2011/11/01(火) - 11:39
RMZは、カーボンフレームとしては世界でも類を見ない、剛性とジオメトリーオーダーを前提とするレーシングバイクがだ。7種類の剛性パターンから始まり、ジオメトリーの調整は数千種類にも及ぶ。トッププロ選手の要求に応えるべく世界最高クラスの剛性から、自分だけのバイクを望むホビーライダーにもフィットするレベルまで存在する。このオーダーを可能にするのは、独自形状のアウターラグによる接着工法の採用だ。これは現在カーボンフレームの主流となる3ピースモノコックの工法では不可能であり、アンカーはライダーとバイクの真に最適な関係を目指して、製造方法まで一新してきた。
剛性やジオメトリーの組み合わせにより膨大な選択ができてしまうと、逆にユーザーはどれが良いかを悩んでしまう。そこで登場するのが専用に開発された計測ツールだ。エルゴサイザータイプのフィッティングマシンは、8段階の負荷機能とパワーメーター、心拍計測機能を備えて体力測定を行なう。そしてミリ単位、0.5度単位でサドルとハンドル位置の調整がきき、ライディングポジションを正確に再現する。
計測されたそれぞれの値は、専用のアプリケーションによって最適なポジションを実現するためのフレームジオメトリー、さらに個々の剛性が導き出される。これらのシステムは、アンカーラボにおいて数多くのライダーのポジションを科学的に解析してきたデータの蓄積により開発されたもの。それはまさにアンカーラボの頭脳の凝縮した装置といっていい。
フレームそのものに目を向けると、ヘッドチューブを爪で掴むようなデザインの「ドラゴンクローヘッド」をはじめ、RHM9シリーズの形状を受け継ぎつつも全体的にボリュームアップされている。ヘッドチューブはロワーベアリングを1-1/4インチに設計したテーパータイプをアンカーでは初めて採用。ダウンチューブとの接合面積が増大し、ヘッドチューブからシートチューブ、チェーンステーに至るパワーラインの剛性が強化されている。
そして各チューブは必要な応力に対して細かく菱形、三角、角型というように、細かく形状を変化させているのも見逃せない。これらの細かな形状を実現できるのは、かねてからアンカーが積み重ねてきた、ライダーの実走データ数値化して必要な剛性を的確に導きだす最適構造解析技術によるものだ。
7種類の剛性パターンについては前三角のチューブ肉厚を変更して対応している。ちなみに中間の「4」と呼ばれるレベルは、RHM9と同等の横剛性を備えるが、ねじれ剛性ではRMZが上回るため、ペダルを踏んだ時は硬く感じるはずだという。
また、重量については、このレベル4では1100g(490㎜フレーム単体)で、チューブの肉厚が変わることでプラス60g〜マイナス80gの重量差が生まれるという。重量的には超軽量ではないものの、自分にとって最適な剛性を選べるオプションを考えればそれも納得できるだろう。ヒルクライムに特化するなら別の選択肢も考えられるが、特に集団のロードレースであれば堅牢性を含めて実用的な重量に仕上げられている。
価格は海外ブランドのトップモデルと競合するが、ジオメトリーと剛性をオーダーできるモデルとなるとRMZは唯一無二に等しい。世界で唯一自分だけのフレームができるのならば、その価値は価格以上と言って間違いない。とことんバイクにこだわりぬいて勝利を目指すレーサーや、これまでのバイクの剛性感に納得できない、そして最適なポジションによるライディングの快感を得たいホビーサイクリストなら、パーソナルマッチングはこの上ない喜びとなるだろう。
「バランスに優れる高剛性で攻撃的な走りができる」
CW:今回は最も剛性が高い「レベル1」と最も剛性の低い「レベル7」の2モデルに試乗していただきましたが、その違いも含めてお2人の感想を伺いたいと思います。
浅野:今回試乗したすべての中で踏み出しの軽さは、RMZが最も良かったです。とても反応性がいいフレームです。ハードのタイプは最新の海外ブランドの高剛性なカーボンフレームに相当する走行性能があると感じました。
佐野:アンカーで走っていたころ、選手から剛性の高いフレームが欲しいという要望もあって、そうしたモデルにも乗ってきましたが、それでも当時は物足りない感覚がありました。
RMZにはこれまでの僕が知るアンカーでは体感したことのない踏み出しの軽さと反応性の良さがあって、ヨーロッパのトップブランドを思わせる走りを感じます。やはり単に剛性が高いだけではだめで、大切なのは全体のバランスをとることだと思います。そうした部分を上手にまとめたのがRMZの優れた走りに繋がっているのではないでしょうか。
CW:ハードとソフトだと剛性感はかなり違いますか?
