2013/07/02(火) - 18:37
コルシカ島ステージ3日目はアジャクシオからカルヴィへ、景観の素晴らしいハイライトだ。無数のコーナーをこなしながら、青い海を眼下に見ながら宇宙的な地形が展開する。
ナポレオンの生誕地アジャクシオ。椰子の並木の向こうに広がるエメラルドの海が眩しい美しい海岸線からレースはスタートする。赤ちゃんと奥さん、そしてお母さんがコルシカ観光を兼ねて帯同しているラース・ボーム(ベルキン)はスタート前にたっぷり家族サービス。奥さんのお腹の中にはもうひとり次の命が育っている。
ゼロ㎞アタックに備えるスタート前のウォームアップ
数え切れないコーナーが続く、コルシカいち危険なコースと誰もが警戒するこのステージ。チームバスの脇ではローラー台を使ったアップをしている選手の姿が見られた。
昨日フランステレビジョンに(もしかすると日本でも?)、ゴール前で逃げ切ったバケランツと最後まで間違われていたマルケル・イリサール(レディオシャック・レオパード)が、そして今日メンバーが逃げに乗ることになったオリカ・グリーンエッジがチームぐるみで念入りにウォームアップしていた。
スタートしてからしばらくで上りが始まるため、攻撃することを決めているのなら暖機運転は欠かせない。グリーンエッジは今や選手たちよりチームバスのほうが有名になってしまい、名誉挽回のためにも一念発起している様子だ。
明らかになったグリーンエッジのバス事故の原因
ところでバスの問題が明らかになった。チーム広報担当と監督もごまかしていた本当の理由はサクソ・ティンコフの中野喜文さんのブログにある(旧知のスタッフ間で話が回ったようだ)。
グリーンエッジのバスはスタート地点からの出発が遅れたわけでも渋滞にはまったわけでもなく、ゴール2km手前のホテルに早くに到着して運転手は寝ていたが、チームのスポンサーがゴールを見たいという理由で急遽ゴールに直行することになり、フィニッシュ時間間近の移動になったということがまず慌てた理由のようだ。指示はマシュー・ホワイト監督が出したようだ。
そしてゴールゲートは上下に高さ調整ができるタイプだったが、高さを見誤った(あるいは調整可能なことを知らない)現場スタッフの確認不足でクリアランスをとらずにバナーアーチに屋根を突っ込んでしまったというのが流れ。
バスがゴールラインにのこのこやってきたのはレースがラスト13kmの時点で、もはや時間が無さすぎた。時間の余裕がなく慌てているとき、事故は起きるもの。チームサイトでは「不運だった」と言い訳を出したが、これはやってはいけないことだった。確かに2000フランの罰金に値する(笑)。
無数のコーナーと素晴らしい景観が続くコルシカの海岸線
コルシカの3つのステージのうちもっとも危険、しかしもっとも美しいと評されるこの日のコース。
「ピアナのカランケ、ジロラータ湾、スカンドーラ自然保護区を含むポルト湾」としてユネスコ世界遺産に指定されている一帯の荒々しい地形の海岸線の谷間を、グネグネと急カーブが続く。フォトグラファー会議でも、プロトンに近づかないように、一度抜かれると抜き返すことは不可能だと注意されたコースだ。迂回路もない一本道のため、今日も関係車両はゴールに直行。
途中、赤い岩肌の荒れた地形が宇宙的な景観の ピアナのカランケ、Capo Rosso(赤い岬)を通るとき、ここで停まって風景を絡めてプロトンの写真を撮ることができたらどんなに素晴らしいだろうと溜息を付くほどのロケーションに出くわす。レース関係者やVIP対応のクルーたちも、海岸線を見下ろす場所に陣取ってランチタイム。天気も素晴らしい(ちょっと暑いが)。
「ここで撮らずにどこで撮る!」と言わんばかりの場所。しかしレース後半を捨てることになるので、カーブに酔いながらも先を急ぐことに。その地の写真は他のフォトグラファーの作品で。
マイヨ・アポア姿のロランのアタックにフランス人が熱狂!ユキヤは発射台に
