2013/06/13(木) - 18:12
赤道直下、炎天下のインドネシア・スマトラ島で今年で5回目となるツール・ド・シンカラが開催された。レースを支配したのはイランのタブリーズ・ペトロケミカル。ベテラン選手のミズバニがチーム力を武器に2009年、10年に続く3度目の総合優勝を挙げた。
温かい大会運営が魅力の南国レース
6月2日〜9日までインドネシアのスマトラ島で開催されたツール・ド・シンカラ(UCI2.2)。まだ今年で5回目の開催と新しいレースになるが、第1回大会から欠かさず日本籍のチームが参加しており、スポーツ&ツーリズムを謳うホスピタリティ溢れる大会はアジアツアーの王道レースとして定着してきた。
今年は休息日が設けられて、8日間の日程で7ステージが開催された。第3、第5ステージに厳しい山岳が組み込まれ、総走行距離は1,051km。天気が良いと気温は35℃を軽く超し、日に日に出走選手が減っていくサバイバルなステージレースとなった。そして大会運営の面では昨年に引き続き、ツール・ド・フランスの主催者であるA.S.Oがバックアップし、賞金総額約1,200万円、沿道には延べ70万人が集まるビッグイベントへと年々成長を遂げている。
2人のディフェンディングチャンピオンの明暗
今年は、2009年と2010年の総合優勝者、ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)と、昨年の優勝者オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ナイス)が揃って参加し、両者の対決に注目が集まった。名だたるイランの強豪選手をチームメイトとして従えるミズバニと、アイルランド籍のコンチコンチネンタルチームに移籍して参戦するプジョル。両者のチーム力の差が結果に大きく現れることになった。
勝負が大きく動いたのは、翌日に2回目の山岳ステージを控えた第4ステージだった。平坦基調のコースで、14人の逃げが決まり、タブリーズ・ペトロケミカルはミズバニを含む3選手を逃げ集団に送り込み、彼らが積極的に逃げ集団を牽引し逃げ切った。第1ステージでステージ優勝をしたアリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が総合リーダーとなり、プジョルとは5分32秒差、上りが得意なミズバニもプジョルに2分2秒差を付けて、最後の山岳ステージを迎えることになった。
クイーンステージである第5ステージ、中盤に標高差1,100メートルの上りを一気に駆け上がる1級山岳が組み込まれた138kmのコースで、スタート直後にプジョルがアタックをかけると、5人の逃げが決まった。しかし、タブリーズ・ペトロケミカルはしっかりとそこにアミール・カラドザフ(イラン)を送り込み、登坂が始まると、先頭はプジョルとカラドザフ2人に絞られた。そしてプジョルが遅れ始めたところで、メイン集団から単独でミズバニがアタックをかけて、プジョルを抜き去り、ミズバニとカラドザフが2人でゴールまで走り切ってワンツーフィニッシュ。ミズバニがイエロージャージを獲得し、残りの平坦ステージを難なく終えると最終日まで首位を守った。結果的にプジョルは10分10秒遅れの6位でレースを終えた。
厳しい環境に苦戦を強いられたナショナルチーム
ツール・ド・熊野やツール・ド・韓国と日程が重なったため、第1回大会から欠かさず出場していた愛三工業レーシングチームは参戦できず、国内チームは若手中心で構成された日本ナショナルチームが唯一参加した。メンバーは六峰亘(ブリヂストンアンカー)、秋丸湧哉(EQA U23)、木村圭佑(京都産業大学)、山本隼(山梨・中央大学)、和田力(日本大学)、板橋義浩(日本大学)、大田口凌(東北学院大学)。
若い選手たちは厳しい山岳ステージで健闘し、第5ステージを終えて、木村が総合10位につける活躍を見せたが、あいにく体調不良により木村は第6ステージでリタイア。しかし最終ステージでは、六峰がメイン集団のスプリントで5着となり、ステージ8位でフィニッシュした。チームの総合最高位は和田の19位。チーム総合順位は5位という結果だった。
高橋松吉監督のコメント
「厳しい山岳ステージのあるレースなので、若手選手が総合上位に入ることは難しいので、チームとしてはステージ狙いで、できるだけUCIポイントを獲得することが目標でした。六峰と秋丸は前回も参加していたので、ほかの選手よりも余裕はあり、よく走れていましたが、あとの選手は初めての参加で、経験不足から、暑さ対策や水分補給、食事管理などが難しく、後半になって体調を崩してしまい、やや残念な結果になってしまった。
これまでこのような厳しいレースを走ったことがない選手が多かったのですが、山岳ではよく走れていたので、これから経験を積んで、しっかりと準備をして挑めば、いい結果が出ると思います」
ツール・ド・シンカラ2013結果
ステージ優勝
第1ステージ ブキティンギ〜ボンジョル(104km)
アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第2ステージ パヤクンブ〜シンカラ(124.5km)
ヤコブ・カウフマン(オーストラリア、バジェットフォークリフト)
第3ステージ パダンパンジャン〜イスタノ・バサ・パガルユン(208km)
ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)
第4ステージ シジュンジュン〜プラウ・プンジュン(189.5km)
シーケオン・ロー(マレーシア、OCBC・シンガポール)
第5ステージ サワルント〜ムアラ・ラブー(138km)
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第6ステージ パリアマン〜パイナン(144.5km)
ロンネル・フアルダ(フィリピン、セブンイレブン)
第7ステージ パダン・パリアマン〜パダン周回コース(143.5km)
メディ・ソウラビ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
個人総合成績
1位 ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)26h7'55"
2位 ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)+5'40"
3位 アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+6'32"
4位 クリスティアン・ユエル(デンマーク、バジェットフォークリフト)+9'20"
5位 アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+9'42"
6位 オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)+10'10"
19位 和田力(日本ナショナル)+17'52"
26位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+21'04"
33位 山本隼(日本ナショナル)+28'53"
66位 六峰亘(日本ナショナル)+58'45"
ポイント賞
ザンブリ・サレー(マレーシア、トレンガヌ)
山岳賞
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
チーム総合成績
1位 タブリーズ・ペトロケミカル
photo & text : Sonoko TANAKA
温かい大会運営が魅力の南国レース
6月2日〜9日までインドネシアのスマトラ島で開催されたツール・ド・シンカラ(UCI2.2)。まだ今年で5回目の開催と新しいレースになるが、第1回大会から欠かさず日本籍のチームが参加しており、スポーツ&ツーリズムを謳うホスピタリティ溢れる大会はアジアツアーの王道レースとして定着してきた。
今年は休息日が設けられて、8日間の日程で7ステージが開催された。第3、第5ステージに厳しい山岳が組み込まれ、総走行距離は1,051km。天気が良いと気温は35℃を軽く超し、日に日に出走選手が減っていくサバイバルなステージレースとなった。そして大会運営の面では昨年に引き続き、ツール・ド・フランスの主催者であるA.S.Oがバックアップし、賞金総額約1,200万円、沿道には延べ70万人が集まるビッグイベントへと年々成長を遂げている。
2人のディフェンディングチャンピオンの明暗
今年は、2009年と2010年の総合優勝者、ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)と、昨年の優勝者オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ナイス)が揃って参加し、両者の対決に注目が集まった。名だたるイランの強豪選手をチームメイトとして従えるミズバニと、アイルランド籍のコンチコンチネンタルチームに移籍して参戦するプジョル。両者のチーム力の差が結果に大きく現れることになった。
勝負が大きく動いたのは、翌日に2回目の山岳ステージを控えた第4ステージだった。平坦基調のコースで、14人の逃げが決まり、タブリーズ・ペトロケミカルはミズバニを含む3選手を逃げ集団に送り込み、彼らが積極的に逃げ集団を牽引し逃げ切った。第1ステージでステージ優勝をしたアリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が総合リーダーとなり、プジョルとは5分32秒差、上りが得意なミズバニもプジョルに2分2秒差を付けて、最後の山岳ステージを迎えることになった。