浅野:全く違いますね。最初にソフトに乗りましたが、踏み出しが軽く、振動吸収性も高いので、とても乗りやいいいフレームという印象でした。しかし、次にハードへ乗り換えると、剛性が高い分だけ反応性がさらに増しています。やはり剛性が違いは踏み出しの軽さに最も顕著に現れます。そして、上りの軽さも体感できます。アタックをする時、下りからの上り返しなど、この加速の良さはレースでアドバンテージになるでしょう。
佐野:2つのモデルの剛性感の違いは明らかで、違う自転車に乗っていると言ってもいいほどです。剛性の高い方は加速のキレがあり、ひと踏みごとの推進力に力強さがあります。個人的には固いフレームが好みなので、高剛性タイプの方が好印象でした。選手レベルならこの剛性でも大丈夫ですが、一般の方だと体重が重くて、パワーがある人じゃないと過剛性にも思えます。といっても自分に合った剛性をオーダーできるのはRMZの特徴なので、それで対応できるので問題はないでしょう。
CW:剛性の低いタイプはどうでしたか。
佐野:加速の時にウイップを感じましたが、大きくパワーをロスするようなことはないです。剛性を落としたからといっても基本的に剛性は高めに設計されているので、軽快な走りは失われません。走り方や好みで変わる部分で、良し悪しのではありません。当然、剛性が低くなると乗り心地は良くなるので、長距離とかで疲れは軽減できるでしょう。でもロングライドをするなら、僕はRHM9を選んだ方がいいと思います。
浅野:かかりの良さは変わってきますが、巡航性などに違いはないです。やはり乗り心地はソフトの方が優れていて、僕はロングライドで使ってもよいかなと感じました。ハードだとちょっと路面からの突き上げを感じることもありますが、レースを前提に考えれば問題ないレベルにあると思います。
「軽い踏み出し、高い反応性は海外ブランドにひけをとらない」
CW:フロント周りはロワーベアリングを大型化したフロントフォークを装備していますが、ハンドリングの性能はどうでしょう。
佐野:フロント周りの軽さは際立っています。ヘッドからフォークにかけての剛性が高いことを感じます。この軽さはダンシングなどでバイクを振ったときにとても感じます。スプリントでの反応性に優れ、上りでのダンシングも軽快に走れます。僕はスプリントを得意としているので、この反応性の良さはいいですね。反応性がいいだけにステアリングの安定感は薄れますが、慣れと好みの問題だと思うので、問題となる部分ではないです。
浅野:RHM9などと比べるとバイクの挙動は早いので、特に剛性が高いモデルではコーナリングでは若干切れ込みが強くなる傾向はあります。でもハンドリングにシビアになるような嫌な癖はないです。基本的にアンカーのバイクはハンドリングも素直で乗り味も癖はないので、RMZもとても乗りやすいです。
CW:ラグを使った接着方式に走りの違いを感じますか。
佐野:RMZの剛性レベルを一般的なワンピースとか3ピースのモノコック構造で作ると、もっと固さを感じてしまい脚への負担が大きく踏み切れないのではないでしょうか。その点RMZはパイプ自体固いのですが、ラグの部分で微妙な剛性感の調整がされていて、嫌な固さはなく気持ちよく走れる印象はありますね。
CW:剛性やサイズオーダーができる点はいかがですか。
浅野:今回はRHM9 RSにも試乗していますが、このバイクもレースで高い性能を発揮できます。しかしRMZはよりレーシングな性能を特化させた印象を受けます。コースも上りから、平地のスピードレースまでオールラウンドに対応できるので、自分が選手だったらRMZに乗ります。やはり剛性を選べる自由度があるので、より自分に合う1台を作れるという点ですね。サイズオーダーについてはプロ選手の多くも既製品のフレームで対応しているので、それを考えると剛性オーダーに魅力を感じます。とはいえオーダーによって、よりベストなライディングポジションに近づけられるので、そこにお金を払う価値はあります。
佐野:僕もオーダーメイドについては、ジオメトリーよりも剛性を選べることに魅力を感じます。RMZは剛性感や軽いハンドリングなど、非常に攻撃的な走りができるモデルなので、それを自分に合った剛性にすることでより伸ばせます。
浅野:専用のオーダーシステムによる測定で自分の剛性レベルを知ることはできますが、やはり迷う部分もあると思います。ツールがあるとはいえ、ショップスタッフの経験とか購入される方とのコミュニケーションもオーダー時は求められますね。 いきなり「1台目にRMZ」というのは難しいでしょう。ある程度の経験があって、何台か乗ってきた中で最高のものを作りたいユーザーにはRMZのオーダーは魅力的です。ユーザーの走り方や好みなどを知った上で、オーダーシステムと照らしあわせて剛性やサイズを提案できれば、理想的な1台ができると思います。
