イギリス発のフォールディングバイクブランド、ブロンプトンが12速モデル「Explore 12-speed」をリリースした。3速内装ハブと4速外装ギアを組み合わせたユニークな12 速ギアシステムにより、独自のコンパクトな折りたたみ技術はそのままに行動範囲を大きく広げる。

ブロンプトン創設者アンドリュー・リッチー(右)と最高経営責任者ウィル・バトラー=アダムス(左) photo:Makoto AYANO

発明と革新、想像力。これらの思想はブロンプトン創設者アンドリュー・リッチーがエンジニアを目指した当初から今に至るまでの同社の理念であり、原動力になっている。「都市の扉を開く、魔法のような折りたたみ自転車」。50年に渡り、ブロンプトンは折りたみ自転車のスタンダードとしての地位を確立し、愛され続けてきた。

ブロンプトンExplore 12-speed T Line(手前)、P Line(奥) photo:Makoto AYANO

独自の”3つ折り”による折りたみ手法は、ブロンプトンを語るうえでの第1章だ。20秒以内に折り畳み、すっきりとコンパクトなパッケージへと変身させるその巧みなデザインは、1975年にアンドリュー・リッチーによって考案されて以来ずっと、 当初の技術を変えることなく継承しながら、洗練さと精巧さを加えつつ、オリジナルデザインのままにアップデートされてきたのだ。

ブロンプトン P Line Explore 12-speed(手前)、T Line(奥)を折りたたんだ状態 photo:Makoto AYANO

コンパクトで楽々と持ち運びができ、どこへ行くにも最良のパートナーになる夢のような自転車。ブロンプトンは鍵をかけて置いていく自転車ではなく、毎日、いつでも一緒に行動する自転車だ。

トランク車載の気軽さが機動力を上げる photo:Makoto AYANO


Explore 12-speed
「さらに遠くへ、どんな山も越えて」

Explore 12-speedで坂や峠を含むダイナミックな地形を越え、より速く・遠くへ photo:Makoto AYANO

2024年、そんなブロンプトンの P Line および T Line に、新たに12速モデル「Explore 12-speed」が追加された。12速化がもたらす機動力は本格的なサイクリストの要求をも満たし、さらに遠くへ、どんな山も越えて走れるようになる。もうルート選択で妥協することは不要になる。

3速内装ハブと4速外装ディレイラーによるExplore 12-speed photo:Makoto AYANO

スポーツバイクにとってギアの多段化は重要な性能だ。速く、遠くまで走るとき、あるいは坂を越えて走るとき、ペダリングパワーとケイデンスを無駄なく活かす多段化は、スポーティな走りのキーとなる。

ギアステップが小さく、より適切なギア比で走ることができる photo:Makoto AYANO

ブロンプトンの新たな12 速ギアシステムはユニークだ。より多い変速数、より広いギア幅を提供しながらも、独自のコンパクトな折りたたみ技術はそのままに設計されている。より広いギアレシオ選択は、ユーザーに次のようなメリットをもたらしてくれる。
  • アップダウンをより軽やかにこなせる
  • 速く走ることも、軽い漕ぎでゆっくり走ることも快適に
  • ギアステップ(間隔)が小さくなり、より適切なギア比で走ることができる
  • 坂や峠を含むダイナミックな地形を越え、より速く・遠くへ走ることができる
  • アップダウンや距離への対応力が上がることで、単調で交通量の多い幹線道路を選ぶ必要がなくなる

登坂性能を活かせばアップダウンや距離への対応力が上がる

今までもブロンプトンには2・4・6Speedモデルがあった。多段化するほどにスポーティな性格を増してきたが、12速となった Explore 12-speedは、今までロードバイクやハイブリッドバイク、コミューターバイクやシティバイクが得意とした範囲をもカバーする。あるいはそれ以上の機能と機動力を得て、かつ軽量で持ち運び可能・折りたたみ式というブロンプトンのパッケージの利便性が備わり、まさにオールラウンドな自転車が誕生した。

ブロンプトンExplore 12-speedに乗って長距離サイクリングの旅へ。スローに走っても楽しく、ブルベを走ることだって可能だ。

3 速内装ハブ×4速外装ディレイラー = Explore 12-speed

ブロンプトンの新しい12速システムは、3速内装ハブと4速外装ディレイラーの2つの革新的な要素によって実現されている。6-speedモデルよりもワイドなギアレンジでありつつ、よりクローズなギアステップを実現しているのだ。

内装3速のスターメーアーチャー(Sturmey-Archer)製リアハブ photo:Makoto AYANO

3速内装ハブ

内装3速のスターメーアーチャー(Sturmey-Archer)製リアハブにより、外装4速と掛けあわせてギア選択が12 速になる。密閉された内装ハブギアを使用することで、よりメンテナンスフリーのシステムとなる。ハブは回転する後輪の中心部に位置するため、走行時はその重量の影響は最小限。またすべての機構がハブシェルの内側に隠されているため、耐久性に優れ、メンテナンスフリーで長寿命になる。

内装3速のスターメーアーチャー製リアハブ photo:Makoto AYANO

4速外装ディレイラー

単体重量わずか60グラムという軽量の4速リアディレイラーは、もともと超軽量チタン製モデルのTライン用に設計された。ほとんどのバイクはディレーラーが外側へ露出し、傷つきやすい場所に位置する。ブロンプトンのリアディレイラーは専用設計で、外側への突出幅が小さく、もし右側に倒したとしても地面にコンタクトしにくい設計だ。そして折りたたむ際も、走っている時も邪魔になることがない。ちなみにハンドルの右シフターの操作で内装ハブギアを制御し、左シフターで外装ディレイラーを制御する。

