴにも逆転山岳賞のチャンスはあるのだ。
昨日の休息日には日本からの観戦ツアーの一団がホテルを訪ねて直接激励していったという。ユキヤ曰く「元気をもらいました。おかげで2日目の休息日は初回よりも気分がすっきりしているぐらい」。
マイヨジョーヌを迎えるセントバーナード犬
マイヨジョーヌに身を包んだコンタドールがスタート地点にやってきた。迎えるのは大挙して押し寄せるカメラマンたち。
「日曜の勝利は総合優勝への大きなステップ。チームを全面的に信頼している。今チームの中はすべて明快だ。僕は態度を変えていないよ。ストーリーを作って意見を変えるのは観客やメディアなんだから」とコンタドール。2年ぶりのマイヨジョーヌ姿はまぶしく輝いている。ツール最強の選手が着るのはやはり華がある。ノチェンティーニのときとは興奮度がちょっと違う。
そして白いジャージが似合うアンディ・シュレクとスタートラインに並んで話す。マイヨ・ア・ポアのペッリツォッティは笑顔を絶やさないが、今日も気合に満ちている。SRMまで水玉模様だ。
セントバーナード犬がやってきて選手たちを見守る。この大型犬は峠を通過する際に遭難した人たちなどを助けてきた。背中にはファーストエイドキットとブランデーの入った小瓶が入っているハズ。今日その助けを求めるのは誰だ?
数匹のセントバーナード犬に見守られてスタート。さっそく掛かったアタックは約21人。いきなりの超級山岳だというのに、出だしからアタックの応酬だ。「エウスカルテルのアスタルロサはスタート前にウォーミングアップしていた」という証言をで聞いた。
超級山岳に日本人の応援団が駆けつける
グラン・サン・ベルナール峠に先行すると、そこには日本人の応援団が数十メートルごとに点在していた。日の丸、別府&新城の漢字が踊る。石垣島からは「みんさー織り」の着物に身を包んだユキヤ親衛隊と「ギバリヨー新城幸也」の横断幕。実の叔母さんも駆けつけたのだ。そしてがめんださんの似顔絵イラストがまるでジャパンカップ会場のように翻る。
それらはけっこう目立つようで、各国のメディアも次々とその姿をカメラに収めていく。「ツール観戦ツアー」でやってきた人たちは、今年は「フミ&ユキヤ応援ツアー」なのだ。なんと幸せなこと。
ハイスピードの展開に苦しむプロトン
ラジオツールが伝える情報は普段先頭の情報に限られているが、この峠に限っては遅れる選手の情報も伝える。メイン集団についたディレクターカーから、集団から離れる選手を確認するたび名前とゼッケンを呼ぶ。次々と呼ばれる選手のなかに、「アラシロ、ディスタンセ(脱落)」を確認。
ユキヤは大き目の集団のなかで順調に上れたようだ。一方、フミは頂上付近を集団に離されて一人で上ってきた。風をもろに受けてハンドルを取られる。先頭通過から7分。フミに続くのはスプリンターたちだが、あまり数が多くないので心配になる。下りで選手を集めながらグルペットが形成できれば良いが。
「グラン」の先頭通過はカルペッツ(カチューシャ)とランデブーアタックしたペリツォッティ。ツール創始者アンリ・デグランジェ賞を獲得だ。
道幅が広く、ダイナミックなダウンヒル。選手の後ろについて下るとゆうに時速100km/hは出ている。途中、道端でスキル・シマノの選手が立ち止まったのを前方に見たときはドキリとしたが、その選手はティマーだった。しばらくお腹を押さえていたが、走り出した。単独走でもそのスピードは90km以上だ。