剛性やジオメトリーの組み合わせにより膨大な選択ができてしまうと、逆にユーザーはどれが良いかを悩んでしまう。そこで登場するのが専用に開発された計測ツールだ。エルゴサイザータイプのフィッティングマシンは、8段階の負荷機能とパワーメーター、心拍計測機能を備えて体力測定を行なう。そしてミリ単位、0.5度単位でサドルとハンドル位置の調整がきき、ライディングポジションを正確に再現する。
計測されたそれぞれの値は、専用のアプリケーションによって最適なポジションを実現するためのフレームジオメトリー、さらに個々の剛性が導き出される。これらのシステムは、アンカーラボにおいて数多くのライダーのポジションを科学的に解析してきたデータの蓄積により開発されたもの。それはまさにアンカーラボの頭脳の凝縮した装置といっていい。
フレームそのものに目を向けると、ヘッドチューブを爪で掴むようなデザインの「ドラゴンクローヘッド」をはじめ、RHM9シリーズの形状を受け継ぎつつも全体的にボリュームアップされている。ヘッドチューブはロワーベアリングを1-1/4インチに設計したテーパータイプをアンカーでは初めて採用。ダウンチューブとの接合面積が増大し、ヘッドチューブからシートチューブ、チェーンステーに至るパワーラインの剛性が強化されている。
そして各チューブは必要な応力に対して細かく菱形、三角、角型というように、細かく形状を変化させているのも見逃せない。これらの細かな形状を実現できるのは、かねてからアンカーが積み重ねてきた、ライダーの実走データ数値化して必要な剛性を的確に導きだす最適構造解析技術によるものだ。
7種類の剛性パターンについては前三角のチューブ肉厚を変更して対応している。ちなみに中間の「4」と呼ばれるレベルは、RHM9と同等の横剛性を備えるが、ねじれ剛性ではRMZが上回るため、ペダルを踏んだ時は硬く感じるはずだという。
また、重量については、このレベル4では1100g(490㎜フレーム単体)で、チューブの肉厚が変わることでプラス60g〜マイナス80gの重量差が生まれるという。重量的には超軽量ではないものの、自分にとって最適な剛性を選べるオプションを考えればそれも納得できるだろう。ヒルクライムに特化するなら別の選択肢も考えられるが、特に集団のロードレースであれば堅牢性を含めて実用的な重量に仕上げられている。
価格は海外ブランドのトップモデルと競合するが、ジオメトリーと剛性をオーダーできるモデルとなるとRMZは唯一無二に等しい。世界で唯一自分だけのフレームができるのならば、その価値は価格以上と言って間違いない。とことんバイクにこだわりぬいて勝利を目指すレーサーや、これまでのバイクの剛性感に納得できない、そして最適なポジションによるライディングの快感を得たいホビーサイクリストなら、パーソナルマッチングはこの上ない喜びとなるだろう。
スペック
フレーム | パーソナルマッチング HMカーボン インテグラルヘッド |
フォーク | HMカーボンモノコック プロオーバーサイズ |
メインコンポ | シマノ・デュラエース |
重量 | 1,100g(RHM9 490㎜相当のフレーム単体 インテグラルシートポスト除く)、 1,550g(RHM9 490㎜相当のフレーム単体 インテグラルシートポスト除く) |
カラー | レーシングカラー12色、 シングルカラー34色から選択可 (一部カラーはアップチャージが必要) |
価格 | 480,000円(フレームセット基準価格) ※カラーリングなどの仕様により価格は変わります。 |
インプレッション
「バランスに優れる高剛性で攻撃的な走りができる」
(YOU CAN海老名店 佐野友哉)
CW:今回は最も剛性が高い「レベル1」と最も剛性の低い「レベル7」の2モデルに試乗していただきましたが、その違いも含めてお2人の感想を伺いたいと思います。浅野:今回試乗したすべての中で踏み出しの軽さは、RMZが最も良かったです。とても反応性がいいフレームです。ハードのタイプは最新の海外ブランドの高剛性なカーボンフレームに相当する走行性能があると感じました。
佐野:アンカーで走っていたころ、選手から剛性の高いフレームが欲しいという要望もあって、そうしたモデルにも乗ってきましたが、それでも当時は物足りない感覚がありました。
RMZにはこれまでの僕が知るアンカーでは体感したことのない踏み出しの軽さと反応性の良さがあって、ヨーロッパのトップブランドを思わせる走りを感じます。やはり単に剛性が高いだけではだめで、大切なのは全体のバランスをとることだと思います。そうした部分を上手にまとめたのがRMZの優れた走りに繋がっているのではないでしょうか。
CW:ハードとソフトだと剛性感はかなり違いますか?
