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レーシングモデルとロングライドモデルの境界線は、走行スピード40㎞/h

かつてはロードバイクに乗ること=レースだったが、それも今は昔。現代のホビーサイクリストにとって等身大の楽しみ方は、ロングライドやグランフォンド、そしてエンデューロといったエンデュランス系が中心だ。とはいえ、実際にロングライドを楽しみつつもエンデューロやヒルクライムなどレース的な要素を含む走りをするユーザーも少なくはない。したがって、ロングライドをメインとするがレーシングモデルを購入するというユーザーも多い。

ホビーサイクリストにとって等身大の楽しみ方となった、エンデュランス系ライドに適したアンカーのロードバイクとは?ホビーサイクリストにとって等身大の楽しみ方となった、エンデュランス系ライドに適したアンカーのロードバイクとは? メーカーではレーシングとロングライドのラインナップを揃えることも多く、ロングライドモデルのラインナップもカーボンからアルミまで種類が増えている。走行性能においてもレーシングバイクに迫る実力を備えるモデルもあり、走行性能のクロスオーバー的な現象も起こっている。

今回紹介するアンカーのロングライドモデルを見ても、フルカーボンのRFX8はロードモデルより軽い重量を実現して、走りのポテンシャルは高いものを秘めている。ロードレースには参加しないけれどロングライドやエンデューロ、ヒルクライムなどを楽しむ大多数のホビーユーザーからすると、どちらのカテゴリーでモデルを選ぶべきか迷うもの。

ここからはその境界線を含めながら、アンカーのロングライドモデルの選び方について藤田晃三さんに解説していただく。

カーボンで幅広い対応力が自慢のRFX8
アルミでより入門者向けにしたRFA5

藤田:まず、週末にある程度の長距離を走るというホビーの方であれば、もちろんロングライドモデルの性能で十分に楽しめると思います。しかしロードレースには参加しないけれどエンデューロを走ることも多いのならば、走行する速度域によって選ぶモデルは変わってくるとも言えます。

エンデューロの集団走行ともなると、時速40㎞以上になることも多いですね。高速域における性能を考えると、剛性も高くヘッドチューブ長も短いレーシングモデルは、パワーロスが少なく前傾姿勢を強められるので、空気抵抗を減らせて効率的な走りができます。時速45㎞以上の集団で走ることが多いのなら、RMZやRHM9 RSのようなレーシングモデルを選ぶといいでしょう。

しかし、時速35〜40㎞ほどの速度を目指すのなら、RFX8、RFA5といったロングライドモデルの方がいいと思います。そして走れる速度域が高い上級者になれば、楽しみ方がロングライド中心であってもレーシングモデルを選ぶことができます。ビギナーの方は出せる速度自体が低いですし、前傾姿勢にも慣れていないので、やはりロングライドモデルを選ぶことが多くなります。

軽量なカーボンモデルのRFX8。RHM9 RSに比べて10㎜長いヘッドチューブを持ち、巡航性も高いため、ロングライドに適する軽量なカーボンモデルのRFX8。RHM9 RSに比べて10㎜長いヘッドチューブを持ち、巡航性も高いため、ロングライドに適する アルミフレーム採用のRFA5。ヘッドチューブがRFX8よりさらに長く、アップライトポジションを取りやすいアルミフレーム採用のRFA5。ヘッドチューブがRFX8よりさらに長く、アップライトポジションを取りやすい

藤田:ロングライドモデルといっても、アンカーの場合ヘッドチューブ以外のジオメトリーはレーシングモデルにほぼ準ずる形なので、コンフォートバイクのような極端に直進安定性を高めた性能にはしていません。それだとロードバイクらしい軽快な走りが消えてしまうからです。

レーシングモデルよりも剛性は抑えられるのでトップスピードの伸びは劣る部分もありますが、高速巡航などおいて淡々とペダルを踏み続けられる適度な剛性感があります。エンデューロレースなどで使っても最後に脚が残っているので、通常ではもがけない後半の場面でそれが可能になることもあります。
十分に練習をしている方ならRHM9 RSのようなモデルでもいいと思いますが、練習量が少ないのならRFX8は体力の温存が効くのでレース的な走りで使うのもいいでしょう。

レーシングモデルのRHM9 RS(写真手前)と、よりカバーできる範囲が広いRFX8。中心となるライディングスタイルに合わせて選ぼうレーシングモデルのRHM9 RS(写真手前)と、よりカバーできる範囲が広いRFX8。中心となるライディングスタイルに合わせて選ぼう
重量はアンカーのラインナップの中で最も重量は軽く、シマノ・デュラエースで組めば7㎏台の重量を簡単に狙えるのでヒルクライムにも適したモデルです。私もヒルクライムで使っていましたが、ヒルクライムでは一定ペースで踏み続けることが多いため、巡航性がしやすいRFX8の性能は適しています。さらにレーシングモデルよりも振動吸収性は優れていますし、ヘッドチューブもRHM9 RSに比べて10㎜長く設計されているためアップライトを確保しやすい。当然ながらロングライドに適しています。
RFX8はカバーできるシチュエーションが広く、レーシングモデルとロングライドモデルの中間にあるような存在とも言えます。したがってロングライドやヒルクライムなどを中心にして、時々エンデューロあるいはレースなどを楽しむ方にも対応できるモデルです。