プレスカーのタイヤを鳴らしながら飛ばし、アオスタ渓谷まで下りきってから高速道路を飛ばして集団を追い越し、2つ目のプチ・サンベルナール峠へと向かう。「グラン」でついたタイム差は「プティ」でどれぐらい開くものか。
プティ・サン・ベルナール峠でプロトンを待つ。イタリアからの上り側よりも、峠からダイナミックな景観のダウンヒルが続くフランスへの下り側が有名な峠だ。
峠を前で越えた先頭グループは逃げ切り確定。そしてその後ろではアームストロングとアスタナが守るコンタドールの牙城を崩そうと、サクソバンク勢の激しいアタックの攻防が続いていた。アームストロングはいったん遅れるが再び復活。また前に出るとコンタドールをエースにしたフォーメーションで走る。苦しみながらもアームストロングがアシストに徹しているのを見るのは感動的ですらある。
エヴァンスのポディウムの希望はお終い
プティ・サンベルナール峠でマイヨジョーヌ集団から脱落し、またしても3分の遅れを喫したカデル・エヴァンス(サイレンスロット)。ツール制覇と3年連続の表彰台はすでに遠くなってしまった。自身の調整不足とチームタイムトライアルでの失敗。ステージ勝利こそ飾らないがいつでもそつなくこなす「Mr.アベレージ(平均的)の走りはここにきて崩れることになった。後はステージ優勝狙いに切り替えることしかできない。
本来エヴァンスのアシストのために先頭集団に潜り込んだチームメイトのユルゲン・ファンデンブルックの5位がサイレンス・ロットのせめてもの救いになった。
ファンデンブルックは昨年のジロでプティ・ブレイク。リカルド・リッコのおかげで新人賞を逃したものの、本来は新人賞の選手だった。ステージレーサーとしての成長は順調そのもの。
フミ&ユキヤ 無事に山を越える
後続集団で、ユキヤは比較的前のグループで上ってきた。結果的には81位。峠ではカメラ目線でニッコリする余裕もあった。
「うまく上れました。こういうテンポ(一定ペースの走り)なら大丈夫。いきなり上られると辛いです(笑)。最初の峠は日本人の応援の人が多かったですね。山で応援してもらうと元気になります」。ダウンヒルで冷えを防ぐためにお腹に入れる新聞紙は、石垣島の叔母さんから受け取ったそうだ。
ブイグテレコムは5人が前のグループで展開し、このステージのチーム賞はトップ。しかしフェドリゴを勝利に導けなかったので成功とは言いがたい結果。
フミは最初の峠で独走になってやや苦しんだが、その後は合流した選手たちとグルペットを形成して困難に陥ることなく順調に走り切った。プティ・サンベルナール峠の下りでフミ集団の後方に着いてゴールまでプレスカーを走らせたが、その下りの速さにはただ驚くばかり。エンジンつきの乗り物を、唸りを上げて走らせても遅れそうになる。グルペットはタイム差を挽回するように踏みを入れながら下るのだ。
フミは日本人応援団の激励をしっかり受けて走ったが、今日はイタリア人観客からも自分の名前を呼ばれることが多かったのでちょっとビックリしたとのことだ。
文字通り「ヤマ」の2日のうち1日を終えた。明日を乗り切ればシャンゼリゼへの完走はほぼ確実なものになる。
プティ・サンベルナール峠の下りで超ベテラン選手のイェンス・フォイクトがバンプに弾み激しく落車した。人気選手のリタイアに心配の声は尽きない。「ツールは石ひとつで終わりますから」というユキヤの言葉どおり、2人にもアクシデントがない幸運を祈ろう。
アスタナの終焉 ランスに新スポンサー現る?
