2024/06/14(金) - 21:43
グラベルレースの最高峰イベント、アンバウンド・グラベルがアメリカ・カンザスを舞台に6月1日に開催された。フリントヒルズと呼ばれる地域のグラベルロードを走る過酷なレースに約5,000人が挑戦。今年は北ルートが採用され、好条件もあって史上最速記録が更新された。日本からも約30人が参戦し、高岡亮寛が年代別優勝を飾った。
アンバウンド・グラベル(Unbound Gravel )はアメリカのイベント会社ライフタイム(LIFE TIME)社が主催。2006年に始まった大会は年々人気が加熱し、総参加者数で約5,000人を集めて開催された。抽選による定員があるためエントリー数はその数倍に上るという。参加カテゴリーは100・200マイル、日をまたいで350マイルを走るXL、そして入門向けの25・50マイル、ジュニアの各クラスが用意される(1マイルは1.6km)。
年間で全7レースで行われるグラベル&マウンテンバイクのオフロードレースによって構成されるLife Time Grand Prixシリーズにも含まれ、男女エリートともに1位から10位までが賞金対象となり、優勝賞金$30,000、賞金総額$250,000のレースとなる。また今年からベルギーのフランダース・クラシックスと提携。ヨーロッパで開催されるグラベルレースがアンバウンド・グラベルの出場権を得るための予選となる。
世界最高峰のグラベルレースと言われるアンバウンド・グラベル。「オリジナル」と呼ばれる200マイル(=320km)クラスのプロカテゴリーには、UCIワールドツアーチーム所属のプロロード選手や、マウンテンバイク、シクロクロス、そしてグラベルレースを専業にするプロ選手が多く参加し、ハイレベルなレースが展開する。
今年はUCIグラベル世界選手権の覇者としてアルカンシェルジャージを着るマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィトリアス)を筆頭に、昨年引退したパリ〜ルーベ覇者グレッグ・ファンアーヴェールマート(ベルギー)やニキ・テルプストラ(オランダ)、ダニエル・オス(イタリア)、ピーター・ステティナ(アメリカ)、イアン・ボズウェル(アメリカ)、ヤン・バケランツ(ベルギー)ら欧州プロロードレースにルーツをもつトップ選手が多数参戦。「非公式のグラベル世界選手権」と呼ばれるとおりの顔ぶれが揃った。日本からはオフロードレースに関してはプライベーターとして活動する小森亮平(K's Coaching Service )が参加した。
200マイルの年代別クラスで上位を狙う高岡亮寛(Roppingi Express)をはじめ、日本からの一般参加者はリピーターに加え新規参加者も加わり、昨年の約20人から30人台へと今年も大幅に参加者数を増やした。
アメリカ中西部の穀倉地帯として知られるカンザス州の大草原地帯「グレートプレーンズ」。レースの舞台となるエンポリア周辺フリントヒルズ一帯には緑の大平原が見渡す限り広がり、生活道であるグラベル=未舗装路をつなぐコースが設定される。今年のトピックは北周りルートが採用されたこと。この大会はほぼ2年ごとに北と南を入れ替えて開催されているが、過去に北ルートが採用されたのは2019年と2021年の2回。
フリントヒルズの名前の由来となっている燧石(ひうちいし)は、先住民が矢尻や槍に用いた尖った石。砂利状のグラベルは容赦なくタイヤを痛め、パンクを誘発する。北ルートのグラベルではフリントストーンがより鋭くなると言われる。
昨年大会は「ピーナッツバター状の泥区間が13kmも続き、困難を極めた。リタイヤ率が高すぎたため、今年の大会では泥区間が意図的に避けられたとも言われるが、それでも主催者は「北ルートは確かに泥が少なめの傾向はあるが、それでも雨が降れば条件は変わる。究極の冒険レースはすべては母なる大地の気分次第」と言う。
厳しいときは40℃を超える暑さと高湿度に見舞われるカンザス。大会前日までは穏やかな気候が続いたが、前日の天気予報は雨の可能性を告げ、選手たちを惑わせた。「泥になる」という憶測が飛んだが、それ以上に選手たちを悩ませたのは「北部のグラベルが酷く荒れている」という直前情報だった。
大会5日前に北ルートをオートバイで下見したダン・ヒューズ(過去最多優勝者)は「コースの北はとんでもなくチャンキー(ガレている)で、ここを42Cより細いタイヤで走るなんて考えられない」とSNSに投稿。現地を試走したローカルライダーたちの意見も加わり、すでにカンザス入りの準備を済ませた選手たちを不安に陥れた。