ソロでのロングライドや競わないグループライドなら、RFA5は十分な性能を発揮してくれるソロでのロングライドや競わないグループライドなら、RFA5は十分な性能を発揮してくれる RFX8は20万円台中盤の価格なので、アルミフレームを採用して入門者にも購入しやすい価格にしたのがRFA5です。素材だけでなく、ジオメトリーもヘッドチューブをRFX8より10㎜伸ばして、トップチューブも短めに設計することでより前傾姿勢を緩和したポジションがとれます。また、アルミフレームながらしなりを出すように作られるので、ハンガー横剛性はロングライドモデルの中で最も抑えられるので体への負担が少ない性能になっています。価格面だけでなくRFA5はより入門者向けの設計なので、スポーツバイクそのものが初めてといった方にも最適だと思います。

グループライドで仲間と少し競い合うような乗り方もする場合では、カーボンで軽さがあるRFX8の方がいいとは思いますが、ソロでのロングライド、または競わないグループライドなどをするユーザーであればRFA5で十分です。振動吸収性はアルミ素材としては非常に高いレベルですが、マイペースで走ることが多いのなら、ちょっと幅が太めの25Cサイズのタイヤを装備すれば乗り心地はもちろんバイクの安定性も増すので、より快適に走れるでしょう。

また輪行をしてツーリング的なロングライドを楽しむ場合、アルミフレームはカーボンに比べてフレーム破損の危険性が圧倒的に少ないので、そうした使い方にも適しています。

スタイルにこだわるサイクリストなら
普遍の美しさを持つクロモリフレーム

クロモリ独特のバネ感のあるライディングフィールで、息の長い人気を誇るRNC7クロモリ独特のバネ感のあるライディングフィールで、息の長い人気を誇るRNC7 藤田:ロングライドを楽しみつつも、スタイルにこだわるような方には、ネオコットのクロモリモデルRNC7がおすすめです。カーボンよりも重量が増すため走り出しの軽さや登坂力はRFX8に及ばないので、ヒルクライムでタイムを気にして走る方に向くモデルではありません。

しかしRNC7にはカーボンやアルミフレームにはない、バネ感のあるライディングフィールがあり、そこは数的データでは表せないところですが、乗ったときの気持よさがネオコットフレームにはあります。

ネオコットに乗っている方がよく「楽しい」と言われるのは、そんな独特のライディングフィールにあると思います。マイルドさという部分ではカーボンにも近いフィーリングを持つので、体にもやさしく、ロングライドやツーリング的に適しています。

そして、クロモリフレームらしい細身のシルエットとホリゾンタルフレームというスタイルは、古くからのスタイルを好まれる方へ魅力的に映るのはもちろん、太いカーボンフレームに見慣れた方には新鮮だと思います。スポーツバイクの楽しみは走行性能だけでなく、所有欲も大切なので自分なりのスタイルにこだわる方には付加価値の高いモデルと言えるでしょう。

耐久性という面でもクロモリは安心できます。カーボンフレームは鋭利なモノが当たってフレームにヒビが入ると性能は大きくダウンして乗り続けられませんが、クロモリフレームだと凹むことがあっても性能面で大きな変化はないため乗り続けられるので、耐久性は優れています(ただしチューブの最も薄い部分は0.4㎜なので注意は必要)。

元々レーシングモデルとして設計されたRNC7は他モデルよりヘッドチューブが3cmほど短くなるので、前傾姿勢が強めになる元々レーシングモデルとして設計されたRNC7は他モデルよりヘッドチューブが3cmほど短くなるので、前傾姿勢が強めになる RNC7を選ぶ場合、気をつけていただきたいのはジオメトリーです。RFX8やRFA5はレーシングモデルに比べてヘッドチューブは長めですが、逆にRNC7は3cmほど短くなります。これはRNC7が元々レーシングモデルとして設計され、ホリゾンタルフレームの形をしているからです。

したがってライディングポジションは、他のロングライドモデルに比べて前傾姿勢が強くなります。そこを納得して乗っていただければ、クロモリ素材の魅力を最大限発揮したネオコットフレームは、持つ喜びも含めてロードバイクを楽しめる1台です。ライディングポジションが辛い場合は、RFX8やRFA5を選んでください。



以上がアンカーのロングライドモデルのラインナップと選び方だ。 次ページからはいよいよ各モデルの試乗を行い、それぞれの魅力を探ってゆく。

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