魔の山アングリルが待ち構える第20ステージを制したのは、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr)。総合1位のホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)が総合2位のニーバリ(イタリア、アスタナ)との差を37秒に広げ総合優勝を確定させた。

ステージ優勝のケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr)

先頭でアングリル頂上を目指すケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr)先頭でアングリル頂上を目指すケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr) photo:Kei Tsuji(初めてのグランツールでアングリルの山頂を制した感想は?)信じられない。アングリルは伝説だ。今日のステージの最初の区間では、多くの有力クライマーたちと一緒に逃げに入ったが、脚の調子は万全じゃなかった。とてもハードなステージだったけど、優勝できた。

表彰台に上がる22歳のケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr)表彰台に上がる22歳のケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.fr) photo:Vuelta a Espana/Graham Watson(第15ステージの)ペイラギュードでアレクサンドル・ジェニエ(フランス)がステージ優勝を飾り、チーム・リーダのティボー・ピノ(フランス)が総合7位の成績でブエルタを終えようとしていたので、チームとしてはこれ以上のものは望めないと思っていた。

(アングリルへの登りが始まったときの状況は?)ゴール間際でティボーのアシストをするつもりで先行した。パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)を千切ったあとは、アングリルの沿道の観客の声援があったので全力を出せた。だけど、アングリルは長い、本当に長い登りだった。

それ以上の説明はできない。1分20秒差があるとは理解していたけど、それも確信できなかった。だから、捉まるのが怖かった。ゴール前の下り区間で、シマノのニュートラル・カーを見たときに、自分の勝利を確信した。

(FDJ.frというチームについて)ジェニエやピノといった若手選手を中心に構成されているチームだけあって、とても居心地よく感じている。チームの雰囲気も素晴らしい。マディオ兄弟[マルク・マディオ総合監督とイヴォン・マディオ監督]も、ぼくを信頼して昨年プロ選手にしてくれた。その前までは、FDJのコーチであり、ティボーの兄のジュリアンのクラブチーム・CCエタップで走っていた。


総合1位、複合賞、ステージ2位のクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)

ニーバリを突き放したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)ニーバリを突き放したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vos今この瞬間も驚いている。ニーバリ(イタリア、アスタナ)のアタックは6回だって? 彼らの(チームの)アタック回数は10〜20回はあったと思う。だけど、それも受け入れた。彼も素晴らしいショーを見せてくれた。テレビの前でソファーに座って、素晴らしいショーを楽しんでもらえたと思う。

アングリル頂上でマイヨロホに袖を通したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)アングリル頂上でマイヨロホに袖を通したクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Cor Vosファンにとっても、今日の結果は信じられないものだと思う。ファンのみんなが、ぼくがペダルを踏むたびに喜んでくれたことを願う。霧が深すぎて暗かったので、ラスト1kmの標識がまったく確認できなかったので、ラスト1kmのゲートを山岳賞のゲートだと勘違いしてしまった。

最後の下りはまだまだ続くと思っていたので、この最後の最難関区間ではかなりハイになっていた。それで、より大きなチェーンリングのほうにギアをシフトして、さらに苦しみ続けた。ぼくの年齢の選手がグランツールで総合優勝することは、これまでの人生で誰も目撃したことがない一大事件だろう。

今年の序盤、ぼくは膝の手術のあと自宅にいた。そこで11歳の息子にまだレースを続けたいけど、引退せざるを得ないかもしれないと告げた。

息子は「引退はダメだ。クールじゃない。今、ぼくは学校で友達にお父さんはプロの自転車選手で、ジロやツールやブエルタで走っていると自慢している。お父さんが元自転車選手だなんて言いたくない!」と答えた。これから息子は、自分の父親がブエルタで総合優勝を果たした唯一のアメリカ人で、グランツールで総合優勝した唯一の41歳だと自慢できるはずだ。


総合2位、ステージ4位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

アングリルの途中でティラロンゴとフグルサングの2人のアシストを従えたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)アングリルの途中でティラロンゴとフグルサングの2人のアシストを従えたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonできることは、すべて試した。あれ以上のことは無理だった。登りの全区間で全力を出せたから満足している。先行して逃げていたチームメイトたちのアシストもありがたかった。

ホーナーに先行を許してしまったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ホーナーに先行を許してしまったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiアングリルでは熾烈なバトルだった。調子は非常によかったけど、あの最後の区間ではホーナーに負けても不思議はなかった。

このブエルタでは第1ステージから今日までずっと、しっかりとレースをしてきた。本当にハードなブエルタだった。マイヨロホを着用し続けたのは誇らしい。おそらく第16ステージのフォルミガルでは、まだホーナーを過小評価していて、彼は数秒を詰めてきた。あそこで現実を厳しく認識すべきだった。