アームストロングが自身のTwitterにつぶやいて明らかにしたのが新スポンサーの獲得だ。発表は来る木曜日。来期、そしてその先に続くメインスポンサーとの契約の話が進んでいること、そしてブリュイネール監督と共にアスタナを離れることを明らかにしている。そうなれば、今のチーム体制はそちらへ引き継がれることが想像できる。すべてであってもおかしくないし、コアメンバーであってもいいだろう。
アームストロングは言う「チームと選手の一番の目標はツールに勝つこと。後のことはまだ分からない。詳細はツールが終わってからだ」。
そしてアスタナにはアレクサンドル・ヴィノクロフが戻ることになるだろう。本来のカザフスポンサーとカザフ選手中心の構成で。
ブリュイネール監督もアスタナは終焉を迎えたことを認めた。そしてそうなれば気になるのはコンタドールの去就だ。コンタドールにはモナコで観戦にやってきたスペインのF1ドライバー、フェルナンド・アロンソがコンタドールのためのプロサイクリングチームを作るという噂がある。
しかしコンタドールは今は何も認めようとしない。
「今はレースに収集するだけ。まだ5日間あるんだ。パリに着いてからだけ、自分の将来とチームのことを考えるよ」。
明日の山岳ステージが日本人2人にとっては正念場。多くの選手にとってもタイムアウトにならずに完走することは難しいステージだ。日本からもしっかりと応援して欲しい。
ツールの訪問国はモナコから数えて6つ目だ。そしてイタリアのアオスタ渓谷を通る約90kmほどの区間のおかげでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)が今ツールに出場できなかった。バルベルデはCONI(イタリア五輪委員会)からイタリアでのレースに関して出場停止処分を主張されているのだ。
フミ&ユキヤの正念場の2日間が始まる
今日と明日は山頂ゴールでは無いので総合成績を揺るがすような大きなステージにはなりにくい。しかし多くの選手にとっては遅れるとタイム差が開いてしまうステージだ。グランツール最終週の難関山岳ステージはタイムアウトとの闘い。日本人選手2人にとっては試練の2日間といえる。正念場だ。2人とも無理せずこなすつもりのようだ。
フミは言う「この2日間を乗り越えればパリが見えてきます。厳しいのは今日よりも明日。今日は最初の山を集団で越えられればいいと思います」。
アオスタ渓谷はフミがラ・ポム・マルセイユ時代に1勝を挙げたジロ・デル・ヴァッレ・ダオスタ(アオスタ渓谷一周レース)の舞台でもある。「美しいショーウィンドウ」と呼ばれるこのレースはプロのスカウトも目を光らせる有名レース。地元で観戦する人の中にはフミの名前を覚えている人もいるだろう。
ユキヤ「ここで踏んじゃったら最後までもたないな」と思ったら、そこで無理しない走りに切り替えます。50人ぐらいの集団になったらまた頑張っちゃおうかな!という気にもなるんですが...。山の上で観客が教えてくれるタイム差を参考にしながら頑張るんです.
皆さん親切なんですよね。チーム的にはピエリック(フェドリゴ)が前に行けば手伝うことになると思います。ピエリックにはまだ希望があるから」。
好調のフェドリゴはステージ2勝目を狙っている。ペリツォッティの意欲的な走りは驚異的だが、2日間の山岳ポイント獲得次第ではまだフェドリゴにも逆転山岳賞のチャンスはあるのだ。
昨日の休息日には日本からの観戦ツアーの一団がホテルを訪ねて直接激励していったという。ユキヤ曰く「元気をもらいました。おかげで2日目の休息日は初回よりも気分がすっきりしているぐらい」。
マイヨジョーヌを迎えるセントバーナード犬
マイヨジョーヌに身を包んだコンタドールがスタート地点にやってきた。迎えるのは大挙して押し寄せるカメラマンたち。
「日曜の勝利は総合優勝への大きなステップ。チームを全面的に信頼している。今チームの中はすべて明快だ。僕は態度を変えていないよ。ストーリーを作って意見を変えるのは観客やメディアなんだから」とコンタドール。2年ぶりのマイヨジョーヌ姿はまぶしく輝いている。ツール最強の選手が着るのはやはり華がある。ノチェンティーニのときとは興奮度がちょっと違う。
そして白いジャージが似合うアンディ・シュレクとスタートラインに並んで話す。マイヨ・ア・ポアのペッリツォッティは笑顔を絶やさないが、今日も気合に満ちている。SRMまで水玉模様だ。
セントバーナード犬がやってきて選手たちを見守る。この大型犬は峠を通過する際に遭難した人たちなどを助けてきた。背中にはファーストエイドキットとブランデーの入った小瓶が入っているハズ。今日その助けを求めるのは誰だ?
