実業団ロードレースの最高峰、経済産業大臣旗杯でビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)が圧倒的な力の差を見せ優勝。チームは輪翔旗を手に。女子は西加南子(LUMINARIA)が連覇達成。

栗村修宇都宮ブリッツェン監督が輪翔旗を返還栗村修宇都宮ブリッツェン監督が輪翔旗を返還 photo:Hideaki TAKAGI全日本実業団自転車競技連盟の主催する大会でもっともステータスの高いのがこの経済産業大臣旗ロード。レースレイティングも最高レベルのAAA。今年は9月21、22日に群馬CSC6kmサーキットで行われた。スタート/フィニッシュ地点がふだんよりも1km先の緩い上りに設定、集団でのスプリント勝負も予想される設定に。
Y 石上優大(左、横浜高校自転車競技部)が優勝Y 石上優大(左、横浜高校自転車競技部)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
ユースクラスは高校1年の石上優大(横浜高校)が優勝

Jユースツアー第5戦(最終戦)は12周72kmのレース。前半は新井優樹(ボンシャンス)、澤地陵二(ボンシャンス)らが単独アタック。それを追うのは石上優大(横浜高校自転車競技部)、小野瀬優哉(湘南ベルマーレクラブ)、柳沼龍佑(あぶくまサイクリングクラブ)ら。後半は周回ごとに人数を減らし4人のゴールスプリントへ。小野瀬先行で迎えたゴールは、石上が内山を抑えて優勝。石上が今年度ツアー優勝し、アクアブルージャージを確定させた。

西加南子(LUMINALIA)がスプリントを制し連覇
F ゴールスプリントを制したのは西加南子(左、LUMINARIA)F ゴールスプリントを制したのは西加南子(左、LUMINARIA) photo:Hideaki TAKAGI
女子は10周60kmのレース。毎周回の上り区間で金子広美(イナーメ信濃山形-EFT)が仕掛け、人数を減らす。中盤以降は金子の上りでのアタックにも人数は減らず7人のままに。そして最終周回、上りで先に仕掛けたのは金子、そして針谷千紗子(BLITZSCHLAGE)がアタック。しかし下り区間で7人はまとまりゴールスプリントへ。先行する豊岡英子(パナソニックレディース)を西加南子(LUMINALIA)がゴールでぎりぎりかわして優勝。昨年に続いての連覇を達成。
5周目、メイン集団はチーム右京がコントロール5周目、メイン集団はチーム右京がコントロール photo:Hideaki TAKAGI
47回目の輪翔旗杯

Jプロツアー登録のほぼすべてのチームと選手が集結した群馬CSC。多くがツール・ド・北海道を終えて参加するが、ワンデイレースであることと団体賞の設定でその勢力地図も変わってくる。さらに各チームに所属する外国人選手の力量もわかりつつあり、彼らエース格の選手たちの走りが注目される。
2周目から逃げるビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)2周目から逃げるビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ) photo:Hideaki TAKAGI
9月22日(日)朝9時30分にP1クラスがスタート、29周174kmのレース。2周目の上り区間でマトリックスパワータグに一ヶ月前から所属するビセンテ・ガルシアがアタックし独走する。メイン集団からはクラブチーム勢を中心に数人が抜け出すものの、強豪チームはガルシア単独の逃げを容認する。

ビセンテ・ガルシアが2周目から逃げを開始

直前のツール・ド・北海道第1ステージ2位のガルシアの強さは一部に知られており、泳がせて消耗させる他チームの目論見だ。チーム右京を中心にメイン集団はコントロールされ差は開いていく。3周目に抜け出した森本誠(キャノンデール・チャンピオンシステム)、山本聖吾(イナーメ信濃山形)、川田優作(VAX RACING with SAITAMA)の3人が8周目にガルシアに追いつき先頭は4人に。
11周目へ、メイン集団はシマノレーシングがペースを上げる11周目へ、メイン集団はシマノレーシングがペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI
9周目を過ぎて先頭ガルシアらとメイン集団との差は7分となり、ここでシマノレーシングがメイン集団の先頭に出てペースを上げる。差は次第に縮まり、いっぽうで先頭はふたたびガルシア単独になる。そしてメイン集団は追走集団を吸収し、16周目には先頭のガルシアとメイン集団の構図に。その差は1分ほど。
26周目、抜け出した先頭5人26周目、抜け出した先頭5人 photo:Hideaki TAKAGI
17周目、活性化したメイン集団の前方から鈴木譲(シマノレーシング)がアタック、単独で先頭のガルシアに追いつく。18周目、メイン集団前方では西村大輝(シマノレーシング)らの仕掛けで11人の追走グループができる。ここにシマノレーシングは3人、チーム右京は2人を入れ、最終的に表彰台はここまでの集団になる。