前日に試走した初出場のモホリッチも、バイクにこびり着いた重い泥をスキー板のような木材で掻き落とす様子をinstagramに投稿し、「ピーナッツバター泥地獄」の再来を予感させた。
このレースではどのクラスも参加者たちは大会公式サイト上で発表・掲載されるルートデータを自身のGPSサイクルコンピュータにダウンロードし、セルフナビゲートしながら走ることになる。レースの基本ルールは他のグラベルレースとほぼ共通で、すべてが自己責任のセルフサポートをベースとしている。基本的なレース規則は2022年の特集記事にまとめてあるので参照してほしい。
今年はレース形態が一部変更となった。200マイル男子エリートは5時50分にスタートし、続いて15分後に女子エリートがスタートし、200マイル一般がその25分後にスタートする。これはレベルアップにより接戦になることが予想される女子エリートと他クラスの混走&ドラフティングを避けるための措置だ。
結局この日は雨が降らず、かつ晴れ予報に反して午前中は涼しい曇り空が続き、午後も猛暑とならなかったことでレースにおいては稀に見る好条件となった。北ルートは緩やかなアップダウンがあるものの概ね平坦基調で、直線的なフラットグラベルや舗装路区間が多くあり、南ルートに比べれば高速で走れる条件が揃っていた。200マイルクラスの実際の距離は203マイル (327 km) 、獲得標高は3,612m。
エリート男子はトビアス・コンスタット(PAS Racing)が序盤からアタックして独走。ライフタイムグランプリシリーズ総合リーダーである優勝候補キーガン・スウェンソン(サンタクルズ)、モホリッチ、ファンアーヴェルマートらが強力にペースをつくる集団が追う展開に。その後150マイル地点からラクラン・モートン(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックし、追いついたチャド・ヘイガ(PASレーシング)とともにペアで逃げる。
モートンとヘイガが先頭に立ち、50マイルに渡った2人の逃げは追走グループに最後まで大差を保ち続けた。最後はモートンがスプリントでヘイガを下し、念願のタイトルを獲得した。3位には追走グループから3分の差を持って逃げ切ったコンスタットが入った。モートンの記録9時間11分47秒は大会史上最速のタイムとなった。
EFエデュケーションに所属しつつも「ロードレースのオルタナティブ(代替)」として2019年にオフロードレーサーに転身、グラベルバイク&MTBを駆りユニークな活動を続ける32歳のモートンにとって、まさに悲願とも言える勝利。
モートンは語る。「序盤は速くて混沌としていた(だから抜け出した)。エンポリアの街に帰ってくるときはいつもテクニカルな勝負を強いられる。でも今まで何度か勝負して、昨年も負けた経験(3位)のミスを今回は活かすことができた。正直、もう勝つことはできないかもと思っていたんだ。レベルは年々高くなるし、僕は歳をとるし。ただ今日のことを喜びたい」。
近年はアンバウンド・グラベルを「もっとも勝ちたいレース」に据えて活動してきたモートンは、2022年に山本和弘とシクロワイアードの取材に対しグラベルへの想いとその活動ポリシーを語ってくれている(インタビュー特集記事へ)。
なお日本人唯一のプロクラス参加選手の小森亮平はパンクとトラブルからの復帰に手間取って1時間近いロスを喫し、109位で完走している。
200マイル女子エリートは例年以上に拮抗したバトルとなった。最終盤は9人の集団に絞られたスプリント勝負となり、力強い伸びを見せたローザ・クローザー(デンマーク)が勝利した。クローザーの記録10時間26分2秒は女子レース史上2番目、北ルートでは史上最速のタイムとなった。クローザーは自転車レース歴わずか2年半のPh.D博士号を持つ27歳のフルタイム学生&パートタイムレーサーで、先月のTraka200で3位になったものの、アンバウンドグラベル初参加でのビッグタイトル獲得となった。
今回で3年連続3度目の出場となる高岡は総合優勝を狙って出走。過去の2022年は変速器のトラブル、2023年は泥区間の処理に手間取り遅れを喫したが、いずれも先頭集団では走れた経験を活かし、序盤から先頭グループの好位置につける走りを心がけた。しかし50分を経過してからは巻き込まれての落車、変速スイッチの不具合、チェーン外れ、そして2度目の落車に見舞われるなど、トラブルが続いた。