今回のブエルタにはジロのときのようなコンディションでは乗り込んでいない。だけど、その日の身体の調子に合わせて毎日ベストを尽くした。今回は素晴らしいライバルたちがいた。

ホーナー、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、プリト[ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)]……彼らのおかげで、このブエルタは激しい争いになった。今はこの結果に満足している。ジロの総合優勝とブエルタのステージ2位。充分な成績だ。

アングリルで最初にアタックしたときは、単純にホーナーの反応を試すものだった。彼の脚がぼくに付いてこられるかを見極めたかった。だけど、登りが続いて、フィニッシュラインが近づくにつれて、彼に勝つために何度も何度も何度もアタックを仕掛けることになった。彼を見て、調子が悪く苦しんでいる瞬間があった。今なら可能性があると考えたが……そのときは、ぼくもまた同時に苦しい瞬間だった。


ポイント賞、総合3位、ステージ3位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

濃霧のアングリルを上るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)濃霧のアングリルを上るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Vuelta a Espana/Graham Watson全力を出し尽くしたので満足している。ホーナーの偉業は褒め称えたい--このブエルタでは、今日もまた彼が最強であったことがわかった。本当に驚異だ。ニーバリも素晴らしかった--彼は勇敢で、何度もぼくたちを苦しめた。4人の総合優勝候補者はお互いに本当によく戦ったと思う。

自分自身としても自分のペースでしっかり登坂できたと思うが、総合成績を上げるためにはライバルのうちの誰かが失速する必要があった。そういう事態にはならなかったが、この総合3位の成績に満足している。またブエルタで表彰台に立つことができた。

今年はステージ優勝がなかったものの、ぼくたちはつねに先頭集団で走り、ずっとポイント賞を守ってきた。この3週間のすべての期間を、つねに一定の走りを維持できたことは素晴らしい--もちろん、今日もチームのアシストは素晴らしかった。今の好調さをステップにして、2週間後のフィレンツェでの世界選手権を美しく彩りたいと思う。


山岳賞のニコラ・エデ(フランス、コフィディス)

山岳賞のニコラ・エデ(フランス、コフィディス)山岳賞のニコラ・エデ(フランス、コフィディス) photo:Vuelta a Espana/Graham Watson素晴らしい1日だった。チームメイトのジェローム・コッペル(フランス)と一緒になんとか逃げグループを捉えて、最初の山岳で3ポイントを獲得した。カハルーラルの2名の選手とキリエンカ(ベラルーシ、スカイプロサイクリング)がアタックしたが、彼らに食らいついて2つめの山岳でも5ポイントを獲得した。

できるだけ前方にいようとしたが、1級山岳のアルト・デル・コルダルの前にして、タイヤがパンクしてしまい、先頭集団へ復帰できなかった。まだアングリルという難所が残っていた。ただひたすら苦しかった! ジタバタともがいて、自分はブエルタの山岳王だと言い聞かせた。だけど、アングリルは予想を遙かに超えていた。途方もない登りだった。


総合4位、ステージ8位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

ホーナーやニーバリから遅れを取るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ホーナーやニーバリから遅れを取るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji予想通りに、とてもハードなステージだった。今日もチームは完璧だった。チームメイトとぼくは可能な限り最善の成績を残すためにベストを尽くした。最後の登りでは、総合成績での表彰台を獲得するためにアタックしてみた。だけど、最終的には実力に見合った結果になった。

チームメイトの全員に感謝を述べたい。彼らは今日だけではなく、今大会すべてにおいて素晴らしいサポートをしてくれた。ぼくたちは素晴らしいレースができたと思う。


総合5位、ステージ19位のニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)

アングリルで大きく遅れたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)アングリルで大きく遅れたニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsujiとても満足している。総合5位の成績を狙って、達成できた。自分としては高望みだし、それを達成するのは簡単ではないことは知っていた。だけどサクソ・ティンコフのスタッフと選手全員が一丸となって、ずっとぼくに100%のサポートをしてくれたので、その期待に100%応えたかった。

このチーム全体から受けた多大なサポートを誇らしく思い、感謝したい。同じく、TwitterやFacebookで意欲的な声援を送ってくれたファンにも感謝したい。それからビャルヌ・リース監督の総合成績を狙う場合の的を射たアドバイスは本当にありがたかった。そのおかげで、このブエルタを通してずっと自分の実力を発揮できるはずだと自分を信じられた。


ステージ6位、総合14位のドミニク・ネルツ(ドイツ、BMCレーシングチーム)

信じられないほどハードだった。今日はステージ優勝できる最後のチャンスだと考えていたが、あと一歩だった。アングリルは自分にとっては長すぎる登りだった。


※ソースはレース公式リリース、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI
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