3 速内装ハブ×4速外装ディレイラー = Explore 12-speed
ハンドルの右シフターの操作で内装ハブギアを、左シフターで外装ディレイラーを制御する


12速を備えたExplore 12-speed P LineとT Line

ブロンプトン P Line Explore 12-speed photo:Makoto AYANO

P Line Explore 12-speed

P LineはC Lineより1.85kgも軽量で、たたむ時も展開するときもその軽量性を発揮する。チタン製のリアフレームとフォーク、新開発のサスペンションブロックを備え、タウンでの機動性においてもフィールドでの走破性においても優れる。ハンドルバーはLowあるいはMidを選択が可能。Explore 12-speedでも10.5kgの軽量性を誇る。

P lineのステムとMidハンドル photo:Makoto AYANO
Fフォークとリアトライアングルはチタン製だ



リアトライアングルはチタン製で軽量かつ堅牢だ
内装3段ハブと4段スプロケットで12速が可能なドライブトレイン


P Line Explore 12-speed

重量10.5kg〜
価格¥480,700〜(税込)
ハンドルバーLow or Mid
泥除け付属
ラックオプション


T Line Explore 12-speed

ブロンプトン T Line Explore 12-speed photo:Makoto AYANO

特別に開発された150以上の軽量設計パーツとこだわり抜いて選ばれた素材を採用し、厳格なテストを経て誕生したチタニウムモデル、T Line。ブロンプトンのチタンフレームはロンドン工場の北300kmに位置するシェフィールドのTIG溶接専門工場で金属管材から作り出される。Exploreのために再設計されたチタン製フレームはオールスチール製のC Lineよりも37%軽量でありながら同等の強度を誇り、カーボンフォークや、クランク、ハンドル、サドルレールにもカーボンを採用。シートポストにもスチール強化カーボンを採用し、ボルト単位で軽量化することで8.8kgという超軽量に仕上がる。錆びにくく、腐食にも強い。

T Lineのフォークは振動吸収性に優れるカーボン製だ
T Lineのチタン製ステムとカーボンハンドル


TIG溶接により美しく仕上げられたヘッド周辺の接合部
T Lineのリアトライアングルも惜しみなくチタン製だ


T Line Explore 12-speed

重量8.8kg〜
価格¥894,850〜(税込)
ハンドルバーLow or Mid
泥除け付属
ラックオプション


T Line Explore 12-speedをCW編集部員がインプレッション

上りを軽快にこなす性能こそ12速モデルの魅力だ photo:Makoto AYANO

記事に登場したT Line Explore 12-speedを、普段は国内ロードレースの最高峰カテゴリーのJ PROTOURで走る高木三千成がインプレッションした。編集部ではロードバイクを中心にテストライドを担当するが、高木だが、ブロンプトンに乗るのはほぼ初めて。かつ折り畳むことも初めてだったが、果たしてどう感じただろう?

振動を吸収するフレーム構造やカーボンやチタンの素材特性も乗り心地の良さに効いている photo:Makoto AYANO

高木:小径車とは思えない加速感で、ロードバイクに近い加速にまず驚きました。ハンドリングはクイックですが、すぐに慣れて操作しやすく、コーナーではクイクイと切れ込みながらもホイールベースが長く確保されているおかげか安定感もあって、小気味よく扱いやすい走りです。乗り心地も思ったよりも良く、突き上げ感がないのはタイヤが太めなことと、うまく振動を吸収するフレーム構造やカーボンやチタンの素材特性もありそうだと思いました。

ダウンヒルもスポーティにこなす。ついエアロポジションをとってしまう photo:Makoto AYANO

変速レバー操作は右が内装ギア、左が外装ギアと、通常のロードバイクからすると逆のような印象もあるのですが、走りだしから頻繁に変速操作するため、まごつくことなくすぐに慣れることができました。変速ショックは小さく、とくに内装変速機はショックレスで変速するため、ギア段数が多くても操作の煩雑さや違和感、メカニズムの過剰な感じは一切ありません。

ハブ内装変速はショックも少なくサイレントだ photo:Makoto AYANO

グリップと転がりの良いシュワルベのタイヤにTPUチューブの組み合わせで足回りもスポーティ。カーボンハンドルがさらにハンドリングを軽く、路面のインフォメーションをうまく伝えつつも振動をマイルドにしてくれています。操作感がストレスフリーで、アルミに比べるとマイルド感がより際立って良く、既存のモデルを乗ってきた人が乗り換えても驚くんじゃないでしょうか。もちろんロードバイクやMTBに乗ってきた人が乗ってもそのポテンシャルに驚くと思います。

持ち運びスタイル。チタンモデルの T Lineは持ち運びでも軽さが際立つ photo:Makoto AYANO

折りたたみにも初チャレンジしたのですが、手順を確認しながらも30秒以内で折り畳めました。コツをつかめばもっとスピードアップできるでしょうね。軽いことで折りたたみも素早くできます。チタンやカーボンの肌触りの良さや素材のもつ温かみで、折りたたむときの振動も少なく感触がとても良かったですね。T LineはP Lineと比べてスムーズさがぜんぜん違うほど。折りたたみと展開時の性能もより高いですね。

T Lineのヒンジは精度も高く動きがスムーズ photo:Makoto AYANO

サンドブラストによりbromptonロゴが刻まれる
ハンドルステム部のヒンジは造形やTIG溶接痕さえ美しい


これを手に入れて何処にでも走りに行きたいと思えるバイクでした。輪行して列車や新幹線に乗って、移動先で軽くサイクリングをしたり。小さな散歩というよりも、走りを楽しむロングライドも可能だと思います。持参した先ではロードバイクよりも心配になる要素が無いから、いつも気軽に連れ出したくなる、と感じました。

photo&text : 綾野 真 提供:ブロンプトン・ジャパン