2013/07/07(日) - 10:55
今ツール初となる難関頂上ゴールが用意された第8ステージ。1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌに描かれたシナリオは、他を圧倒するスカイプロサイクリングの力。クリス・フルーム(イギリス)がライバルたちを大きく引き離しマイヨジョーヌの獲得に成功した。
ツール・ド・フランス2013第8ステージ・高低図 image:A.S.O.第100回記念大会、最初の山岳決戦地ピレネー。第8ステージは最初の難関山岳ステージであり、今大会最初の頂上ゴールが1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌ山頂に設けられた。スタート後は12kmに渡って平坦路が続くものの、終盤からはまず登坂距離15.3km・平均勾配8%を誇る超級山岳パイエール峠が登場。
マイヨジョーヌを着てステージに挑むダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) (c)Makoto.AYANO20km弱のテクニカルなダウンヒルを経たその先は、息つく暇も無く登坂距離7.8%・平均勾配8.2%のアクス・トロワ・ドメーヌに挑む。この最終トロワ・ドメーヌ頂上へのヒルクライムで、総合成績は大きく動くこととなった。
体調の優れないマッテーオ・ボーノ(イタリア、ランプレ・メリダ)がスタート早々にリタイアを決める一方で、この日は4人の逃げが決まる。ジャンマルク・マリノ(フランス、ソジャサン)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、ルディ・モラール(フランス、コフィディス)、そしてクリストフ・リブロン。リブロンは2010年大会のトロワ・ドメーヌ頂上フィニッシュを逃げ切りで制しており、相性の良いコースだ。
ピレネーの山岳地帯を走る逃げ集団 photo:A.S.O.
オリカ・グリーンエッジがマイヨジョーヌを守りながら走る (c)Makoto.AYANO逃げる4名は順調にメイン集団からアドバンテージを稼いでいき、この日の最大タイムは約9分をマークする。タイム差が広がりレースが落ち着きを見せると、集団ではマイヨジョーヌのダリル・インピー(オーストラリア)擁するオリカ・グリーンエッジとスカイプロサイクリングが先頭付近を固めコントロールを開始する。スカイの動きは、山岳で攻撃を仕掛けることの意思表示。タイム差はゆっくりと、そして確実に削り取られていく。
パイエール峠で飛び出したナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) photo:A.S.O.119.5km地点に用意された中間スプリントポイントは、オランダナショナルチャンピオンジャージを着るフーガーランドが先頭通過。およそ5分後に通過したメイン集団ではキャノンデールプロサイクリングがトレインを組んだものの、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)が全体の5位通過を果たす。
ハイペースで先頭を牽くリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.
アクス・トロワ・ドメーヌを独走で駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) (c)Makoto.AYANO次いでマイヨヴェールを着るペーター・サガン(スロバキア)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)と続く。この中間スプリントを終え、サガンの持ち点は234ポイント。2位のグライペル(141ポイント)を大きく引き離す。
パイエール峠に入るとスカイプロサイクリングが集団コントロールを開始する。ダビ・ロペスガルシア(スペイン)やヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が淡々とペースを刻むと、頂上まで11kmを残した時点でロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が先行し、遅れてトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)もアタック。怪我をおして走るライダー・ヘジダル(カナダ)やマイヨジョーヌのインピーは脱落していった。
ゴールに飛びこむクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor.Vosヘーシンクらのアタックは不発に終わったものの、次いで集団からはナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)が抜け出してリードを稼いでいく。序盤の逃げ集団から粘ったリブロンはここで吸収され、クインターナはメイン集団に対して1分の差を付けてダウンヒルへと入っていく。
長くテクニカルなダウンヒルを経て、先頭クインターナはアクス・トロワ・ドメーヌへと突入。山岳賞狙いで抜け出したピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)が下り区間で合流したものの、登りでは淡々とクインターナが刻むハイペースについていくことができず。そこから約30秒遅れてメイン集団も登りへと入った。
先頭を固めるのはやはりスカイプロサイクリング。ピーター・ケノー(イギリス)からリッチー・ポルト(オーストラリア)という鉄壁の布陣でペースメイクすると、あまりのハイペースに集団は一気に崩壊。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)やカデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)も次々と遅れを喫することに。
先頭に残ったのは、ポルト、フルームのスカイ勢に加え、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とアルベルト・コンタドール(スペイン)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)のサクソ・ティンコフ勢2名のみ。そしてクインターナをキャッチすると同時に、フルームが渾身の加速でアタック。この動きを誰もフォローすることはできなかった。
アクス・トロワ・ドメーヌで独走を決めたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Cor.Vos
フルームはパワフルなペダリングを持続させ、ライバル達におよそ1分差を付けてアクス・トロワ・ドメーヌ山頂へ。力強いガッツポーズと共に、マイヨジョーヌ、そしてマイヨブラン・アポワ・ルージュの獲得を成功させた。そして51秒遅れの2位にポルトが入り、スカイはワンツーフィニッシュ。第8ステージにして早くも鉄壁の体勢を築くことに成功している。
大きく遅れたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Makoto.Ayano
苦しみながら登るアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ) photo:Makoto.Ayano
マイヨジョーヌを受け取ったクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.一方で総合ライバル勢はクロイツィゲルやコンタドールが1分45秒遅れ、ロドリゲスは2分6秒遅れ、アンディ・シュレクやエヴァンス3分半以上の遅れを喫し、事実上総合争いから撤退。一方でバウク・モレマとローレンス・テンダムのベルキンプロサイクリング勢はそれぞれ4位、5位フィニッシュし唯一気を吐いた。
ピレネー2日目となる翌7日は、1500m級の1級山岳が4つ連続する厳しいステージ。大会最初の休息日を前に、再び激しい登り勝負が繰り広げられるものと予想されている。
ツール・ド・フランス2013第8ステージ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 5h03'11"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) +51'
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'08"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'10"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'16"
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) +1'34"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +1'45"
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
9位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
143位 新城幸也(ユーロップカー) +29'12"
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 32h15'55"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) +51"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'25"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'44"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'50"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +1'51"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +2'02"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'31"