高岡は半分の距離あたりの勝負どころの坂「Little Egypt」で抜け出した2人に続き、3人で逃げを形成。この逃げは240km地点まで続き、2人とはエイジカテゴリーが違うため高岡はこの時点で45−49歳台のトップに。しかし高岡は脱水と補給不足によって不整脈(心房細動)が出始めたため、2人から遅れを喫する。高岡はその後同年代の選手に抜かれることはなかったが10位でフィニッシュ。年代別優勝と総合10位を獲得した。過去の日本人のエイジ上位記録としては髙味空也(たかみくうや/Night Owls Racing)のM35-39での優勝・総合4位がある(2023年)。
「3回目の挑戦は結果を狙って走りました。しかしトラブルが続き、単独で追いかけて・追いついてを繰り返してしまった。でもキツい登りでは自分が先頭グループの誰より登れていた印象だった。序盤にボトル1本を落下させてしまったことで脱水と体調不良を招いてしまい、残り80kmはそれまで稼いだアドバンテージでなんとかつなぐ走りになってしまった。年代別の優勝ができたこと、総合トップ10になれたことは良かった。しかし勝つには胃腸の強さや人間力が必要だと、課題を感じた」と高岡は言う。
200マイルは他に7人の日本人が走った。水谷祐太(シマノ)が13時間36分33秒で324位、青山雄一(SBC)は14時間10分14秒で3度目の200マイル完走を果たし、同時に20時45分の日没の5分前にフィニッシュする「Race the sun」の称号を獲得した。
かつて群馬グリフィンでキャプテンを務めた平塚祐亮はシングルスピード仕様のバイクで16時間26分50秒で完走。斎藤よしたか&吉岡拓也のパナレーサー社員コンビ、坂本大希(バイシクルクラブ)らが完走を果たしたが、田淵君幸(トライクル)は2度のパンクと体調不良でリタイヤを喫した。
100マイルクラスは実距離で108.5マイル(174km)、獲得標高差1,528mのレース。F1ドライバーのバルテリ・ボッタスがM30-39クラスで2位になり話題をさらった。日本人では2度目の挑戦の森廣真奈が6時間21分32秒で好走し、年代別の4位に(総合230位)。 森廣は2日前の試走時に落車して左腕を強打し、痛みで腕が自由に使えないなかの完走で、「フィニッシュ時には感激のあまり涙が止まらなかった」という。吉⽥寛介は7時間20分56秒のタイムで70歳以上のM70+クラスで4位に。ほかにもユーチューバーのけんたさんやインフルエンサーの神楽坂つむりさんなども完走した。
ほかにもシマノのスポーツサイクル部門の製品開発担当者や、大会公式スポンサーをつとめるiRCタイヤの社員が100マイルクラスに、パナレーサーの大和竜一代表と、フカヤの谷内一路代表の「輪界社長コンビ」が50マイルクラス出場するなど、グラベルという日本ではまだ新しいジャンルで展開する自社製品の開発に自身の経験を活かそうという気概を見せた。なお3度めの100マイルクラスに出場した綾野真(シクロワイアード)の実走レポートは後日に別記事でお届けする。
アンバウンド・グラベル(Unbound Gravel )はアメリカのイベント会社ライフタイム(LIFE TIME)社が主催。2006年に始まった大会は年々人気が加熱し、総参加者数で約5,000人を集めて開催された。抽選による定員があるためエントリー数はその数倍に上るという。参加カテゴリーは100・200マイル、日をまたいで350マイルを走るXL、そして入門向けの25・50マイル、ジュニアの各クラスが用意される(1マイルは1.6km)。
年間で全7レースで行われるグラベル&マウンテンバイクのオフロードレースによって構成されるLife Time Grand Prixシリーズにも含まれ、男女エリートともに1位から10位までが賞金対象となり、優勝賞金$30,000、賞金総額$250,000のレースとなる。また今年からベルギーのフランダース・クラシックスと提携。ヨーロッパで開催されるグラベルレースがアンバウンド・グラベルの出場権を得るための予選となる。
世界最高峰のグラベルレースと言われるアンバウンド・グラベル。「オリジナル」と呼ばれる200マイル(=320km)クラスのプロカテゴリーには、UCIワールドツアーチーム所属のプロロード選手や、マウンテンバイク、シクロクロス、そしてグラベルレースを専業にするプロ選手が多く参加し、ハイレベルなレースが展開する。