ゴール手前13kmの勝負どころ、コル・ドゥ・マルセリーノでステイすることに。先頭で駆け上がってきたマイヨ・アポア姿のピエール・ロラン(ユーロップカー)に、フランス人観客たちが熱狂する。謎の衣装の宇宙人(?)も追いかける。ロランはゴールまでは逃げられずに捕まるが、昨日に続くアタックで調子の良さを隠し切れない。今年は総合上位を狙うつもりだが、まず山岳賞へのポイントも手堅く重ねる。
ユキヤは峠の頂上が近づく頃にロランの位置取りと一番目の発射台としてポジションを引き上げた後、ダビデ・マラカルネにバトンタッチ。アシストとしての走りを終えた。汗をたっぷり滴らせながら、先頭集団から少し遅れて頂上を通過した。明日のチームタイムトライアルでチームに貢献する脚を残しておくことがまず大事なので、力を使い果たしてもいけない。
暑さが厳しくなった後半。昨年のジロ総合3位のトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が先頭グループから15分以上遅れて通過する。胃腸に問題を抱えていたようだ。
サガンを打倒したゲランス グリーンエッジのツール初勝利
絶対的にサガンが有利と言われていたステージで、スプリントでサガンに競り勝ったのはサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。序盤からアタックしたサイモン・クラークから次のサイモンへとバトンをつないだグリーンエッジは、昨年チームが結成されてから18ヶ月目にしてツール・ド・フランス初勝利だ。
チームは昨年、スタートしてからすぐ幸先の良いスタートを切った。ゲランスによる春のミラノ〜サンレモの勝利、そしてジロでのマシュー・ゴスによるステージ勝利(グランツール初勝利)、サイモン・クラークのブエルタでの山岳賞などを挙げるが、ツールでの勝利はまだ叶えられていなかったのだ。
ワンデイレースに強いゲランス。彼自身のツールでの勝利は、2008年のプラトー・ネヴォソでの勝利以来のこと。このツールではステージ優勝を挙げるべく、ステージ序盤に狙いを定めてきた。とくにコースが自身の脚のキャラクターにぴったりの、昨第2ステージと今日に。チームによる朝からのローラー台によるウォームアップは、狙いを定めていたことの証明だろう。
「コースはアルデンヌクラシックのようで自分にぴったりだった」とゲランスは言う。チームメイトによる早めのアタックは、サガン擁するキャノンデールに対して有利に働いた。そして最後はダリル・インピーによる完璧なリードアウトが光った。サガンも怪我の影響がでて、スプリントが冴えなかった。「怪我の影響が昨日よりもむしろ今日出た」とサガンは言う。
ゲランスは記者会見で昨年のツールと今年のツールの取り組みの違いも説明した。彼自身、昨年はツール後に開催されるロンドン五輪ロード、そしてシーズン後半戦に照準を合わせ、調整を重視した参戦だったと言う。ゲランスにはチームバスの一件についても当然のように質問が飛んだ。
「バスの運転手はとても素晴らしい仕事をしてくれる。ツールでの素晴らしい仕事ぶりにも皆が誇りに思っているよ。彼はあの件ですごく落ち込んでいて、僕たちは彼にとても申し訳ない気持ちなんだ」。
バイバイコルシカ、ニースへの大移動
夜中にユキヤのコメントが入った。
「久しぶりにこんなに暑いレースが続き、コースもテクニカルで気が抜けないから、やたら疲れる。でも、最後の山岳までピエールを守れたし、不安はないね。今日は移動の疲れをためないように、ゆっくり休みます。」
選手たちはステージが終わると飛行機でニースへ。関係者たちのほとんどは夜23時のフェリーで車両ごと移動する船旅へ。コルシカ島での運営本部&プレスセンターとなった大型客船メガ・スメラルダ号に乗って7時間。
翌朝6時、ニースに到着する。
機材の準備の大変なチームタイムトライアル。メカニックや多くのソワニエたちはスタートの時点ですでにニースへ直行し、準備を進めているはずだ。チームによっては別の部隊の出動で対応するという。