終盤に向けて先頭は13人に

21周目に先頭は13人の集団に。ガルシア・永良大誠(マトリックスパワータグ)、畑中勇介・鈴木譲・安井雅彦・西村大輝(シマノレーシング)、土井雪広・山下貴宏(チーム右京)、初山翔(ブリヂストンアンカー)、原川浩介(キャノンデール・チャンピオンシステム)、木下智裕(EQA U23)、才田直人(プジョー・ニールプライド・ラカッセ・プロ)、高田雄太(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)だ。
最終周回の心臓破りの坂で仕掛けるビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)最終周回の心臓破りの坂で仕掛けるビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ) photo:Hideaki TAKAGI
先頭集団はおもにシマノレーシングが牽引、メイン集団からは鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)らが抜け出し先頭を追う。そして26周目、先頭の13人は2つに別れる。先頭はガルシア、畑中、鈴木譲、安井、山下の5人。この5人は後続を引き離し、残り距離を考えるとここから勝者が出る運びに。

ガルシア対畑中のラスト2周
ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)が畑中勇介(シマノレーシング)を下すビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)が畑中勇介(シマノレーシング)を下す photo:Hideaki TAKAGI
28周目に先頭はガルシアと畑中の2人だけになり山下がこれを単独で追う。そして最終周回、先頭の2人はペースを落とさず走り続け心臓破りの坂へ。ここでガルシアが仕掛けるが畑中は食らいつき、2人でバックストレートを下ってゴールへ。ゴール前の緩い上りをガルシア先行でスプリント、追い込む畑中を振り切ってガルシアが優勝した。

まさにガルシアの独り舞台。およそ10km地点から単独逃げて、途中で追いつかれても再び独走、もう一度集団となってからも自力で抜け出して、ゴールはスプリント力のある畑中に競り勝った。他チームの考えた、ガルシアを単独逃げさせて消耗させる作戦は、ガルシア自身の圧倒的な力の前では無きに等しいもの。
P1 表彰P1 表彰 photo:Hideaki TAKAGI
いっぽうでシマノレーシングは終盤に先頭集団へ4人を揃え、最後は長時間逃げ続けた相手との1対1の勝負に持ち込んだ。通常ならば考えうる最高の展開。しかしガルシア一人の力に屈せざるを得なかった。
これでマトリックスはチームとして個人成績3連覇達成。そして団体総合でも優勝し、輪翔旗を手におさめた。
経済産業大臣旗はマトリックスパワータグに経済産業大臣旗はマトリックスパワータグに photo:Hideaki TAKAGI
結果
E1 小坂正則(スワコレーシングチーム)がぎりぎり逃げ切って優勝E1 小坂正則(スワコレーシングチーム)がぎりぎり逃げ切って優勝 photo:Hideaki TAKAGIP1 174km
1位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)4時間31分24秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)
3位 山下貴宏(TeamUKYO)+36秒
4位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+1分12秒
5位 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)
6位 アントニオ・カベッロ(チーム右京)+1分13秒
7位 寺崎武郎(EQA U23)
8位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
9位 安井雅彦(シマノレーシング)+2分09秒
10位 土井雪広(チーム右京)+2分13秒

団体賞
1位 マトリックスパワータグ 3800点
2位 チーム右京 3100点
3位 シマノレーシング 2800点

Jプロツアーリーダー ホセ・ビセンテ(Team UKYO)
U23リーダー 西村大輝(シマノレーシング)

F 60km
1位 西加南子(LUMINARIA)1時間47分28秒
2位 豊岡英子(パナソニックレディース)
3位 智野真央(MUUR zero Velofutur)

Y 72km
1位 石上優大(横浜高校自転車競技部)1時間55分19秒
2位 内山雅貴(ボンシャンス)
3位 小野瀬優哉(湘南ベルマーレクラブ)

E1 96km
1位 小坂正則(スワコレーシング)2時間30分47秒
2位 辻俊行(Tacurino.net)
3位 萩原慎也(EQADS)
4位 中野公之(チームリマサンズ)
5位 安永亮(竹芝サイクルレーシング)
6位 小林宏志(Honda栃木)

E2 72km
1位 齋藤憲幸(竹芝サイクルレーシング)1時間53分13秒
2位 村田隆(快レーシング)
3位 菊地慶一郎(NAMAZU PLUS TOCHIGI)
4位 雨澤弘機(ブラウ・ブリッツェン)
5位 木村太郎(Blue Grass)
6位 小林契(スミタ・ラバネロ)

E3 54km
1位 迫悠己(中央大学サイクリング同好会)1時間23分59秒
2位 内山雅貴(ボンシャンス)
3位 船山崇(GRUPPO ACQUA TAMA)
4位 大島理彦(ラヴニールあづみの)
5位 新井優樹(ボンシャンス)
6位 小池悠介(gruppo bici-okadaman)

photo&text:高木秀彰

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