今年はUCIグラベル世界選手権の覇者としてアルカンシェルジャージを着るマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィトリアス)を筆頭に、昨年引退したパリ〜ルーベ覇者グレッグ・ファンアーヴェールマート(ベルギー)やニキ・テルプストラ(オランダ)、ダニエル・オス(イタリア)、ピーター・ステティナ(アメリカ)、イアン・ボズウェル(アメリカ)、ヤン・バケランツ(ベルギー)ら欧州プロロードレースにルーツをもつトップ選手が多数参戦。「非公式のグラベル世界選手権」と呼ばれるとおりの顔ぶれが揃った。日本からはオフロードレースに関してはプライベーターとして活動する小森亮平(K's Coaching Service )が参加した。
200マイルの年代別クラスで上位を狙う高岡亮寛(Roppingi Express)をはじめ、日本からの一般参加者はリピーターに加え新規参加者も加わり、昨年の約20人から30人台へと今年も大幅に参加者数を増やした。
アメリカ中西部の穀倉地帯として知られるカンザス州の大草原地帯「グレートプレーンズ」。レースの舞台となるエンポリア周辺フリントヒルズ一帯には緑の大平原が見渡す限り広がり、生活道であるグラベル=未舗装路をつなぐコースが設定される。今年のトピックは北周りルートが採用されたこと。この大会はほぼ2年ごとに北と南を入れ替えて開催されているが、過去に北ルートが採用されたのは2019年と2021年の2回。
フリントヒルズの名前の由来となっている燧石(ひうちいし)は、先住民が矢尻や槍に用いた尖った石。砂利状のグラベルは容赦なくタイヤを痛め、パンクを誘発する。北ルートのグラベルではフリントストーンがより鋭くなると言われる。
昨年大会は「ピーナッツバター状の泥区間が13kmも続き、困難を極めた。リタイヤ率が高すぎたため、今年の大会では泥区間が意図的に避けられたとも言われるが、それでも主催者は「北ルートは確かに泥が少なめの傾向はあるが、それでも雨が降れば条件は変わる。究極の冒険レースはすべては母なる大地の気分次第」と言う。
厳しいときは40℃を超える暑さと高湿度に見舞われるカンザス。大会前日までは穏やかな気候が続いたが、前日の天気予報は雨の可能性を告げ、選手たちを惑わせた。「泥になる」という憶測が飛んだが、それ以上に選手たちを悩ませたのは「北部のグラベルが酷く荒れている」という直前情報だった。
大会5日前に北ルートをオートバイで下見したダン・ヒューズ(過去最多優勝者)は「コースの北はとんでもなくチャンキー(ガレている)で、ここを42Cより細いタイヤで走るなんて考えられない」とSNSに投稿。現地を試走したローカルライダーたちの意見も加わり、すでにカンザス入りの準備を済ませた選手たちを不安に陥れた。
前日に試走した初出場のモホリッチも、バイクにこびり着いた重い泥をスキー板のような木材で掻き落とす様子をinstagramに投稿し、「ピーナッツバター泥地獄」の再来を予感させた。
このレースではどのクラスも参加者たちは大会公式サイト上で発表・掲載されるルートデータを自身のGPSサイクルコンピュータにダウンロードし、セルフナビゲートしながら走ることになる。レースの基本ルールは他のグラベルレースとほぼ共通で、すべてが自己責任のセルフサポートをベースとしている。基本的なレース規則は2022年の特集記事にまとめてあるので参照してほしい。
今年はレース形態が一部変更となった。200マイル男子エリートは5時50分にスタートし、続いて15分後に女子エリートがスタートし、200マイル一般がその25分後にスタートする。これはレベルアップにより接戦になることが予想される女子エリートと他クラスの混走&ドラフティングを避けるための措置だ。
結局この日は雨が降らず、かつ晴れ予報に反して午前中は涼しい曇り空が続き、午後も猛暑とならなかったことでレースにおいては稀に見る好条件となった。北ルートは緩やかなアップダウンがあるものの概ね平坦基調で、直線的なフラットグラベルや舗装路区間が多くあり、南ルートに比べれば高速で走れる条件が揃っていた。200マイルクラスの実際の距離は203マイル (327 km) 、獲得標高は3,612m。