photo&text:Makoto.AYANO
ナポレオンの生誕地アジャクシオ。椰子の並木の向こうに広がるエメラルドの海が眩しい美しい海岸線からレースはスタートする。赤ちゃんと奥さん、そしてお母さんがコルシカ観光を兼ねて帯同しているラース・ボーム(ベルキン)はスタート前にたっぷり家族サービス。奥さんのお腹の中にはもうひとり次の命が育っている。
ゼロ㎞アタックに備えるスタート前のウォームアップ
数え切れないコーナーが続く、コルシカいち危険なコースと誰もが警戒するこのステージ。チームバスの脇ではローラー台を使ったアップをしている選手の姿が見られた。
昨日フランステレビジョンに(もしかすると日本でも?)、ゴール前で逃げ切ったバケランツと最後まで間違われていたマルケル・イリサール(レディオシャック・レオパード)が、そして今日メンバーが逃げに乗ることになったオリカ・グリーンエッジがチームぐるみで念入りにウォームアップしていた。
スタートしてからしばらくで上りが始まるため、攻撃することを決めているのなら暖機運転は欠かせない。グリーンエッジは今や選手たちよりチームバスのほうが有名になってしまい、名誉挽回のためにも一念発起している様子だ。
明らかになったグリーンエッジのバス事故の原因
ところでバスの問題が明らかになった。チーム広報担当と監督もごまかしていた本当の理由はサクソ・ティンコフの中野喜文さんのブログにある(旧知のスタッフ間で話が回ったようだ)。
グリーンエッジのバスはスタート地点からの出発が遅れたわけでも渋滞にはまったわけでもなく、ゴール2km手前のホテルに早くに到着して運転手は寝ていたが、チームのスポンサーがゴールを見たいという理由で急遽ゴールに直行することになり、フィニッシュ時間間近の移動になったということがまず慌てた理由のようだ。指示はマシュー・ホワイト監督が出したようだ。
そしてゴールゲートは上下に高さ調整ができるタイプだったが、高さを見誤った(あるいは調整可能なことを知らない)現場スタッフの確認不足でクリアランスをとらずにバナーアーチに屋根を突っ込んでしまったというのが流れ。
バスがゴールラインにのこのこやってきたのはレースがラスト13kmの時点で、もはや時間が無さすぎた。時間の余裕がなく慌てているとき、事故は起きるもの。チームサイトでは「不運だった」と言い訳を出したが、これはやってはいけないことだった。確かに2000フランの罰金に値する(笑)。
無数のコーナーと素晴らしい景観が続くコルシカの海岸線
コルシカの3つのステージのうちもっとも危険、しかしもっとも美しいと評されるこの日のコース。
「ピアナのカランケ、ジロラータ湾、スカンドーラ自然保護区を含むポルト湾」としてユネスコ世界遺産に指定されている一帯の荒々しい地形の海岸線の谷間を、グネグネと急カーブが続く。フォトグラファー会議でも、プロトンに近づかないように、一度抜かれると抜き返すことは不可能だと注意されたコースだ。迂回路もない一本道のため、今日も関係車両はゴールに直行。
途中、赤い岩肌の荒れた地形が宇宙的な景観の ピアナのカランケ、Capo Rosso(赤い岬)を通るとき、ここで停まって風景を絡めてプロトンの写真を撮ることができたらどんなに素晴らしいだろうと溜息を付くほどのロケーションに出くわす。レース関係者やVIP対応のクルーたちも、海岸線を見下ろす場所に陣取ってランチタイム。天気も素晴らしい(ちょっと暑いが)。
「ここで撮らずにどこで撮る!」と言わんばかりの場所。しかしレース後半を捨てることになるので、カーブに酔いながらも先を急ぐことに。その地の写真は他のフォトグラファーの作品で。
マイヨ・アポア姿のロランのアタックにフランス人が熱狂!ユキヤは発射台に
ゴール手前13kmの勝負どころ、コル・ドゥ・マルセリーノでステイすることに。先頭で駆け上がってきたマイヨ・アポア姿のピエール・ロラン(ユーロップカー)に、フランス人観客たちが熱狂する。謎の衣装の宇宙人(?)も追いかける。ロランはゴールまでは逃げられずに捕まるが、昨日に続くアタックで調子の良さを隠し切れない。今年は総合上位を狙うつもりだが、まず山岳賞へのポイントも手堅く重ねる。