数匹のセントバーナード犬に見守られてスタート。さっそく掛かったアタックは約21人。いきなりの超級山岳だというのに、出だしからアタックの応酬だ。「エウスカルテルのアスタルロサはスタート前にウォーミングアップしていた」という証言をで聞いた。
超級山岳に日本人の応援団が駆けつける
グラン・サン・ベルナール峠に先行すると、そこには日本人の応援団が数十メートルごとに点在していた。日の丸、別府&新城の漢字が踊る。石垣島からは「みんさー織り」の着物に身を包んだユキヤ親衛隊と「ギバリヨー新城幸也」の横断幕。実の叔母さんも駆けつけたのだ。そしてがめんださんの似顔絵イラストがまるでジャパンカップ会場のように翻る。
それらはけっこう目立つようで、各国のメディアも次々とその姿をカメラに収めていく。「ツール観戦ツアー」でやってきた人たちは、今年は「フミ&ユキヤ応援ツアー」なのだ。なんと幸せなこと。
ハイスピードの展開に苦しむプロトン
ラジオツールが伝える情報は普段先頭の情報に限られているが、この峠に限っては遅れる選手の情報も伝える。メイン集団についたディレクターカーから、集団から離れる選手を確認するたび名前とゼッケンを呼ぶ。次々と呼ばれる選手のなかに、「アラシロ、ディスタンセ(脱落)」を確認。
ユキヤは大き目の集団のなかで順調に上れたようだ。一方、フミは頂上付近を集団に離されて一人で上ってきた。風をもろに受けてハンドルを取られる。先頭通過から7分。フミに続くのはスプリンターたちだが、あまり数が多くないので心配になる。下りで選手を集めながらグルペットが形成できれば良いが。
「グラン」の先頭通過はカルペッツ(カチューシャ)とランデブーアタックしたペリツォッティ。ツール創始者アンリ・デグランジェ賞を獲得だ。
道幅が広く、ダイナミックなダウンヒル。選手の後ろについて下るとゆうに時速100km/hは出ている。途中、道端でスキル・シマノの選手が立ち止まったのを前方に見たときはドキリとしたが、その選手はティマーだった。しばらくお腹を押さえていたが、走り出した。単独走でもそのスピードは90km以上だ。
プレスカーのタイヤを鳴らしながら飛ばし、アオスタ渓谷まで下りきってから高速道路を飛ばして集団を追い越し、2つ目のプチ・サンベルナール峠へと向かう。「グラン」でついたタイム差は「プティ」でどれぐらい開くものか。
プティ・サン・ベルナール峠でプロトンを待つ。イタリアからの上り側よりも、峠からダイナミックな景観のダウンヒルが続くフランスへの下り側が有名な峠だ。
峠を前で越えた先頭グループは逃げ切り確定。そしてその後ろではアームストロングとアスタナが守るコンタドールの牙城を崩そうと、サクソバンク勢の激しいアタックの攻防が続いていた。アームストロングはいったん遅れるが再び復活。また前に出るとコンタドールをエースにしたフォーメーションで走る。苦しみながらもアームストロングがアシストに徹しているのを見るのは感動的ですらある。
エヴァンスのポディウムの希望はお終い
プティ・サンベルナール峠でマイヨジョーヌ集団から脱落し、またしても3分の遅れを喫したカデル・エヴァンス(サイレンスロット)。ツール制覇と3年連続の表彰台はすでに遠くなってしまった。自身の調整不足とチームタイムトライアルでの失敗。ステージ勝利こそ飾らないがいつでもそつなくこなす「Mr.アベレージ(平均的)の走りはここにきて崩れることになった。後はステージ優勝狙いに切り替えることしかできない。
本来エヴァンスのアシストのために先頭集団に潜り込んだチームメイトのユルゲン・ファンデンブルックの5位がサイレンス・ロットのせめてもの救いになった。