エリート男子はトビアス・コンスタット(PAS Racing)が序盤からアタックして独走。ライフタイムグランプリシリーズ総合リーダーである優勝候補キーガン・スウェンソン(サンタクルズ)、モホリッチ、ファンアーヴェルマートらが強力にペースをつくる集団が追う展開に。その後150マイル地点からラクラン・モートン(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックし、追いついたチャド・ヘイガ(PASレーシング)とともにペアで逃げる。
モートンとヘイガが先頭に立ち、50マイルに渡った2人の逃げは追走グループに最後まで大差を保ち続けた。最後はモートンがスプリントでヘイガを下し、念願のタイトルを獲得した。3位には追走グループから3分の差を持って逃げ切ったコンスタットが入った。モートンの記録9時間11分47秒は大会史上最速のタイムとなった。
EFエデュケーションに所属しつつも「ロードレースのオルタナティブ(代替)」として2019年にオフロードレーサーに転身、グラベルバイク&MTBを駆りユニークな活動を続ける32歳のモートンにとって、まさに悲願とも言える勝利。
モートンは語る。「序盤は速くて混沌としていた(だから抜け出した)。エンポリアの街に帰ってくるときはいつもテクニカルな勝負を強いられる。でも今まで何度か勝負して、昨年も負けた経験(3位)のミスを今回は活かすことができた。正直、もう勝つことはできないかもと思っていたんだ。レベルは年々高くなるし、僕は歳をとるし。ただ今日のことを喜びたい」。
近年はアンバウンド・グラベルを「もっとも勝ちたいレース」に据えて活動してきたモートンは、2022年に山本和弘とシクロワイアードの取材に対しグラベルへの想いとその活動ポリシーを語ってくれている(インタビュー特集記事へ)。
なお日本人唯一のプロクラス参加選手の小森亮平はパンクとトラブルからの復帰に手間取って1時間近いロスを喫し、109位で完走している。
200マイル女子エリートは例年以上に拮抗したバトルとなった。最終盤は9人の集団に絞られたスプリント勝負となり、力強い伸びを見せたローザ・クローザー(デンマーク)が勝利した。クローザーの記録10時間26分2秒は女子レース史上2番目、北ルートでは史上最速のタイムとなった。クローザーは自転車レース歴わずか2年半のPh.D博士号を持つ27歳のフルタイム学生&パートタイムレーサーで、先月のTraka200で3位になったものの、アンバウンドグラベル初参加でのビッグタイトル獲得となった。
高岡亮寛が年代別M40−49クラスで優勝 総合10位に
200マイル年代別エイジクラスには日本人7人が挑戦。高岡亮寛(Roppingi Express)がM40-49クラスで優勝、年齢で分けない総合では10位になった。今回で3年連続3度目の出場となる高岡は総合優勝を狙って出走。過去の2022年は変速器のトラブル、2023年は泥区間の処理に手間取り遅れを喫したが、いずれも先頭集団では走れた経験を活かし、序盤から先頭グループの好位置につける走りを心がけた。しかし50分を経過してからは巻き込まれての落車、変速スイッチの不具合、チェーン外れ、そして2度目の落車に見舞われるなど、トラブルが続いた。
高岡は半分の距離あたりの勝負どころの坂「Little Egypt」で抜け出した2人に続き、3人で逃げを形成。この逃げは240km地点まで続き、2人とはエイジカテゴリーが違うため高岡はこの時点で45−49歳台のトップに。しかし高岡は脱水と補給不足によって不整脈(心房細動)が出始めたため、2人から遅れを喫する。高岡はその後同年代の選手に抜かれることはなかったが10位でフィニッシュ。年代別優勝と総合10位を獲得した。過去の日本人のエイジ上位記録としては髙味空也(たかみくうや/Night Owls Racing)のM35-39での優勝・総合4位がある(2023年)。
「3回目の挑戦は結果を狙って走りました。しかしトラブルが続き、単独で追いかけて・追いついてを繰り返してしまった。でもキツい登りでは自分が先頭グループの誰より登れていた印象だった。序盤にボトル1本を落下させてしまったことで脱水と体調不良を招いてしまい、残り80kmはそれまで稼いだアドバンテージでなんとかつなぐ走りになってしまった。年代別の優勝ができたこと、総合トップ10になれたことは良かった。しかし勝つには胃腸の強さや人間力が必要だと、課題を感じた」と高岡は言う。
