「自分向きにテーラーメイドされたような3週間だった」。真っ赤なスペシャルバイクに跨がって、マドリードに凱旋したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)は勝利の秘訣をそう語った。



スタート前に記者会見を開くクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)スタート前に記者会見を開くクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsujiグランツール最終日は、恒例の平坦スプリントステージ。3週間を闘った戦友達が互いの労をねぎらいながら終着地マドリードに凱旋する。

スタートライン最前列に並ぶ各賞ジャージスタートライン最前列に並ぶ各賞ジャージ photo:Kei Tsuji前日のアングリルを走り終えた選手たちは、そのままチームバスで450km離れたマドリードまで移動。多くのチームが午前1〜2時にホテルに到着した。

マドリードで最後の仕事をこなすサクソ・ティンコフの宮島正典マッサーと中野喜文マッサーマドリードで最後の仕事をこなすサクソ・ティンコフの宮島正典マッサーと中野喜文マッサー photo:Kei Tsuji3週間前にスタートした197名のうち、マドリードに到達したのは144名。獲得標高差が60000mに達する過酷なコースと過酷な気象条件、そして世界選手権直前というタイミングが影響し、完走率は73%に留まった。

エウスカルテル・エウスカディを先頭に周回コースに入るエウスカルテル・エウスカディを先頭に周回コースに入る photo:Kei Tsujiアングリルでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)を引き離し、実質的に総合優勝を決めたホーナーは、スタート前に行なわれた記者会見で3週間の闘いを振り返る。「今年のブエルタのコースは自分にとって理想的だった。山岳が多く、個人タイムトライアルが短く、チームタイムトライアルがある。開幕の時点では勝てるとは思っていなかった。表彰台に登れるかなとは思っていたけど」。

3週間の闘いの中でホーナーのライバルとして立ちはだかったのは、ジロ・デ・イタリア後の休息期間を挟んでシーズン後半を闘うニーバリと、ツール・ド・フランスのコンディションをそのまま維持したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だった。

長いシーズンを闘うニーバリとバルベルデに対し、膝の手術でツアー・オブ・カリフォルニアやツール・ド・フランスをパスしたホーナーはフレッシュ。ライバルたちはコンディショニングの差を口にした。

ジロ=ブエルタ制覇を37秒差で逃したニーバリは、敗北を認めながら、ホーナーの走りを讃える。「クリスは良い状態でブエルタに乗り込んでいた。一方で僕はジロで得たような好調を感じることがないまま3週間を走り続けた。ジロの総合1位に続くブエルタの総合2位は悪くない。ただただクリスが強かった」。

同様に「7月のツールで感じていた好調さが欠けていた」と話すのは、ツールの鬱憤を晴らすべくブエルタに乗り込んだバルベルデ。バルベルデはキャリア5度目のブエルタ表彰台獲得。同時にポイント賞トップに輝いている。

42歳を目前にした41歳327日でのグランツール制覇はもちろん最年長記録。これまでブエルタ総合優勝の最年長記録は1994年のトニー・ロミンガー(34歳)、グランツール総合優勝の最年長記録は1922年ツールのフィルマン・ランボー(36歳)だった。



マイヨロホを着て走るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)マイヨロホを着て走るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsuji
最終周回でハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)らの後ろにメイン集団が迫る最終周回でハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)らの後ろにメイン集団が迫る photo:Kei Tsujiプロトンはフィニッシュに向けてスピードを上げて行くプロトンはフィニッシュに向けてスピードを上げて行く photo:Kei Tsuji



T字型の周回コースをこなすプロトンT字型の周回コースをこなすプロトン photo:Kei Tsuji常に満面の笑みを浮かべながら、赤いヘルメット&赤いオークリー&赤いマドンでマドリードに凱旋したホーナー。フェルナンド・アロンソの救済によってチームの継続が決まっているものの、バスクチームとしては最後のグランツールとなるエウスカルテル・エウスカディを先頭にマドリード市街地周回コースに入る。

一気にリードを広げたマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が後方を振り返る一気にリードを広げたマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が後方を振り返る photo:Kei Tsuji逃げ切りのチャンスが限りなく小さい周回コースで逃げたのは、今大会すでに4ステージで逃げているハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)と、ここまでニーバリに仕えていたアレッサンドロ・ヴァノッティ(イタリア、アスタナ)の2人。アルゴス・シマノやオリカ・グリーンエッジ、ランプレ・メリダ、ガーミン・シャープ、スカイプロサイクリング率いるメイン集団は、最終周回で逃げの2人を捉えた。

ステージ2勝目で締めくくったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)ステージ2勝目で締めくくったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiスプリンターチームの激しいポジション争いを経て、180度の最終コーナーを曲がる。先頭でスプリントに持ち込むアルゴス・シマノの後ろから、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が発進した。

マシューズが爆発的な加速でファラーの前に出る。数秒のうちに先頭に立ったマシューズが先頭で両手を広げた。

2010年にU23世界チャンピオンに輝いたマシューズが、登れるスプリンターとしての強さを発揮し、第5ステージに続く今大会2勝目。「夢が叶った。グランツールでステージ2勝。しかも最終ステージで優勝した。確かに世界のトップスプリンターは揃っていないけど、ここには"ブエルタ向きの"トップスプリンターが揃っているんだ」。1990年9月生まれの22歳がこのブエルタでブレイクした。

なお、アングリルを制したケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr)は22歳で、ステージ2勝のワレン・バーギル(フランス、アルゴス・シマノ)は21歳。この日ステージ3位に入ったニキアス・アルント(ドイツ、アルゴス・シマノ)は21歳。41歳ホーナーの陰で、若手の躍進が目立つ大会となった。



41歳!41歳! photo:Kei Tsuji
表彰台のてっぺんでアメリカ国歌を聴くクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)表彰台のてっぺんでアメリカ国歌を聴くクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsujiチーム総合成績トップのエウスカルテル・エウスカディがステージに上がるチーム総合成績トップのエウスカルテル・エウスカディがステージに上がる photo:Kei Tsuji




ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第21ステージ結果
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      2h44'00"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、アルゴス・シマノ)
4位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
6位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 アドリアン・プティ(フランス、コフィディス)
8位 レイナード・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、アルゴス・シマノ)
9位 フランチェスコ・ラスカ(イタリア、カハルーラル)
10位 ロバート・ワグナー(ドイツ、ベルキンプロサイクリング)

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)    84h36'04"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)               +37"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +1'36"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +3'22"
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           +7'11"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)       +8'00"
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)                     +8'41"
8位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)              +9'51"
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)       +10'11"
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               +13'11"

総合敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              152pts
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     126pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               125pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   46pts
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     32pts
3位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)       30pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     5pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              13pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              17pts

チーム総合成績
1位 エウスカルテル・エウスカディ                     253h29'35"
2位 モビスター                                +1'02"
3位 アスタナ                                 +1'30"

text&photo:Kei Tsuji in Madrid, Spain

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