10位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ) +2'40"
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 234pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 141pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 128ts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング 31pts
2位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 31pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 28pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) 22h18'23"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +46"
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +1'23"
チーム総合成績
1位 モビスター 96h01'20"
2位 サクソ・ティンコフ +37"
3位 アージェードゥーゼル +4'33"
text:So.Isobe
photo:A.S.O., Cor Vos,Makoto.Ayano
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体調の優れないマッテーオ・ボーノ(イタリア、ランプレ・メリダ)がスタート早々にリタイアを決める一方で、この日は4人の逃げが決まる。ジャンマルク・マリノ(フランス、ソジャサン)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、ルディ・モラール(フランス、コフィディス)、そしてクリストフ・リブロン。リブロンは2010年大会のトロワ・ドメーヌ頂上フィニッシュを逃げ切りで制しており、相性の良いコースだ。
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パイエール峠に入るとスカイプロサイクリングが集団コントロールを開始する。ダビ・ロペスガルシア(スペイン)やヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が淡々とペースを刻むと、頂上まで11kmを残した時点でロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が先行し、遅れてトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)もアタック。怪我をおして走るライダー・ヘジダル(カナダ)やマイヨジョーヌのインピーは脱落していった。
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長くテクニカルなダウンヒルを経て、先頭クインターナはアクス・トロワ・ドメーヌへと突入。山岳賞狙いで抜け出したピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)が下り区間で合流したものの、登りでは淡々とクインターナが刻むハイペースについていくことができず。そこから約30秒遅れてメイン集団も登りへと入った。
先頭を固めるのはやはりスカイプロサイクリング。ピーター・ケノー(イギリス)からリッチー・ポルト(オーストラリア)という鉄壁の布陣でペースメイクすると、あまりのハイペースに集団は一気に崩壊。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)やカデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)も次々と遅れを喫することに。
先頭に残ったのは、ポルト、フルームのスカイ勢に加え、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とアルベルト・コンタドール(スペイン)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)のサクソ・ティンコフ勢2名のみ。そしてクインターナをキャッチすると同時に、フルームが渾身の加速でアタック。この動きを誰もフォローすることはできなかった。
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フルームはパワフルなペダリングを持続させ、ライバル達におよそ1分差を付けてアクス・トロワ・ドメーヌ山頂へ。力強いガッツポーズと共に、マイヨジョーヌ、そしてマイヨブラン・アポワ・ルージュの獲得を成功させた。そして51秒遅れの2位にポルトが入り、スカイはワンツーフィニッシュ。第8ステージにして早くも鉄壁の体勢を築くことに成功している。
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ピレネー2日目となる翌7日は、1500m級の1級山岳が4つ連続する厳しいステージ。大会最初の休息日を前に、再び激しい登り勝負が繰り広げられるものと予想されている。
ツール・ド・フランス2013第8ステージ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 5h03'11"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) +51'
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'08"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'10"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'16"
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) +1'34"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +1'45"
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
9位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
143位 新城幸也(ユーロップカー) +29'12"
個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) 32h15'55"
2位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) +51"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'25"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'44"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング) +1'50"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) +1'51"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
8位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) +2'02"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'31"
10位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ) +2'40"
ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 234pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 141pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) 128ts
山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング 31pts
2位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) 31pts
3位 リッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング) 28pts
新人賞 マイヨブラン
1位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) 22h18'23"
2位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +46"
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ) +1'23"
チーム総合成績
1位 モビスター 96h01'20"
2位 サクソ・ティンコフ +37"
3位 アージェードゥーゼル +4'33"
text:So.Isobe
photo:A.S.O., Cor Vos,Makoto.Ayano
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