200マイルは他に7人の日本人が走った。水谷祐太(シマノ)が13時間36分33秒で324位、青山雄一(SBC)は14時間10分14秒で3度目の200マイル完走を果たし、同時に20時45分の日没の5分前にフィニッシュする「Race the sun」の称号を獲得した。
かつて群馬グリフィンでキャプテンを務めた平塚祐亮はシングルスピード仕様のバイクで16時間26分50秒で完走。斎藤よしたか&吉岡拓也のパナレーサー社員コンビ、坂本大希(バイシクルクラブ)らが完走を果たしたが、田淵君幸(トライクル)は2度のパンクと体調不良でリタイヤを喫した。
100マイルクラスは実距離で108.5マイル(174km)、獲得標高差1,528mのレース。F1ドライバーのバルテリ・ボッタスがM30-39クラスで2位になり話題をさらった。日本人では2度目の挑戦の森廣真奈が6時間21分32秒で好走し、年代別の4位に(総合230位)。 森廣は2日前の試走時に落車して左腕を強打し、痛みで腕が自由に使えないなかの完走で、「フィニッシュ時には感激のあまり涙が止まらなかった」という。吉⽥寛介は7時間20分56秒のタイムで70歳以上のM70+クラスで4位に。ほかにもユーチューバーのけんたさんやインフルエンサーの神楽坂つむりさんなども完走した。
ほかにもシマノのスポーツサイクル部門の製品開発担当者や、大会公式スポンサーをつとめるiRCタイヤの社員が100マイルクラスに、パナレーサーの大和竜一代表と、フカヤの谷内一路代表の「輪界社長コンビ」が50マイルクラス出場するなど、グラベルという日本ではまだ新しいジャンルで展開する自社製品の開発に自身の経験を活かそうという気概を見せた。なお3度めの100マイルクラスに出場した綾野真(シクロワイアード)の実走レポートは後日に別記事でお届けする。
アンバウンド・グラベル2024 レースハイライト
2024 Life Time UNBOUND Gravel 主要リザルト
200マイル男子エリート
1位 | ラクラン・モートン(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト) | 9:11:47 |
2位 | チャド・ヘイガ(アメリカ、PASレーシング) | +0:01 |
3位 | トビアス・コンスタット(ドイツ、PAS Racing) | +3:36 |
4位 | ピオトル・ハヴィック(オランダ) | +3:37 |
5位 | マッティア・デマルキ(イタリア) | +3:41 |
6位 | サイモン・スヴェンセン(ノルウェー) | +4:41 |
7位 | グレッグ・ファンアーヴェールマート(ベルギー) | +4:47 |
8位 | ペイソン・マッケルヴィーン(アメリカ) | +4:48 |
9位 | セバスティアン・ショーンヴェルガー(オーストリア) | |
10位 | ディラン・ジョンソン(アメリカ) | +4:49 |
200マイル女子エリート
1位 | ローザ・クローザー(デンマーク) | 10:26:02 |
2位 | ジーライク・シュレウース(オランダ) | +0:01 |
3位 | ペイジュ・オンウェラー(アメリカ) | |
4位 | ハーレイ・スミス(カナダ) | |
5位 | ヘイザー・ジャクソン(アメリカ) | |
6位 | キャロリン・シフ(ドイツ) | |
7位 | サラー・スターン(アメリカ) | |
8位 | ハンナー・オットー(アメリカ) | +0:02 |
9位 | ローレン・デクレチェンツォ(アメリカ) | +0:08 |
10位 | サラ・ラング(アメリカ) | +4:40 |
200マイル総合
1位 | マイク・バートン(アメリカ) | 10:07:45 |
10位(M45−49/1位) | 高岡亮寛(Roppingi Express) | 10:35:15 |
100マイル総合
1位 | エリオット・バーリング(アメリカ) | 4:56:30 |
50マイルジュニア
1位 | ディラン・ルイス(アメリカ) | 2:56:49 |
50マイル総合
1位 | マシュー・ポインデクスター(アメリカ) | 2:35:26 |
XL350マイル
1位 | セバスティアン・ブリューワー(ドイツ) | 20:05:36 |
text&photo:Makoto AYANO
photo:Snowy Mountain Photography, Life Time
photo:Snowy Mountain Photography, Life Time