クイーンステージである第5ステージ、中盤に標高差1,100メートルの上りを一気に駆け上がる1級山岳が組み込まれた138kmのコースで、スタート直後にプジョルがアタックをかけると、5人の逃げが決まった。しかし、タブリーズ・ペトロケミカルはしっかりとそこにアミール・カラドザフ(イラン)を送り込み、登坂が始まると、先頭はプジョルとカラドザフ2人に絞られた。そしてプジョルが遅れ始めたところで、メイン集団から単独でミズバニがアタックをかけて、プジョルを抜き去り、ミズバニとカラドザフが2人でゴールまで走り切ってワンツーフィニッシュ。ミズバニがイエロージャージを獲得し、残りの平坦ステージを難なく終えると最終日まで首位を守った。結果的にプジョルは10分10秒遅れの6位でレースを終えた。
厳しい環境に苦戦を強いられたナショナルチーム
ツール・ド・熊野やツール・ド・韓国と日程が重なったため、第1回大会から欠かさず出場していた愛三工業レーシングチームは参戦できず、国内チームは若手中心で構成された日本ナショナルチームが唯一参加した。メンバーは六峰亘(ブリヂストンアンカー)、秋丸湧哉(EQA U23)、木村圭佑(京都産業大学)、山本隼(山梨・中央大学)、和田力(日本大学)、板橋義浩(日本大学)、大田口凌(東北学院大学)。
若い選手たちは厳しい山岳ステージで健闘し、第5ステージを終えて、木村が総合10位につける活躍を見せたが、あいにく体調不良により木村は第6ステージでリタイア。しかし最終ステージでは、六峰がメイン集団のスプリントで5着となり、ステージ8位でフィニッシュした。チームの総合最高位は和田の19位。チーム総合順位は5位という結果だった。
高橋松吉監督のコメント
「厳しい山岳ステージのあるレースなので、若手選手が総合上位に入ることは難しいので、チームとしてはステージ狙いで、できるだけUCIポイントを獲得することが目標でした。六峰と秋丸は前回も参加していたので、ほかの選手よりも余裕はあり、よく走れていましたが、あとの選手は初めての参加で、経験不足から、暑さ対策や水分補給、食事管理などが難しく、後半になって体調を崩してしまい、やや残念な結果になってしまった。
これまでこのような厳しいレースを走ったことがない選手が多かったのですが、山岳ではよく走れていたので、これから経験を積んで、しっかりと準備をして挑めば、いい結果が出ると思います」
ツール・ド・シンカラ2013結果
ステージ優勝
第1ステージ ブキティンギ〜ボンジョル(104km)
アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第2ステージ パヤクンブ〜シンカラ(124.5km)
ヤコブ・カウフマン(オーストラリア、バジェットフォークリフト)
第3ステージ パダンパンジャン〜イスタノ・バサ・パガルユン(208km)
ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)
第4ステージ シジュンジュン〜プラウ・プンジュン(189.5km)
シーケオン・ロー(マレーシア、OCBC・シンガポール)
第5ステージ サワルント〜ムアラ・ラブー(138km)
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第6ステージ パリアマン〜パイナン(144.5km)
ロンネル・フアルダ(フィリピン、セブンイレブン)
第7ステージ パダン・パリアマン〜パダン周回コース(143.5km)
メディ・ソウラビ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
個人総合成績
1位 ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)26h7'55"
2位 ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)+5'40"
3位 アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+6'32"
4位 クリスティアン・ユエル(デンマーク、バジェットフォークリフト)+9'20"
5位 アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+9'42"
6位 オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)+10'10"
19位 和田力(日本ナショナル)+17'52"
26位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+21'04"
33位 山本隼(日本ナショナル)+28'53"
66位 六峰亘(日本ナショナル)+58'45"
ポイント賞
ザンブリ・サレー(マレーシア、トレンガヌ)
山岳賞
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
チーム総合成績
1位 タブリーズ・ペトロケミカル
photo & text : Sonoko TANAKA
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