ユキヤは峠の頂上が近づく頃にロランの位置取りと一番目の発射台としてポジションを引き上げた後、ダビデ・マラカルネにバトンタッチ。アシストとしての走りを終えた。汗をたっぷり滴らせながら、先頭集団から少し遅れて頂上を通過した。明日のチームタイムトライアルでチームに貢献する脚を残しておくことがまず大事なので、力を使い果たしてもいけない。
暑さが厳しくなった後半。昨年のジロ総合3位のトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が先頭グループから15分以上遅れて通過する。胃腸に問題を抱えていたようだ。
サガンを打倒したゲランス グリーンエッジのツール初勝利
絶対的にサガンが有利と言われていたステージで、スプリントでサガンに競り勝ったのはサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。序盤からアタックしたサイモン・クラークから次のサイモンへとバトンをつないだグリーンエッジは、昨年チームが結成されてから18ヶ月目にしてツール・ド・フランス初勝利だ。
チームは昨年、スタートしてからすぐ幸先の良いスタートを切った。ゲランスによる春のミラノ〜サンレモの勝利、そしてジロでのマシュー・ゴスによるステージ勝利(グランツール初勝利)、サイモン・クラークのブエルタでの山岳賞などを挙げるが、ツールでの勝利はまだ叶えられていなかったのだ。
ワンデイレースに強いゲランス。彼自身のツールでの勝利は、2008年のプラトー・ネヴォソでの勝利以来のこと。このツールではステージ優勝を挙げるべく、ステージ序盤に狙いを定めてきた。とくにコースが自身の脚のキャラクターにぴったりの、昨第2ステージと今日に。チームによる朝からのローラー台によるウォームアップは、狙いを定めていたことの証明だろう。
「コースはアルデンヌクラシックのようで自分にぴったりだった」とゲランスは言う。チームメイトによる早めのアタックは、サガン擁するキャノンデールに対して有利に働いた。そして最後はダリル・インピーによる完璧なリードアウトが光った。サガンも怪我の影響がでて、スプリントが冴えなかった。「怪我の影響が昨日よりもむしろ今日出た」とサガンは言う。
ゲランスは記者会見で昨年のツールと今年のツールの取り組みの違いも説明した。彼自身、昨年はツール後に開催されるロンドン五輪ロード、そしてシーズン後半戦に照準を合わせ、調整を重視した参戦だったと言う。ゲランスにはチームバスの一件についても当然のように質問が飛んだ。
「バスの運転手はとても素晴らしい仕事をしてくれる。ツールでの素晴らしい仕事ぶりにも皆が誇りに思っているよ。彼はあの件ですごく落ち込んでいて、僕たちは彼にとても申し訳ない気持ちなんだ」。
バイバイコルシカ、ニースへの大移動
夜中にユキヤのコメントが入った。
「久しぶりにこんなに暑いレースが続き、コースもテクニカルで気が抜けないから、やたら疲れる。でも、最後の山岳までピエールを守れたし、不安はないね。今日は移動の疲れをためないように、ゆっくり休みます。」
選手たちはステージが終わると飛行機でニースへ。関係者たちのほとんどは夜23時のフェリーで車両ごと移動する船旅へ。コルシカ島での運営本部&プレスセンターとなった大型客船メガ・スメラルダ号に乗って7時間。
翌朝6時、ニースに到着する。
機材の準備の大変なチームタイムトライアル。メカニックや多くのソワニエたちはスタートの時点ですでにニースへ直行し、準備を進めているはずだ。チームによっては別の部隊の出動で対応するという。
photo&text:Makoto.AYANO
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