浅野:全く違いますね。最初にソフトに乗りましたが、踏み出しが軽く、振動吸収性も高いので、とても乗りやいいいフレームという印象でした。しかし、次にハードへ乗り換えると、剛性が高い分だけ反応性がさらに増しています。やはり剛性が違いは踏み出しの軽さに最も顕著に現れます。そして、上りの軽さも体感できます。アタックをする時、下りからの上り返しなど、この加速の良さはレースでアドバンテージになるでしょう。
佐野:2つのモデルの剛性感の違いは明らかで、違う自転車に乗っていると言ってもいいほどです。剛性の高い方は加速のキレがあり、ひと踏みごとの推進力に力強さがあります。個人的には固いフレームが好みなので、高剛性タイプの方が好印象でした。選手レベルならこの剛性でも大丈夫ですが、一般の方だと体重が重くて、パワーがある人じゃないと過剛性にも思えます。といっても自分に合った剛性をオーダーできるのはRMZの特徴なので、それで対応できるので問題はないでしょう。
CW:剛性の低いタイプはどうでしたか。
佐野:加速の時にウイップを感じましたが、大きくパワーをロスするようなことはないです。剛性を落としたからといっても基本的に剛性は高めに設計されているので、軽快な走りは失われません。走り方や好みで変わる部分で、良し悪しのではありません。当然、剛性が低くなると乗り心地は良くなるので、長距離とかで疲れは軽減できるでしょう。でもロングライドをするなら、僕はRHM9を選んだ方がいいと思います。
浅野:かかりの良さは変わってきますが、巡航性などに違いはないです。やはり乗り心地はソフトの方が優れていて、僕はロングライドで使ってもよいかなと感じました。ハードだとちょっと路面からの突き上げを感じることもありますが、レースを前提に考えれば問題ないレベルにあると思います。
「軽い踏み出し、高い反応性は海外ブランドにひけをとらない」
(YOU CAN 八王子店 浅野浩一)
CW:フロント周りはロワーベアリングを大型化したフロントフォークを装備していますが、ハンドリングの性能はどうでしょう。佐野:フロント周りの軽さは際立っています。ヘッドからフォークにかけての剛性が高いことを感じます。この軽さはダンシングなどでバイクを振ったときにとても感じます。スプリントでの反応性に優れ、上りでのダンシングも軽快に走れます。僕はスプリントを得意としているので、この反応性の良さはいいですね。反応性がいいだけにステアリングの安定感は薄れますが、慣れと好みの問題だと思うので、問題となる部分ではないです。
浅野:RHM9などと比べるとバイクの挙動は早いので、特に剛性が高いモデルではコーナリングでは若干切れ込みが強くなる傾向はあります。でもハンドリングにシビアになるような嫌な癖はないです。基本的にアンカーのバイクはハンドリングも素直で乗り味も癖はないので、RMZもとても乗りやすいです。
CW:ラグを使った接着方式に走りの違いを感じますか。
佐野:RMZの剛性レベルを一般的なワンピースとか3ピースのモノコック構造で作ると、もっと固さを感じてしまい脚への負担が大きく踏み切れないのではないでしょうか。その点RMZはパイプ自体固いのですが、ラグの部分で微妙な剛性感の調整がされていて、嫌な固さはなく気持ちよく走れる印象はありますね。
CW:剛性やサイズオーダーができる点はいかがですか。
浅野:今回はRHM9 RSにも試乗していますが、このバイクもレースで高い性能を発揮できます。しかしRMZはよりレーシングな性能を特化させた印象を受けます。コースも上りから、平地のスピードレースまでオールラウンドに対応できるので、自分が選手だったらRMZに乗ります。やはり剛性を選べる自由度があるので、より自分に合う1台を作れるという点ですね。サイズオーダーについてはプロ選手の多くも既製品のフレームで対応しているので、それを考えると剛性オーダーに魅力を感じます。とはいえオーダーによって、よりベストなライディングポジションに近づけられるので、そこにお金を払う価値はあります。
佐野:僕もオーダーメイドについては、ジオメトリーよりも剛性を選べることに魅力を感じます。RMZは剛性感や軽いハンドリングなど、非常に攻撃的な走りができるモデルなので、それを自分に合った剛性にすることでより伸ばせます。
浅野:専用のオーダーシステムによる測定で自分の剛性レベルを知ることはできますが、やはり迷う部分もあると思います。ツールがあるとはいえ、ショップスタッフの経験とか購入される方とのコミュニケーションもオーダー時は求められますね。 いきなり「1台目にRMZ」というのは難しいでしょう。ある程度の経験があって、何台か乗ってきた中で最高のものを作りたいユーザーにはRMZのオーダーは魅力的です。ユーザーの走り方や好みなどを知った上で、オーダーシステムと照らしあわせて剛性やサイズを提案できれば、理想的な1台ができると思います。
提供:ブリヂストンサイクル株式会社 企画/制作:シクロワイアード