ファンデンブルックは昨年のジロでプティ・ブレイク。リカルド・リッコのおかげで新人賞を逃したものの、本来は新人賞の選手だった。ステージレーサーとしての成長は順調そのもの。
フミ&ユキヤ 無事に山を越える
後続集団で、ユキヤは比較的前のグループで上ってきた。結果的には81位。峠ではカメラ目線でニッコリする余裕もあった。
「うまく上れました。こういうテンポ(一定ペースの走り)なら大丈夫。いきなり上られると辛いです(笑)。最初の峠は日本人の応援の人が多かったですね。山で応援してもらうと元気になります」。ダウンヒルで冷えを防ぐためにお腹に入れる新聞紙は、石垣島の叔母さんから受け取ったそうだ。
ブイグテレコムは5人が前のグループで展開し、このステージのチーム賞はトップ。しかしフェドリゴを勝利に導けなかったので成功とは言いがたい結果。
フミは最初の峠で独走になってやや苦しんだが、その後は合流した選手たちとグルペットを形成して困難に陥ることなく順調に走り切った。プティ・サンベルナール峠の下りでフミ集団の後方に着いてゴールまでプレスカーを走らせたが、その下りの速さにはただ驚くばかり。エンジンつきの乗り物を、唸りを上げて走らせても遅れそうになる。グルペットはタイム差を挽回するように踏みを入れながら下るのだ。
フミは日本人応援団の激励をしっかり受けて走ったが、今日はイタリア人観客からも自分の名前を呼ばれることが多かったのでちょっとビックリしたとのことだ。
文字通り「ヤマ」の2日のうち1日を終えた。明日を乗り切ればシャンゼリゼへの完走はほぼ確実なものになる。
プティ・サンベルナール峠の下りで超ベテラン選手のイェンス・フォイクトがバンプに弾み激しく落車した。人気選手のリタイアに心配の声は尽きない。「ツールは石ひとつで終わりますから」というユキヤの言葉どおり、2人にもアクシデントがない幸運を祈ろう。
アスタナの終焉 ランスに新スポンサー現る?
アームストロングが自身のTwitterにつぶやいて明らかにしたのが新スポンサーの獲得だ。発表は来る木曜日。来期、そしてその先に続くメインスポンサーとの契約の話が進んでいること、そしてブリュイネール監督と共にアスタナを離れることを明らかにしている。そうなれば、今のチーム体制はそちらへ引き継がれることが想像できる。すべてであってもおかしくないし、コアメンバーであってもいいだろう。
アームストロングは言う「チームと選手の一番の目標はツールに勝つこと。後のことはまだ分からない。詳細はツールが終わってからだ」。
そしてアスタナにはアレクサンドル・ヴィノクロフが戻ることになるだろう。本来のカザフスポンサーとカザフ選手中心の構成で。
ブリュイネール監督もアスタナは終焉を迎えたことを認めた。そしてそうなれば気になるのはコンタドールの去就だ。コンタドールにはモナコで観戦にやってきたスペインのF1ドライバー、フェルナンド・アロンソがコンタドールのためのプロサイクリングチームを作るという噂がある。
しかしコンタドールは今は何も認めようとしない。
「今はレースに収集するだけ。まだ5日間あるんだ。パリに着いてからだけ、自分の将来とチームのことを考えるよ」。
明日の山岳ステージが日本人2人にとっては正念場。多くの選手にとってもタイムアウトにならずに完走することは難しいステージだ。日本からもしっかりと応援して欲しい。
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